刑事訴訟法 第172条
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- 身体の検査を受ける者が、鑑定人の第百六十八条第一項の規定によつてする身体の検査を拒んだ場合には、鑑定人は、裁判官にその者の身体の検査を請求することができる。
- 2.前項の請求を受けた裁判官は、第十章の規定に準じ身体の検査をすることができる。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 刑事訴訟法第172条は、日本の刑事訴訟法に含まれる条文です。
- 刑事訴訟法第172条の条文原文は「身体の検査を受ける者が、鑑定人の第百六十八条第一項の規定によつてする身体の検査を拒んだ場合には、鑑定人は、裁判官にその者の身体の検査を請求することができる。」で始まります。
- 刑事訴訟法第172条は第十二章 鑑定に置かれています。
- 刑事訴訟法の公布日は昭和23年7月10日です。
- 刑事訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年9月5日時点では廃止情報はありません。
- 刑事訴訟法第172条の前の条は刑事訴訟法第171条です。
- 刑事訴訟法第172条の次の条は刑事訴訟法第173条です。
- 刑事訴訟法第172条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第172条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131 - 本サイト収録
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第172条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年9月5日)https://lawplayer.com/jp/article/323AC0000000131/172
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点刑事訴訟法172条は、鑑定人が身体検査を拒まれた場合に裁判官へ検査を請求でき、請求を受けた裁判官が検証の規定に準じて身体検査を行えると定める規定である。
Q · 身体検査を拒んだら、鑑定人に無理やり検査される?
鑑定人は強制できないが、裁判官に請求されると強制されうる
刑事訴訟法172条により、鑑定人は第168条の身体検査を拒まれても、あなたを力ずくで検査することはできません。しかし鑑定人は裁判官に身体検査を請求でき、請求を受けた裁判官は検証の規定(第十章)に準じて検査を行えます。この段階では過料(137条)や直接強制(139条)の対象になりえます。つまり拒否は鑑定人相手では有効でも、裁判官が登場した瞬間に意味が変わります。
解説
精神鑑定を命じられた、薬物事件で採血を求められた、傷の状態を専門家が調べることになった。これらに共通するのは、鑑定人があなたの身体を検査しようとする場面だ。ここで多くの人が知らないのは、鑑定人にはあなたを力ずくで検査する権限がないという一点。168条であなたの身体を検査できると指定されていても、あなたが拒めば鑑定人はそこで止まる。だが172条が、その膠着を破る通路を用意している。鑑定人は裁判官に身体検査を請求でき、請求を受けた裁判官は検証の規定(第十章)に準じて検査できる。つまり過料の制裁(137条)や、最終的には直接強制(139条)まで動かせる。あなたの拒否は、鑑定人相手なら有効だが、裁判官が登場した瞬間に意味が変わる。誰が強制力を握っているのかを、この条文は静かに切り分けている。
法的な位置づけ
刑事訴訟法172条は鑑定における身体検査の請求を定める規定であり、鑑定人が第168条に基づく身体検査を拒まれたとき、裁判官に身体検査を請求でき、請求を受けた裁判官が検証の規定(第十章)に準じて検査を行える旨を規定する。専門家である鑑定人の調査権と、裁判官が握る強制権の境界を画する手続規定である。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.まず誰の指示かを確認する 身体検査を求められたら、指示者が鑑定人か裁判官か、根拠が168条の鑑定処分か別の検証かを確認する。相手が鑑定人なら拒否は法的に可能だが、裁判官が関与した瞬間に強制力の質が変わる
- 2.拒否するなら理由を記録に残す 鑑定人の段階で拒むなら、口頭でなく書面・録音で「なぜ拒むのか」を記録する。健康上のリスクや検査方法への疑問など正当な理由は、後の裁判官の必要性・相当性判断の材料になる
- 3.検査方法の相当性を主張する 検査の方法が過大(必要以上の侵襲)な場合、検証規定の準用による相当性(131条)を理由に範囲の限定を求める。裁判官の請求判断前にこの一点を突けば、検査の中身を削れる余地が生まれる
- 4.裁判官への請求段階で弁護士に相談する 鑑定人が裁判官に身体検査を請求したら、弁護士に相談し、請求の必要性・相当性を争う準備をする。捜査段階の鑑定処分なら225条の許可状要件も併せて確認する
よくある質問 AI による整理
Q1鑑定における身体検査とは何ですか?
