刑事訴訟法 第400条
クイックジャンプ
前二条に規定する理由以外の理由によつて原判決を破棄するときは、判決で、事件を原裁判所に差し戻し、又は原裁判所と同等の他の裁判所に移送しなければならない。但し、控訴裁判所は、訴訟記録並びに原裁判所及び控訴裁判所において取り調べた証拠によつて、直ちに判決をすることができるものと認めるときは、被告事件について更に判決をすることができる。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 刑事訴訟法第400条は、日本の刑事訴訟法に含まれる条文です。
- 刑事訴訟法第400条の条文原文は「前二条に規定する理由以外の理由によつて原判決を破棄するときは、判決で、事件を原裁判所に差し戻し、又は原裁判所と同等の他の裁判所に移送しなければならない。但し、控…」で始まります。
- 刑事訴訟法第400条は第二章に置かれています。
- 刑事訴訟法の公布日は昭和23年7月10日です。
- 刑事訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年9月5日時点では廃止情報はありません。
- 刑事訴訟法第400条の前の条は刑事訴訟法第399条です。
- 刑事訴訟法第400条の次の条は刑事訴訟法第401条です。
- 刑事訴訟法第400条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第400条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131 - 本サイト収録
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第400条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年9月5日)https://lawplayer.com/jp/article/323AC0000000131/400
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点刑事訴訟法400条は、控訴審が原判決を破棄したとき原則として原裁判所へ差し戻すと定める。ただし記録と証拠で直ちに判決できる場合は自判(破棄自判)が許される。
Q · 控訴審で第一審判決が破棄されたら、もう一度第一審からやり直せるの?
差戻しなら第一審をやり直せ、自判なら残るのは上告のみ
刑事訴訟法400条により、管轄違い・公訴受理以外の理由で控訴審が原判決を破棄するときは、原則として事件を原裁判所に差し戻すか同等の他裁判所に移送します(本文)。この場合は第一審から事実を争い直せます。ただし但書により、控訴裁判所が訴訟記録と取り調べた証拠で直ちに判決できると認めるときは、自ら判決(破棄自判)できます。自判されると残る不服申立ては上告のみとなり、しかも上告は法令違反など狭い理由に限られるため、事実を争える審級が一つ失われます。
解説
控訴審であなたの第一審判決が破棄された瞬間、運命は二つに分かれる。一つは事件が原裁判所に差し戻され、第一審をもう一度やり直す道(破棄差戻し)。もう一つは控訴裁判所がその場で自ら有罪・無罪を言い渡す道(破棄自判)。400条はこの分岐を定める。本文は「差戻し・移送が原則」と言い、但書は「記録と取り調べた証拠で直ちに判決できると認めるときは自判できる」と例外を開く。この違いはあなたにとって決定的だ。差し戻されれば第一審から事実を争い直せるが、自判されれば残る不服申立ては上告だけ。しかも上告は法令違反など狭い理由しか通らない。控訴審が「直ちに判決できる」と判断するかどうかで、あなたが事実を争える審級が一つ消えるか残るかが決まる。
法的な位置づけ
刑事訴訟法400条は、控訴審が管轄違い・公訴受理以外の理由で原判決を破棄した場合の処理を定める規定である。本文は事件を原裁判所へ差し戻し又は同等の他裁判所へ移送することを原則とし、但書は控訴裁判所が訴訟記録および取り調べた証拠により直ちに判決できると認めるときに自ら判決(破棄自判)できる例外を置く。控訴審の事後審性を前提に、原則差戻し・例外自判という配分を採る。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.控訴趣意書で求める結論を決める 控訴を申し立てる段階で、「破棄差戻し」を求めるのか「破棄自判による無罪・減刑」を求めるのかを意識的に選ぶ。事実を争い切る必要があれば差戻し、無罪の確信があれば自判を狙う方針を弁護人と最初に握る
- 2.自判を狙うなら控訴審で事実取調べを請求 破棄自判による有利判決を狙う場合、控訴審で事実の取調べを請求し(刑訴393条)、控訴裁判所が「直ちに判決できる」状態を自ら作り出す。逆に差戻しを狙うなら第一審の審理不尽を強調する
- 3.不利益な自判を阻止する場合は直接主義を主張 第一審無罪を破棄して有罪自判されそうなときは、被告人質問・証人尋問を経ない自判は直接主義に反すると主張し、差戻しに持ち込む(最大判昭和31.7.18の趣旨)
- 4.判決主文を聞き分け、14日以内に上告判断 判決宣告では「差し戻す」か「被告人を○○に処する」かの一語を聞き分ける。自判で不利益判決が出たら、宣告翌日から14日以内に上告を申し立て、直接主義違反・訴訟手続の法令違反を争う
よくある質問 AI による整理
Q1破棄差戻しとは何ですか?
