国税徴収法 第98条(見積価額の決定)
クイックジャンプ
- 税務署長は、近傍類似又は同種の財産の取引価格、公売財産から生ずべき収益、公売財産の原価その他の公売財産の価格形成上の事情を適切に勘案して、公売財産の見積価額を決定しなければならない。この場合において、税務署長は、差押財産等を公売するための見積価額の決定であることを考慮しなければならない。
- 2.税務署長は、前項の規定により見積価額を決定する場合において、必要と認めるときは、鑑定人にその評価を委託し、その評価額を参考とすることができる。
この条文の基本情報
見積価額の決定とは何ですか?
定義見積価額の決定とは、国税徴収法第98条に定められた規定で、「税務署長は、近傍類似又は同種の財産の取引価格、公売財産から生ずべき収益、公売財産の原価その他の公売財産の価格形成上の事情を適切に勘案して、公売財産の見積価額を決…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 国税徴収法第98条(見積価額の決定)は、日本の国税徴収法に含まれる条文です。
- 国税徴収法第98条の条文原文は「税務署長は、近傍類似又は同種の財産の取引価格、公売財産から生ずべき収益、公売財産の原価その他の公売財産の価格形成上の事情を適切に勘案して、公売財産の見積価額を決…」で始まります。
- 国税徴収法第98条は第二款に置かれています。
- 国税徴収法の公布日は昭和34年4月20日です。
- 国税徴収法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 国税徴収法第98条の前の条は国税徴収法第97条です。
- 国税徴収法第98条の次の条は国税徴収法第99条です。
- 国税徴収法第98条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)第98条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000147 - 本サイト収録
国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)第98条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000147/98
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点国税徴収法98条は、公売財産の見積価額を税務署長が決定すると定める。取引価格・収益・原価を勘案しつつ、公売である事情も考慮するため、時価を下回る価額もありうる。
Q · 差し押さえられた家が公売にかかるとき、値段は誰がどうやって決めるの?
税務署長が決める。鑑定は義務ではない
国税徴収法98条1項により、公売財産の見積価額は税務署長が決定します。近傍類似の財産の取引価格、その財産から生ずべき収益、原価その他の価格形成上の事情を適切に勘案し、さらに「公売するための見積価額である」ことを考慮しなければなりません。この後段があるため、時価を下回る価額も適法となりえます。2項は鑑定人への評価委託を「できる」と定めるにとどまり、裁判所競売(民事執行法58条)と異なり鑑定は必須ではありません。
解説
差し押さえられた不動産が競売にかけられるとき、最初にいくらから売り出すかを決めるのは、裁判所でも不動産業者でもなく、税務署長である。国税徴収法98条は、その値付けのルールを定める。近傍類似物件の取引価格、その財産から生まれる収益、原価、これらを「適切に勘案して」見積価額を決めなければならない。ここまでは常識的だ。だが1項後段に、あなたが見落としてはならない一文が置かれている。「差押財産等を公売するための見積価額の決定であることを考慮しなければならない」。平たく言えば、公売という特殊な売り方(内覧が限られる、瑕疵担保がない、買主が付きにくい)を織り込んで、通常の市場価格より低く設定してよい、という趣旨である。つまりあなたの土地は、時価より安い値札を役所が合法的に付けられる。そして2項は「必要と認めるとき」に鑑定人へ委託できると定めるだけで、鑑定を義務づけていない。あなたの財産の値段が、鑑定書なしの内部評価で決まることは、実務上ふつうに起こる。
法的な位置づけ
国税徴収法98条は、滞納処分による公売財産の見積価額の決定基準を定める規定である。税務署長は、近傍類似又は同種の財産の取引価格、公売財産から生ずべき収益、原価その他の価格形成上の事情を適切に勘案し、かつ公売のための価額決定である旨を考慮して見積価額を決定する。必要と認めるときは鑑定人への評価委託ができる。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.差押え直後に評価材料を揃える 公売公告を待たず、対象財産の賃貸借契約書・賃料入金記録・稼働状況資料と、近隣の高値成約事例を収集する。98条1項が挙げる「収益」「取引価格」に直接対応する材料を先に確保する
- 2.評価着手段階で書面提出する 収集した資料を、価額が固まる前に所轄税務署の徴収担当部門へ書面で提出する。公告後の同じ資料は「決定済み価額への不服」にしかならず、勘案要素として扱われにくい
- 3.鑑定委託の申出を記録に残す 98条2項に基づく鑑定人への評価委託を求める旨を、書面で明示的に申し出て控えを保管する。義務ではないため断られうるが、後の不服申立てで判断過程の不備を主張する足場になる
- 4.公売公告の見積価額と自己資料を突合する 公告に記載された見積価額と、自ら収集した取引価格・収益還元額との差額を計算し、どの勘案要素が反映されていないかを項目単位で特定する
- 5.期限内に不服申立てを行う 争う場合は国税通則法に基づく再調査の請求または審査請求を、処分があったことを知った日の翌日から3か月以内に提起する。売却決定後は換価処分の取消しが制限される(法173条)ため、公売期日前の行動が決定的(最新の改正状況をご確認ください)
- 6.並行して公売そのものの停止を検討する 価額を争うのと並行し、換価の猶予・納税の猶予の申請可能性を検討する。価額の是正より、公売手続自体を止める方が実効性の高い局面がある(最新の改正状況をご確認ください)
よくある質問 AI による整理
Q1見積価額とは何ですか?
