民事訴訟法 第373条(通常の手続への移行)
クイックジャンプ
- 被告は、訴訟を通常の手続に移行させる旨の申述をすることができる。ただし、被告が最初にすべき口頭弁論の期日において弁論をし、又はその期日が終了した後は、この限りでない。
- 2.訴訟は、前項の申述があった時に、通常の手続に移行する。
- 3.次に掲げる場合には、裁判所は、訴訟を通常の手続により審理及び裁判をする旨の決定をしなければならない。
- 一第三百六十八条第一項の規定に違反して少額訴訟による審理及び裁判を求めたとき。
- 二第三百六十八条第三項の規定によってすべき届出を相当の期間を定めて命じた場合において、その届出がないとき。
- 三公示送達によらなければ被告に対する最初にすべき口頭弁論の期日の呼出しをすることができないとき。
- 四少額訴訟により審理及び裁判をするのを相当でないと認めるとき。
- 4.前項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
- 5.訴訟が通常の手続に移行したときは、少額訴訟のため既に指定した期日は、通常の手続のために指定したものとみなす。
この条文の基本情報
通常の手続への移行とは何ですか?
定義通常の手続への移行とは、民事訴訟法第373条に定められた規定で、「被告は、訴訟を通常の手続に移行させる旨の申述をすることができる。ただし、被告が最初にすべき口頭弁論の期日において弁論をし、又はその期日が終了した後は、この限りで…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事訴訟法第373条(通常の手続への移行)は、日本の民事訴訟法に含まれる条文です。
- 民事訴訟法第373条の条文原文は「被告は、訴訟を通常の手続に移行させる旨の申述をすることができる。ただし、被告が最初にすべき口頭弁論の期日において弁論をし、又はその期日が終了した後は、この限りで…」で始まります。
- 民事訴訟法第373条は第六編 少額訴訟に関する特則に置かれています。
- 民事訴訟法の公布日は平成8年6月26日です。
- 民事訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月2日時点では廃止情報はありません。
- 民事訴訟法第373条の前の条は民事訴訟法第372条です。
- 民事訴訟法第373条の次の条は民事訴訟法第374条です。
- 民事訴訟法第373条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第373条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/408AC0000000109 - 本サイト収録
民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第373条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月2日)https://lawplayer.com/jp/article/408AC0000000109/373
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事訴訟法373条は、少額訴訟の被告が最初の口頭弁論で本案を弁論する前に申述すれば、訴訟を通常手続へ移行できると定める。申述があれば移行は自動的に生じる。
Q · 少額訴訟で訴えたのに、相手に普通の裁判へ移されてしまうことはありますか?
あります。被告が申述すれば原告は拒めず自動で移行します
民事訴訟法373条により、少額訴訟の被告は最初の口頭弁論で本案を弁論する前までに申述すれば、訴訟を通常の手続へ移行させられます。申述があれば移行は自動的に生じ、裁判所も原告も拒めません(同2項)。さらに裁判所も、要件違反・公示送達でしか呼び出せない・少額訴訟になじまないと判断した場合は、職権で通常手続へ移します(同3項)。一日で終わるはずの審理が、相手や裁判所の判断で通常訴訟に変わり得ます。
解説
60万円以下の未払い給料を取り戻すために、あなたは少額訴訟を選んだ。一日で審理が終わり、その場で判決が出る、その手軽さが魅力だ。だが訴状を受け取った相手が一枚の書面を出すだけで、その目論見は崩れる。民事訴訟法373条は、被告に「通常の手続に移してくれ」と申し立てる権利を与えている。被告がこの申述をすれば、裁判所も原告も拒めず、訴訟は自動的に普通の裁判へ移る。一日で終わるはずが、何か月もかかる通常訴訟になる。しかもこの権利には期限がある。被告が最初の口頭弁論で本案について発言するまで、あるいはその期日が終わるまで。逆に言えば、被告であるあなたがこのカードを切れるのは、最初の一回だけだ。さらに裁判所自身も、公示送達でしか呼び出せないときや、少額訴訟になじまないと判断したときは、職権で通常手続へ移す。少額訴訟という速い土俵は、被告と裁判所、二者の判断で簡単に外される。
法的な位置づけ
民事訴訟法373条は、少額訴訟から通常手続への移行を定める規定である。被告は最初の口頭弁論で本案を弁論する前に申述することで訴訟を通常手続へ移行でき、申述があれば移行は自動的に生じる。さらに裁判所は、要件違反・公示送達による呼出し・少額訴訟になじまない場合に職権で通常手続へ移行する決定をしなければならない。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.訴状が少額訴訟かを真っ先に確認 被告として書類を受け取ったら、まず「少額訴訟」か「通常訴訟」かを確認する。少額訴訟なら一期日で証拠調べが制限され反訴もできないため、自分に不利でないかを最初に見極める
- 2.一期日で足りるか、争点と証拠を棚卸し 証人を呼びたい、書証を尽くしたい、相手に反訴したいという事情があるかを確認する。一回の審理では足りないと判断したら、通常手続への移行を選ぶ準備をする
- 3.本案弁論の前に移行申述を提出 通常手続へ移したい場合、答弁書段階または第一回口頭弁論の冒頭、本案について弁論をする前に「通常の手続に移行させる」旨を申述する(373条1項)。理由を細かく説明する必要はない
- 4.移行後は通常手続用に準備を切り替え 申述があれば訴訟は自動的に通常手続へ移行する(373条2項)。既に指定された期日はそのまま使われる(同5項)ため、慌てず証拠調べ・準備書面の作成へ切り替える
よくある質問 AI による整理
Q1少額訴訟とは何ですか?
