商業登記法 第84条(会社分割の登記)
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- 吸収分割をする会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継する会社(以下「吸収分割承継会社」という。)がする吸収分割による変更の登記又は新設分割による設立の登記においては、分割をした旨並びに吸収分割をする会社(以下「吸収分割会社」という。)又は新設分割をする会社(以下「新設分割会社」という。)の商号及び本店をも登記しなければならない。
- 2.吸収分割会社又は新設分割会社がする吸収分割又は新設分割による変更の登記においては、分割をした旨並びに吸収分割承継会社又は新設分割により設立する会社(以下「新設分割設立会社」という。)の商号及び本店をも登記しなければならない。
この条文の基本情報
会社分割の登記とは何ですか?
定義会社分割の登記とは、商業登記法第84条に定められた規定で、「吸収分割をする会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継する会社(以下「吸収分割承継会社」という。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 商業登記法第84条(会社分割の登記)は、日本の商業登記法に含まれる条文です。
- 商業登記法第84条の条文原文は「吸収分割をする会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継する会社(以下「吸収分割承継会社」という。」で始まります。
- 商業登記法第84条は第五節 株式会社の登記に置かれています。
- 商業登記法の公布日は昭和38年7月9日です。
- 商業登記法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月9日時点では廃止情報はありません。
- 商業登記法第84条の前の条は商業登記法第83条です。
- 商業登記法第84条の次の条は商業登記法第85条です。
- 商業登記法第84条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第84条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000125 - 本サイト収録
商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第84条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月9日)https://lawplayer.com/jp/article/338AC0000000125/84
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点商業登記法84条は、会社分割の登記に、分割をした旨と相手方会社の商号・本店を記載することを義務付ける。承継会社側と分割会社側の双方の登記簿に、互いの記載がされる。
Q · 取引先が会社分割したとき、事業がどこへ行ったのか登記簿で分かりますか?
登記簿から承継先の商号と本店が分かります
商業登記法84条により、会社分割の登記には分割をした旨と相手方の商号・本店が記載されます。1項が承継会社・新設会社側、2項が分割会社側の登記を定めるため、どちらの登記簿を取っても相手方を特定できます。ただし登記に現れるのは相手方の特定までで、どの債務がどちらに残ったかという承継範囲は登記簿に出ません。範囲を知るには会社法782条以下の事前開示書面を確認する必要があります。
解説
会社分割の登記簿を見たとき、多くの人は「分割した」という事実しか読み取らない。だが商業登記法84条が要求しているのは、それだけではない。承継会社(事業を引き継いだ側)の登記簿には、どこの会社から引き継いだのか、その相手方の商号と本店が刻まれる。逆に、分割会社(事業を切り出した側)の登記簿にも、どこへ渡したのかが刻まれる。つまり両側の登記簿が互いを指し示す、双方向のリンクが法定されている。あなたが取引先の与信を調べているなら、この一行が決定的な意味を持つ。ある日突然、契約相手の会社が「その事業は別会社に承継されました」と言い出したとき、あなたは登記簿からその承継先の商号と本店を特定できる。相手が教えてくれなくても、法務局が教えてくれる。債務の行き先を追跡する糸は、最初から登記簿に埋め込まれているのだ。
法的な位置づけ
商業登記法84条は、会社分割に伴う登記の記載事項を定める規定である。吸収分割承継会社又は新設分割設立会社がする変更登記・設立登記には、分割をした旨と分割会社の商号及び本店を、分割会社側の変更登記には承継会社又は設立会社の商号及び本店を登記することを義務付ける。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.分割契約書・分割計画書の作成と承認決議 吸収分割は分割契約書、新設分割は分割計画書を作成し、原則として効力発生日の前日までに株主総会の特別決議で承認を得る。簡易分割・略式分割に該当するかも同時に判定する
- 2.債権者異議手続と事前開示書面の備置 官報公告と知れている債権者への個別催告を行い、1か月以上の異議申述期間を確保する(会社法789条、810条)。並行して事前開示書面を本店に備え置く
- 3.登記申請書に相手方の商号・本店を正確に記載 本条により、承継会社側の申請書には分割会社の商号及び本店、分割会社側の申請書には承継会社または新設分割設立会社の商号及び本店を記載する。商号変更を伴う案件では、効力発生日時点の商号かを必ず確認する
- 4.承継会社側と分割会社側の登記を同時申請 吸収分割では承継会社の変更登記と分割会社の変更登記を同時に申請する。管轄登記所が異なる場合は経由申請の取扱いによる(商業登記法87条)。片側だけの申請は受理されない点に注意
- 5.効力発生日から2週間以内に申請を完了 本店所在地における登記は効力発生日(新設分割は設立登記日)から2週間以内(会社法923条、924条)。徒過すると代表者個人が100万円以下の過料の対象となるため、期限をカレンダーで管理する
よくある質問 AI による整理
Q1会社分割の登記とは何ですか?
