民事再生法 第38条(再生債務者の地位)
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- 再生債務者は、再生手続が開始された後も、その業務を遂行し、又はその財産(日本国内にあるかどうかを問わない。第六十六条及び第八十一条第一項において同じ。)を管理し、若しくは処分する権利を有する。
- 2.再生手続が開始された場合には、再生債務者は、債権者に対し、公平かつ誠実に、前項の権利を行使し、再生手続を追行する義務を負う。
- 3.前二項の規定は、第六十四条第一項の規定による処分がされた場合には、適用しない。
この条文の基本情報
再生債務者の地位とは何ですか?
定義再生債務者の地位とは、民事再生法第38条に定められた規定で、「再生債務者は、再生手続が開始された後も、その業務を遂行し、又はその財産(日本国内にあるかどうかを問わない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事再生法第38条(再生債務者の地位)は、日本の民事再生法に含まれる条文です。
- 民事再生法第38条の条文原文は「再生債務者は、再生手続が開始された後も、その業務を遂行し、又はその財産(日本国内にあるかどうかを問わない。」で始まります。
- 民事再生法第38条は第二節 再生手続開始の決定に置かれています。
- 民事再生法の公布日は平成11年12月22日です。
- 民事再生法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 民事再生法第38条の前の条は民事再生法第37条です。
- 民事再生法第38条の次の条は民事再生法第39条です。
- 民事再生法第38条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第38条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225 - 本サイト収録
民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第38条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/411AC0000000225/38
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事再生法38条は、再生手続開始後も再生債務者が経営権を保持する DIP 型を定める。ただし債権者への公平誠実義務を負い、64条の管理命令が出れば経営権を失う。
Q · 民事再生が始まったら、社長は会社を追い出されて管財人に経営を奪われるんですか?
いいえ、原則として経営者が経営権を持ち続けます
民事再生法38条1項により、再生手続開始後も再生債務者(経営者)が業務遂行権と財産の管理処分権を保持します。これが DIP 型(占有を続ける債務者)です。ただし2項で全債権者に対し公平かつ誠実に権利を行使する義務を負い、資産隠しや一部債権者の優遇があると、3項・64条の管理命令で管財人が選任され経営権を失います。経営を管財人に引き継ぐ会社更生とは根本的に異なります。
解説
資金繰りが詰まって「もう会社は終わりだ、自分も経営から退場するしかない」と覚悟した経営者が、最初に知って血の気が戻るのが民事再生法38条だ。倒産手続というと、第三者の管財人が乗り込んできて経営者を追い出し、財産を全部握る場面を思い浮かべる人が多い。だが民事再生は違う。1項は、手続が開始された後も、再生債務者(あなたの会社、あなた自身)が業務を遂行し、財産を管理し処分する権利を持ち続けると定める。これが世界的に DIP(Debtor In Possession、占有を続ける債務者)と呼ばれる日本の倒産再建の背骨だ。ただし無条件ではない。2項は、その経営権の代償として、債権者に対して「公平かつ誠実に」権利を行使する義務を課す。そして3項、もし裁判所が64条の管理命令で管財人を選任すれば、あなたの経営権はその瞬間に剥奪される。経営権を握り続けられるか、取り上げられるか。その分水嶺は、あなたが誠実に振る舞うかどうかにかかっている。
法的な位置づけ
民事再生法38条は再生債務者の地位を定める規定であり、再生手続開始後も再生債務者が業務遂行権および財産の管理処分権を保持する DIP 型を明文化する。1項が権利の保持、2項が債権者への公平誠実義務、3項が64条の管理命令による適用除外を規定し、経営権の保持と剥奪の枠組みを構成する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.開始決定と管理命令の有無を確認する 取引先が民事再生を申し立てたら、まず再生手続開始決定の有無と、64条の管理命令が出ているかを確認する。管財人がいなければ38条1項により交渉相手は従来の経営者であり、過去の取引関係を再生計画交渉に活かせる
- 2.再生債権を届出期間内に届け出る 自分の債権を再生債権として届け出る。債権届出期間は裁判所が事件ごとに定め、これを過ぎると失権する。担保がある場合は別除権として手続外で実行できるか最優先で確認する
- 3.不公平な弁済を監視し監督委員へ通報する 一部の債権者だけが優遇されていないかを監視する。不公平な弁済や資産流出を見つけたら監督委員・裁判所へ報告する。2項の公平誠実義務違反は64条の管理命令(管財人選任)の根拠になる
- 4.(経営者側)申立て前に資金の流れを透明化する 経営者として再生を選ぶ場合、申立て前に資金の流れを透明化し、特定債権者への偏った弁済や親族・関連会社への資産移動を止める。否認・善管注意義務違反・管理命令のリスクを断ち、経営権を守る盾とする
よくある質問 AI による整理
Q1民事再生のDIPとは?
DIP(Debtor In Possession)とは、倒産手続開始後も債務者が経営権と財産の管理処分権を保持し、自ら事業を継続する再建手法です。民事再生法38条1項がその根拠です。
Q2民事再生と会社更生の違いは?
