要点商法 750 条は、航海傭船の傭船者が運送品を全部積んでいなくても船長に発航を請求できると定める。ただし運送賃は全額を支払い、積み残しで生じた費用と担保も負担する。
Q · 船にまだ半分しか積んでいなくても、傭船者は「今すぐ出航しろ」と命令できるの?
できる。ただし運賃は満載分を全額払い、担保も必要
商法 750 条 1 項により、航海傭船の傭船者は運送品の全部を積んでいなくても船長に発航を請求できます。ただし発航を請求した瞬間、運送賃の全額(積めなかった分も満載扱い)に加え、全部を船積みしなかったことで生じた費用を支払う義務を負い、さらにその費用について相当の担保を差し入れる必要があります(同条 2 項)。速さを得る代わりに、満額運賃・追加費用・担保という三重の負担が発生します。
あなたが商社の海上輸送担当で、船を一隻まるごと借り切る航海傭船契約を結んだとする。市況が急騰し、相手国の買い手が「相場が崩れる前に一日でも早く着けてくれ」と言ってきた。だが倉庫からの貨物は、まだ船倉の半分しか積めていない。普通なら満載まで待つしかないと思うだろう。違う。750条は、傭船者は運送品の全部を船積みしていなくても、船長に対して「今すぐ発航せよ」と請求できると定める。船を動かす主導権は、船主ではなくあなたの側にある。ただし代償がある。発航を請求した瞬間、あなたは運送賃の全額(積めなかった分も満載扱い)に加え、全部を積まなかったことで生じた費用を払う義務を負い、しかもその費用の支払について相当の担保まで差し入れなければならない。速さは買える。値札がこの条文に書いてある。
商法 750 条は、航海傭船契約における傭船者の発航請求権を定める規定である。傭船者は運送品の全部を船積みしていない場合でも船長に発航を請求でき、その効果として運送賃全額の支払義務、全部を船積みしないことで生じた費用の負担、および当該費用についての相当な担保の提供義務を負う。
AI 輔助整理,以條文原文為準
船舶の全部または一部を一定の航海のために借り切る運送契約です。船腹を貸す船主と借りる傭船者の間で結ばれ、商法 748 条以下が規律します。発航請求権はこの航海傭船に固有の規律です。
発航前に限り行使できます。船がいったん出航した後は対象外で、積み残しのまま出すか満載を待つかを決められる最後のタイミングが発航直前です。
航海傭船は特定の航海単位で船腹を借り、定期傭船は一定期間にわたり船舶と船員ごと借ります。発航請求権は航海傭船に関する規律です。
約定した停泊期間を超えて船を停泊させた場合に傭船者が支払う割増料金です。発航請求はこの滞船料の累積と満額運賃+費用を比較して判断します。
傭船者は船腹を借りる契約当事者、荷送人は運送品の運送を委託する者です。航海傭船では同一人のことも多いですが、概念上は区別されます。
平成 30 年(2018 年)に改正され、2019 年 4 月 1 日に施行されました。明治以来の文語体が現代語化され、海上運送の規律が個品運送と航海傭船に整理されました。
国際海上物品運送には国際海上物品運送法が特則として優先適用され、同法に定めのない事項について商法が補充的に適用されます。
運送賃の全額です。実際に積んだ量ではなく満載を前提とした全額を支払う義務を負います(商法 750 条 2 項)。
短期的には割高に見えます。でも満載を待つ間の滞船料や、買い手との納期遅れによる値崩れ・違約が運賃の上乗せを超えるなら、出した方が得です。750条2項の満額運賃+積み残し費用は「時間を買う対価」と理解すべきです。業界裏話ヒント:実務では発航請求を単独で使うより、滞船料条項(demurrage)と並べて損得を比較します。契約段階で滞船料の単価を低めに交渉しておくと、待つ選択肢が安くなり、発航請求を切らずに済む余地が広がる
750条1項は傭船者に発航請求権を認めているので、2項の条件(運賃全額・費用・担保)を満たせば、船主は原則として拒めません。不当な拒否は債務不履行の問題になり得ます。業界裏話ヒント:もっとも、堪航性や積付けの安定性といった安全に関わる出航判断は別問題で、船長の専門的判断が優先される場面があります。「商売上の待て」と「安全上の待て」は法的な扱いが違うので、拒否理由がどちらなのかをまず確認するのが交渉の起点になる
金額は「積み残しで生じる費用」をカバーできる水準が目安で、現金の保証金、銀行保証状、保険などが使われます。750条2項が担保提供を明文で義務づけているので、口約束では足りません。業界裏話ヒント:担保の「相当性」は争いになりやすい論点です。発航を急ぐ側は、請求と同時に担保を提示してしまうのが鉄則。後出しにすると船主に「担保が不十分だから出せない」という遅延の口実を与え、せっかくの発航請求権が時間切れになりかねない
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 規律する場面 | 750 条:積み残しのまま発航を請求する | — |
| 主導権を持つ側 | 傭船者(出航を早める) | — |
| 金銭的効果 | 運送賃全額+積み残し費用+相当の担保 | — |
| 行使のタイミング | 発航前 | — |
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