国税徴収法 第187条
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- 納税者が滞納処分の執行又は租税条約等の相手国等に対する共助対象国税の徴収の共助の要請による徴収を免れる目的でその財産を隠蔽し、損壊し、若しくは国の不利益に処分し、その財産に係る負担を偽つて増加する行為をし、又はその現状を改変して、その財産の価額を減損し、若しくはその滞納処分に係る滞納処分費若しくは租税条約等の相手国等に対する共助対象国税の徴収の共助の要請による徴収に関する費用を増大させる行為をしたときは、その者は、三年以下の拘禁刑若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
- 2.納税者の財産を占有する第三者が納税者に滞納処分の執行又は租税条約等の相手国等に対する共助対象国税の徴収の共助の要請による徴収を免れさせる目的で前項の行為をしたときも、同項と同様とする。
- 3.情を知つて前二項の行為につき納税者又はその財産を占有する第三者の相手方となつたときは、その相手方としてその違反行為をした者は、二年以下の拘禁刑若しくは百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
- 4.第一項及び第二項(これらの規定中滞納処分の執行に係る部分を除く。)の罪は、日本国外においてこれらの罪を犯した者にも適用する。
- 5.第三項(滞納処分の執行に係る部分を除く。)の罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第二条(すべての者の国外犯)の例に従う。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 国税徴収法第187条は、日本の国税徴収法に含まれる条文です。
- 国税徴収法第187条の条文原文は「納税者が滞納処分の執行又は租税条約等の相手国等に対する共助対象国税の徴収の共助の要請による徴収を免れる目的でその財産を隠蔽し、損壊し、若しくは国の不利益に処分し…」で始まります。
- 国税徴収法第187条は第十章に置かれています。
- 国税徴収法の公布日は昭和34年4月20日です。
- 国税徴収法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 国税徴収法第187条の前の条は国税徴収法第186条です。
- 国税徴収法第187条の次の条は国税徴収法第188条です。
- 国税徴収法第187条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)第187条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000147 - 本サイト収録
国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)第187条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000147/187
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点国税徴収法187条は、滞納処分を免れる目的で財産を隠す・壊す・国に不利益に処分する行為を、三年以下の拘禁刑または250万円以下の罰金とする規定。滞納額ではなく行為が処罰される。
Q · 税金を滞納したまま財産を家族名義に移したら、犯罪になりますか?
滞納自体は犯罪ではないが、免れる目的の財産隠しは犯罪
国税徴収法187条により、滞納処分の執行を免れる目的で財産を隠蔽・損壊・国の不利益に処分すれば、三年以下の拘禁刑または250万円以下の罰金(併科可)の対象になります。処罰されるのは滞納額ではなく行為であり、少額の滞納でも構成要件を満たしえます。財産を預かる第三者(2項)や、情を知って名義を貸した相手方(3項、二年以下の拘禁刑または150万円以下の罰金)も独立に処罰されます。後から全額納付しても成立した犯罪は消えず、起訴猶予や量刑の情状にとどまります。
解説
税金が払えない、それ自体は犯罪ではない。国は督促し、差し押さえ、売って税に充てる。ここまでは行政手続の世界だ。ところが一線を越えた瞬間、話は刑事の世界へ飛ぶ。国税徴収法187条は、滞納処分(役所があなたの財産を差し押さえて換価し、税金に充てる手続)を免れる目的で財産を隠す、壊す、国に不利な形で処分する、借金があるかのように負担を偽装する、そうした行為に三年以下の拘禁刑または250万円以下の罰金を科す。しかも併科できる。注意すべきは主語だ。処罰されるのは滞納者本人だけではない。滞納者の財産を預かっている第三者も(2項)、事情を知って名義を貸した相手方も(3項、二年以下の拘禁刑または150万円以下の罰金)、それぞれ独立の犯罪になる。さらに4項・5項は、租税条約に基づく徴収共助の対象国税に関する部分について、国外での行為にも適用を広げている。海外に移せば逃げ切れるという発想は、条文の設計上、最初から塞がれている。
法的な位置づけ
国税徴収法187条は滞納処分免脱罪を定める規定であり、滞納処分の執行または共助対象国税の徴収を免れる目的で行われる財産の隠蔽、損壊、国に不利益な処分、負担の仮装等を処罰する。行為主体は納税者本人のほか、その財産を占有する第三者、および情を知って相手方となった者に及び、それぞれ独立の犯罪として構成される。
よくある質問 AI による整理
Q1滞納処分免脱罪とは何ですか?