控訴審が原判決を破棄し、事件を第一審へ差し戻して審理をやり直させることです。刑事訴訟法400条本文が原則とし、被告人は事実を再び争えます。
Q2破棄自判とは何ですか?
控訴審が原判決を破棄し、差し戻さずに自ら有罪・無罪などの判決をすることです。刑訴400条但書の例外で、残る不服申立ては上告のみとなります。
Q3破棄差戻しと破棄自判の違いは?
差戻しは第一審で事実を争い直せますが、自判は事実審が一つ消え上告しか残りません。控訴審が「直ちに判決できる」と認めるかで分かれます。
Q4控訴審はどんなときに自判できますか?
訴訟記録と原審・控訴審で取り調べた証拠により、直ちに判決できると認めるときです(刑訴400条但書)。事実審理を尽くす必要がない場合に限られます。
Q5破棄自判は被告人に有利ですか?
減刑や無罪なら有利ですが、第一審無罪を破棄して有罪自判される場合は不利です。事実審の機会を一つ失うため、直接主義の観点から制約が議論されます。
Q6差し戻されたら一から裁判をやり直すのですか?
原則は第一審からの審理ですが、適法な手続部分は引き継がれ、破棄理由を中心に審理し直します。時間と費用はかかりますが、争う機会が戻ります。
Q7破棄自判の判決に不服があるときはどうしますか?
上告できます。ただし上告期間は判決宣告の翌日から14日で、理由も憲法違反・判例違反など狭く限られます(刑訴405条)。
Q8裁判員裁判の判決も控訴審が自判で覆せますか?
理論上は可能ですが、最高裁は控訴審の事後審性を強調し、裁判員の事実認定を安易に覆すべきでないとしています(最判平成24.2.13)。
この条文についての質問 AI による整理
Q1控訴審で無罪になったら、もう確定で終わりですよね?
終わりとは限りません。控訴審が破棄自判で無罪にしても、検察官が上告できます(刑事訴訟法405条の理由があれば)。上告期間14日が過ぎて初めて確定します。差戻しならさらに第一審からやり直しです。実務のポイント:自判による無罪は、控訴審が自ら証拠を取り調べて事実認定した「重い無罪」なので、検察が上告しても覆りにくい。だから弁護側は、ただ無罪を取るのではなく『控訴審に自判させて無罪を取る』ことを狙う。同じ無罪でも確定への距離がまるで違う
Q2差し戻されたら、また一から裁判をやり直すんですか? 地獄じゃないですか。
原則は第一審からやり直しですが、すべてゼロではありません。差戻し前の手続のうち適法な部分は引き継がれ、破棄の理由となった部分を中心に審理し直します(差戻審)。時間も費用もかかるのは事実です。実務のポイント:差戻しは負けに見えて、被告人にはチャンスでもある。事実審をもう一度フルに使えるからだ。一度目で詰め切れなかった証拠調べや証人尋問を差戻審で改めて請求できる。『差し戻された=振り出し』ではなく『もう一回打席が回ってきた』と捉えるかで、弁護戦略がまるで変わる
間違えやすい点 AI による整理
- 控訴審で勝てば終わり、と思われがちだが、勝ち方が問題だ。差戻しで勝つのと自判で勝つのでは、相手方(検察官)の上告に対する防御力が違う。控訴審が自ら証拠を取り調べて出した自判の無罪は、上告審で覆されにくい。同じ無罪でも「どう勝ったか」が確定への距離を決める
- 「控訴審は第一審のやり直し」という前提そのものが誤っている。刑事の控訴審は事後審で、原則は第一審の記録と判断を点検する審級にすぎない。だから400条は「差戻しが原則、自判が例外」と組み立てられている。控訴審で新証拠を大量に出せば逆転できる、という発想が審級構造を読み違えている
- 破棄自判は被告人に有利、と思われることがあるが逆もある。第一審無罪を破棄して自判で有罪にされると、被告人は事実審理を受ける機会を一つ失う。最高裁は、被告人に不利益な自判には直接主義の観点から一定の制約があるとしてきた(最大判昭和31.7.18)
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 破棄後の処理 | 刑訴400条:原則差戻し・移送、但書で自判 | 刑訴398条:管轄違いを理由とする破棄→移送 刑訴399条:公訴受理を理由とする破棄→移送 |
