国家公務員法 第108条の5(交渉)
クイックジャンプ
- 当局は、登録された職員団体から、職員の給与、勤務時間その他の勤務条件に関し、及びこれに附帯して、社交的又は厚生的活動を含む適法な活動に係る事項に関し、適法な交渉の申入れがあつた場合においては、その申入れに応ずべき地位に立つものとする。
- 2.職員団体と当局との交渉は、団体協約を締結する権利を含まないものとする。
- 3.国の事務の管理及び運営に関する事項は、交渉の対象とすることができない。
- 4.職員団体が交渉することのできる当局は、交渉事項について適法に管理し、又は決定することのできる当局とする。
- 5.交渉は、職員団体と当局があらかじめ取り決めた員数の範囲内で、職員団体がその役員の中から指名する者と当局の指名する者との間において行なわなければならない。交渉に当たつては、職員団体と当局との間において、議題、時間、場所その他必要な事項をあらかじめ取り決めて行なうものとする。
- 6.前項の場合において、特別の事情があるときは、職員団体は、役員以外の者を指名することができるものとする。ただし、その指名する者は、当該交渉の対象である特定の事項について交渉する適法な委任を当該職員団体の執行機関から受けたことを文書によつて証明できる者でなければならない。
- 7.交渉は、前二項の規定に適合しないこととなつたとき、又は他の職員の職務の遂行を妨げ、若しくは国の事務の正常な運営を阻害することとなつたときは、これを打ち切ることができる。
- 8.本条に規定する適法な交渉は、勤務時間中においても行なうことができるものとする。
- 9.職員は、職員団体に属していないという理由で、第一項に規定する事項に関し、不満を表明し、又は意見を申し出る自由を否定されてはならない。
この条文の基本情報
交渉とは何ですか?
定義交渉とは、国家公務員法第108条の5に定められた規定で、「当局は、登録された職員団体から、職員の給与、勤務時間その他の勤務条件に関し、及びこれに附帯して、社交的又は厚生的活動を含む適法な活動に係る事項に関し、適法な交渉…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 国家公務員法第108条の5(交渉)は、日本の国家公務員法に含まれる条文です。
- 国家公務員法第108条の5の条文原文は「当局は、登録された職員団体から、職員の給与、勤務時間その他の勤務条件に関し、及びこれに附帯して、社交的又は厚生的活動を含む適法な活動に係る事項に関し、適法な交渉…」で始まります。
- 国家公務員法第108条の5は第十節に置かれています。
- 国家公務員法の公布日は昭和22年10月21日です。
- 国家公務員法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月2日時点では廃止情報はありません。
- 国家公務員法第108条の5の前の条は国家公務員法第108条の4です。
- 国家公務員法第108条の5の次の条は国家公務員法第108条の5の2です。
- 国家公務員法第108条の5には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第108条の5 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000120 - 本サイト収録
国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第108条の5(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月2日)https://lawplayer.com/jp/article/322AC0000000120/108_5
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点国家公務員法108条の5は、登録職員団体から勤務条件に関する適法な交渉の申入れがあれば、当局が応ずべき地位に立つと定める。ただし団体協約を締結する権利は含まれない。
Q · 国家公務員の組合は、当局と交渉して合意すれば協約を結べるの?
交渉はできるが協約は結べず、合意に法的拘束力はない
国家公務員法108条の5第1項により、当局は登録職員団体から勤務条件に関する適法な交渉の申入れがあれば応ずべき地位に立ちます。しかし第2項は団体協約を締結する権利を否定しているため、合意しても法的拘束力はありません。定員や組織などの管理運営事項は交渉対象外(第3項)です。勤務条件の改善は、人事院勧告や行政措置要求(86条)といった別ルートで補われる仕組みになっています。
解説
国家公務員の世界には「交渉」はあっても、「協約」はない。民間の労働組合なら、会社と賃上げで合意すれば労働協約になり、法的な拘束力を持つ。一方、国家公務員法108条の5は、登録された職員団体(公務員の労働組合にあたる団体)から適法な申入れがあれば、当局は交渉に「応ずべき地位に立つ」と定める。そのうえで第2項が、団体協約(労使間の契約として拘束力を持つ取り決め)を結ぶ権利をはっきり否定している。交渉のテーブルにはつけるが、合意しても法的には縛れない。これが出発点になる。さらに、定員、予算、組織改編といった「国の事務の管理及び運営に関する事項」(管理運営事項)は交渉の対象外とされる。交渉の相手も、その事項を実際に決められる当局に限られる。出席人数、議題、時間、場所は事前の取決めが必要で、ルールを外れた交渉や業務を妨げる交渉は、当局が打ち切ってよい。この枠組みを知っている側は、要求を「勤務条件」の言葉に組み直し、決定権者を正しく名指しし、手続の不備を理由に打ち切られる隙を与えない。知らない側は、延々と空振りを続けることになる。
法的な位置づけ
国家公務員法108条の5は、国家公務員の職員団体と当局との交渉の枠組みを定める規定である。登録職員団体からの勤務条件に関する適法な申入れに対し当局が応ずべき地位に立つことを認める一方、団体協約締結権を否定し、管理運営事項を交渉対象から除外し、交渉員の員数・議題・時間・場所の事前取決めと打切り事由を定める。
手順
- 1.登録状況と交渉事項を確認する 職員団体が人事院に登録されているか(108条の3)、変更届出が済んでいるかを確認する。要求事項を一つずつ「勤務条件」か「管理運営事項」かに仕分け、勤務条件の言葉で書き直す
- 2.決定権限のある当局を特定して申し入れる 交渉事項を適法に管理・決定できる当局(第4項)を特定し、その当局を名指しした書面で交渉を申し入れる
- 3.予備交渉で員数・議題・日時・場所を取り決める 第5項に基づき、交渉員の員数、議題、時間、場所その他必要な事項を事前に取り決め、合意内容を文書に残す。役員以外を交渉員にする場合は執行機関の委任状を用意する(第6項)
- 4.本交渉を行い、結果を別ルートにつなげる 取決めの範囲内で交渉し、職務遂行を妨げない運営を心がける(第7項)。合意に拘束力はないため、実現には規則改正・運用変更の要請や、行政措置要求(86条)を検討する
よくある質問 AI による整理
Q1国家公務員 団体交渉権 あるの?
