要点国民年金法 27 条の 5 は、68 歳到達年度以後の年金改定率を、物価変動率と名目手取り賃金変動率の低い方に調整率を乗じて定める規定である。算出率が 1 を下回る場合は 1 とされる。
Q · 物価が上がった年でも、68 歳以降の年金は同じだけ増えないの?
増えません。低い方の率からさらに調整率が引かれます
国民年金法 27 条の 5 により、基準年度(68 歳到達年度)以後の年金は、物価変動率と名目手取り賃金変動率のうち低い方を採り、そこに調整率と前年度からの基準年度以後特別調整率を乗じて改定されます。乗じた結果が 1 を下回るときは 1 と読むため名目額そのものは下がりませんが、削りきれなかった分は第 3 項により翌年度へ繰り越されます。物価が 3% 上昇しても年金が 3% 増えないのは、この二段構えの計算式が条文本文に書かれているためです。
68 歳。この年齢を境に、あなたの年金額を決める物差しが静かに入れ替わる。67 歳までは現役世代の手取り賃金の伸びで、68 歳到達年度(基準年度)以後は物価の伸びで改定される。本条の仕掛けは第 1 項第 1 号にある。物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回るときは、低い方である賃金変動率を採る。高い方ではなく、必ず低い方だ。そこへ調整率(公的年金被保険者総数の変動率 × 平均余命の伸びを勘案した率)と、前年度からの持ち越しである基準年度以後特別調整率が掛かる。掛けた結果が 1 を下回るときは 1 と読むため名目額そのものは下がらないが、削りきれなかった分は消えずに翌年度へ繰り越される。物価が 3% 上がっても、あなたの年金は 3% 増えない。それは運用の都合ではなく、条文の本文にそう書いてある。
国民年金法 27 条の 5 は、マクロ経済スライドの調整期間において、基準年度(65 歳到達年度から 3 年後の年度)以後の受給者に適用される改定率の算定方法を定める規定である。物価変動率を基礎としつつ名目手取り賃金変動率を上限とし、これに調整率および前年度の基準年度以後特別調整率を乗じて改定率を導く。算出率が 1 を下回る場合は 1 とみなされる。
現役世代の減少と平均余命の伸びに応じて年金の改定率を自動的に抑える仕組みです。平成 16 年改正で導入され、本条は 68 歳以降の受給者への適用方法を定めています。
65 歳到達年度から 3 年後の年度、つまり原則 68 歳到達年度以後です(27 条の 3)。それより前は 27 条の 4 により名目手取り賃金変動率が基礎となります。
16 条の 2 により、給付水準が長期的に均衡すると見込まれた時点で調整期間は終了します。終了年度は財政検証の結果で変動し、法定の固定年限ではありません。
毎年 6 月に日本年金機構から送付されます。改定率自体は前年の統計を踏まえて 1 月下旬に厚生労働省が公表し、4 月分(6 月支払分)から適用されます。
物価変動率に、現役世代の実質賃金変動率と可処分所得割合の変化率を加味した率です。本条ではこれが物価変動率より低いとき、上限として機能します。
厚生労働省が 1 月下旬に公表する年金額改定の報道発表資料に、物価変動率・名目手取り賃金変動率・スライド調整率が個別に掲載されます。日本年金機構サイトでも確認できます。
第 3 項の率で、その年度に調整しきれなかった分を翌年度以降へ持ち越すためのものです。平成 28 年改正で導入され、物価が上がった年にまとめて差し引かれます。
考え方は共通です。厚生年金では再評価率の改定として同旨の規定が置かれ、老齢基礎年金は本条の改定率で、報酬比例部分は厚生年金保険法側の規定で調整されます。
第 1 項第 1 号が、物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回るときは低い方を採ると定め、さらに第 2 号の調整率と基準年度以後特別調整率を掛けるからです。二段階で削られます。業界裏話ヒント:厚生労働省が 1 月下旬に出す改定率の発表資料には、物価変動率・賃金変動率・スライド調整率が個別に載っています。ここを見れば減り分の内訳が分かる。窓口の職員は、聞かれない限り内訳までは説明しない
止まるのではなく、繰り越されます。第 2 項で物価変動率が 1 を下回る年は調整せず物価どおりに改定しますが、調整できなかった分は第 3 項の基準年度以後特別調整率として累積し、物価が上がった年に差し引かれます。業界裏話ヒント:この仕組みは平成 28 年(2016 年)改正で入ったもので、それ以前に書かれた解説書や古いファイナンシャルプランナー向け教材は「デフレ時は調整なし=得」のまま止まっている
本当です。27 条の 3 が定める基準年度、つまり 65 歳到達年度から 3 年後の年度以後は、原則として物価変動率を基礎に改定されます(本条 1 項)。それより前は名目手取り賃金変動率です(27 条の 4)。業界裏話ヒント:夫婦に年齢差があると、同じ年度に片方は賃金基準、片方は物価基準になる。世帯の年金収入を一つの率で見積もると必ずずれるので、家計試算は二人分を分けて置く
争える余地があるのは適用の誤り(生年月日、加入期間、基準年度の判定など)で、改定率の水準は立法裁量の領域とされ、堀木訴訟(最大判昭和 57.7.7)以来、司法はほとんど立ち入りません。入口は社会保険審査官への審査請求です。業界裏話ヒント:審査請求の宛先は年金事務所ではなく地方厚生局の社会保険審査官。窓口で断られても、それは請求の可否ではなく所管外という意味であることが多い
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|---|---|---|
| 適用対象者 | 27 条の 5:基準年度(原則 68 歳到達年度)以後の受給者 | — |
| 改定の基礎となる率 | 物価変動率(名目手取り賃金変動率を上回るときは同変動率) | — |
| 調整率の乗算 | 調整率 × 前年度の基準年度以後特別調整率を乗じる | — |
| 下落局面の扱い | 第 2 項により物価変動率が 1 を下回る年等は調整せず、未調整分は第 3 項で繰越 | — |
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