民事再生法 第256条(特定の債権者に対する担保の供与等の罪)
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債務者が、再生手続開始の前後を問わず、特定の債権者に対する債務について、他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって債務者の義務に属せず又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをし、再生手続開始の決定が確定したときは、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
この条文の基本情報
特定の債権者に対する担保の供与等の罪とは何ですか?
定義特定の債権者に対する担保の供与等の罪とは、民事再生法第256条に定められた規定で、「債務者が、再生手続開始の前後を問わず、特定の債権者に対する債務について、他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって債務者の義務に属せ…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事再生法第256条(特定の債権者に対する担保の供与等の罪)は、日本の民事再生法に含まれる条文です。
- 民事再生法第256条の条文原文は「債務者が、再生手続開始の前後を問わず、特定の債権者に対する債務について、他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって債務者の義務に属せ…」で始まります。
- 民事再生法第256条は第十五章 罰則に置かれています。
- 民事再生法の公布日は平成11年12月22日です。
- 民事再生法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 民事再生法第256条の前の条は民事再生法第255条です。
- 民事再生法第256条の次の条は民事再生法第257条です。
- 民事再生法第256条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第256条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225 - 本サイト収録
民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第256条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/411AC0000000225/256
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事再生法256条は、他の債権者を害する目的で特定の債権者にだけ義務を超えた担保供与や弁済をする偏頗行為を、五年以下の拘禁刑または五百万円以下の罰金で処罰する。
Q · 倒産しそうなとき、世話になった取引先に先に借金を返したら罪になるの?
義務を超えた特別扱いなら偏頗行為罪になり得る
民事再生法256条により、他の債権者を害する目的で、特定の債権者にだけ「義務に属しない」または「方法・時期が義務に属しない」担保供与・弁済をすると、五年以下の拘禁刑または五百万円以下の罰金の対象になります。危険なのは期限前の繰り上げ返済、古い債務への新規担保設定、代物弁済です。期限どおりの通常弁済は原則対象外。処罰は再生手続開始の決定が確定したときに成立します。
解説
会社がもう持たない。最後に、長年支えてくれた取引先と、個人的に金を貸してくれた友人にだけは、何とか先に返しておきたい。その「義理」が、五年以下の拘禁刑になりうる。民事再生法256条は、再生手続の前後を問わず、債務者が他の債権者を害する目的で、特定の債権者にだけ担保を差し入れたり債務を消したりする行為を犯罪とする。ただし条件がある。その行為が「債務者の義務に属しない」もの、または「その方法や時期が義務に属しない」ものであること。つまり、本来の期限どおり普通に弁済する分には問題にならない。危険なのは、まだ期限の来ていない借金を繰り上げて返す、古い借金に新しく担保を付ける、現金の代わりに在庫や不動産で代物弁済する、こうした「義務を超えた特別扱い」だ。あなたが善意と義理でやった一手が、倒産後に「偏頗行為」として刑事事件になる。しかも処罰されるのは、再生手続開始の決定が確定したときである。
法的な位置づけ
民事再生法256条は偏頗行為罪を定める規定であり、債務者が再生手続開始の前後を問わず、他の債権者を害する目的で、特定の債権者に対し担保の供与または債務の消滅に関する行為をし、その行為が債務者の義務に属しない、もしくは方法・時期が義務に属しない場合を処罰対象とする。再生手続開始の決定の確定を客観的処罰条件とし、通常の期限内弁済は含まれない。
よくある質問 AI による整理
Q1偏頗弁済とは何ですか?
支払不能・倒産局面で、特定の債権者にだけ弁済や担保供与をして優遇することです。原資が限られる中で他の債権者の取り分を減らすため、否認や刑事罰の対象になり得ます。
Q2偏頗行為罪の時効は何年ですか?
長期5年の拘禁刑にあたる罪のため、公訴時効は5年です(刑訴250条2項)。本罪は再生手続開始決定の確定が処罰条件のため、起算は原則として犯罪完成時からとなります。
Q3期限前の繰り上げ返済は偏頗行為になりますか?
なり得ます。まだ期限の来ていない債務を繰り上げて返す行為は「時期が義務に属しない」典型で、害意が認められれば256条の対象です。期限どおりの弁済は原則セーフです。
Q4倒産前の担保設定は罪になりますか?
古い無担保債務に新しく担保を付ける行為は「義務に属しない担保の供与」に当たり得ます。害する目的と開始決定の確定がそろえば偏頗行為罪になります。
Q5代物弁済は偏頗行為に当たりますか?
現金の代わりに在庫や不動産で支払う代物弁済は、方法が義務に属しないとされやすく、偏頗行為に当たり得ます。特定債権者だけを優遇する形になる点が問題です。
Q6偏頗行為罪と詐欺再生罪の違いは何ですか?
詐欺再生罪(255条)は財産の隠匿・不利益処分など「財産を減らす」型、偏頗行為罪(256条)は特定債権者だけを「優遇する」型です。守る対象と手口が異なります。
Q7偏頗行為の否認とは何ですか?
