民事訴訟法 第356条(控訴の禁止)
クイックジャンプ
手形訴訟の終局判決に対しては、控訴をすることができない。ただし、前条第一項の判決を除き、訴えを却下した判決に対しては、この限りでない。
この条文の基本情報
控訴の禁止とは何ですか?
定義控訴の禁止とは、民事訴訟法第356条に定められた規定で、「手形訴訟の終局判決に対しては、控訴をすることができない。ただし、前条第一項の判決を除き、訴えを却下した判決に対しては、この限りでない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事訴訟法第356条(控訴の禁止)は、日本の民事訴訟法に含まれる条文です。
- 民事訴訟法第356条の条文原文は「手形訴訟の終局判決に対しては、控訴をすることができない。ただし、前条第一項の判決を除き、訴えを却下した判決に対しては、この限りでない。」で始まります。
- 民事訴訟法第356条は第五編 手形訴訟及び小切手訴訟に関する特則に置かれています。
- 民事訴訟法の公布日は平成8年6月26日です。
- 民事訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 民事訴訟法第356条の前の条は民事訴訟法第355条です。
- 民事訴訟法第356条の次の条は民事訴訟法第357条です。
- 民事訴訟法第356条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第356条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/408AC0000000109 - 本サイト収録
民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第356条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/408AC0000000109/356
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事訴訟法356条は、手形訴訟の終局判決に対する控訴を禁止する。不服があれば二週間以内に同一裁判所へ異議を申し立て、通常訴訟でやり直す。訴え却下判決は例外。
Q · 手形訴訟で負けたら、控訴できないってどういうこと?
控訴は不可。二週間以内に「異議」を出せば通常訴訟でやり直せる
民事訴訟法356条により、手形訴訟の終局判決に控訴はできません。不服があれば、判決送達日から二週間の不変期間内に、判決をした同じ裁判所へ「異議」を申し立てます(357条)。適法な異議があると訴訟は通常訴訟の口頭弁論前の状態に復し、証人尋問を含む本格的な審理を受けられます(361条)。例外として、訴えを却下した判決(355条1項の却下を除く)には控訴できます。
解説
取引先から受け取った約束手形が不渡りになった。あなたは手形訴訟という特急レーンを使い、通常の訴訟より遥かに速く支払いを命じる判決を得た。ところが負けた相手が「控訴してやる」と息巻いている。だが356条がその道を塞ぐ。手形訴訟の終局判決に控訴はできない。相手に残された手は「異議」だけだ。異議を出すと、同じ裁判所で今度は通常訴訟としてやり直しになる。ここがこの条文の本質だ。控訴で上級裁判所へ持ち上げるのではなく、同じ裁判所の通常手続へ横滑りさせる。手形訴訟は書証中心の簡易迅速な手続だから、不服があるなら証人尋問もできる通常訴訟で存分に争え、という設計になっている。例外は一つ。訴えそのものを却下した門前払いの判決には、異議で移すべき中身がないので控訴できる。ただし355条1項の却下(手形訴訟になじまないという理由の却下)は別扱いだ。あなたが手形訴訟を選んだ瞬間、勝っても負けても、その後の進路はこの一条で確定している。
法的な位置づけ
民事訴訟法356条は手形訴訟における控訴の禁止を定める規定であり、手形訴訟の終局判決に対する控訴を封じ、不服申立てを同一裁判所への異議(357条)に一本化する。書証中心の簡易迅速な手続で得た判決の不服審理を、上級審ではなく同審級の通常訴訟へ移す構造をとる。例外として訴え却下判決には控訴を認める。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.控訴を断念し異議に切り替える 手形訴訟で敗訴し不服があるなら、控訴を考えるのをやめる。356条で控訴はできず、出すべきは「異議」である。控訴状を出しても不適法却下され、貴重な二週間を空費する
- 2.送達日から二週間以内に異議申立書を提出 判決書の送達を受けた日を起算点に、二週間の不変期間内に判決をした裁判所へ異議を申し立てる(357条)。期間は延長不可。カレンダーに送達日と異議期限を明記する
- 3.通常訴訟での主張・証拠を再構成 適法な異議で訴訟は通常訴訟の口頭弁論前の状態に復する(361条)。書証中心だった手形訴訟では出せなかった原因関係の主張や証人尋問の申出を準備する
- 4.必要なら執行停止の裁判を申し立てる 仮執行宣言(259条2項)が付いていれば異議だけでは執行は止まらない。差押えを止める必要があるなら、担保を立てて執行停止の裁判を別途申し立てる
よくある質問 AI による整理
Q1手形訴訟とは何ですか?