民事再生は経営者が続投する DIP 型(38条)、会社更生は管財人が経営を引き継ぐ管財人型(会社更生法72条)です。会社更生は手続が重く、実務では主に大企業が選びます。
Q3民事再生の監督委員とは?
監督命令(54条)により選任され、再生債務者の経営を監視する立場です。一定の重要行為には監督委員の同意(56条)が必要となり、DIP に対する統制装置として機能します。
Q4民事再生の公平誠実義務とは?
38条2項が課す義務で、再生債務者は全債権者に対し公平かつ誠実に権利を行使しなければなりません。特定債権者の優遇や資産隠匿は違反となり、管理命令の根拠になります。
Q5民事再生の申立てから開始決定までどのくらい?
事案により異なりますが、申立てから開始決定まで数週間程度が一般的です。この間に債権者と裁判所を納得させる準備が必要で、期間は裁判所が事件ごとに定めます。
Q6民事再生は個人でもできる?
できます。個人向けには小規模個人再生・給与所得者等再生の特則があります。38条の DIP 原則は個人・法人を問わず、再生債務者が地位を保持する構造の基礎です。
Q7取引先が民事再生したら債権は回収できる?
再生債権として届出期間内に届け出れば、再生計画に従って弁済を受けられます。届出を逃すと失権します。担保があれば別除権として手続外で実行できる場合があります。
Q8民事再生の再生計画とは?
債務の減免や弁済方法を定める計画で、債権者集会の決議と裁判所の認可を経て効力を生じます。再生債務者が案を作成し、多数の債権者が賛成できる水準で設計する必要があります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1民事再生って、結局は社長が会社を乗っ取られるってことですよね?
逆です。民事再生は原則として経営者がそのまま経営を続けられる制度で、これが38条1項の核心です。管財人が経営を引き継ぐのは64条の管理命令が出た例外的な場合だけ。経営者が退場させられるのは会社更生(会社更生法72条)の方です。実務のポイント:だからこそ実務では、経営権を残したい中小企業の経営者は迷わず民事再生を選びます。会社更生は手続が重く費用も巨額で、現実には大企業の選択肢。『再建したいなら、まず民事再生で経営権を守れるか』が初手の検討事項です
Q2経営権が残るなら、再生中も今まで通り自由に経営していいんですか?
自由ではありません。38条2項が、債権者に対して『公平かつ誠実に』権利を行使する義務を課します。つまり自分や一部の取引先の都合ではなく、全債権者の利益を考えて経営する受託者の立場に変わります。実務のポイント:この義務を軽く見て特定債権者を優遇したり資産を隠したりすると、64条の管理命令で経営権を失うだけでなく、取締役個人が損害賠償責任を負うこともある。経営権が残ることと、好き勝手できることは全く別物です
Q3どういうときに管財人がついて、経営権を取り上げられるんですか?
38条3項と64条により、再生債務者の財産の管理処分が失当であるなど、事業の再生のために特に必要があると裁判所が認めたとき、管理命令が出て管財人が選任されます。資産隠し、不公平な弁済、放漫経営の継続などが典型的な引き金です。実務のポイント:実務では、いきなり管財人がつくより、まず監督委員(54条)が選任され、その監視のもとで経営者が続投するパターンが大多数。管理命令は『最後の手段』です。だからこそ、申立て初期に誠実さを見せて監督委員の信頼を得られるかが、経営権を守る勝負どころになります
間違えやすい点 AI による整理
- 「倒産手続が始まれば、経営者は会社を追い出され、管財人が全部仕切る」と思い込んでいる人が多い。実は民事再生はその真逆で、原則として経営者が経営権を持ち続ける(38条1項)。管財人が選任されるのは64条の管理命令が出た例外的な場合だけだ。この一点を知っているかどうかで、再生を選ぶか破産を選ぶかという経営判断そのものが変わる
- 経営権が残ることは知っていても、その重みを取り違えている人がいる。経営権が残るのは『経営者への恩恵』ではなく、『債権者への公平誠実義務』とセットの責任だ(38条2項)。自由に経営できるのではなく、全債権者の利益を考えて経営する受託者の立場に変わる。この義務の深刻さを軽く見て一部の債権者を優遇すると、経営権を失うだけでなく個人責任まで負う
- 「民事再生も会社更生も、倒産再建だから中身は同じ」と考えるのは前提が間違っている。問うべきは『誰が経営権を握るか』だ。民事再生は経営者続投の DIP 型(38条)、会社更生は管財人が経営を引き継ぐ管財人型(会社更生法72条)。同じ『再建型倒産』でも、経営者にとっては天と地の差がある
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 経営権の主体 | 38条:再生債務者(経営者)が保持する DIP 型 | 64条:管理命令により管財人が経営権を取得 54条:監督委員のもとで経営者が続投 |
| 発動の前提 | 再生手続の開始(原則形) | 財産管理処分の失当等、再生に特に必要と裁判所が認定 監督が相当と裁判所が認めた場合 |
| 債務者に課される制約 | 公平誠実義務(2項) | 経営権の全面剥奪 重要行為に監督委員の同意(56条) |
