要点厚生年金保険法 84 条は、事業主が給与から控除できるのは原則として前月分の保険料と定める。退職などで資格を喪失する月に限り、前月分とその月の分を合わせて控除できる。
Q · 退職した月の給料から厚生年金が二か月分引かれていたけど、これって間違いじゃないの?
退職月に二か月分を控除するのは 84 条が認めた正規の処理です
厚生年金保険法 84 条 1 項は、事業主が報酬から控除できる保険料を原則として被保険者負担分の前月分に限定していますが、括弧書きで、被保険者がその事業所に使用されなくなった場合には前月分とその月の分をまとめて控除できると定めています。月末退職だと資格喪失日が翌月 1 日になり退職月も被保険者期間に入るため、最後の給与で二か月分が控除されます。3 項により、事業主は控除に関する計算書を作成し、控除額を本人に通知する義務を負います。
退職した月の最後の給与明細を見て、厚生年金保険料が二か月分引かれていた。計算ミスではない。厚生年金保険法84条1項がそれを正面から認めている。この条文の本体は「被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料を報酬から控除することができる」という一行だ。つまり事業主が今月の給与から差し引けるのは原則として前月分の保険料であって、当月分ではない。ところが退職、法律の言葉でいう資格喪失の場面だけは括弧書きで例外が立ち、前月分とその月の分をまとめて控除できる。さらに3項は、控除したら計算書を作って本人に通知しなければならないと事業主に義務を課している。あなたが給与明細の控除欄の根拠を尋ねる行為は、遠慮すべきクレームではなく、条文が最初から予定していた手続である。
厚生年金保険法 84 条は保険料の源泉控除を定める規定であり、事業主が報酬から控除できるのは原則として被保険者が負担すべき前月分の保険料に限られる。被保険者が使用されなくなった場合は前月分とその月の分を、賞与については標準賞与額に係る保険料を控除でき、控除の際は計算書の作成と被保険者への通知が義務づけられる。
事業主が給与を支払う際、被保険者が負担すべき保険料をあらかじめ差し引く仕組みです。厚生年金保険法 84 条が事業主にこの控除権限を与えています。
84 条 1 項の原則は前月分の控除です。当月分を入社初月から控除する運用を採る会社もありますが、その適法性は実務上、解釈が分かれています。
保険料率は 18.3% で固定され、労使が折半するため本人負担は 9.15% です。明細に載る金額と同額を会社がもう一枚負担しています。
納付義務は 82 条で事業主にあり、控除とは別の話です。資格取得の届出がなされていれば被保険者記録は原則として保護されます。
84 条 3 項が計算書の作成と控除額の通知を事業主に義務づけています。実務では給与明細の内訳表示で足りるとされています。
所定の申出により保険料が免除される制度があり、免除期間は 84 条の控除対象そのものが発生しません。免除には事業主の届出が必要です。
過大控除分は賃金請求権として事業主に返還を求められます。保険料の徴収・還付を受ける権利は 92 条により 2 年で時効消滅します。
可能ですが実務上ハードルが上がります。賃金台帳の保存期間(労働基準法 109 条、当分の間 3 年)を過ぎると資料自体が残りません。
84条1項の括弧書きが認めた正規の処理である。月末退職だと資格喪失日が翌月1日になり退職月も被保険者期間に入るため、前月分とその月の分をまとめて控除できる。業界裏話ヒント:月末の前日に退職すれば退職月の厚生年金保険料は発生しないが、その月は国民年金を自分で払うことになり、厚生年金の加入月数も一か月減る。目先の一万円台と生涯の年金額の交換だと理解したうえで退職日を決める
原則として引かれないのが正しい姿である。1項が認めるのは前月分の控除なので、入社初月には控除すべき前月分が存在しない。翌月の給与から前月分が乗り、以後は一か月遅れで進む。業界裏話ヒント:入社初月から控除する当月控除方式を採る会社もあるが、1項の文言がこれを当然に想定しているかは実務上、解釈が分かれている。入社時に方式を確認しておくと、退職時の精算で揉めない
2項が賞与からの控除を認めている。基礎となる標準賞与額には上限があり、厚生年金は一か月あたり150万円まで(同じ月に複数回支給された賞与は合算して判定)。これを超える部分に保険料はかからない。業界裏話ヒント:健康保険の上限は年度累計573万円で計算単位そのものが違う。高額賞与を月またぎで分割すると厚生年金保険料は増えるが、その分だけ将来の年金額も増える。損得は受給見込み年数で反転する
3項は控除に関する計算書を作成し、その控除額を被保険者に通知することを事業主に義務づけている。実務では給与明細の内訳表示で足りるとされるが、厚生年金と健康保険と雇用保険を一行にまとめる表示は通知として不十分になりうる。業界裏話ヒント:内訳開示の依頼は在職中にメールなど記録の残る形で出す。退職後は担当者が代わり、賃金台帳の保存期間(労働基準法109条、当分の間3年)の壁に当たる
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 規律の対象 | 84 条:事業主が報酬・賞与から本人負担分を控除する権限 | — |
| 義務を負う相手 | 被保険者に対する通知義務(3 項の計算書) | — |
| 違反したときの帰結 | 過大控除は賃金の未払いとして返還対象、通知欠如は労務トラブルの温床 | — |
| 労働者側の使いどころ | 控除額の検算と内訳開示の請求根拠 | — |
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