約束手形や為替手形の金銭支払請求について、書証中心の簡易迅速な審理で早期に判決を得る特別な訴訟手続です。職権で仮執行宣言が付き、回収を急ぐ債権者に有利です。
Q2控訴と異議の違いは何ですか?
控訴は上級裁判所への不服申立て、異議は同じ裁判所への申立てです。手形訴訟判決には控訴できず、異議のみ可能で、異議後は同一裁判所の通常訴訟に移行します。
Q3手形訴訟の異議申立ては何日以内ですか?
判決書の送達を受けた日から二週間の不変期間内です(357条)。延長は一切できず、一日でも過ぎると判決が確定します。
Q4手形訴訟で控訴できないのはなぜですか?
書証中心の迅速な手続で得た判決に控訴を認めると、敗訴者の引き延ばしで迅速性が損なわれるためです。代わりに異議で通常訴訟の充実審理を保障しています。
Q5小切手訴訟も控訴できないのですか?
できません。356条は小切手訴訟に準用され(367条2項)、控訴禁止・異議のルールがそのまま適用されます。
Q6手形訴訟の判決に仮執行宣言は付きますか?
付きます。手形訴訟の判決には職権で仮執行宣言が付され(259条2項)、相手が異議で争っている最中でも財産の差押えに着手できます。
Q7異議を出すと強制執行は止まりますか?
止まりません。異議だけでは執行は停止せず、止めるには担保を立てた執行停止の裁判を別途申し立てる必要があります。
Q8手形訴訟で訴えを却下されたら控訴できますか?
原則できます。訴えを却下した判決は356条ただし書で控訴が認められます。ただし355条1項(手形訴訟になじまない理由)の却下は対象外です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1控訴できないって、じゃあ一回負けたらそれで終わりってことですか?
終わりではない。手形訴訟の敗訴に対しては二週間以内に「異議」を申し立てれば、同じ裁判所で通常訴訟としてやり直せる(357条、361条)。そこで負けて初めて、通常どおり控訴・上告へ進める。実務のポイント:控訴できないのは「手形訴訟という簡易版の判決」に対してだけで、審級の利益そのものは失われない。控訴禁止という言葉だけ見て諦め、異議の二週間を逃す人がいちばん損をする
Q2相手が異議を出してきたら、せっかくの勝訴判決は無駄になるんですか?
無駄にはならない。異議が出ても判決は失効せず、異議後の通常訴訟で「認可・取消・変更」が判断される(362条)。手形訴訟の判決には職権で仮執行宣言が付くため(259条2項)、異議審の最中でも執行は止まらない。実務のポイント:異議を出しただけで執行が止まると思っている債務者は多いが違う。執行を止めるには別途、担保を立てた執行停止の裁判が必要で、その手間と費用を相手が知らないなら、あなたは回収を先行できる
間違えやすい点 AI による整理
- 「控訴できない=もう争えない、一回負けたら終わり」と思い込む人が多い。実は異議を出せば同じ裁判所の通常訴訟に移り、そこで負けて初めて控訴の道が開く。手形訴訟の敗訴で審級の利益が消えるわけではない
- 「控訴できないなら手形訴訟は危険な制度だ」と身構える人がいるが、立てている問いがずれている。控訴を捨てる代わりに圧倒的なスピードと仮執行を手にするのが手形訴訟の設計だ。速さを取るか審理の厚みを取るかを最初に選ぶ場面であって、損な制度ではない
- 敗訴した債務者から見れば「控訴を奪われた」だが、手続の側から見れば「異議という、より手厚い通常訴訟への切符を渡された」。この視点のズレに気づかないまま二週間の異議期間を漫然と過ごすと、その瞬間に判決が確定する
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規定内容 | 356条:手形訴訟の終局判決への控訴禁止 | 357条:控訴に代わる異議の申立て 355条:手形訴訟になじまない訴えの却下 |
| 不服の宛先 | 控訴は不可(上級審に持ち上げられない) | 判決をした同一裁判所 355条1項の却下を除き、却下判決には控訴可 |
| 期間 | —(そもそも控訴できない) | 判決送達から二週間の不変期間 —(手続の入口での却下判断) |