国税徴収法187条が定める罪で、滞納処分の執行や共助対象国税の徴収を免れる目的で財産を隠す・壊す・国に不利益に処分する行為を、三年以下の拘禁刑または250万円以下の罰金で処罰します。
Q2税金を滞納しただけで犯罪になりますか?
なりません。滞納は督促・差押え・換価という行政手続の対象です。犯罪になるのは、徴収を免れる目的で財産を隠したり不利益に処分したりする行為をした時点です。
Q3差押えの前に不動産を家族名義に変えたら違法ですか?
免れる目的が認定されれば187条1項の「国の不利益に処分する行為」に当たりえます。目的は本人の説明ではなく、滞納時期との前後関係、対価が相場か、移転先との関係から推認されます。
Q4滞納処分免脱罪の時効は何年ですか?
公訴時効は3年です(刑事訴訟法250条2項、長期5年未満の拘禁刑)。起算点は犯罪行為が終わった時で、犯人が国外にいる間は進行が停止します(同255条)。
Q5会社の滞納でも社長個人が罰せられますか?
実際に隠匿・処分行為をした個人が処罰され、両罰規定(国税徴収法189条)により法人にも罰金が科されうる構造です。「会社の話だから自分は無関係」という前提は成り立ちません。
Q6海外の口座に資産を移せば処罰されませんか?
されえます。4項・5項は共助対象国税に係る部分について国外犯にも適用を広げています。共通報告基準(CRS)による口座情報交換もあり、国外移転は防御になりません。
Q7財産を動かす前にできる合法的な手段はありますか?
換価の猶予(国税徴収法151条の2)や納税の猶予(国税通則法46条)の申請があります。申請記録を先に残すと、その後の資金繰りを徴収逃れではないと説明しやすくなります。
Q8滞納処分免脱罪は誰が捜査して起訴されるのですか?
実務上は国税当局の告発が端緒となり、検察官が起訴・不起訴を判断します。起訴猶予は検察官の裁量であり、納付しても権利として公訴を止められるわけではありません。
この条文についての質問 AI による整理
Q1税金を全部払えば、この罪はなかったことになりますか?
なりません。187条は徴収を免れる目的での隠匿や処分という行為そのものを処罰する規定で、その後の完納は構成要件を消しません。実務上、納付は起訴猶予や量刑の重要な情状になりますが、それは検察官の裁量です(刑事訴訟法248条)。実務のポイント:国税は告発を固める前に本人と接触し、納付の意思と実行を確認する運用が多い。稟議が回り切る前に完納または確実な分納計画を出せるかが、実際の分水嶺になる。
Q2差押えの前に自分の口座から現金を下ろして持っているだけでも、隠したことになりますか?
なりえます。「隠蔽」は財産の所在を把握できない状態にする行為を広く含み、預金を現金化して所在を不明にするのは典型例です(187条1項)。生活費として費消していれば別ですが、金額と時期が徴収手続と重なるほど目的が推認されます。実務のポイント:徴収職員は滞納処分のために捜索する権限を持ち(国税徴収法142条)、金庫やタンスの中まで開けられる。しかも裁判所の令状は要らない。この点は意外なほど知られていない。
Q3頼まれて名義を貸しただけでも、自分が捕まるんですか?