60万円以下の金銭支払請求について、原則一期日で審理し即日判決を目指す簡易迅速な訴訟手続です。民事訴訟法368条以下に規定があります。
Q2少額訴訟はいくらまで使えますか?
訴額60万円以下の金銭支払請求に限られます(民訴368条1項)。さらに同一簡易裁判所での利用は年10回までという回数制限があります(同3項)。
Q3通常手続に移行したら費用や期間は増えますか?
印紙代の追加は原則ありませんが、一期日で終わる予定が複数期日の通常訴訟になり、証拠調べや反訴も可能になるため、解決まで数か月かかることがあります。
Q4少額訴訟の判決に不服があるときはどうしますか?
控訴はできず、判決をした簡易裁判所へ異議を申し立てます(民訴378条)。異議後は同じ裁判所で通常手続により審理がやり直されます。
Q5少額訴訟は弁護士なしでもできますか?
本人訴訟が可能で、定型的な訴状書式も用意されています。ただし被告に通常手続へ移行されると専門的な審理になるため、争点が複雑なら専門家相談を検討すべきです。
Q6少額訴訟の年間回数制限は何回ですか?
同一の簡易裁判所において同一の年に10回までです(民訴368条3項)。これを超えると職権で通常手続へ移行される原因になります(373条3項)。
Q7公示送達だと少額訴訟はできないのですか?
できません。被告へ公示送達でしか呼出しできない場合、裁判所は職権で通常手続へ移行する決定をしなければなりません(民訴373条3項3号)。
Q8少額訴訟と支払督促はどちらがよいですか?
争いが少なく相手が応じそうなら支払督促が早く、相手が争いそうなら判決まで進む少額訴訟が確実です。ただし少額訴訟は被告に通常手続へ移行される可能性があります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1少額訴訟で訴えたら、相手が「通常の裁判にしてくれ」と言い出しました。拒否できますか?
拒否できません。民事訴訟法373条1項は被告に通常手続への移行を申し立てる権利を与えており、被告が期限内に申述すれば、裁判所も原告も止められず自動的に移行します(同2項)。実務のポイント:これを知らずに「少額訴訟だから一日で終わる」と高をくくる原告は多い。相手が弁護士に相談すると、まずこの移行申述を勧められることがある。争いそうな相手なら、最初から通常訴訟を選ぶか、提訴前の和解を狙う方が結局早い
Q2被告ですが、通常手続に移したいです。いつまでに言えばいいですか?