鑑定人が鑑定のために身体(採血・採尿・傷の状態・精神状態など)を調べる検査です。根拠は刑事訴訟法168条で、拒否された場合に172条の請求ルートが働きます。
Q2鑑定人は身体検査を強制できますか?
できません。鑑定人自身に強制権はなく、拒まれたら止まります。ただし鑑定人は裁判官に身体検査を請求でき、裁判官が検証規定に準じて強制力を行使できます(172条2項)。
Q3身体検査を拒否したらどうなりますか?
鑑定人相手なら拒否は有効です。しかし裁判官に請求され検証規定が準用されると、過料(137条)や最終的に直接強制(139条)の対象となり、物理的に検査されることもあります。
Q4身体検査拒否の過料はどのくらいですか?
検証規定が準用され、正当な理由なく身体検査を拒んだ者には過料や費用賠償の制裁が科されえます(137条)。実務では直接強制の前に過料の威嚇や説得が先行することが多いです。
Q5身体検査の直接強制とは何ですか?
正当な理由なく拒む者に対し、裁判官が物理的に身体検査を行わせる手段です(139条)。検証規定の準用により172条2項の検査でも認められますが、最後の手段として慎重に運用されます。
Q6捜査段階の鑑定処分は何条ですか?
捜査段階で検察官・警察の嘱託を受けた鑑定受託者の身体検査は223条以下、特に225条が適用され、裁判官の鑑定処分許可状が必要です。公判段階の172条とは根拠条文が異なります。
Q7身体検査の方法に制限はありますか?
あります。検証規定の準用により、身体検査は被検査者の性別・健康状態その他の事情を考慮し、方法の相当性を守る必要があります(131条)。過大な侵襲は範囲の限定を求められます。
Q8黙秘権で身体検査を拒めますか?
拒めません。身体検査の受忍は供述ではないため、黙秘権の対象外です。ただし鑑定人には強制権がないため、鑑定人の検査自体は事実上拒めますが、裁判官の請求段階で扱いが変わります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1身体検査を拒んだら、無理やり押さえつけてでも検査されるんですか?
鑑定人自身はあなたを押さえつける権限を持ちません(172条1項でいったん止まる)。しかし鑑定人が裁判官に請求し、裁判官が検証の規定に準じて行う場合、137条の過料、さらに139条の直接強制まで及びえます。最終的には物理的強制もありうる。実務のポイント:実務上いきなり直接強制が使われることは稀で、まず過料の威嚇や説得が先行します。拒否の理由が正当(健康上のリスク、検査方法への疑問)であれば、その記録を残すことで裁判官の必要性・相当性判断に影響を与えられる。黙って抵抗するより、理由を明確にした拒否のほうが法的に意味を持つ
Q2捜査の途中で警察から鑑定のための採血を求められたんですが、これも同じ条文ですか?
