民事訴訟法 第3条の8(応訴による管轄権)
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被告が日本の裁判所が管轄権を有しない旨の抗弁を提出しないで本案について弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは、裁判所は、管轄権を有する。
この条文の基本情報
応訴による管轄権とは何ですか?
定義応訴による管轄権とは、民事訴訟法第3条の8に定められた規定で、「被告が日本の裁判所が管轄権を有しない旨の抗弁を提出しないで本案について弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは、裁判所は、管轄権を有する。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事訴訟法第3条の8(応訴による管轄権)は、日本の民事訴訟法に含まれる条文です。
- 民事訴訟法第3条の8の条文原文は「被告が日本の裁判所が管轄権を有しない旨の抗弁を提出しないで本案について弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは、裁判所は、管轄権を有する。」で始まります。
- 民事訴訟法第3条の8は第一節 日本の裁判所の管轄権に置かれています。
- 民事訴訟法の公布日は平成8年6月26日です。
- 民事訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 民事訴訟法第3条の8の前の条は民事訴訟法第3条の7です。
- 民事訴訟法第3条の8の次の条は民事訴訟法第3条の9です。
- 民事訴訟法第3条の8には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第3条の8 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/408AC0000000109 - 本サイト収録
民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第3条の8(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/408AC0000000109/3_8
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事訴訟法3条の8は、被告が管轄を争わずに本案について弁論をすると、日本の裁判所に応訴管轄が生じると定める。中身に反論する前に管轄を争わなければ、後から争えなくなる。
Q · 海外の会社が日本で訴えられて、いきなり中身に反論したらどうなるの?
中身に反論する前に管轄を争わないと、応訴管轄が成立する
民事訴訟法3条の8により、被告が「日本の裁判所には管轄権がない」という抗弁を出さずに本案(事件の中身)について弁論をすると、それだけで日本の裁判所に管轄権が生じます。これを応訴管轄といい、国内土地管轄の応訴管轄(民訴12条)の国際版にあたります。訴状を受け取って慌てて「契約違反などしていない」と中身を争った瞬間、本来主張できたはずの「そもそも日本に裁く資格があるのか」という入口の防御を自ら手放すことになります。逆に原告側は、相手が管轄を争わず本案に応じれば、管轄の壁を自動的に崩せます。
解説
国境をまたぐ取引が当たり前になった今、ある日あなたの会社に日本の裁判所から訴状が届くことがある。相手は日本企業、あなたは海外法人。普通なら「なぜ日本で裁かれなければならないのか」と思うだろう。そこに落とし穴がある。民事訴訟法3条の8は、被告が「日本の裁判所には管轄権がない」という抗弁を出さないまま、いきなり事件の中身(本案)について反論を始めると、それだけで日本の裁判所に管轄権が生まれると定める。訴状を受け取って慌てて「契約違反などしていない」と中身を争った瞬間、本来なら主張できたはずの「そもそも日本に裁く資格があるのか」という入口の防御線を、自ら手放したことになる。逆の立場も同じだ。あなたが原告として外国企業を日本で訴えたいとき、相手が中身に反論してくれれば、管轄の壁は自動的に崩れる。最初の一手をどう打つかで、戦場が東京になるかニューヨークになるかが決まる。
法的な位置づけ
民事訴訟法3条の8は国際裁判管轄における応訴管轄を定める規定であり、被告が日本の裁判所の管轄権を争う抗弁を提出せずに本案について弁論をし、または弁論準備手続において申述をしたとき、当該裁判所に管轄権が生じる旨を規定する。国内土地管轄の応訴管轄(民訴12条)の国際版に位置づけられ、被告の自発的な応訴に管轄発生の効果を結びつける。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.訴状を受け取ったら本案に触れる前に管轄を確認 日本(または相手国)の裁判所から訴状が届いたら、中身への反論を書く前に、まず国際裁判管轄の有無を最優先で検討する。管轄合意の有無、3条の2以下の管轄原因(被告所在・債務履行地・不法行為地等)を洗い出す
- 2.管轄を争う方針なら答弁書の冒頭で管轄違いを明記 管轄を争うと決めたら、答弁書または最初の期日において、本案について弁論をする前に「日本の裁判所は管轄権を有しない」と明記する。この一手が応訴管轄の成立を防ぐ分水嶺になる
- 3.本案の主張は予備的・仮定的にとどめる どうしても本案の反論を並行して書く場合は、管轄の抗弁を先に立て、本案は「仮に管轄があるとしても」という予備的主張と明示する構成にする。本案から書くと応訴管轄が成立しかねない
- 4.応訴か撤退かを日本・現地双方の弁護士と判断 日本での応訴コストと、外国での訴訟リスクを天秤にかけ、あえて応訴管轄を受け入れて日本で戦う選択肢も含めて方針を決める。答弁書提出期限・第一回期日までが実務上の決断ラインになる
よくある質問 AI による整理
Q1応訴管轄とは何ですか?