限定的にあります。国家公務員法108条の5により当局は交渉に応ずべき地位に立ちますが、団体協約締結権は否定されており、民間の団体交渉権とは性質が異なります。
Q2管理運営事項とは何ですか?
定員、予算、組織改編、個々の人事配置など、国の事務の管理及び運営に関する事項です。国家公務員法108条の5第3項により交渉の対象にできません。
Q3国家公務員の組合 交渉 勤務時間中にできる?
適法な交渉は勤務時間中でも行えます(第8項)。ただし給与を受けながら行えるかは人事院規則17-2の定める場合に限られるため、別に確認が必要です。
Q4当局は交渉を打ち切ることができる?
できます。員数・議題等の事前取決めに適合しなくなった場合や、他の職員の職務遂行や国の事務の正常な運営を阻害する場合に打ち切れます(第7項)。
Q5職員団体の交渉員は誰がなれる?
原則として職員団体の役員から指名された者です。特別の事情があれば役員以外も指名できますが、執行機関からの委任を文書で証明できる者に限られます(第6項)。
Q6交渉の相手はどの当局?
交渉事項について適法に管理または決定できる当局に限られます(第4項)。権限のない出先機関に申し入れても、本条の交渉の相手方にはなりません。
Q7組合に入っていない公務員は意見を言えない?
言えます。第9項は、職員団体に属していないことを理由に勤務条件に関する不満の表明や意見の申出の自由を否定してはならないと定めています。
Q8未登録の職員団体とも交渉できる?
話し合うこと自体は禁止されていませんが、当局が応ずべき地位に立つのは登録職員団体からの申入れに限られます。未登録団体への対応は当局の裁量です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1組合が登録されてないと、交渉してもらえないんですか?
本条1項で当局が交渉に「応ずべき地位」に立つのは、人事院に登録された職員団体(108条の3)からの申入れに限られます。未登録の団体と話し合うこと自体は禁止されていませんが、応じるかどうかは当局の裁量になります。実務のポイント:登録には規約の必要記載事項や、構成員を同一の職員に限る要件などがあります。役員の交代や規約の改正を放置していると、登録の効力が争われる材料になりえます。変更の届出を毎年確認しておくことが、交渉力の土台になります
Q2人事異動や定員削減について、組合は何も言えないんですか?
定員、組織、個々の人事配置そのものは、本条3項の管理運営事項として交渉の対象外とされるのが原則です。ただし、それに伴う勤務時間や労働負担など勤務条件への影響部分が交渉対象になるかは、実務上、解釈が分かれています。実務のポイント:要求を「削減するな」と書けば門前払いの口実になります。「削減後の業務量に対する超過勤務と休暇の取扱い」と書けば、勤務条件として土俵に乗せやすくなります。文言の選び方一つで、テーブルの有無が決まります
間違えやすい点 AI による整理
- 「当局は交渉に応じる義務があるのだから、合意すればそのとおり実行される」と考えるのは誤りである。第2項は団体協約を結ぶ権利を否定しており、合意に法的拘束力はない。勤務条件の多くは法律、人事院規則、給与法で決まるため、交渉結果を実現させるには、それらの改正や運用の変更につなげる必要がある
- 交渉は勤務時間中でもできる(第8項)ことを知っている人は多い。しかし、職員団体の活動を給与を受けながら行えるのは人事院規則で定める場合に限られる(108条の6第6項、人事院規則17-2)。要件を外れた活動は勤務を欠いたものとして扱われうる。「勤務時間中にできる」と「有給で何でもできる」は別の話である(最新の規定をご確認ください)
- 「交渉を断られた。不当労働行為として労働委員会に救済を申し立てよう」という発想そのものが前提から誤っている。一般職の国家公務員には労働組合法が適用されず(国家公務員法附則16条)、民間のような不当労働行為救済の手続はない。争う場は、人事院への行政措置要求(86条)や、不利益処分への審査請求といった公務員法独自のルートになる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 制度の性格 | 108条の5:登録職員団体と当局の交渉(協約締結権なし) | 86条:職員個人・団体による人事院への行政措置要求 98条2項:争議行為の禁止 |
| 相手方 | 交渉事項を適法に決定できる当局 | 人事院 (禁止規定のため相手方なし) |
| 結果の拘束力 | 合意に法的拘束力なし | 人事院の判定・勧告による是正の途 違反すると懲戒等の対象 |