会社分割の事実を登記簿に公示する手続です。商業登記法84条により、分割をした旨と相手方会社の商号・本店が、承継会社側と分割会社側の双方の登記簿に記載されます。
Q2会社分割の登記はいつまでにする必要がありますか?
本店所在地においては効力発生日(新設分割は設立登記の日)から2週間以内です(会社法923条、924条)。期間を過ぎると代表者個人が過料の対象になります。
Q3吸収分割と新設分割の違いは何ですか?
吸収分割は既存の会社が事業を引き継ぐ形式で承継会社の変更登記、新設分割は新しく設立する会社が引き継ぐ形式で設立登記になります。84条1項は両方を対象としています。
Q4会社分割の登記を怠るとどうなりますか?
分割の効力自体は失われませんが、会社法976条1号により代表者個人に100万円以下の過料が科される対象となります。会社の経費ではなく個人負担です。
Q5会社分割の登記は誰が申請しますか?
承継会社側の登記は承継会社(新設分割は設立会社)の代表者、分割会社側の登記は分割会社の代表者が申請します。実務では司法書士が双方をまとめて代理します。
Q6会社分割の登記簿はどこで取れますか?
全国どこの法務局窓口でも、また登記・供託オンライン申請システムからも登記事項証明書を請求できます。会社の商号と本店が分かれば誰でも取得可能です。
Q7会社分割の登記に必要な添付書面は何ですか?
吸収分割は商業登記法85条、新設分割は86条が定めます。分割契約書・分割計画書、株主総会議事録、債権者保護手続を行ったことを証する書面などが必要です。
Q8会社分割したことは取引先に通知されますか?
登記されても法務局から個別通知はありません。ただし知れている債権者には会社法789条・810条の個別催告が必要で、催告漏れは後の責任追及の火種になります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1登記簿を見れば、どの借金がどっちの会社に行ったか分かりますか?
分かりません。商業登記法84条が要求するのは、分割した事実と相手方の商号・本店だけです。承継の範囲は分割契約書・分割計画書に書かれ、登記簿には現れません。実務のポイント:承継範囲を知りたい債権者は、会社法782条・794条・803条の事前開示書面の閲覧請求ができます。債権者は「利害関係人」として本店で閲覧可能で、この権利を使う債権者は実務上ごく少数です。使えば相手の想定外の動きになります
Q2承継会社と分割会社、両方の登記が必要なんですか?片方じゃダメですか?
両方必要です。本条1項が承継会社側(吸収分割の変更登記または新設分割の設立登記)、2項が分割会社側の変更登記を定めており、双方の登記簿に相手方の商号・本店が記載されます。実務のポイント:吸収分割では両社の登記を同時に申請するのが実務の原則で、承継会社の本店所在地を管轄する登記所を経由して申請する取扱いがあります。管轄が違う場合の経由申請を知らずに別々に出すと、申請が滞ります
Q3会社分割した相手の登記簿から、その先の会社も追えますか?