被告が管轄違いの抗弁を出さず本案に弁論すると、その裁判所に管轄権が生じる制度です。民訴3条の8は国際裁判管轄について、12条は国内土地管轄についてこれを定めます。
Q2国際裁判管轄はどうやって決まりますか?
原則は民訴3条の2以下の管轄原因(被告の所在、契約債務の履行地、不法行為地等)と管轄合意(3条の7)で決まり、これらがなくても応訴管轄(3条の8)で生じる場合があります。
Q3海外で訴えられたら、まず何をすべきですか?
中身に反論する前に「日本(または相手国)の裁判所に管轄権があるか」を最優先で検討します。焦って事業の正当性を主張すると本案弁論とみなされ、管轄を争う道が閉じます。
Q4出廷したら応訴管轄が成立してしまいますか?
出廷そのものでは成立しません。管轄を争うための出廷・主張は本案の弁論にあたりません。出廷して「日本に管轄権がない」と述べれば応訴管轄は生じません。
Q5民訴3条の8と3条の7はどう違いますか?
3条の7は契約段階で予め裁判所を決める合意管轄、3条の8は訴訟開始後に被告が本案に応じることで生じる応訴管轄です。前者は事前、後者は事後の管轄発生原因です。
Q6特別の事情による却下とは何ですか?
日本に管轄権が成立しても、当事者の衡平や審理の適正を著しく害する特別の事情があれば、裁判所は訴えを却下できます(民訴3条の9)。応訴管轄成立後も残る調整弁です。
Q7離婚や相続でも応訴管轄は使えますか?
人事訴訟の国際裁判管轄は人事訴訟法3条の2以下が規律し、身分関係では応訴管轄が制限されます。通常の民事と異なり「中身に応じたから日本で裁ける」は通用しない場面があります。
Q8答弁書はどう書けば管轄を失わないですか?
冒頭で「日本の裁判所の管轄権を争う」と明記し、本案の主張は予備的・仮定的にとどめます。順序を誤って本案から書くと、それだけで応訴管轄が成立しかねません。
この条文についての質問 AI による整理
Q1海外の会社を日本で訴えたいんですが、相手が日本に何も持っていなくても可能ですか?
管轄合意や、3条の2以下の管轄原因(契約債務の履行地が日本、不法行為地が日本など)があれば可能です。それらがなくても、相手が日本の裁判所で管轄を争わずに本案に応じれば、3条の8の応訴管轄で日本の裁判所に管轄権が生まれます。実務のポイント:実務では、相手の代理人が外国弁護士だと国際裁判管轄のルールに不慣れで、うっかり本案から反論してくることがある。原告側はそれを待つだけで管轄を固められる場合がある。だからこそ訴状送達後の相手の第一手を黙って観察する価値がある
Q2日本で訴えられたら、出廷したらもう負けですか?管轄を争うために何を出すべき?
出廷そのものでは負けません。応訴管轄が成立するのは『本案について弁論をした』場合であり、管轄を争うための出廷・主張は本案の弁論にあたりません(3条の8)。だから出廷して、まず『日本に管轄権がない』と述べることが正解です。実務のポイント:危険なのは、答弁書で管轄に触れず、いきなり『請求には理由がない』と中身を書いてしまうこと。これが本案の弁論とみなされて管轄を失う典型例。答弁書は必ず管轄の抗弁を先頭に置き、本案は予備的にとどめる、この順序を弁護士に確認する
間違えやすい点 AI による整理
- 「管轄なんて、後からでも『日本では争えない』と言えば覆せる」と思っている人が多いが、本案について弁論をした後ではもう手遅れになる。3条の8は時期で線を引いており、中身を語った瞬間に入口の防御は失われる。問題は「言えるかどうか」ではなく「いつ言うか」だ
- 管轄合意(3条の7)さえ押さえておけば十分だと思われがちだが、合意がなくても、あるいは合意で外国を指定していても、被告が日本でうっかり本案に応じれば応訴管轄が成立しうる。契約段階の防御線と、訴訟が始まってからの防御線は別物で、後者を知らない人が前者だけで安心している
- 「これは大企業の国際取引だけの話で、自分には関係ない」と多くの人が思っているが、越境 EC、海外フリーランスへの委託、海外 SaaS との紛争、すべてがこの条文の射程に入る。あなたから見れば日常のネット取引でも、法律から見れば国際裁判管轄の問題で、その落差が対応を誤らせる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 管轄が生じる原因 | 3条の8:被告が管轄を争わず本案に弁論(応訴管轄) | 3条の7:当事者の事前合意(合意管轄) 3条の2:被告の住所・所在等(一般管轄) |
| 発生の時点 | 訴訟開始後、被告の本案弁論の時点 | 契約・取引段階(事前) 訴え提起の時点で客観的に存在 |
| 被告のコントロール | 被告が抗弁を出すか否かで決まる(自衛可能) | 双方の合意が必要 被告の意思と無関係に成立 |