3項は「情を知つて」相手方となった者を二年以下の拘禁刑または150万円以下の罰金としています。滞納と徴収逃れの目的を知っていたかが唯一の分岐点で、名義を貸しただけでも、知っていたと認定されれば独立の犯罪です。実務のポイント:この「情を知つて」の立証は、ほぼ LINE やメールの文面で決まる。「税務署がうるさいから」と相手が一言書いた履歴が、貸した側の故意を決定づける証拠になる。
間違えやすい点 AI による整理
- 「いくら滞納したら犯罪になるのか」という問いの立て方そのものがずれている。187条が処罰するのは滞納額ではなく行為だ。1円の滞納でも、免れる目的で財産を隠せば構成要件を満たす。逆に1億円滞納していても、隠さず差押えに応じている限りこの条文の射程には入らない。
- 「見つかっても結局は追徴されて終わり」と多くの人が理解している。だが徴収(行政)と免脱罪(刑事)は別軌道で走っており、後から全額納付しても成立した犯罪は消えない。納付は起訴猶予や量刑の情状として効くが、それは検察官の裁量の領域であって、権利として公訴を止める仕組みではない。
- あなたから見れば「家族の生活を守るために名義を整理した」だが、法律から見れば「国の不利益に処分する行為」になりうる。目的の認定は本人の説明ではなく、滞納の時期との前後関係、対価が相場かどうか、移転先との関係といった客観的事情の積み上げで行われる。この落差が立件の分かれ目になる。
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 制度の性質 | 国税徴収法187条:刑事罰(滞納処分免脱罪) | 国税徴収法188条:刑事罰(検査拒否等の罪) 国税徴収法39条:行政上の第二次納税義務(刑事罰ではない) |
| 対象となる行為 | 免れる目的での財産の隠蔽・損壊・国に不利益な処分・負担の仮装 | 徴収職員の質問検査に対する拒否・妨害・虚偽答弁等 滞納者からの無償譲渡等により利益を受けた第三者の存在 |
| 主観的要件 | 「免れる目的」という目的犯(3項は「情を知つて」) | 拒否・妨害行為の故意 目的や故意は不要(客観的な財産移転と徴収不足で足りる) |
| 効果 | 三年以下の拘禁刑または250万円以下の罰金(併科可) | 同章の並列罰則(法定刑は本条より軽い枠組み) 受けた利益を限度とする納税義務の追及(金銭的責任) |
他国ではどう定めているか 6 か国
台湾は租税債権専用の免脱罪を置かず、一般の損害債権罪と、税務当局による財産処分制限・出国制限という行政的手段を組み合わせて対応する。日本のように第三者・相手方を独立に処罰する条項は持たない
韓国は租税犯処罰法に体納処分免脱の独立規定を置く点で日本に最も近い。日本の統治期に継受した租税手続法制の系譜が残っている
中国は「税務機関が追徴できなくなった」という結果の発生を要件とし、逃れた税額に応じて法定刑が段階化される。日本187条が行為時点で成立するのと対照的である
ドイツは強制執行妨害の一般規定で対応し、租税債権も執行の一種として取り込む。日本のように徴収法内に固有の罰則を置く構造ではない
フランスは債務者が意図的に無資力状態を作り出す「organisation frauduleuse d'insolvabilité」として刑事処罰し、租税債務もその対象に含める構成をとる
米国は evasion of assessment(賦課逃れ)と evasion of payment(納付逃れ)を § 7201の中で区別し、後者が日本187条に相当する。財産の隠匿は § 7206(4) でも別途処罰される
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 差押予告の通知が届いてから10日、その間に事業用の機械をリース会社名義へ切り替えたら、どうなる? 資金繰りのための正常な取引だと説明しても、目的が徴収逃れと認定されれば187条1項の「国の不利益に処分する行為」に当たる。残された時間で先に打つべき手は名義変更ではなく、換価の猶予(国税徴収法151条の2)の申請である。
- 滞納中の知人から「しばらく車を預かってくれ」と頼まれ、深く聞かずに自宅の車庫へ入れた。滞納と徴収逃れの目的を知っていたと認定されれば、あなたは3項の相手方として二年以下の拘禁刑の対象になる。預かった側にも独立の罪があるという構造が、ここで効いてくる。