追えます。承継会社の登記簿にも、その会社が過去に行った分割の相手方が記載されているためです。履歴事項全部証明書を順に取れば、事業がどの法人を経由して移動したか系譜を辿れます。実務のポイント:登記事項証明書には現在事項・履歴事項・閉鎖事項の三種類があり、履歴事項は原則として約3年分しか載りません。それ以前の記録は閉鎖事項全部証明書を別途請求する必要があり、この違いを知らずに調査を打ち切る人は多い
間違えやすい点 AI による整理
- 会社分割は当事者間の契約だから、外部から中身は分からないと思われがちだ。しかし本条は当事者双方の登記簿に相手方の商号・本店を記載させる。誰でも登記事項証明書を取れば、分割の相手方は特定できる。秘密の組織再編というものは、少なくとも当事者の特定に関しては成立しない
- この登記があるから債権者は保護されている、と考えるのは危険な過信である。84条が公示するのは「分割した事実」と「相手方の商号・本店」だけ。どの債務がどちらに残ったか、承継の範囲は登記簿に出ない。それを知るには分割契約書や分割計画書の内容(会社法782条以下の事前開示書面)を確認する必要がある。登記は入口であって、答えそのものではない
- 登記が遅れても実務上は大した問題にならない、という感覚を持つ人がいる。だが会社分割の効力自体は効力発生日または設立登記で生じる一方、登記懈怠は会社法976条1号により代表者個人に100万円以下の過料が科される対象である。会社が払うのではなく、代表取締役個人の財布から出る
- 「分割の登記さえすれば債権者対応は終わり」と考える経営者は少なくない。法律から見ると、登記は公示手続の一部にすぎず、これとは別に債権者異議手続(会社法789条、810条)を官報公告と個別催告で踏まねばならない。この落差を放置したまま分割を強行すると、異議を述べる機会を奪われた債権者から後に責任を追及されうる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 公示される内容 | 商業登記法84条:分割をした旨+相手方の商号・本店(双方向) | 商業登記法82条:合併をした旨+消滅会社等の商号・本店 商業登記法85条・86条:登記そのものではなく添付書面の範囲を規律 |
| 対象となる組織再編 | 吸収分割・新設分割(事業の一部が移り、分割会社は存続) | 吸収合併・新設合併(消滅会社は解散し法人格が消える) 分割一般(84条の登記を実現するための手続規定) |
| 登記後の当事者 | 両社とも存続し、双方の登記簿に相互の記載が残る | 消滅会社の登記記録は閉鎖され、存続会社側に記載が残る — |
| 調査時の使い方 | 承継先を特定して債権の行き先を追跡する起点になる | 消滅会社の権利義務が包括承継された先を特定する 商業登記法87条の経由申請により管轄違いでも一括処理 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も分割の効力発生後に主管機関への登記申請を要する。ただし相手方の商号・本店を双方の登記に記載させる明文の双方向公示は日本ほど徹底していない
韓国商法は会社分割を明文で規律し、分割登記についても合併登記の規定を準用する構造をとる。日本と同様に登記により承継先を追跡できる
ドイツ組織再編法は Spaltung の登記申請と登記を規定し、商業登記簿(Handelsregister)への記載により第三者に対する効力が明確化される。日本の会社分割制度の直接的な母法にあたる
米国には会社分割の一般制度がなく、州ごとに LLC の division や資産譲渡(asset sale)で処理される。統一的な登記による公示は日本ほど整っていない
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 取引先から「当社の◯◯事業部は4月1日付で新会社に承継されました。今後の請求は新会社へ」という通知が届いた。相手の説明を鵜呑みにする前に、登記簿謄本を取れば承継先の商号と本店が本条により登記されている。通知に書かれた会社名と登記簿の記載が一致しなければ、その時点で警戒すべき兆候である