公売にかける財産の売り出し下限額です。国税徴収法98条により税務署長が、取引価格・収益・原価などを勘案して決定します。入札はこの価額以上でなければ有効になりません。
Q2公売の見積価額はどうやって決まる?
近傍類似又は同種の財産の取引価格、公売財産から生ずべき収益、原価その他の価格形成上の事情を勘案し、さらに公売という売却形態の特殊性を考慮して決定されます(98条1項)。
Q3公売の見積価額は時価より安い?
下回ることが通常です。98条1項後段が「公売するための見積価額」であることを考慮せよと定め、内覧制限・契約不適合責任なし等の減価要因を織り込むことを認めているためです。
Q4見積価額に鑑定は必要?
必須ではありません。98条2項は「必要と認めるときは」鑑定人に委託「できる」と定めるにとどまります。評価人の評価が必須の裁判所競売(民事執行法58条)とは異なります。
Q5見積価額が低すぎる場合どうする?
「安い」と主張するだけでは通りません。勘案すべき事情のどれが欠けているか、判断過程のどこに不合理があるかを、収益資料や近隣成約事例で具体的に示す必要があります。
Q6公売の見積価額はいつ公告される?
公売公告に関する規定(国税徴収法95条以下)に従い、公売期日等の前に公告・公示されます。公告から入札までの期間は短く、争うなら公告前の行動が実質的に重要です。
Q7売れ残ったら見積価額は下がる?
再度の公売では見積価額が改めて決定され、実務上引き下げられることがあります。買い手が付かない事情自体が価格形成上の事情として勘案されるためです。
Q8公売で売れても税金が残ることはある?
あります。売却代金を滞納国税に充てた後の不足額の納税義務は消えません。財産を失ったうえに残債務を負う二重の打撃となりうる点が最大のリスクです。
この条文についての質問 AI による整理
Q1税務署が付けた見積価額って、相場の何割くらいになるものなんですか?
法定の割合は存在しない。98条1項は取引価格・収益・原価などを勘案せよと定めるのみで、公売である事情を考慮した結果、時価を下回ることが通常である。実務のポイント:公売財産は内覧が制限され、契約不適合責任も追及できず、占有者がいれば買受人が自力で明渡しを求めることになる。この減価要因の積み上げこそが値下げの根拠なので、争うなら「相場より安い」ではなく「その減価要因は本件に当てはまらない」と個別に潰していく方が通る
Q2鑑定士に見てもらわずに値段を決めるなんて、許されるんですか?
許される。98条2項は「必要と認めるときは、鑑定人にその評価を委託し」「できる」と定めるにすぎず、義務ではない。裁判所の不動産競売が評価人の評価を必須とする(民事執行法58条)のとは制度設計が異なる。実務のポイント:高額物件や特殊物件では実務上、鑑定委託が行われることが多い。だから「なぜ本件では委託しなかったのか」という問いは、判断過程の合理性を突く有効な角度になる
Q3公売で売れた金額が滞納してる税金より少なかったら、残りはどうなりますか?
