民事再生法 第42条(営業等の譲渡)
クイックジャンプ
- 再生手続開始後において、再生債務者等が次に掲げる行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。この場合において、裁判所は、当該再生債務者の事業の再生のために必要であると認める場合に限り、許可をすることができる。
- 一再生債務者の営業又は事業の全部又は重要な一部の譲渡
- 二再生債務者の子会社等(会社法第二条第三号の二に規定する子会社等をいう。ロにおいて同じ。)の株式又は持分の全部又は一部の譲渡(次のいずれにも該当する場合における譲渡に限る。)
- 一当該譲渡により譲り渡す株式又は持分の帳簿価額が再生債務者の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の五分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えるとき。
- 二再生債務者が、当該譲渡がその効力を生ずる日において当該子会社等の議決権の総数の過半数の議決権を有しないとき。
- 2.裁判所は、前項の許可をする場合には、知れている再生債権者(再生債務者が再生手続開始の時においてその財産をもって約定劣後再生債権に優先する債権に係る債務を完済することができない状態にある場合における当該約定劣後再生債権を有する者を除く。)の意見を聴かなければならない。ただし、第百十七条第二項に規定する債権者委員会があるときは、その意見を聴けば足りる。
- 3.裁判所は、第一項の許可をする場合には、労働組合等の意見を聴かなければならない。
- 4.前条第二項の規定は、第一項の許可を得ないでした行為について準用する。
この条文の基本情報
営業等の譲渡とは何ですか?
定義営業等の譲渡とは、民事再生法第42条に定められた規定で、「再生手続開始後において、再生債務者等が次に掲げる行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事再生法第42条(営業等の譲渡)は、日本の民事再生法に含まれる条文です。
- 民事再生法第42条の条文原文は「再生手続開始後において、再生債務者等が次に掲げる行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。」で始まります。
- 民事再生法第42条は第二節 再生手続開始の決定に置かれています。
- 民事再生法の公布日は平成11年12月22日です。
- 民事再生法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 民事再生法第42条の前の条は民事再生法第41条です。
- 民事再生法第42条の次の条は民事再生法第43条です。
- 民事再生法第42条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第42条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225 - 本サイト収録
民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第42条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/411AC0000000225/42
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事再生法42条は、再生手続開始後の営業又は事業の全部若しくは重要な一部の譲渡に裁判所の許可を要求する。許可は事業の再生に必要と認められる場合に限られ、債権者と労働組合等への意見聴取が必須である。
Q · 民事再生に入った会社は、もうかっている事業を勝手に売って現金化できるの?
できません。裁判所の許可が要り、再生に必要な場合に限られます
民事再生法42条1項により、再生手続開始後に営業又は事業の全部若しくは重要な一部を譲渡するには裁判所の許可が必要です。しかも裁判所は「当該再生債務者の事業の再生のために必要である」と認める場合に限って許可できます。許可の前には、知れている再生債権者(債権者委員会があればその委員会)の意見(2項)と、労働組合等の意見(3項)を聴かなければなりません。許可を得ずにした行為は、41条2項の準用によりその効力を否定されうるため(4項)、買い手側にとっても重大なリスクとなります。
解説
民事再生を申し立てた会社の経営者なら、こう考えるかもしれない。「裁判所の手続に入ったとはいえ、会社はまだ自分のものだ。一番もうかっている事業部門を別会社に高く売って、その金で借金を整理すればいい」。ここが落とし穴である。民事再生法42条は、再生手続が始まった後、営業や事業の全部または重要な一部を譲渡するには裁判所の許可が必要だと定める。しかも裁判所は「その譲渡が事業の再生のために必要だ」と認めた場合に限ってしか許可を出さない。あなたが優良部門を切り売りして撤退するための譲渡なら、許可は下りない。さらに裁判所は許可の前に、知れている再生債権者の意見と、労働組合等の意見を聴かなければならない。つまり、あなたが事業を売る話は、あなたの債権者と従業員の耳に必ず届く。そして許可を得ずに勝手に売れば、その譲渡は無効として扱われる余地がある(41条2項の準用)。再生手続中の会社は、もう経営者の独断で動く船ではない。
