民事訴訟法 第17条(遅滞を避ける等のための移送)
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第一審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の所在地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。
この条文の基本情報
遅滞を避ける等のための移送とは何ですか?
定義遅滞を避ける等のための移送とは、民事訴訟法第17条に定められた規定で、「第一審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の所在地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事訴訟法第17条(遅滞を避ける等のための移送)は、日本の民事訴訟法に含まれる条文です。
- 民事訴訟法第17条の条文原文は「第一審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の所在地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避…」で始まります。
- 民事訴訟法第17条は第二節 管轄に置かれています。
- 民事訴訟法の公布日は平成8年6月26日です。
- 民事訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 民事訴訟法第17条の前の条は民事訴訟法第16条です。
- 民事訴訟法第17条の次の条は民事訴訟法第18条です。
- 民事訴訟法第17条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第17条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/408AC0000000109 - 本サイト収録
民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第17条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/408AC0000000109/17
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事訴訟法17条は、管轄が正しい場合でも、証人の住所や検証物の所在地等を考慮し、著しい遅滞の回避や当事者間の衡平のため、事件を他の管轄裁判所へ移送できると定める。
Q · 管轄が正しい裁判所なら、もう別の裁判所には移せないの?
いいえ、17条により別の管轄裁判所へ移送できる場合があります
いいえ。民事訴訟法17条により、訴訟がその裁判所の管轄に属する場合でも、当事者や証人の住所、検証物(現場・物的証拠)の所在地その他の事情を考慮し、訴訟の著しい遅滞を避けるため、または当事者間の衡平を図るため必要と認められるときは、第一審裁判所は申立てまたは職権で事件の全部または一部を他の管轄裁判所へ移送できます。証人や証拠が遠隔地に集中している、相手との力の差が大きいといった事情を具体的に示すことが鍵になります。
解説
管轄違いなら事件は自動的に正しい裁判所へ移る。だが本当に怖いのは「管轄は合っているのに、その法廷が自分にとって絶望的に不便」という状況だ。福岡に住むあなたが、契約書の管轄合意で東京地裁に訴えられた。管轄は正しい。普通ならここで詰む。ところが民事訴訟法17条は、たとえ管轄が正しくても、当事者や証人の住所、検証物(裁判所が実際に見に行く現場や物)の所在地、その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避けるため、または当事者間の衡平を図るために必要なら、申立てまたは職権で事件を別の管轄裁判所へ移送できると定める。つまり「管轄が正しい=戦場が確定」ではない。証人がみな福岡にいる、現場検証が福岡で必要、相手が大企業で自分が個人、こうした事情を並べれば、戦場そのものを動かせる余地がある。多くの人はこの一手の存在を知らずに、不利な法廷で戦い続ける。
法的な位置づけ
民事訴訟法17条は裁量移送を定める規定であり、第一審裁判所が、管轄を有する事件についても、当事者及び証人の住所、検証物の所在地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞の回避又は当事者間の衡平の確保のため必要と認めるとき、申立て又は職権で訴訟の全部又は一部を他の管轄裁判所へ移送できることを規律する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.管轄違い(16条)か不衡平(17条)かを切り分ける 訴えられた裁判所が不便な場合、まず「管轄がそもそも無い(16条)」のか「管轄は正しいが審理が著しく遅滞・不衡平になる(17条)」のかを切り分ける。管轄が正しいなら17条の裁量移送を検討する
- 2.証人の住所・検証物の所在地を一覧化する 尋問予定の証人の住所、検証が必要な現場や物的証拠の所在地を一覧表にまとめ、それらが別の管轄裁判所の管内に集中していることを可視化する。地図や名簿を添えると「この裁判所では物理的に審理が回らない」という具体的圧力になる
- 3.移送申立書を本案弁論前に提出する 著しい遅滞の回避または当事者間の衡平を理由に移送申立書を作成し、第一回口頭弁論期日で本案について弁論を始める前に提出する。まだ実質審理に入っていない段階なら、裁判所も移送による遅延が少ないと判断しやすい
- 4.決定に不服なら即時抗告する 移送の決定または移送申立ての却下に不服がある場合、裁判の告知を受けた日から1週間の不変期間内に即時抗告を申し立てる(民訴21条、332条)。この1週間を過ぎると決定が確定する
よくある質問 AI による整理
Q1裁量移送とは何ですか?
管轄が正しい事件でも、裁判所が著しい遅滞の回避や当事者間の衡平のために、他の管轄裁判所へ事件を移す制度です。民事訴訟法17条が根拠で、申立てまたは職権で行われます。
Q2管轄が正しくても裁判所を移せますか?