最初の口頭弁論の期日で、本案について弁論をする前までです(373条1項但書)。その期日であなたが請求の中身について発言してしまうと、あるいは期日が終わると、もう移行は申し立てられません。実務のポイント:裁判所の手続案内では「移行できます」とは教えてくれても、「いつまでに」の期限の厳しさまでは強調されないことがある。期日通知が届いた時点で、争うなら移行するかを先に決め、当日いきなり判断しないこと
間違えやすい点 AI による整理
- 原告が少額訴訟を選べば、その簡易な手続で最後まで進むと思われているが、被告は373条1項で一方的に通常手続へ移せる。原告にこれを止める手段はない。速さを当てにした戦略は、相手次第で崩れる
- 被告の移行申述権は知っていても、その期限の短さを甘く見ている人が多い。最初の口頭弁論期日で本案について弁論した瞬間、あるいはその期日が終わった瞬間、権利は消える(373条1項但書)。「次回までに考える」は通用しない、その場で決めなければ二度と使えない
- 「移行を申し立てれば審理が有利になる」という問いの立て方そのものがずれている。通常手続への移行は審理を丁寧にするだけで、勝敗を直接決めるものではない。被告が問うべきは「一期日で終わる少額訴訟と、時間はかかるが証拠調べの自由な通常訴訟、自分の手札ではどちらが勝てるか」だ
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 条文の役割 | 民訴373条:少額訴訟から通常手続への移行(被告申述+職権) | 民訴368条:少額訴訟の利用要件(60万円以下・年10回) 民訴378条:少額訴訟判決への異議申立て |
| 誰が使うか | 被告(申述)または裁判所(職権) | 原告(少額訴訟を選んで提訴) 判決に不服のある当事者(原告・被告とも) |
| 効果 | 審理が通常訴訟へ移り、一期日制限・反訴禁止が外れる | 要件を満たさないと少額訴訟自体ができない 同じ簡裁で通常手続によりやり直す |
| 時期・期限 | 被告は最初の口頭弁論で本案弁論をする前まで(職権は審理中いつでも) | 提訴時に申述(370条で一期日審理が原則) 判決書送達から2週間以内 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も10万元以下の小額訴訟程序を設け、簡易・迅速な審理を志向する。手続選択や通常程序との関係に類似の構造がある
韓国は独立した『少額事件審判法』で少額事件を規律し、簡易迅速な処理を図る。日本のように民訴典内に置く構造とは異なる
ドイツは少額事件(原則600ユーロ以下)について裁判所が裁量で簡易な手続を定められる。当事者の口頭弁論請求権が保障される点で被告保護の発想に通じる
米国は州ごとに少額裁判所を設け、弁護士不要・簡易手続が原則。被告側からの通常手続(regular docket)への移送可否は州により扱いが分かれる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 退去後も返ってこない敷金25万円を、あなたは少額訴訟で大家に請求した。一日で決着するつもりが、大家が「通常手続に移行する」と申し立てた。これで大家側は反訴も可能になり、原状回復費用を逆に請求してくる土俵に引きずり込まれる。少額訴訟の手軽さは、相手の一存で消える
- もし、あなたが副業の報酬未払いで少額訴訟の被告になったら? 一期日で終わり、証人も呼べず証拠調べも制限される少額訴訟は、じっくり反論したい被告に不利なことがある。373条の移行申述をすれば、通常手続で腰を据えて争える。ただし使えるのは、最初の口頭弁論で本案を弁論する前まで
- 口頭弁論の期日は明後日。その場で一言でも請求の中身について弁論すれば、もう通常手続への移行は申し立てられない。被告であるあなたに残された判断時間は、実質その朝までだ
取るべき行動
被害を受けた側:1. 訴える前に争点の複雑さを見極める。被告が本気で反論しそう、証人尋問が要る案件なら最初から通常訴訟を選ぶ2. 少額訴訟を選んだ場合、被告が移行申述をする前に和解交渉の糸口を探る3. 移行されても、既に指定された期日はそのまま使える(373条5項)ので慌てず通常手続用の準備に切り替える4. 年10回の少額訴訟回数制限(368条3項)を意識、乱発は届出義務違反で職権移行の引き金になる
訴えられた側:1. 訴状が少額訴訟だと分かったら、まず一期日で争点を出し切れるか検討する2. 証人を呼びたい、証拠調べを尽くしたい、反訴したいなら、最初の口頭弁論で本案を弁論する前に「通常手続への移行」を申述する(373条1項) 3. この権利は最初の期日で本案について発言したら消える、期日通知が来たら当日より前に決断する4. 申述すれば裁判所は拒めず自動移行する(同2項)、理由を細かく説明する必要はない
時効(請求できる期限):被告の移行申述権は、最初にすべき口頭弁論の期日において本案の弁論をする前まで、またはその期日が終了する前まで(373条1項但書)。一度この期限を過ぎると、被告の意思では二度と通常手続に移せない。裁判所の職権移行(同3項)は期限の定めなく審理中いつでも可能
学説
通説:373条の被告による移行申述権は、少額訴訟が証拠調べ制限・反訴禁止・一期日審理という防御の縮減を伴うことに対する手続保障の安全弁と理解される。被告の意思のみで通常手続へ戻せる点に制度の核心がある
改正沿革 AI による整理
- 平成8年(1996年)民事訴訟法全部改正 現行民事訴訟法の全部改正により少額訴訟制度(第6編)が新設され、373条もこのとき創設された。施行は平成10年(1998年)。その後の改正履歴(令和4年 IT 化改正等の影響を含む)は要人的検証
改正の年表
- 1.平成8年(1996年) 新設:民事訴訟法の全部改正により少額訴訟制度(第6編)が新設され、373条もこのとき創設された。施行は平成10年(1998年)
- 2.令和4年(2022年) 改正:民事訴訟手続の IT 化を含む改正がなされた。少額訴訟関連規定への影響は条文ごとの個別検証が必要
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める