刑事訴訟法 第105条の2
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前三条の規定は、電磁的記録提供命令(第百二条の二第一項第一号ロに掲げる方法による提供を命ずるものに限る。)による電磁的記録の提供について準用する。この場合において、第百三条及び前条中「又は所持する物」とあるのは、「その他利用する権限を有する電磁的記録」と読み替えるものとする。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 刑事訴訟法第105条の2は、日本の刑事訴訟法に含まれる条文です。
- 刑事訴訟法第105条の2の条文原文は「前三条の規定は、電磁的記録提供命令(第百二条の二第一項第一号ロに掲げる方法による提供を命ずるものに限る。」で始まります。
- 刑事訴訟法第105条の2は第九章 押収及び捜索に置かれています。
- 刑事訴訟法の公布日は昭和23年7月10日です。
- 刑事訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年9月5日時点では廃止情報はありません。
- 刑事訴訟法第105条の2の前の条は刑事訴訟法第105条です。
- 刑事訴訟法第105条の2の次の条は刑事訴訟法第106条です。
- 刑事訴訟法第105条の2には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第105条の2 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131 - 本サイト収録
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第105条の2(LawPlayer 収録、取得日 令和8年9月5日)https://lawplayer.com/jp/article/323AC0000000131/105_2
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点刑事訴訟法105条の2は、電磁的記録提供命令に前三条の押収拒絶権を準用する。「所持する物」を「利用する権限を有する電磁的記録」と読み替え、クラウド上のデータにも秘匿特権を及ぼす。
Q · クラウド上の電子カルテを出せと命じられたら、医師は拒めるんですか?
業務上知り得た他人の秘密なら拒める
刑事訴訟法105条の2は、電磁的記録提供命令について103条から105条の押収拒絶権を準用します。医師・弁護士・弁護人・公証人・宗教の職にある者が業務上委託を受けて知り得た他人の秘密に関する記録であれば、提供を拒むことができます。さらに「所持する物」を「利用する権限を有する電磁的記録」と読み替えるため、サーバーを自分で持っていなくてもアクセス権限があれば拒絶主体になりえます。ただし本人の承諾がある場合等は拒めません(105条ただし書)。
解説
捜査機関があなたのクラウド上のデータを取りに来るとき、二つのルートがある。一つはサーバーそのものを差し押さえるルート、もう一つは「そこにあるデータを記録媒体に移して出せ」と命じるルート。105条の2は後者のルートに、前三条(103条から105条)の秘匿特権をそのまま持ち込む条文である。つまり、医師・弁護士・弁護人・公証人・宗教職が業務上預かった秘密は、紙のカルテであろうとクラウドの電子カルテであろうと、押収を拒める。公務員の職務上の秘密も同じ。ここで見落とされやすいのは読み替え規定だ。従来の条文は「所持する物」を前提にしていたが、クラウドでは誰も物理的に所持していない。そこで「その他利用する権限を有する電磁的記録」と読み替える。あなたが所有していなくても、アクセス権限を持っているだけで拒絶主体になりうるという設計である。
法的な位置づけ
刑事訴訟法105条の2は、電磁的記録提供命令による記録の提供に対し、公務上の秘密(103条・104条)および業務上の秘密(105条)に基づく押収拒絶権を準用する規定である。「所持する物」を「その他利用する権限を有する電磁的記録」と読み替え、物理的占有ではなく利用権限を基準に拒絶主体を画する。
よくある質問 AI による整理
Q1刑事訴訟法105条の2とは何ですか?
電磁的記録提供命令に、103条から105条の押収拒絶権を準用する規定です。クラウド上のデータにも医師・弁護士等の秘匿特権が及ぶことを明確にしています。
Q2電磁的記録提供命令とは何ですか?
102条の2に基づき、記録媒体への記録・印刷等の方法で電磁的記録の提供を命じる処分です。105条の2が準用するのは同条1項1号ロの方法によるものに限られます。
Q3押収拒絶権は誰が持っていますか?
医師、歯科医師、助産師、看護師、弁護士、弁理士、公証人、宗教の職にある者など105条本文が列挙する者と、公務上の秘密を扱う103条・104条の主体です。
Q4クラウド上のデータでも押収を拒否できますか?
できます。105条の2の読み替え規定により、「所持する物」が「利用する権限を有する電磁的記録」となるため、物理的占有がなくても拒絶主体になりえます。
Q5経営データや職員の勤務記録も守られますか?
守られません。保護対象は業務上委託を受けて知り得た「他人の秘密」に限られ、経営数値・従業員データ・自社に関する記録は範囲外です。
Q6本人が承諾したら拒絶できませんか?
拒絶できません。105条ただし書により、本人が承諾した場合、押収の拒絶が被告人のためのみにする権利の濫用と認められる場合等は例外となります。
Q7拒絶はいつまでに主張すべきですか?
命令に付された応答期限内です。本条に固有の期間規定はありませんが、任意に提供した後に撤回することは事実上困難なため、初動での理由明示が重要です。
Q8クラウド事業者に命令が行った場合はどうなりますか?
事業者自身は104条・105条の秘匿主体でないため原則拒絶できません。利用者が拒絶権を行使する機会は、契約上の通知条項の有無に左右されます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1クラウド事業者に直接命令が行った場合、うちの拒絶権はどうなるんですか?
電磁的記録提供命令は102条の2の枠組みで、記録を利用する権限を有する者に向けられます。事業者が名宛人になる場合、事業者自身は104条・105条の秘匿主体ではないため拒絶できないのが原則です。実務のポイント:だからこそクラウド契約の段階で、捜査機関からの請求時に利用者へ通知する条項があるかを確認しておく。通知条項の有無で、あなたが拒絶権を行使する機会そのものが生まれるかどうかが変わる
Q2医療機関ですが、電子カルテ全部を守れると思っていいですか?