| 覆せる手段 | 本案弁論前に管轄違いの抗弁、成立後は3条の9のみ | 書面要件不備、消費者保護規定、公序良俗違反 3条の9の特別の事情による却下 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も被告が管轄違いを抗弁せず本案に言詞弁論をすると擬制合意管轄(応訴管轄)が成立する点で日本と同型。国内・渉外を通じた発想は共通する
韓国の変論管轄も、被告が管轄違いを主張せず本案について弁論すると管轄が生じる構造で、日本の12条・3条の8と類似する
応訴管轄の母型。被告が管轄を指摘せず本案について弁論すると管轄が生じる。消費者・賃貸借等では制限がある点も日本の議論に影響している
米国では対人管轄の抗弁を初回の応答で提出しなければ放棄したものとされる。general appearance による管轄の同意は応訴管轄と機能的に近い
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- あなたが運営する EC サイトが、海外のサプライヤーと英文契約で取引していた。納品トラブルで相手を日本で訴えたい。だが契約書に管轄合意はない。ここで相手の代理人が、管轄を争わずに「品質は契約基準を満たしていた」と中身に反論してきたら、その瞬間に日本の裁判所の管轄権が確定する。相手のミスを引き出せるかが勝負
- もし、海外法人であるあなたの会社が日本の裁判所から訴状を受け取ったら、最初に何をすべきか? 答えは「中身に触れる前に、まず日本に管轄権があるかを争う」。焦って事業の正当性を主張すると、それが本案の弁論とみなされ、管轄を争う道が永久に閉じる
- 日本で外国企業を被告に訴訟提起。第一回口頭弁論で相手の代理人が出廷し、いきなり反論書面を読み上げた。管轄の抗弁は一言もなし。これで管轄権は成立。後から「やはり日本に管轄はない」と言っても、もう遅い
- あなたに残された時間は答弁書の提出期限まであと10日。海外で訴えられた日本企業として、現地弁護士に「管轄を争うべきか、中身で勝負すべきか」を今すぐ決めないと、応訴管轄が成立して撤退路が消える
取るべき行動
被害を受けた側:1. 外国企業等を日本で訴えたい場合、まず管轄合意の有無と、3条の2以下の国際裁判管轄原因(被告の所在、契約債務の履行地、不法行為地等)を確認2. 管轄原因が弱いときは、相手が応訴管轄(3条の8)で本案に応じてくれるかが鍵になるため、訴状送達後の相手の第一手を注視3. 相手が管轄を争わず本案に反論したら、その書面を管轄権の根拠として記録・主張4. ただし日本に管轄が成立しても「特別の事情」による却下(3条の9)の余地が残る点を見込んで戦略を組む
訴えられた側:1. 日本の裁判所から訴状が届いたら、中身に反論する前に、必ず「日本に国際裁判管轄があるか」を最優先で検討2. 管轄を争うなら、答弁書または最初の期日で、本案について弁論をする前に管轄違いの主張を明記する3. 本案の主張をどうしても並行して書く場合は、管轄の抗弁を先に立て、本案は予備的主張と明示する構成にする4. 日本での応訴コストと、外国での訴訟リスクを天秤にかけ、あえて応訴管轄を受け入れて日本で戦う選択肢も含めて、現地・日本双方の弁護士と検討する
時効(請求できる期限):被告が本案について弁論をし、または弁論準備手続において申述をする前に、管轄権を争う旨を述べなければならない。これを過ぎて中身に応じると応訴管轄が成立し、以後は日本の裁判所の管轄権を争えなくなる(民事訴訟法3条の8)。実務上は最初の答弁書・第一回期日が分水嶺
学説
通説:3条の8の応訴管轄は、国内土地管轄の応訴管轄(民訴12条)と同趣旨で、被告が管轄を争う機会を一度保障したうえで、その機会を使わず本案に応じた被告には禁反言と手続効率の観点から管轄権を認める。本案について弁論をする前という時点で線を引く点が要諦とされる。
改正沿革 AI による整理
- 平成23年(2011年)法律第36号、平成24年(2012年4月1日)施行 国際裁判管轄の規定(3条の2から3条の12)の新設に伴い、本条も新設された。従来は明文規定がなく判例(マレーシア航空事件最判昭和56.10.16等)の積み重ねで処理されていた国際裁判管轄について、応訴による管轄権を立法的に明文化した
改正の年表
- 1.平成23年(2011年) 新設:法律第36号により国際裁判管轄の規定(3条の2〜3条の12)が新設され、本条もその一部として新設。施行は平成24年(2012年)4月1日。従来は明文がなく判例の積み重ねで処理されていた国際裁判管轄の応訴管轄を立法的に明文化した。
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