要点商法 739 条は、運送人が発航当時に船舶の堪航能力を欠いたことで生じた運送品の滅失・損傷・延着の損害賠償責任を定める。注意を怠らなかったと証明できれば免責されるが、この責任を免除・軽減する特約は無効である。
Q · 契約書に「堪航能力について運送人は責任を負わない」と書いてあったら、もう損害賠償は請求できないの?
請求できます。その特約は商法 739 条 2 項で無効です
請求できます。商法 739 条は、運送人が発航当時に船舶の堪航能力(船体・船員と艤装・船倉や冷蔵室の状態)を欠いたことで生じた運送品の滅失・損傷・延着について損害賠償責任を負うと定めます。しかも 2 項は、この責任を免除・軽減する特約を無効としています。契約書に「堪航能力不担保」と書かれ署名していても、その一文は効力を持ちません。さらに 1 項但書により、運送人が「注意を怠らなかった」ことを証明できなければ責任を免れず、立証の重荷は荷主ではなく運送人側にあります。
あなたが輸入した冷蔵コンテナの海産物が、到着時に全部傷んでいた。船会社は「うちの船に問題はなかった」の一点張りで取り合わない。ここで多くの荷主が引き下がるが、それは商法739条を知らないからだ。この条文は、運送品の滅失・損傷・延着が、出航時に「船を航海に堪える状態に置いたか」「船員の乗組み・船舶の艤装・需品の補給を適切にしたか」「船倉や冷蔵室を貨物の保存に適した状態に置いたか」のいずれかを欠いたことで生じた場合、運送人が賠償責任を負うと定める。決定的なのは但書だ。運送人が「自分は注意を怠らなかった」と証明できなければ、責任を免れない。立証の重荷を背負うのは船会社の側であって、あなたではない。さらに2項で、この責任を免除・軽減する特約は無効とされる。契約書に「堪航能力について運送人は責任を負わない」と書いてあっても、その一文は紙くずだ。
商法 739 条は海上運送における堪航能力担保義務を定める規定であり、運送人は発航の当時に船舶を航海に堪える状態に置き、船員の乗組み・艤装・需品の補給を適切に行い、船倉や冷蔵室を運送品の保存に適する状態に置く注意義務を負う。これを欠いて生じた運送品の滅失・損傷・延着について損害賠償責任を負うが、注意を怠らなかったことを証明すれば免責される過失責任であり、当該責任を免除・軽減する特約は無効とされる。
船舶が安全に航海できる能力のことです。商法 739 条は、船体を航海に堪える状態に置くこと、船員の乗組み・艤装・需品補給を適切に行うこと、船倉や冷蔵室を運送品の保存に適する状態に置くことの 3 つを内容とします。
堪航能力の判断基準時は「発航の当時」、つまり出航の時点です。航海中に生じた事情ではなく、出航時に船を安全な状態に置いたかが問われます。出航後の海象悪化などは別の免責事由で判断されます。
運送人の責任は、原則として荷受人が運送品を受け取った日から 1 年で消滅します(商法 585 条)。堪航能力違反が明白でも、期間を過ぎると権利そのものが時間切れになります。当事者の合意で延長は可能です。
平成 30 年改正(2019 年 4 月施行)で、堪航能力担保義務は無過失責任から、運送人が注意を怠らなかったと証明すれば免責される過失責任へ転換しました。国際基準(ヘーグ・ヴィスビー・ルール)との整合が目的です。
出航前の船体検査記録、船級協会の証書、船員配乗表、設備や冷蔵室の点検ログなどです。これらで「注意を怠らなかった」ことを示せれば、運送人は責任を免れます。記録の有無が結論を分けます。
認められるとは限りません。堪航能力の欠如と損害との間に因果関係があることが前提です。設備の不備と貨物の損傷が結びつかなければ、損傷が事実でも責任は問えず、この因果の橋が架からず敗れる例もあります。
適用されます。商法 739 条は運送人一般の義務で、個品運送契約にも及びます。なお個品運送の船積み等の規律は商法 737 条が、賠償範囲の限度などは別途の規定が関係します。
P&I 保険の保険金支払いや求償は堪航能力義務と深く結びつきます。運送人が点検記録の管理を徹底しているほど、事故後の保険金支払いと求償が円滑に進みます。日々の点検ログが保険金の生死を分けます。
逆です。商法739条1項は、堪航能力の欠如による損害について、運送人が「注意を怠らなかった」ことを証明できなければ責任を負うと定めています。つまり立証の重荷は運送人側にあり、荷主が運送人の過失を立証する必要はありません。業界裏話ヒント:多くの荷主がこの構造を知らずに「証拠がないから無理」と諦めます。だが運送人側こそ点検記録で無過失を示せなければ負ける。交渉の初手でこの立証責任の所在を突けるかどうかで、結果が大きく変わる
できます。商法739条2項は、堪航能力の注意義務に基づく責任を免除・軽減する特約を無効としています。契約書に署名していても、その条項自体が効力を持ちません。業界裏話ヒント:海上運送の約款には責任制限条項が当たり前のように並んでいますが、堪航能力に関する免責だけは別格で無効です。約款全体が有効に見えても、この一点は崩せる。約款のボリュームに気圧されて諦める前に、堪航能力条項だけは切り出して争う価値がある
枠組みは似ていますが、適用される法律が違います。国内の海上運送は商法739条、外国との間の国際海上運送は国際海上物品運送法5条が堪航能力の注意義務を定めます。どちらも運送人に注意義務を課す点は共通です。業界裏話ヒント:国際海上物品運送法はヘーグ・ヴィスビー・ルールという国際条約を国内法化したもので、責任限度額の計算方法などに独自の細かい規律があります。国際輸送のトラブルで商法だけを見て交渉すると、適用法を取り違えて主張が空振りする
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 責任の根拠 | 商法 739 条:堪航能力担保義務(発航当時の船舶・船員・船倉の状態) | — |
| 適用範囲 | 国内の海上物品運送 | — |
| 立証責任 | 運送人が「注意を怠らなかった」ことを証明(但書) | — |
| 免責特約の効力 | 免除・軽減特約は 2 項で無効 | — |
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