| 破棄理由 | 前二条(管轄違い・公訴受理)以外の一般的破棄理由 | 原審が管轄違いの判断を誤ったこと 原審が公訴受理の判断を誤ったこと |
| 自判の可否 | 記録と証拠で直ちに判決できると認めれば自判可 | 原則として移送(自判の余地は限定的) 原則として移送(自判の余地は限定的) |
| 審級 | 控訴審(事後審)が第一審判決を破棄する場面 | 控訴審 控訴審 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾の第二審は控訴審に相当し、上訴に理由があるときは原判決を撤銷して自為判決するのが原則で、管轄錯誤等の場合に限り発回し得る点が日本と配分が逆に近い
韓国の항소심も破棄の際に환송(差戻し)と自判の枠組みを持つ。事後審的運用と差戻しの位置づけは日本と類似する
ドイツの Revision では、上告審が自ら判決できる場合(§ 354 Abs.1)と原審へ差し戻す場合(Abs.2)を分ける。事実審理を要するかで切り替える点は日本の但書と発想が近い
米国の上訴審は判決の維持・修正・破棄差戻しの広い権限を持つ。harmless error 法理により差戻しの要否が判断される
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 第一審で無罪を勝ち取ったのに、検察官が控訴した。もし控訴審があなたの無罪を破棄して、その場で有罪を言い渡したら? あなたは事実審で争う機会を一度も得られないまま、上告するしかなくなる。破棄自判が被告人に不利益に働く典型がこれだ
- 控訴審判決の言渡しが来週。差戻しか自判か、弁護人はどちらを想定して上告準備を始めるべきか。主文が宣告された瞬間から上告期間(14日)が走り出す
- 第一審で量刑不当を主張して控訴したら、控訴審が破棄して自判で減刑した。あなたは満足だが、ここで効いてくるのは、控訴審が自判した以上その量刑判断は上告審で覆りにくいということ。差戻しと違い、もう一度第一審の裁量に賭ける道は閉じている
取るべき行動
被害を受けた側:1. 控訴を決めたら、控訴趣意書で「破棄差戻し」を求めるのか「破棄自判による無罪・減刑」を求めるのかを明確に主張する。2. 自判を狙うなら、控訴審で事実の取調べを請求し(刑事訴訟法393条)、控訴裁判所が「直ちに判決できる」状態を自ら作る。3. 逆に差戻しを狙うなら、第一審の審理不尽や事実認定の構造的欠陥を強調する。4. 判決後の上告期間は14日、主文が差戻しか自判かで上告の要否を即座に判断する
訴えられた側:1. 第一審で有利な判決(特に無罪)を得た後、相手方の控訴で破棄されそうなら、最優先は「自判による不利益判決」の阻止。2. 控訴審で被告人質問・証人尋問を経ない自判は直接主義に反すると主張し、差戻しに持ち込む(最大判昭和31.7.18の趣旨)。3. 裁判員裁判の第一審なら、事後審の控訴裁判所が事実認定を覆すハードルの高さを主張する(最判平成24.2.13)。4. 万一自判で不利益判決が出たら、上告(14日以内)で直接主義違反・訴訟手続の法令違反を争う
時効(請求できる期限):400条自体に期間の定めはない。ただし控訴審判決の宣告後、上告の申立ては14日以内(刑事訴訟法414条による373条準用、宣告の日の翌日起算)。差戻しを受けた原裁判所での再審理に法定の期限はないが、勾留中の被告人は身柄拘束が続くため、迅速な再審理が実務上の焦点になる。(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:刑事控訴審は事後審であり、第一審の記録と判断を点検する審級にすぎない。したがって400条は『原則差戻し・例外自判』として組み立てられ、但書の自判は事実審理を尽くす必要がない場合に限定される。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和23年(1948年) 新設:現行刑事訴訟法の制定に伴い、控訴審の事後審構造を前提として破棄差戻しを原則・破棄自判を例外とする本条が置かれた。
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める