法的な位置づけ
民事再生法42条は、再生手続開始後における再生債務者等の営業又は事業の全部若しくは重要な一部の譲渡、及び子会社等の株式又は持分の譲渡について、裁判所の許可を要件とする規定である。許可は事業の再生のために必要と認められる場合に限られ、許可に先立ち再生債権者及び労働組合等からの意見聴取が義務づけられる。
手順
- 1.譲渡対象が「重要な一部」に当たるか先に線引きする 売上・資産・従業員数・収益寄与度から、譲渡対象が事業全体に占める比重を数値化する。42条1項1号の「重要な一部」に該当するか微妙なら、許可を取る側に倒す。1項2号の子会社等株式の譲渡も同時に洗い出す
- 2.「事業の再生のために必要」を立証する資料を組み立てる 裁判所は再生に必要と認める場合に限り許可できる。譲渡がなければ事業価値が劣化する理由、譲渡代金が配当原資にどう反映されるか、雇用がどう承継されるかの三点を軸に説明書を作る
- 3.意見聴取の段取りを監督委員・裁判所と詰める 42条2項の再生債権者の意見聴取について、債権者委員会(117条2項)があるかを確認する。委員会があれば委員会の意見聴取で足りる。3項の労働組合等(組合がなければ労働者の過半数代表者)への聴取も同時に手配する
- 4.譲渡契約に「裁判所の許可を停止条件とする」条項を入れる 許可前に譲渡を実行すると42条4項(41条2項準用)により効力を否定されうる。契約書に許可取得を停止条件とし、不許可時の解除・費用負担を明記して買い手側のリスクも封じる
- 5.許可決定後にクロージングし、代金の使途を再生計画に反映する 許可決定を受けてから譲渡を実行する。譲渡代金がどのように配当原資となるかを再生計画案に明記し、債権者への説明可能性を確保する
よくある質問 AI による整理
Q1民事再生法42条の「重要な一部」とは何ですか?
条文に数値基準はありません。譲渡対象が再生債務者の事業全体に占める売上・資産・従業員規模、再生計画への影響などを総合して判断されます。範囲が微妙なら許可を取る側に倒すのが実務です。
Q2裁判所の許可を得ないで事業譲渡したらどうなりますか?
42条4項が41条2項を準用するため、許可なき行為は効力を否定されうる扱いになります。買い手にとっても、取引そのものが後から崩れる重大なリスクです。
Q3子会社の株式売却にも裁判所の許可が必要ですか?
42条1項2号により、会社法2条3号の2の子会社等の株式又は持分の譲渡も、一定の要件に該当する場合には許可が必要です。親会社本体の事業譲渡だけを見ていると見落とします。
Q4民事再生法42条と43条の違いは何ですか?
42条は事業譲渡そのものに裁判所の許可を要求する統制規定です。43条は事業譲渡に必要な株主総会の特別決議を裁判所の許可(代替許可)で代えられる規定で、機能が逆方向です。
Q5事業譲渡の許可申請にはどんな資料が必要ですか?
譲渡契約書案、譲渡対象の範囲と評価資料、譲渡代金の使途と配当原資への反映、雇用承継の方針、譲渡が再生に不可欠である理由の説明書などが典型です。裁判所・監督委員と事前に詰めます。
Q6債権者委員会があると手続はどう変わりますか?
42条2項ただし書により、知れている再生債権者全員ではなく債権者委員会(117条2項)の意見を聴けば足ります。意見聴取の負荷と所要時間が大きく減ります。
Q7会社更生や破産でも同じ許可が必要ですか?
手続ごとに根拠条文が異なります。民事再生は経営権が残る DIP 型のため42条で事前統制し、破産は管財人、会社更生は更生管財人が財産を管理する構造になっています。
Q8労働組合がない会社でも意見聴取はありますか?
42条3項の「労働組合等」には、組合がない場合の労働者の過半数を代表する者が含まれえます。組合の有無だけで意見を述べる機会が消えるわけではありません。
この条文についての質問 AI による整理
Q1民事再生って会社が自分で経営を続けられるんですよね? なら事業を売るのも自由なんじゃないですか?
経営権は残りますが「自由」ではありません。民事再生法42条により、営業・事業の全部または重要な一部の譲渡には裁判所の許可が必要で、しかも『事業の再生のために必要』と認められた場合に限られます。実務のポイント:実務では、どこまでが『重要な一部』に当たるかが最初の争点になります。範囲を狭く解釈して許可を取らずに進めると、後で41条2項準用により譲渡の効力を否定されかねない。専門家は迷ったら許可を取る側に倒します
Q2事業譲渡の許可って、申請すればだいたい通るものですか?