民事再生法127条の3に基づき、偏頗弁済で流出した財産を再生手続の中で取り戻す制度です。256条の刑事罰と対をなす民事上の巻き戻しです。
Q8破産の場合も偏頗行為は処罰されますか?
はい。破産手続では破産法266条が同種の偏頗行為を処罰します。民事再生を取り下げて破産に移行しても、偏頗行為の刑事リスクは消えません。
この条文についての質問 AI による整理
Q1倒産しそうなとき、お世話になった取引先に先に払ったら本当に罪になるんですか?
「先に払った」だけでは直ちに罪になりません。256条が処罰するのは、債務者の義務に属しない行為、または方法や時期が義務に属しない行為です。期限どおりの通常弁済は原則セーフ、危ないのは期限前の繰り上げ返済、古い債務への新規担保設定、代物弁済です。実務のポイント:弁護士が倒産案件で最初に時系列表を作るのは、どの支払いが「期限前」だったかを洗い出すためです。支払日が一日でも期限より早ければ偏頗行為を疑われる。日付の証拠こそが、社長を守るか沈めるかの分かれ目になる
Q2他の債権者を害するつもりなんて全くなかったんですが、それでも捕まりますか?
256条は「他の債権者を害する目的」を要件とするため、純粋に事業継続のための合理的な支払いであれば、目的の認定を争えます。ただし、原資が限られた倒産局面で特定の一人に厚く払えば、客観的には他の債権者の取り分を削っており、目的が推認されやすい。実務のポイント:捜査側は「なぜその相手にだけ」を執拗に問います。親族・旧友・連帯保証がからむ相手への優先弁済は、それだけで加害目的を疑われる。逆に取引継続に不可欠な仕入先への通常弁済は、合理性を主張しやすい。誰に払ったかの属性が、目的認定を大きく左右する
Q3再生の申立てを取り下げたら、過去の支払いはなかったことになりますか?
なりません。むしろ逆で、本罪は再生手続開始決定の確定が処罰条件です。確定すれば、その前にした偏頗行為が遡って犯罪として完成します。申立てを取り下げても、すでにした特別弁済の事実は消えず、別途破産に移行すれば破産法266条の同種の罪が問題になります。実務のポイント:倒産局面の支払いは「手続が始まる前に駆け込みで処理すれば逃げ切れる」と考える経営者が多いが、これは最も危ない誤解です。否認権は手続開始前の行為にこそ及び、刑事罰も確定で遡及する。手続前の駆け込みは、証拠を自分で作っているのと同じだ
間違えやすい点 AI による整理
- 「借金を返すのは当たり前のこと、それが罪になるはずがない」と思い込んでいる人が大半だ。だが256条が狙うのは弁済そのものではなく、義務を超えた特別扱い。期限前の繰り上げ返済、古い債務への新規担保設定、現金以外での代物弁済。普通に返すのは自由でも、特定の一人を「優遇」した瞬間に線を越える。問題は弁済の有無ではなく、その方法と時期だ
- 「他の債権者を害する目的なんてなかった、ただ恩を返したかっただけ」という弁解は通りにくい。あなたから見れば純粋な恩返しでも、法律から見れば、原資が限られた倒産局面で誰か一人に厚く払う行為は、構造的に他の債権者の取り分を削っている。主観の善意と客観の加害が食い違うこの落差が、経営者を刑事被告人にする
- 「再生がうまくいかず手続が始まらなければ、何をしても罪に問われない」と考える人がいるが、これは半分しか当たっていない。256条は再生手続開始決定の確定を処罰条件とするが、確定すれば過去に遡って犯罪が成立する。今は無事でも、数か月後の確定で過去の一手が立件される。時限装置を仕掛けて放置しているのと同じだ
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 手口の型 | 256条 偏頗行為罪:特定の債権者だけを優遇(担保供与・債務消滅) | 255条 詐欺再生罪:財産の隠匿・不利益処分など財産減少型 127条の3偏頗行為否認:民事上の巻き戻し(財産回収) |
| 法的性質 | 刑事罰(債務者個人を処罰) | 刑事罰(債務者個人を処罰) 民事の否認権(管財人・監督委員が行使) |
| 成立の鍵 | 義務を超えた行為+害する目的+開始決定の確定 | 財産の隠匿・仮装譲渡等+害する目的+開始決定の確定 支払不能後等の偏頗行為(主観要件は刑事より緩やか) |
| 効果 | 五年以下の拘禁刑または五百万円以下の罰金(併科可) | 十年以下の拘禁刑または一千万円以下の罰金(併科可) 流出財産を配当原資に戻す |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は倒産犯罪を破産法に置き、詐欺破産罪・過怠破産罪で財産隠匿や偏頗的処分を捕捉する。刑法本体ではなく倒産手続法に罰則を置く構造は日本と近い。
韓国は債務者回生・破産法にパラン犯罪を一括して規定し、偏頗弁済型の行為も同法の罰則で捕捉する。手続法統合型で日本の別法体系とは立法形式が異なる。