移せる場合があります。17条は「その管轄に属する場合においても」と明記し、証人の住所や検証物の所在地等を考慮して、著しい遅滞や不衡平を避けるための移送を認めています。
Q3移送の申立てはいつまでにすべきですか?
法定期限はありませんが、第一回口頭弁論期日で本案について弁論を始める前に出すのが実務上の鉄則です。審理が進むと「今さら移すと遅延する」として却下されやすくなります。
Q4移送が認められやすいのはどんなケースですか?
証人や検証物(現場・物的証拠)が別の管轄裁判所の管内に集中している場合です。証人リストや現場の所在を一覧化して示すと、著しい遅滞の具体的証拠となり移送に傾きます。
Q5移送の決定に不服がある場合はどうしますか?
移送の決定または却下に対しては、告知を受けた日から1週間の不変期間内に即時抗告ができます(民訴21条、332条)。この期間を過ぎると決定が確定します。
Q6職権による移送とは何ですか?
17条は「申立てにより又は職権で」と定め、当事者の申立てがなくても裁判所が自ら不便さに気付いて移送できます。ただし実務では自発的に動く保証はなく、申立てで具体的事情を示す側が有利です。
Q7移送された事件を元の裁判所に戻せますか?
戻せません。確定した移送の裁判は移送を受けた裁判所を拘束し、再び移送(再移送)することは原則禁止されています(民訴22条)。移送の判断は慎重に争う必要があります。
Q8移送申立書には何を記載しますか?
事件番号、当事者、移送を求める裁判所、移送の理由(証人の住所・検証物の所在地・著しい遅滞や不衡平の具体的事情)を記載します。証人一覧や現場の所在図を添付すると説得力が増します。
この条文についての質問 AI による整理
Q1管轄違いの移送と、この17条の移送って何が違うんですか?
16条の移送は『訴えた裁判所に管轄がない』ときに正しい裁判所へ送る是正措置で、原則として必ず移送されます。17条は逆に『管轄は正しいが、その法廷で審理すると著しく遅れる、または当事者間が不公平になる』ときの裁量移送です。実務のポイント:実務では『管轄は合っているから動かせない』と諦める当事者が大半ですが、証人や現場がすべて別の土地に集中している事案では、17条の申立てが通る余地は意外に広い。管轄の有無と、その法廷の現実的な不便さは、別々に争えると知っておくべきです
Q2契約書で東京地裁を管轄にすると合意したら、もう福岡には移せないですか?
専属的な合意管轄でも、20条が移送を制限する『法律で定める専属管轄』とは性質が異なります。証人・検証物がすべて福岡にあるなど17条の事情が強ければ、合意があっても移送される可能性は残ります。実務のポイント:合意管轄は当事者の便宜のための定めなので、その当事者本人が『この法廷では公平な審理ができない』と具体的に立証すれば、裁判所は移送に応じうる。契約書の管轄条項を絶対視して交渉を諦めるのは早計で、移送申立てというもう一枚のカードがある(最新の裁判例の動向はご確認ください)
間違えやすい点 AI による整理
- 「管轄が正しいなら、その裁判所で戦うしかない」と思い込んでいる人がほとんどだが、これは問いの立て方そのものが誤っている。本当の問いは『管轄が正しいか』ではなく『この法廷が著しい遅滞や不衡平を生まないか』だ。17条はまさに、管轄が正しい場合(「その管轄に属する場合においても」と明記)を前提に移送を認めている
- 「移送は自分で申し立てないと裁判所は動かない」と思われがちだが、17条は『申立てにより又は職権で』と定める。裁判所が自ら不便さに気付いて移送することもある。とはいえ実務では裁判所が自発的に動く保証はなく、不便さの具体的事情(証人リスト、現場の所在)を申立書で突きつけた側が圧倒的に有利になる
- 「管轄合意があれば絶対に移送されない」と信じている人は多いが、合意管轄は専属管轄の定め(20条で移送が制限される類型)とは別物だ。合意で定めた管轄裁判所であっても、17条の事情(著しい遅滞・衡平)が強ければ移送される余地が残る。契約書の一行が万能だと思っているなら、その認識を更新すべきだ
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 移送の性質 | 17条:裁量移送(管轄は正しい) | 16条:必要的移送(管轄がない) 19条:申立て・同意による移送 |
| 管轄の前提 | 当該裁判所に管轄あり | 当該裁判所に管轄なし(管轄違い) 当該裁判所に管轄あり |
| 移送の要件 | 著しい遅滞の回避又は当事者間の衡平 | 管轄違いの確認 当事者の申立て+相手方の同意等 |
| 開始のしかた | 申立て又は職権 | 職権(必要的) 当事者の申立て |
