要点厚生年金保険法 76 条は、被保険者を故意に死亡させた者に遺族厚生年金を支給しないと定める。刑事処分は要件とされず、過失による死亡は文言に含まれない。
Q · 配偶者を死なせてしまった場合、遺族厚生年金は受け取れないのですか?
故意なら不支給、過失なら受け取れます
厚生年金保険法 76 条 1 項は、被保険者又は被保険者であった者を故意に死亡させた者に遺族厚生年金を支給しないと定めます。死亡前に、受給権者となるべき者を故意に死亡させた者も同様です。2 項では、受給権者が他の受給権者を故意に死亡させたときに受給権が消滅します。条文は「故意」だけを要件としており、有罪判決を要求していないため、不起訴でも実施機関が独自に故意を認定すれば不支給はありえます。逆に過失による死亡は文言に含まれません。
配偶者を亡くした人に支払われる遺族厚生年金には、たった一箇所だけ、絶対に開かない扉がある。故意にその人を死亡させた者には支給しない。多くの人が見落とすのは、この条文が刑事裁判の結果を一言も要求していない点だ。民法891条の相続欠格は「刑に処せられた者」を要件にするから、不起訴や無罪なら相続はできる。ところが厚生年金保険法76条にはその縛りがない。実施機関が独自に故意を認定すれば、刑事手続がどう転んでも支給は止まりうる。逆方向も同じで、条文が閉ざすのは「死亡させた者」の扉だけ。過失で死亡させた場合、たとえばあなたの運転する車の事故で配偶者を失った場合は、この条文の射程の外にある。さらに2項は、遺族どうしの間にも同じ刃を向ける。受給権者が他の受給権者を故意に死亡させれば、殺した側の受給権はその時点で消滅する。
厚生年金保険法 76 条は、遺族厚生年金の支給制限を定める規定である。1 項は、被保険者又は被保険者であった者を故意に死亡させた者、及びその死亡前に受給権者となるべき者を故意に死亡させた者を支給対象から除外する。2 項は、受給権者が他の受給権者を故意に死亡させた場合に、その受給権が消滅すると定める。有罪判決の存在は要件とされていない。
厚生年金保険法 76 条により、被保険者を故意に死亡させた者には遺族厚生年金が支給されない制度です。全部不支給であり、情状による減額という仕組みはありません。
受け取れません。配偶者を故意に死亡させた者に当たり、76 条 1 項前段が正面から適用される最も典型的な場面です。刑事の量刑が軽くても結論は変わりません。
社会保険審査官への審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から 3 か月以内です。期間を過ぎると、内容の当否を問う入口そのものが閉じます。
傷害の故意はあっても死亡そのものへの故意がない類型で、実務上解釈が分かれます。刑事記録上、死の結果への認識がどう位置づけられたかが争点の中心になります。
76 条 2 項により、殺した側の受給権のみが消滅します。他の受給権者の権利は残り、同順位者の人数が変わることで一人あたりの年金額が変動しうります。
あります。国民年金法 71 条が同旨の支給制限を定めており、二階建て年金の一階部分でも故意に死亡させた者は排除されます。一階と二階が同時に止まる構造です。
実施機関(日本年金機構等)です。裁判所ではありません。条文が刑事処分を要件にしていないため、刑事手続の結論を待たずに年金側の判断が先に出ることがあります。
審査請求・再審査請求・取消訴訟で処分が取り消されれば支給されます。刑事で無罪や不起訴になったから自動的に復活するという仕組みは条文にありません。
受け取れる。76条が排除するのは「故意に死亡させた者」だけで、過失は含まれない。自動車運転死傷行為処罰法で実刑を受けても、遺族厚生年金の受給資格は別問題として残る。業界裏話ヒント:年金は出るが保険は出ないというねじれが起きる。任意保険の対人賠償には父母・配偶者・子への賠償を免責とする親族間免責条項がほぼ必ず入っており、自分の運転で家族を死なせた場合の賠償金は対象外になる。年金と保険を同じ発想で見積もると資金計画が崩れる。
制度上はありうる。76条は刑事処分を要件に書いておらず、実施機関が独自に故意を認定できる。相続欠格(民法891条)が「刑に処せられた者」を要件にするのと対照的である。業界裏話ヒント:不起訴には嫌疑なし、嫌疑不十分、起訴猶予がある。起訴猶予は故意を前提に起訴しない判断なので、年金側では不利に働く。被疑者は不起訴処分の告知を請求でき(刑事訴訟法259条)、どの類型かを押さえられるかで審査請求の組み立てが変わる。
条文の文言は「死亡させた者」であり、未遂を含まないと読むのが素直である。一方、相続欠格(民法891条1号)は「死亡させようとしたために刑に処せられた者」も欠格とする。年金は受け取れるのに相続はできない、という逆転が起こりうる。ただし実務上、解釈が分かれうる領域である。業界裏話ヒント:この文言差は偶然ではなく、年金給付が「その死によって生じた保険事故」を対象にする原理に立つためで、争いになれば条文の文言差を最初に指摘できるかが分かれ目になる。
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 制限の対象 | 厚年法 76 条:遺族厚生年金の支給・受給権 | — |
| 発動事由 | 被保険者等または他の受給権者を故意に死亡させたこと | — |
| 効果の強さ | 全部不支給または受給権の消滅(減額という選択肢がない) | — |
| 刑事処分との関係 | 刑事処分は要件でなく、実施機関が独自に故意を認定できる | — |
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