| 経営者にとっての位置づけ | 原則・望ましい形 | 最後の手段・例外 実務上の多数パターン |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾の再建型手続は公司重整が中心で、重整人には既存の取締役が選ばれ得る点で DIP に近い運用も可能。ただし裁判所・重整監督人の関与が強い
韓国は2005年の統合倒産法で DIP(기존 경영자 관리인)を導入。既存経営者が管理人となる原則は日本の38条と類似する
ドイツは自己管理(Eigenverwaltung)として債務者が管理処分権を保持できるが、裁判所の許可と Sachwalter(監督人)の監督が前提となる
米国 Chapter 11の Debtor in Possession が DIP の起源。日本の民事再生38条はこのモデルを参照して制度設計された
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 長年取引してきた仕入先が民事再生を申し立てた。あなたは「もう代金は回収できない、相手の会社は他人の手に渡った」と諦めかけるが、38条1項により経営者はそのまま居座っている。つまり交渉相手は今までと同じ社長だ。再生計画の中であなたの債権がどう扱われるか、最初の債権者集会までの動き方で回収率が変わる
- あなたが中小企業の経営者で、コロナ後の売上回復が間に合わず資金ショート寸前。破産すれば会社も自宅も失う。だが民事再生なら、あなたは社長の椅子に座ったまま会社を立て直せる。問題は、申立てから開始決定までの数週間に、債権者と裁判所をどう納得させるか。残された準備時間はわずかだ
- もし、再生手続中の経営者がこっそり親族の会社へ資産を流していたら、どうなる? 2項の公平誠実義務違反だ。債権者や監督委員がこれを察知すれば、裁判所は64条の管理命令を出し、3項により経営権は管財人へ移る。せっかく握った経営権を、不誠実な一手で自ら手放すことになる
- 取締役として再生中の会社を経営しているあなたのもとに、一部の大口債権者から「うちの債権だけ先に払え」と圧力がかかる。応じれば2項の『公平』義務に反し、後で否認される。ここで断れるかどうかが、あなた自身が善管注意義務違反で個人責任を問われるかの分かれ目になる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 取引先(再生債務者)が民事再生を申し立てたら、まず開始決定の有無と、64条の管理命令が出ているかを確認。管財人がいなければ、交渉相手は従来の経営者だ2. 自分の債権を再生債権として届け出る(債権届出期間を絶対に逃さない、過ぎると失権する) 3. 一部の債権者だけ優遇されていないか監視し、不公平な弁済を見つけたら監督委員・裁判所へ。2項の公平誠実義務違反は管財人選任の根拠になる4. 担保があれば別除権として手続外で実行できる場合がある、担保の有無を最優先で確認
訴えられた側:1. 経営者として再生を選ぶなら、申立て前に資金の流れを透明化し、特定債権者への偏った弁済を止める。2項の公平誠実義務違反は経営権剥奪(3項・64条)に直結する2. 監督委員が選任される(54条)のが通常なので、一定の重要行為には監督委員の同意(56条)が要ると心得る3. 親族や関連会社への資産移動は厳禁、否認の対象になり、善管注意義務違反で個人責任を問われる4. 弁護士・公認会計士と組み、再生計画案を債権者の多数が賛成できる水準で設計する
時効(請求できる期限):38条自体に時効はない。経営権の保持は手続開始から再生計画の遂行完了まで続くが、64条の管理命令が出れば即時に剥奪される。実務上は、債権届出期間・再生計画案の提出期限・債権者集会の期日が手続を縛る。これらは裁判所が事件ごとに定めるため、開始決定の通知書で必ず確認すること(最新の手続運用をご確認ください)
学説
通説:38条は経営者続投型(DIP)の基本規定であり、1項の権利保持は2項の公平誠実義務と一体をなす。義務違反や管理処分の失当があれば64条の管理命令によって経営権が剥奪される点で、信頼付与と統制が組み合わされていると解される。
改正沿革 AI による整理
- 平成11年(1999年)制定 民事再生法の制定により新設。旧和議法に代わり、再生債務者に経営権を残す DIP 型を明文化した。なお財産が国内外を問わない旨の括弧書きなど、その後の改正履歴は要人的検証
改正の年表
- 1.平成11年(1999年) 新設:民事再生法の制定により新設。旧和議法に代わり、再生債務者に経営権を残す DIP 型を明文化。1項で権利保持、2項で公平誠実義務、3項で64条管理命令による適用除外を規定した(その後の改正履歴は要人的検証)。
- 民事再生法 第64条管理命令、管財人選任による経営権の剥奪
- 民事再生法 第66条管財人の業務遂行・管理処分権、DIPに代わる権限主体
- 民事再生法 第54条監督命令・監督委員の選任、DIPの監視装置
- 民事再生法 第56条監督委員の同意を要する行為、経営権の制約
- 民事再生法 第85条再生債権の弁済禁止、公平義務の具体化
- 会社更生法 第72条更生手続は管財人が経営権を専有する管財人型、DIP型の対照
- 破産法 第78条破産管財人が財産の管理処分権を専属、清算型との対照
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