通るとは限りません。裁判所は『当該再生債務者の事業の再生のために必要であると認める場合に限り』許可できると42条1項が明記しています。優良部門を切り売りして撤退するだけの譲渡は、再生に必要とは認められにくい。実務のポイント:許可の実質的なハードルは『譲渡代金が債権者の配当にどう貢献するか』と『雇用がどう承継されるか』です。スポンサー型再生で許可を取りたいなら、この二点のストーリーを先に作り込むと通りやすい
Q3債権者の意見を聴くって書いてますが、債権者全員に聞くんですか? いつ意見を言えるんですか?
原則は知れている再生債権者の意見を聴きますが、債権者委員会(117条)があるときは、その委員会の意見を聴けば足ります(42条2項ただし書)。意見を述べる機会は裁判所が許可を出す前です。実務のポイント:意見聴取は許可前の一回が勝負。許可が出てしまえば譲渡は進みます。だから債権者にとっては、委員会に入って継続的に情報を取るのが、単発の意見より遥かに効く防御策です
Q4従業員や労働組合は、事業が売られるのをただ見ているしかないんですか?
いいえ。42条3項により、裁判所は許可をする場合に労働組合等の意見を聴かなければなりません。雇用の承継条件などについて、許可前に声を上げる法的な窓口があります。実務のポイント:組合がない職場でも『労働者の過半数を代表する者』が意見聴取の対象になりえます。事業譲渡で雇用が宙に浮きそうなら、代表者を立てて意見を出す権利を行使できる。黙っていると、その機会は許可とともに閉じます
間違えやすい点 AI による整理
- 「民事再生は会社が自分で経営を続ける手続(DIP 型)だから、財産の処分も自由」と理解している人がいる。ここが浅い。経営権は残るが、営業・事業の全部または重要な一部の譲渡という大きな処分には裁判所の許可が要る。DIP は「自由」ではなく「監督付きの自治」である。この深刻度を見誤ると、許可なき譲渡で取引全体が無効リスクを抱える
- 「裁判所の許可さえ取れば、どんな事業譲渡でも通る」と思いがちだが、問いの立て方が逆である。裁判所は『事業の再生のために必要』と認める場合に限って許可する。あなたが用意すべきは『売る許可をください』という申請ではなく、『この譲渡がなぜ再生に不可欠か』を裁判所と債権者に納得させる物語だ
- 「事業譲渡は経営者と買い手の二者で決める話」だと考える人が多い。本条の視点では、再生債権者と労働組合等という二つの集団が許可前の意見聴取を通じて手続に組み込まれている。あなたから見れば商談でも、法律から見れば利害関係人全員が関与する公的手続。この落差を知らないまま進めると、土壇場で反対意見に足を取られる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律の対象 | 42条:再生手続開始後の営業・事業の全部又は重要な一部の譲渡、子会社等株式の譲渡 | 41条:裁判所の許可を要する行為の一般規定(財産の処分、権利の放棄等) 43条:事業譲渡に必要な株主総会の特別決議に代わる裁判所の許可 |
| 許可の実質要件 | 「当該再生債務者の事業の再生のために必要であると認める場合」に限る | 各号所定の行為について裁判所が相当と認めるか 事業の継続のために必要であり、かつ株主総会招集が困難等の事情 |
| 意見聴取の相手方 | 知れている再生債権者(債権者委員会があればその委員会)+労働組合等 | 条文上は本条のような債権者・労働組合等の意見聴取を一般には課さない 株主の利益に配慮した手続(株主に対する通知等) |
| 許可なき行為の効力 | 4項が41条2項を準用し、効力を否定されうる | 41条2項:許可を得ないでした行為は無効(善意の第三者には対抗不可) 許可を欠けば株主総会決議が別途必要となり、決議なき譲渡は瑕疵を帯びる |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾の公司重整では、重整人が営業以外の財産処分等を行うには監督人の同意と法院の許可を要する。裁判所の事前統制という発想は共通するが、労働組合等への意見聴取の明文はない
韓国の回生手続でも営業譲渡には法院の許可を要する。日本の民事再生法を強く参照した構造で、管理人型と DIP 型が併存する点が異なる
ドイツは特に重要な法律行為(事業譲渡を含む)について債権者委員会の同意を要求する。裁判所ではなく債権者機関に統制権限を置く点が日本と対照的である
米国 Chapter 11では通常業務外の資産売却に bankruptcy court の承認を要する。日本42条は米国型 DIP を継受しつつ、労働組合等の意見聴取を加えた点で独自性がある