- 会社が消費税を滞納したまま、社長が売掛金の入金先を個人名義の口座へ切り替えた。滞納しているのは法人でも、行為をした個人が処罰され、両罰規定により法人にも罰金が科されうる(国税徴収法189条)。「会社の話だから自分は関係ない」という前提が、この瞬間に崩れる。
- 海外口座への送金を繰り返してきた個人事業主。租税条約に基づく徴収共助の対象国税であれば、4項により国外で行った行為も処罰の対象になる。各国の税務当局が口座情報を自動交換する共通報告基準(CRS)が回っている今、国外は避難所として機能しない。
取るべき行動
被害を受けた側:この条文の直接の被害者は国だが、実際に巻き込まれるのは滞納者から保管や名義を頼まれた側だ。1. 頼まれた時点で相手に滞納の有無を確認し、やり取りを記録に残す2. 通常の対価と通常の契約書を整え、事情を知って加担したと疑われる余地を消す3. すでに預かっているなら、徴収担当へ自ら占有の事実を申し出る4. 差し押さえられた財産が自分の所有物なら、国税通則法75条の不服申立てで争う道がある。
訴えられた側:1. 財産を動かした事実自体は争いにくい。争点は「免れる目的」の有無に集中するので、対価が相場か、資金の使途は何か、督促や差押予告との前後関係はどうかを時系列で整理する2. 弁護士と税理士を同時に立てる。刑事弁護と徴収交渉は別の専門で、片方だけでは詰む3. 徴収側と分納または換価の猶予の合意を先に成立させ、告発の必要性を下げる4. 3項の相手方として立件された場合、本丸は「情を知つて」の認定だ。滞納の事実をいつ知ったかを示す LINE やメールを保全する。
時効(請求できる期限):公訴時効は3年(刑事訴訟法250条2項、長期5年未満の拘禁刑に当たる罪)。起算点は犯罪行為が終わった時(同253条)。犯人が国外にいる間は時効の進行が停止する(同255条)ため、海外滞在期間は年数に算入されない。国税の徴収権自体の消滅時効(国税通則法72条、原則5年)とは別物で、税が時効で消えても刑事責任が同時に消えるわけではない。(最新の改正状況をご確認ください)
改正沿革 AI による整理
- 平成24年(2012年)前後の徴収共助制度導入に伴う改正 租税条約等に基づく共助対象国税の徴収の共助が制度化されたことに伴い、共助要請による徴収を免れる目的の行為を処罰対象に加え、あわせて国外犯処罰規定(4項・5項)が置かれた。改正年および施行年は要検証
- 令和4年(2022年)公布、令和7年(2025年6月1日)施行 刑法の懲役・禁錮統合に伴う整備。1項・2項の「三年以下の懲役」および3項の「二年以下の懲役」が、それぞれ「拘禁刑」に置き換えられた
改正の年表
- 1.昭和34年(1959年) 新設:国税徴収法(昭和34年法律第147号)の制定に伴い、滞納処分の執行を免れる目的での財産隠匿等を処罰する規定として置かれた
- 2.平成24年(2012年)前後 改正:租税条約等に基づく共助対象国税の徴収の共助が制度化されたことに伴い、共助要請による徴収を免れる目的の行為を処罰対象に加え、あわせて国外犯処罰規定(4項・5項)が置かれた。改正年および施行年は要検証
- 3.令和4年(2022年)公布・令和7年(2025年6月1日)施行 改正:刑法の懲役・禁錮統合に伴う整備により、1項・2項の「三年以下の懲役」および3項の「二年以下の懲役」が、それぞれ「拘禁刑」に置き換えられた
- 国税徴収法 第47条差押えの要件、滞納処分の起点
- 国税徴収法 第142条捜索権限、隠匿財産の発見手段
- 国税徴収法 第39条無償譲渡等への第二次納税義務、民事的追及
- 国税徴収法 第188条検査拒否等の罪、同章の並列罰則
- 国税徴収法 第189条両罰規定、法人への罰金刑
- 刑法 第96条の2強制執行妨害罪、本条の一般法的対応規定
- 国税通則法 第40条滞納処分の開始要件、本罪の前提手続
- 租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律 第11条徴収共助の根拠規定(現行効力を要確認)
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