ドイツは刑法典に『債権者優遇罪』を明文で置き、支払不能を知りつつ特定債権者に義務なき担保・弁済を与える行為を処罰する。日本256条の最も直接的な母法的対応。
米国は偏頗行為を原則として民事の否認(preference avoidance)で処理し、刑事罰は財産隠匿型(18 U.S.C. § 152)が中心。偏頗弁済そのものの刑事罰は日独より弱い。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 資金繰りが詰まった町工場の社長が、メインバンクへの返済より先に、無担保で金を貸してくれた古い友人に全額返した。その後民事再生を申し立て、開始決定が確定。友人だけを救ったこの一手が、他の債権者を害する目的での偏頗行為と見られる。善意が証拠になる典型例
- 倒産が見えてきた飲食チェーンが、長年世話になった食材卸に対し、まだ支払期限前の代金を繰り上げて支払い、さらに店舗設備に担保まで設定した。期限前弁済も新規担保設定も「義務に属しない」行為。この二つが重なると256条のど真ん中に入る
- もし、あなたが取引先の社長で、相手から「倒産前に、あなたの債権だけは特別に担保を付けておく」と持ちかけられたら? 受け取った側のあなたも、事情を知っていれば共犯や否認のリスクを背負う。差し出された親切は、後で全部巻き戻される
- 再生を申し立てた経営者のもとに、あと数日で開始決定が確定するという通知が届く。確定した瞬間、半年前にやった「友人への繰り上げ返済」が処罰条件を満たし、過去に遡って犯罪が完成する。確定前と確定後で、同じ行為の法的意味が反転する
取るべき行動
被害を受けた側:1. あなたが他の債権者で、特定の一社だけが倒産直前に弁済や担保設定を受けたと気づいたら、その時期・方法・金額を記録し証拠化する2. 再生手続中なら監督委員・管財人に情報提供し、127条の3の偏頗行為否認の行使を促す。否認が通れば財産が配当原資に戻る3. 害する目的が明白な悪質事案は、256条違反として刑事告発も選択肢。ただし立証のハードルは高い4. 民事の否認と刑事告発は別軌道、否認で回収しつつ刑事で圧力をかける二段構えが現実的
訴えられた側:1. まず弁護人を立て、問題の支払いが「債務者の義務に属する通常弁済」だったかを検証する。期限どおりの弁済なら構成要件を外れる余地が大きい2. 「他の債権者を害する目的」を争点化する。資金繰り維持や事業継続のための合理的支払いであれば、加害目的の認定を覆せる可能性がある3. 繰り上げ・新規担保・代物弁済をしてしまった場合は、その経緯と必要性を客観資料で固める4. 再生手続開始決定が確定する前後で法的意味が変わるため、確定前なら弁護士と支払いの巻き戻しや是正も検討
時効(請求できる期限):公訴時効は5年(刑事訴訟法250条2項、長期5年の拘禁刑にあたる罪)。本罪は再生手続開始決定の確定が処罰条件であるため、時効の起算は原則として確定により犯罪が完成した時から進行する(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:通説は、256条の偏頗行為罪について、通常の期限内弁済は構成要件に該当せず、義務を超えた担保供与・期限前弁済・代物弁済等が処罰対象になると解する。『他の債権者を害する目的』と客観的処罰条件(開始決定の確定)を要する点で、民事の偏頗否認(127条の3)と役割を分担する。
改正沿革 AI による整理
- 令和4年(2022年)公布、令和7年(2025年6月1日)施行 刑法における懲役・禁錮の拘禁刑への統合に伴い、法定刑の「懲役」を「拘禁刑」に改めた。罰金500万円以下との選択・併科の構造は維持
改正の年表
- 1.平成11年(1999年) 新設:民事再生法の制定に伴い、再生手続における倒産犯罪の一類型として偏頗行為罪を新設。財産減少型の詐欺再生罪と並び、債権者平等を刑事面から担保する規定として置かれた。
- 2.令和4年(2022年) 改正:刑法における懲役・禁錮の拘禁刑への統合に伴い、法定刑の『懲役』を『拘禁刑』に改めた(令和7年6月1日施行)。罰金五百万円以下との選択・併科の構造は維持。
- 民事再生法 第255条詐欺再生罪、財産隠匿型の倒産犯罪との対比
- 民事再生法 第127条詐害行為の否認、民事上の巻き戻しの一般規定
- 民事再生法 第127条の3偏頗行為の否認、本罪の民事上の双子規定
- 破産法 第266条破産手続における同種の偏頗行為処罰の特則
- 会社更生法 第267条更生手続における同種の偏頗行為処罰の特則(現行効力を要確認)
- 民法 第424条詐害行為取消権、債権者を害する行為の民事的取消
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