| 対象事項 | 勤務条件と附帯する適法な活動(管理運営事項は除外) | 給与、勤務時間その他の勤務条件 同盟罷業、怠業その他の争議行為全般 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾の公務員は労働組合ではなく公務人員協會を組織し、協商を行えるが、争議権はなく、協商できない事項が法定されている点で日本と構造が近い
韓国は公務員労組に団体交渉と協約締結を認めるが、法令・予算で定まる事項は協約の効力が制限される。協約締結権を全面否定する日本より一歩踏み込んだ設計
ドイツの官吏には労働協約も争議権もなく、勤務関係の法規準備に労働組合の中央組織が関与する参加制度で補われる
米国連邦公務員は労働協約を締結できるが、管理権事項は交渉対象から除外され、給与の多くは法定。管理運営事項除外は日本と共通する発想
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- もし職員団体の役員であるあなたが超過勤務の縮減を申し入れ、課長から「それは管理運営事項だから交渉しない」と一言で断られたら、どうなる? 業務量の配分そのものは対象外になりやすい。だが、その結果として生じる勤務時間や休息の扱いは勤務条件に当たる。要求の切り口を変えれば、交渉のテーブルは閉じていない
- あなたは地方支分部局の総務課長で、組合から本省の給与制度について交渉を求められた。第4項により、交渉の相手はその事項を適法に決められる当局に限られる。自分に権限のない事項だと文書で示して窓口を案内すれば、交渉拒否だと責められる余地は小さくなる
- 来週の交渉に、職員団体は専門知識を持つ外部の支援者を同席させたい。役員以外の人を交渉員にするには、特定の事項について執行機関から委任を受けたことを文書で証明する必要がある(第6項)。委任状を用意しないまま当日を迎えると、その場で打ち切られる口実を当局に与えてしまう
- 組合に入っていない若手職員が、休憩時間が実質的に取れないと上司に訴えた。「組合を通せ」と突き返された。第9項は、職員団体に属していないことを理由に不満の表明や意見の申出を否定してはならないと定めている
- 交渉が予定時間を二時間超え、窓口業務の職員まで呼び出されて議場が騒然となった。他の職員の職務遂行を妨げた時点で、当局は交渉を打ち切ることができる(第7項)
取るべき行動
被害を受けた側:1. 職員団体が人事院に登録されているかをまず確認する。本条で当局に応諾の地位が生じるのは登録団体の申入れに限られる2. 要求を勤務条件に引き直し、決定権限のある当局を名指しした書面で申し入れる3. 人数、議題、日時を予備交渉で合意し、記録に残す4. 拒否や打ち切りが不当だと考えるなら、勤務条件について人事院への行政措置要求(86条)を検討する。組合活動を理由とする不利益取扱い(108条の7)があれば、審査請求の準備に入る
訴えられた側:1. 申入れの団体が登録団体か、事項が交渉対象か(第1項、第3項)、自分に決定権限があるか(第4項)を確認する2. 拒否するときは理由を具体的に文書で示す。権限外の事項なら、権限のある当局を案内する3. 打ち切るときは、第7項のどの要件に当たるのかを記録する4. 非組合員からの意見申出を「組合を通せ」と退けない(第9項)
時効(請求できる期限):交渉の申入れや行政措置要求(86条)には、特定の時効はない。ただし、組合活動を理由とする不利益処分を争う場合、人事院への審査請求は処分説明書を受け取った日の翌日から3か月以内、処分があった日の翌日から1年以内という期限がある(90条の2)。最新の改正状況をご確認ください
学説
通説:勤務条件法定主義のもとでは協約締結権を認めることはできず、本条の交渉は勤務条件の決定に職員の意見を反映させる手続として位置づけられる。管理運営事項の範囲は、勤務条件への影響部分との切り分けで解釈が分かれる
改正沿革 AI による整理
- 昭和40年(1965年)改正 ILO第87号条約の批准に伴う国家公務員法の改正で、職員団体に関する108条の2以下の規定が整備され、本条の交渉規定もこのとき設けられたとされる。その後の改正の有無と内容は人による検証が必要
- 国家公務員法 第108条の2職員団体の定義と管理職員等の区分
- 国家公務員法 第108条の3人事院への職員団体の登録要件
- 国家公務員法 第108条の7組合活動を理由とする不利益取扱いの禁止
- 国家公務員法 第98条争議行為の禁止(第2項)
- 国家公務員法 第86条勤務条件に関する行政措置要求
- 行政執行法人の労働関係に関する法律 第8条行政執行法人職員の団体交渉と協約締結
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める