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- あなたがスポンサー型の事業再生を狙う経営者だとして、再生手続開始後にスポンサー候補へ主力事業を譲渡したい。だが「重要な一部」に当たれば、株主総会ではなく裁判所の許可が分水嶺になる。許可申請のタイミングと、債権者・労働組合への意見聴取の段取りを誤ると、せっかくのスポンサー契約が宙に浮く
- もし、取引先が民事再生に入った直後、その会社の看板事業がいつのまにか別会社に移っていたとしたら? あなたは再生債権者として「あの事業の売却代金は、私たちの配当原資に回るのか」を問う権利がある。本条は、その譲渡に裁判所の許可と債権者の意見聴取を義務づけ、あなたを蚊帳の外に置かせない
- 再生会社の従業員として、ある日「事業ごと他社に譲渡される」と聞かされた。労働組合等は本条3項により、裁判所が許可を出す前に意見を述べる機会を法律で保障されている。雇用がどう承継されるか、声を上げる窓口がここにある
- あなたが再生債務者の経営陣で、許可を取る時間が惜しいと考えている。だが許可を得ずに事業を譲渡すれば、41条2項の準用により、その行為の効力は否定されうる。買い手にとっても「許可なき譲渡」は爆弾で、後から取引そのものが崩れる
- 子会社の株式を全部売って資金を作りたい。これも一定の場合には本条1項2号で裁判所の許可が要る。親会社本体の事業譲渡だけ気にしていると、子会社株式の売却で足をすくわれる
取るべき行動
被害を受けた側:再生債権者として事業譲渡を警戒する立場なら、1. 裁判所に届く意見聴取の通知を見逃さない。許可前のこの機会が分岐点2. 譲渡対象・価格・買い手が再生計画とどう整合するかを精査、安すぎる切り売りなら根拠を示して反対意見を出す3. 債権者委員会(117条)の設立を働きかければ、委員会を通じて継続的に関与でき発言力が増す4. 譲渡代金が配当原資にどう反映されるか、再生計画案で確認する
訴えられた側:再生債務者の経営陣として事業を譲渡したいなら、1. その譲渡が『事業の再生のために必要』であることを裁判所に説明できる資料(事業価値の保全、スポンサーの資金が再生に不可欠である理由)を整える2. 許可申請前に、知れている再生債権者または債権者委員会、および労働組合等への意見聴取の段取りを監督委員・裁判所と詰める3. 絶対に許可前に勝手に譲渡しない。41条2項準用で効力を否定されるリスクがある4. 買い手との契約には裁判所の許可を停止条件とする条項を入れる
時効(請求できる期限):本条に特定の消滅時効はない。ただし許可は再生手続が継続している期間内の行為であり、再生計画案の提出期限(裁判所が定める)やスポンサー選定のスケジュールとの関係でタイミングが決定的。許可を得ずにした譲渡は41条2項の準用により効力を否定されうるため、時間に追われても許可を先取りしてはならない
学説
通説:42条の許可は再生手続における事前統制であり、DIP 型手続の下でも重要な財産処分については裁判所の監督を及ぼす趣旨と解される。「重要な一部」の判断は譲渡対象が事業全体に占める量的・質的比重の総合考慮によるとされる
実務的理解:許可の実質的なハードルは、譲渡代金が再生債権者への配当原資にどう貢献するか、および雇用がどのように承継されるかの二点にあり、スポンサー型再生ではこの二点の説明が許可取得の成否を分けるとされる
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.平成11年(1999年) 新設:民事再生法(平成11年法律第225号)制定に伴い新設。旧和議法に代わる DIP 型再建手続を導入するにあたり、再生債務者の業務遂行権(38条)を前提としつつ、重要な事業譲渡に裁判所の許可という事前統制と、再生債権者・労働組合等への意見聴取を課した
- 民事再生法 第41条裁判所の許可を要する行為の一般規定、本条4項が同条2項を準用
- 民事再生法 第38条再生債務者の業務遂行権・財産管理権の原則
- 民事再生法 第43条事業譲渡における株主総会決議に代わる裁判所の許可
- 民事再生法 第117条債権者委員会、本条2項ただし書の意見聴取の受け皿
- 会社法 第467条平時の事業譲渡に係る株主総会特別決議(本条は再生手続中の特則的統制)
- 会社法 第2条本条1項2号が引用する子会社等の定義(3号の2)
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める