運送人は、船荷証券の記載が事実と異なることをもって善意の所持人に対抗することができない。
要点商法 760 条は、運送人が船荷証券の記載と事実の相違をもって善意の所持人に対抗できないと定める。証券を信じた善意の所持人には、運送人が記載どおりの責任を負う。
Q · 船荷証券に書いた中身が実物と違ったら、運送人は「書き間違えただけ」で逃げられる?
善意の所持人には言い訳できず、記載どおりの責任を負う
商法 760 条により、運送人は船荷証券の記載が事実と異なることをもって善意の所持人に対抗できません。証券に「鋼材 1000 トン」と記載されているのに現物が 800 トンでも、その食い違いを知らずに証券を受け取った善意の所持人に対しては、記載どおりの責任を負います。とくに無故障(クリーン)船荷証券では、運送人が積込時の荷物の完全性を証券上で認めたことになり、後から「本当は傷があった」と主張しても善意の第三者には通用しません。ただし運送人が荷物を一切受領していない空券の場合、保護が及ぶかは解釈が分かれます。
国際貿易の世界では、船倉に積んだ荷物そのものより、その荷物を表す一枚の紙の方が高く売買される。船荷証券だ。あなたがこの紙を善意で受け取った所持人なら、商法760条はあなたに強力な盾を与える。証券に「鋼材1000トン」と書いてあるのに、コンテナを開けたら800トンしかなかった、あるいは中身がまるで別物だった。それでも運送人は「記載が事実と違っただけだ」とあなたに抗弁できない。記載どおりの責任を負わされる。なぜか。あなたはその紙の文言だけを信じて代金を払い、あるいは銀行から融資を引いたからだ。現物を確認する術がない取引で、紙の信用を法が運送人に守らせなければ、国際物流も貿易金融も一日として回らない。ただし運送人がそもそも荷物を一切受け取っていない「空券」のケースで、どこまで責任を負うかは実務上、解釈が分かれている。
商法 760 条は船荷証券の文言証券性を定める規定であり、運送人は証券の記載が事実と異なることをもって善意の所持人に対抗できない旨を規定する。証券を受け取った時点でその不一致を知らなかった善意の所持人に対し、運送人は記載どおりの数量・状態の運送品を引き渡す責任を負い、事後に「実際は記載と違った」と主張することは許されない。
海上運送で運送人が発行する有価証券で、運送品の受取・船積を証明し、証券と引換えに運送品を受け取れる権利を表します。証券そのものが売買・担保の対象として流通します。
運送人と善意の所持人の関係では、運送の内容が証券の記載どおりに確定する性質をいいます。商法 760 条が根拠で、現物より証券の文言が優先して責任を画定します。
証券を受け取った時点で、記載と現物の食い違いを知らなかった所持人です。受領前に不備を知らされていれば善意を欠き、760 条の保護は受けられません。
運送人が荷物を一切受領していない空券では、運送人を運送契約上の責任主体といえるかが争われ、760 条の保護が及ぶかは実務上、解釈が分かれています。
効きません。補償状は荷主と運送人の間だけの約束で、善意の第三者には 760 条がそのまま適用され、運送人は記載どおりの責任を負います。
運送品の滅失・損傷・延着の責任は引渡し(全部滅失なら引き渡されるべき日)から 1 年で消滅します(商法 585 条)。起算日を即座に確定する必要があります。
船積港または陸揚港が日本国外にある国際海上運送には国際海上物品運送法が適用され、同法を通じて商法の船荷証券規定が準用されます(最新の改正状況をご確認ください)。
運送品の引渡しを請求するには船荷証券の返還(受戻し)が必要となる性質です。証券を持つ者だけが運送品を受け取れる仕組みで、文言証券性と並ぶ船荷証券の基本的効力です。
荷物の傷や不足の但し書きが一切ないものを「無故障(クリーン)船荷証券」という。これがあると運送人は積込時に荷物が完全だったと証券上で認めたことになり、760条で善意の所持人へ「本当は傷があった」と抗弁できなくなる。業界裏話ヒント:実務では荷主が傷あり貨物でもクリーンB/Lを欲しがり、運送人へ補償状(L/I)を差し入れてクリーン化させる慣行がある。だが補償状は荷主と運送人の間だけの約束で、善意の第三者には一切効かない。受け取ったB/Lがクリーンなら、あなたは記載どおりの良品として戦える
無制限ではない。運送人の責任には限度額の定めがあり、運送品の滅失・損傷の責任は引渡しから1年で消滅する(商法585条)。さらにあなたが証券受領時に食い違いを知っていれば「善意」を欠き、760条の保護自体が外れる。業界裏話ヒント:運送人は「あなたは検品に立ち会ったから知っていたはず」と善意を崩しにくる。荷揚げ地の検品記録は有利な証拠だが、それを証券受領の「後」に行ったと時系列で整理できれば、受領時点の善意が守られる。順序の説明が勝負を分ける
原則として運送人は証券の文言に拘束されるので、銀行は紙の記載を信じて融資できる(760条)。ただし運送人が荷物を一切受領していない「空券」だと、運送人を責任主体に問えるかが実務上割れており、紙だけで安全とは限らない。業界裏話ヒント:信用状取引で銀行は書類の文面だけを審査し、現物も真偽も確認しないのが建前だ。だから精巧な偽造船荷証券を使った貿易金融詐欺が後を絶たない。担保に取る側は、運送人の実在と船積みの事実確認まで踏み込めるかが分かれ目になる
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 規律する効力 | 760 条:文言証券性(記載と事実の相違を善意の所持人に対抗不可) | — |
| 誰を守るか | 現物を見られない善意の所持人 | — |
| 典型場面 | 記載と現物の数量・状態が食い違ったときの責任追及 | — |
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