残額の納税義務は消えない。公売はあくまで換価手段であり、売却代金を滞納国税に充てた後の不足分は引き続き徴収の対象となる。他に財産があれば、次の差押えに進む。実務のポイント:換価の猶予や納税の猶予(国税徴収法151条、国税通則法46条)を申請すれば、公売そのものを止められる場合がある。値段を争うより、公売を止める方が実効性が高い局面は多い(最新の改正状況をご確認ください)
間違えやすい点 AI による整理
- 「公売価格が安すぎるのは違法だ」と直感的に思う人が多いが、問いの立て方が誤っている。98条1項後段は、公売という売却形態の特殊性を考慮せよと明文で命じている。つまり時価より低いこと自体は法の予定するところであり、争点は「安いかどうか」ではなく「勘案すべき事情を勘案したか、その判断過程に合理性があるか」に絞られる
- 見積価額の決定に鑑定人の評価が必要だと思われがちだが、2項は「必要と認めるときは」委託「できる」と定めるにすぎない。裁判所の不動産競売(民事執行法58条)が評価人の評価を必須とするのとは決定的に異なる。同じ強制売却でも、手続保障の厚みが違う
- 見積価額が低いことのリスクを「安く買い叩かれる」だけだと理解している人は、深刻度を見誤っている。本当の問題は売却後にある。売却代金が滞納税額に満たなければ、財産を失ったうえに残額の徴収は続く。低い見積価額は、財産の喪失と債務の残存という二重の打撃を招きうる
- 「公売で決まった値段には誰も文句を言えない」と思われているが、見積価額の決定は公売手続の一部であり、その違法は換価処分に対する不服申立て(国税通則法75条以下の再調査の請求・審査請求)の中で争う余地がある。ただし売却決定後は取消しが制限される(法173条)ため、タイミングがすべてを決める
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律する場面 | 98条:見積価額の決定基準(値付けそのもの) | 95条:公売公告(決めた条件の外部公示) 107条:再度の公売(売れ残り後の再決定) |
| 権限の所在 | 税務署長が勘案要素に基づき決定、鑑定は裁量 | 税務署長が公告事項を定め公示 税務署長が改めて見積価額を決定 |
| 納税者が動ける時点 | 評価着手段階=資料提出が最も効く | 公告後=記載内容の確認と誤り指摘 初回不成立後=再評価への意見提出 |
| 手続保障の厚み | 鑑定人の評価は任意(2項) | 公示による透明性確保が中心 民事執行法58条は評価人の評価が必須で対照的 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾では滞納処分による換価も執行機関が最低拍賣価額を核定する構造をとり、鑑価の実施と当事者の意見聴取が制度上組み込まれている点が対照的
韓国も税務当局が予定価格を決定するが、韓国資産管理公社(KAMCO)への公売代行と鑑定評価の活用が実務上広く行われている
ドイツの強制競売では市場価額(Verkehrswert)を裁判所が確定し、7/10未満の入札を排除する規定があり、下値保護の明文化という点で日本より厚い
米国では IRS が差押財産の最低売却価格(minimum price)を定め、その算定方法が財務省規則で示される。強制売却価値からの逆算という発想は日本の後段と近い
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 滞納した法人税の差押えで自宅が公売にかかった。公売公告を見ると、見積価額が近所の売買相場の7割程度。「安すぎる」と税務署に電話したが「公売であることを考慮した適正な価額です」と返された。この一言の根拠が98条1項後段である。争うなら、勘案要素のどれが欠けているかを具体的に突く以外に道はない
- 公売で物件を落札する側に回ったとしたら、どうなる? 見積価額は入札の下限であって、上限ではない。相場より低い見積価額が付いた優良物件には入札が殺到し、結局時価近くまで競り上がる。逆に誰も入らなければ、次回はさらに見積価額が引き下げられる(法104条以下の再公売)。見積価額の低さは「安く買える」保証では全くない
- 経営する会社が消費税を滞納し、工場と機械が差し押さえられた。工場は稼働中で収益を生んでいる。この「公売財産から生ずべき収益」は98条1項が明示する勘案要素だ。収益還元的な視点を主張材料として提出できるかどうかで、見積価額の水準は変わりうる
- 公売公告が出てから入札期日まで、残された時間はおよそ10日から2週間しかない。見積価額に異議があるなら、公告を見た日から動き出しても遅い。差押えの段階、あるいは評価に着手された段階で意見を出しておかないと、値札は固まったまま売却期日を迎える
- 友人が「税務署の公売で家が二束三文で売られた」と相談してきた。まず確認すべきは、鑑定人による評価が入っていたか(2項)、公売公告に記載された見積価額の内訳、そして残った滞納税額との差である。売却代金が滞納額を下回れば、家を失ったうえに税金が残る
取るべき行動
被害を受けた側:1. 差押えを受けた時点で、対象財産の収益資料(賃貸借契約書、賃料入金記録)と近隣の高値成約事例を収集し、公売公告前に書面で提出する2. 鑑定人による評価の委託を求める旨を書面で申し出て、控えを保管3. 公売公告が出たら見積価額と自己の資料の差額を計算し、勘案漏れを具体的に特定4. 争うなら国税通則法に基づく再調査の請求または審査請求を、処分を知った日の翌日から3か月以内に。売却決定後は取消しが制限されるため、期日前の行動が決定的(最新の改正状況をご確認ください)
訴えられた側:1. 公売で買い受ける側の場合、見積価額の低さを「割安」と即断せず、公売財産には契約不適合責任の追及ができないこと、占有者の退去は自力で処理する必要があることを前提に上限額を設定する2. 現況調査資料と公売財産一覧の記載を突き合わせ、公図・登記情報を独自に取得3. 買受代金の納付期限は短く、資金調達の目処を入札前に確定させておく
時効(請求できる期限):見積価額の決定自体に固有の期間制限はないが、これを争う不服申立ては国税通則法77条により、処分があったことを知った日の翌日から3か月以内。加えて、売却決定後は公売手続の取消しが制限される(国税徴収法173条)ため、実質的な勝負は公売期日前に終わる(最新の改正状況をご確認ください)
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める