守れるのは業務上委託を受けて知り得た他人の秘密の部分です(104条、105条)。レセプト請求の管理データ、職員のシフト、経営数値は秘匿特権の対象外です。実務のポイント:命令が来てから範囲を精査すると間に合わない。平時に電子カルテと経営系データを別領域に分けておくと、切り分けの主張が一気に通りやすくなる
Q3拒絶したら業務妨害みたいに扱われませんか?
法律上認められた押収拒絶権の行使であり、正当な理由に基づく拒絶が直ちに不利益に扱われるものではありません。ただし105条ただし書のとおり、本人の承諾がある場合や権利の濫用と認められる場合は拒絶できません。実務のポイント:全面拒絶で押し切ろうとすると濫用の疑いを招きやすい。守る部分を特定し、非該当部分は速やかに応じる姿勢を見せた方が、結果として核心が守られる
間違えやすい点 AI による整理
- 「秘匿特権はモノとしての記録に対するものだから、クラウド上のデータには及ばない」という理解は、まさにこの条文が塞いだ穴である。105条の2は前三条を準用し、さらに「所持する物」を「利用する権限を有する電磁的記録」と読み替えることで、物理的占有を要件から外した
- 押収拒絶権があることは知っていても、その射程の狭さを知らない人が多い。104条・105条が守るのは「業務上委託を受けたため知り得た他人の秘密」であって、専門職が持っているデータすべてではない。経営情報、従業員データ、自分自身に関する記録は保護外であり、ここを混同すると拒絶権の主張ごと崩れる
- 「拒絶すれば終わり」と考えがちだが、法律から見れば拒絶は手続の入口にすぎない。105条ただし書には本人の承諾、押収拒否が権利の濫用にあたる場合などの例外が置かれており、拒絶の当否は最終的に裁判所が判断する。拒絶した瞬間に安全圏に入るわけではない
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 対象となる処分 | 刑訴105条の2:電磁的記録提供命令(102条の2第1項1号ロ) | 刑訴105条:物の押収(差押え) 刑訴149条:証人尋問における証言 |
| 拒絶主体 | 利用する権限を有する者(占有不要) | その物を所持する者 証人として尋問を受ける者本人 |
| 保護対象 | 業務上委託を受け知り得た他人の秘密に関する電磁的記録 | 同左の秘密に関する物 同左の秘密に関する事実 |
| 例外 | 105条ただし書を準用(本人の承諾、権利の濫用等) | 本人の承諾、権利の濫用等(ただし書) 本人の承諾、149条ただし書の各事由 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は業務上秘密について拒絶証言権を定めるが、電磁的記録の提供命令に対する準用を明文化した規定の整備状況は日本と異なる
韓国も業務上の秘密に関する押収拒否を定める。デジタル証拠の押収・捜索については別途の実務指針が形成されている
ドイツは証言拒絶権者に対応する押収禁止(Beschlagnahmeverbot)を定め、データについても保護が及ぶと解されている
米国はコモンロー上の特権として構成し、電子的に保存された情報(ESI)についても privilege review の手続で保護を図る
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- クリニックの院長であるあなたのもとに、患者の刑事事件に関して電磁的記録提供命令が届いた。電子カルテはクラウド事業者のサーバーにあり、あなたは ID とパスワードでアクセスするだけ。「うちで持っていないから関係ない」と思ったら間違いで、利用権限があるあなたが拒絶主体であり、同時に応答義務の名宛人でもある
- 法律事務所のパートナーが、依頼者に関する電磁的記録の提供を命じられた。105条ただし書の構造上、依頼者本人が承諾すれば拒絶できず、業務を廃業した後でも秘密保持義務は続く。誰の秘密なのかを最初に確定しないと、拒絶の可否を判断できない
- もし宗教法人の職員が、信者から告白された内容を記録したデータの提供を命じられたらどうなる? 宗教の職にある者は104条の拒絶主体に含まれるが、拒絶できるのは「業務上委託を受けたため知り得た事実で他人の秘密に関するもの」に限られる。法人の経理データはこの範囲外である
- 提供命令の期限まであと数日。拒絶するか応じるか迷っているあなたに必要なのは、秘匿特権の範囲を条文単位で確定させること。押収拒絶権の主張は事後の弁解ではなく、命令に応答する時点で理由を明示して行うのが実務の作法である
取るべき行動
被害を受けた側:秘密を預けた側(患者・依頼者・信者)としては、1. 自分の情報が提供命令の対象になったと知ったら、預けた専門職に拒絶権を行使する意向があるか確認する2. 承諾するかどうかは自分の判断であり、安易な承諾は105条ただし書により拒絶権を消滅させる3. 承諾を求められた場合、対象範囲を限定した承諾が可能か専門職と協議する
訴えられた側:命令を受けた専門職としては、1. 対象記録が業務上の委託により知り得た他人の秘密かを条文単位で確定2. 本人の承諾の有無を確認、承諾があれば拒絶できない3. 拒絶するなら応答期限内に理由を明示した書面で4. 範囲が広すぎる命令には、秘密該当部分の切り分けを提案5. 判断が割れる論点なので、初動から刑事手続に詳しい弁護士を関与させる
時効(請求できる期限):本条自体に固有の期間の定めはなく、提供命令に付された期間が実務上の期限になる。押収拒絶権の主張はその応答時点で行うのが原則で、任意に提供した後の撤回は事実上困難である(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:本条は電磁的記録提供命令という新たな証拠収集手法の導入に伴い、従来の押収拒絶権が空洞化することを防ぐ技術的準用規定と解される。占有概念を利用権限概念に置換した点に実質的意義がある
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