| 効果 | 本案判決は異議によってのみ争える | 通常訴訟の口頭弁論前の状態に復し再審理 手形訴訟手続が終了し通常訴訟に移行しない |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾の支払命令は債務者の異議で通常訴訟に移行する点で、手形訴訟の控訴禁止+異議構造と機能的に近い。票據事件は簡易訴訟手続でも扱われる。
韓国の支払命令(지급명령)も異議により通常訴訟へ移行する。迅速な債務名義取得と防御権保障の調整という発想は日本と共通。
ドイツの証書・手形訴訟が日本の手形訴訟の直接の母法。仮判決(Vorbehaltsurteil)に対し後続手続(Nachverfahren)で本格審理する構造が、日本の控訴禁止+異議に対応する。
米国は流通証券に関する略式判決や自白判決条項で迅速な債務名義取得を図るが、控訴禁止+異議という統一的制度はなく、州ごとに扱いが分かれる。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- もし手形訴訟で負けた相手が、勢いで控訴状を裁判所に出したらどうなる? 裁判所はその控訴を不適法として却下する。相手は気づかぬうちに、本当に使うべきだった「異議」の二週間を空費しているかもしれない
- あなたが約束手形の振出人で、手形訴訟で支払いを命じられた。そもそも商品に欠陥があったという原因関係を主張したいのに、手形訴訟は書証中心で証人を呼べなかった。控訴ではなく異議を出せば、同じ裁判所の通常訴訟で証人尋問まで持ち込める
- 手形訴訟で勝った。相手は控訴できない。あとは二週間、異議が来るかを待つだけだ
- 判決書を受け取って今日で十日目。控訴するつもりで弁護士に相談したら「それはできない、出すなら異議、しかも残り四日」と告げられる。不変期間は一日の猶予もない
取るべき行動
被害を受けた側:1. 手形訴訟で敗訴し不服があるなら、控訴を考えるのをやめる。356条で控訴はできない2. 判決書の送達を受けた日から二週間の不変期間内に、判決をした裁判所へ「異議の申立て」を行う(357条)。この期間は延長不可、一日でも過ぎれば確定3. 異議が適法なら、訴訟は口頭弁論前の通常訴訟の状態に復し、証人尋問を含む本格的な審理を受けられる(361条) 4. 仮執行宣言が付いていれば異議だけでは執行は止まらないので、必要なら担保を立てて執行停止の裁判を別途申し立てる
訴えられた側:1. 手形訴訟で勝訴したら、相手が控訴してきても裁判所が不適法却下する。慌てない2. 警戒すべきは相手の「異議」。判決送達から二週間が経過し異議がなければ判決は確定する3. 異議が出ても勝訴判決は失効せず、異議後の通常訴訟で認可・取消・変更が判断される(362条)。書証と原因関係の主張を再整理して臨む4. 仮執行宣言が付いているなら、異議審の進行中でも差押え等の執行に着手し、回収を先行させる
時効(請求できる期限):異議の申立ては、判決書の送達を受けた日から二週間の不変期間内(357条)。延長不可。例外的に控訴できる訴え却下判決の場合、控訴期間も判決送達から二週間(285条)。いずれも不変期間で、徒過すれば判決が確定する(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:手形訴訟の控訴禁止(356条)は、迅速な権利実現という制度趣旨を守るための仕組みであり、これによる審級の不利益は異議(357条)による通常訴訟への移行で補われる。控訴を閉じ異議を開く二段構えで、迅速性と裁判を受ける権利を両立させると解されている。
改正沿革 AI による整理
- 平成8年(1996年)民事訴訟法全部改正 旧民事訴訟法の手形訴訟規定を現行法へ整理し、本条を356条として配置。手形訴訟の終局判決に対する控訴禁止と、訴え却下判決に関する例外(355条1項を除く)の枠組みを明文化した。施行は平成10年(1998年)
改正の年表
- 1.平成8年(1996年) 改正:民事訴訟法全部改正により、旧法の手形訴訟規定を現行法へ整理し本条を356条として配置。手形訴訟の終局判決に対する控訴禁止と、訴え却下判決に関する例外(355条1項を除く)の枠組みを明文化。施行は平成10年(1998年)。
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める