- もし、あなたの売掛金がある会社が会社分割で「優良事業だけを新会社に移し、負債は元の会社に残す」という動きをしたら? 84条の登記で承継先は特定できる。そこから会社法759条4項(詐害的会社分割における残存債権者の直接請求)や詐害行為取消権(民法424条)の検討に進める。登記簿が反撃の起点になる
- M&A のデューデリジェンスで対象会社の履歴事項全部証明書を読む。過去の会社分割の痕跡があれば、相手方の商号・本店が記載されている。その相手方の登記簿も取り寄せると、事業の来歴が数珠つなぎで見えてくる。売主が説明しなかった過去の組織再編が、ここで浮かび上がる
- 司法書士事務所で会社分割の登記申請を担当した。承継会社側の変更登記だけ提出して満足していたら、分割会社側の変更登記が漏れていた。本条2項は分割会社側にも登記義務を課している。効力発生日から2週間の登記期間はもう残り3日、間に合わなければ代表者個人が過料の対象になる
- あなたが従業員として、勤務先の一部門が会社分割で別会社へ移されると告げられた。移籍先がどんな会社なのか、会社は最小限しか説明しない。分割の効力発生後、承継会社の登記簿を取れば資本金・役員・設立年月日が分かる。労働契約承継法上の異議申出を検討する材料になる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 分割の通知や噂を掴んだ時点で、分割会社の履歴事項全部証明書を取得し、84条により記載された承継先の商号・本店を特定する2. 続けて承継会社の登記簿も取得し、資本金・設立年月日・役員構成を確認、受け皿会社の疑いがあるか判定3. 官報公告を確認し、債権者異議手続の申述期間内であれば書面で異議を述べる(会社法789条、810条) 4. 期間経過後に詐害的分割と判明した場合は、残存債権者の直接請求(会社法759条4項、764条4項)または詐害行為取消権(民法424条)を検討する
訴えられた側:1. 分割の効力発生日から2週間以内に、承継会社側の変更登記または新設会社の設立登記と、分割会社側の変更登記を同時に申請する(本条1項・2項の両方) 2. 申請書に相手方の商号・本店を正確に記載、商号変更が絡む案件では変更前後どちらの商号かを慎重に確認3. 登記と並行して債権者異議手続(官報公告+知れている債権者への個別催告)を漏れなく実施、催告漏れは後の責任追及の火種になる4. 期間内申請が困難なら、遅延理由を記録に残し、司法書士に速やかに相談する
時効(請求できる期限):会社分割による登記は、効力発生日(新設分割は設立登記日)から本店所在地において2週間以内に申請しなければならない(会社法923条、924条)。この期間を徒過すると、代表者個人が100万円以下の過料の対象となる(会社法976条1号)。なお登記懈怠の過料に消滅時効の定めはなく、後日の他の登記申請時に裁判所へ通知されて発覚する運用が一般的である
学説
通説:本条は会社分割の当事者双方の登記簿に相手方を記載させることで、事業の承継関係を外部から追跡可能にする公示規定であり、承継範囲の公示までは予定していないと解されている。承継範囲の開示は会社法の事前開示書面制度が担う
登記実務の取扱い:吸収分割においては承継会社と分割会社の登記を同時に申請するのが原則であり、管轄登記所が異なる場合は商業登記法87条の経由申請によって処理される。片側のみの申請は受理されない扱いが定着している
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和38年(1963年) 新設:商法から登記手続に関する規定を分離して商業登記法を制定。商業登記簿の記載事項と申請手続の基本構造が整備された
- 2.平成12年(2000年) 改正:商法改正により会社分割制度が創設され(施行は平成13年)、これに伴い商業登記法にも会社分割の登記に関する規定が置かれた
- 3.平成17年(2005年) 改正:会社法制定に伴う整備。会社分割の登記義務の根拠が会社法923条・924条に置かれ、商業登記法側は登記事項と添付書面を規律する構造に整理された
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