他国ではどう定めているか 3 か国
台湾は管轄違いの移送が中心で、便宜のみを理由とする純粋な裁量移送の枠組みは日本ほど明確でない。第28条の移送制度がもっとも近い対応規定
韓国は『현저한 손해 또는 지연을 피하기 위한 이송(著しい損害又は遅延を避けるための移送)』を明文で定め、日本17条と要件・趣旨がほぼ並行する最も近い対応規定
米国連邦法は『当事者及び証人の便宜、司法の利益のため』の移送(transfer of venue)を定め、forum non conveniens 法理とともに発展。当事者・証人の便宜を考慮する点で17条と機能的に類似
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- もし証人5人全員が大阪在住なのに、訴訟が東京地裁で進んでいたらどうなる? 全員を毎回東京へ呼ぶ交通費と日当、審理の長期化。17条の移送を申し立てれば「訴訟の著しい遅滞を避ける」ため大阪地裁へ移る可能性が出る。証人の所在は移送の核心的な考慮要素だ
- 建物の欠陥をめぐる紛争で、現場(検証物)は札幌、訴えられた裁判所は東京。裁判官が現場を見に行く必要があるのに、毎回札幌へ出張するのは非現実的。検証物の所在地は17条が明文で挙げる事情で、現地の裁判所への移送が認められやすい類型だ
- あなたが大企業から、相手本社所在地を専属でない管轄合意にして訴えられた。資力も法務部もある相手と、個人のあなた。当事者間の衡平を理由に、あなたの居住地への移送を申し立てられる。相手の弁護士は、あなたがこの条文を持ち出してくると思っていない
- 答弁書の提出期限まであと10日。ここで本案の反論を書く前に、移送申立てを出すかどうかを決めなければならない。第一回期日で本案について弁論を始めてしまうと、不便な法廷で戦う流れが事実上固まる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 訴えた、または訴えられた裁判所が自分にとって著しく不便なら、まず証人の住所と検証物(現場・物的証拠)の所在地を一覧化する2. それらが別の管轄裁判所の管内に集中していることを示し、17条の移送申立書を作成3. 申立ては第一回口頭弁論期日で本案の弁論をする前に出す、これを過ぎると遅延を理由に却下されやすい4. 移送の判断に不服なら、決定の告知から1週間以内に即時抗告(21条、332条)を検討する
訴えられた側:1. 相手が不便な裁判所に訴えてきたら、まず管轄違い(16条)か、管轄は正しいが不衡平か(17条)を切り分ける2. 管轄が正しい場合は17条で、自分の住所・主要証人・検証物の所在を理由に移送を申し立てる3. 逆に相手が移送を申し立ててきたら、専属管轄の合意(20条で移送制限される類型か)や、審理が既に進んでいて移送こそ遅延を生む点を主張して争う4. いずれの決定も即時抗告で上級審に持ち込める
時効(請求できる期限):移送の申立て自体に法定の期限はないが、第一回口頭弁論期日で本案について弁論を始める前に出すのが実務上の鉄則(遅れると却下リスク増)。移送の決定・却下に対する即時抗告は、裁判の告知を受けた日から1週間の不変期間内(民事訴訟法21条、332条)。この1週間を過ぎると決定が確定する
学説
通説:17条の裁量移送は、当事者及び証人の住所、検証物の所在地その他の事情を総合考慮し、訴訟の著しい遅滞の回避又は当事者間の衡平のため必要と認められる場合に裁判所の裁量で認められる。合意管轄が存在しても、専属管轄を定める20条の制限類型に当たらない限り、17条の事情が強ければ移送の余地が残ると解されている
改正沿革 AI による整理
- 平成8年(1996年)民事訴訟法全部改正 旧民事訴訟法の裁量移送規定を整理し、現行17条として『訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図る』という移送要件と、当事者・証人の住所、検証物の所在地等の考慮事情を明文化した。施行は平成10年(1998年)
改正の年表
- 1.平成8年(1996年) 改正:民事訴訟法全部改正により、旧法の裁量移送規定を整理し、現行17条として『訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図る』という移送要件と、当事者・証人の住所、検証物の所在地等の考慮事情を明文化(公布 平成8年法律第109号)
- 2.平成10年(1998年) 改正:平成8年改正民事訴訟法が施行され、現行17条が運用開始
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