厳密には違います。172条は裁判所が選んだ鑑定人(公判段階)の話で、捜査段階で検察官・警察の嘱託を受けた鑑定受託者の場合は223条以下、特に225条が適用され、裁判官の鑑定処分許可状が必要になります。仕組みは似ていますが、根拠条文と令状の要否が異なる。実務のポイント:捜査段階の採血は、許可状の有無と検査方法の相当性が後の証拠能力を左右します。違法・過剰な採血で得た証拠は排除されうる。求められた段階で『令状はあるか』『どの条文に基づくか』を確認し記録すること自体が、後の防御の布石になる(最新の運用は弁護士に確認を)
間違えやすい点 AI による整理
- 「拒否すれば身体検査は受けずに済む」と思いがちだが、鑑定人相手では有効でも、鑑定人が裁判官に請求した瞬間、その拒否は強制執行の対象に変わる。拒否権の射程は、相手が誰かで伸び縮みする
- 鑑定人に強制権がないことは知っていても、その意味の深刻さを取り違えている人が多い。強制権がないのは「あなたを守る空白」ではなく、「裁判官という別ルートを起動させる引き金」にすぎない。鑑定人の手で止まったように見えて、実は次の段階に進んだだけだ
- 「自分が拒否できるかどうか」を考えること自体が、問いの立て方を誤っている。本当の分岐点は、鑑定人があなたを検査しようとした時点ではなく、裁判官がその請求を受けて検証規定に準じると判断する時点にある。あなたが争うべき相手とタイミングは、思っている場所より一つ先にある
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 誰の権限か | 172条:鑑定人が裁判官へ請求、強制は裁判官が実行 | 168条:鑑定人自身の身体検査権(強制力なし) 139条:裁判官による直接強制 |
| 拒否の効き目 | 鑑定人相手では有効だが請求後は強制対象 | 拒めばそこで止まる 正当な理由なき拒否は物理的強制の対象 |
| 制裁・強制手段 | 検証規定準用 → 過料(137条)・直接強制(139条) | 強制手段なし(同意の枠内) 物理的強制を直接実行 |
| 方法の縛り | 相当性(131条)が準用される | 相当性配慮の対象 必要最小限の侵襲に限定 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾では鑑定人が鑑定の必要上、審判長・受命法官・検察官の許可を得て身体検査や試料採取を行える点で、裁判官の関与を要する構造が日本と類似する。
韓国も鑑定に必要な処分・身体検査について裁判所(または許可)の関与を要件とし、身体検査に方法の相当性配慮を求める点で日本と近い。
ドイツは被疑者の身体検査・採血を原則として裁判官の命令(危険が切迫する場合は検察官等)により行い、医師の実施・健康への配慮を要件とする。司法的統制を前置する点で共通する。
米国は強制採血を修正第4条・第5条の観点から審査し、令状原則と相当な理由・実施方法の合理性を要求する。自己負罪との関係で身体証拠は供述と区別される。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 薬物使用の疑いで逮捕され、鑑定のための採尿・採血を求められた。あなたが拒否したら、それで終わりだと思っていないか? 鑑定人は引き下がっても、裁判官への請求という次の一手が残っている。拒否権の射程は、目の前にいるのが誰かで変わる
- 精神鑑定を命じられた被告人が、面接や検査への協力を拒む。鑑定人は強制できない。だが裁判官が動けば話は別だ
- 勾留期限が迫る中、捜査側はあなたの身体検査を急いでいる。あと数日で身柄拘束のタイムリミット。鑑定人の検査を拒み続けても、裁判官への請求ルートが残っている以上、ただ時間を稼げるわけではないと知っておくべきだ
取るべき行動
被害を受けた側:1. まず根拠を確認:誰の指示か(鑑定人か裁判官か)、168条の鑑定処分か別の検証か2. 鑑定人の段階なら拒否は法的に可能だが、その理由を口頭でなく書面・録音で記録に残す3. 検査の方法が過大(必要以上の侵襲)なら、相当性(131条)を理由に範囲の限定を求める4. 裁判官への請求がなされたら弁護士に相談、請求の必要性・相当性を争う準備を。請求段階での主張が、検査の可否と範囲を左右する
訴えられた側:1. 黙秘権とは別物と理解する:身体検査の受忍は供述ではないので、黙秘権では拒めない2. ただし鑑定人には強制権がないので、鑑定人の検査自体は事実上拒める3. 鑑定人が裁判官に請求したら、検証規定に準じ過料(137条)や直接強制(139条)の対象になりうる4. 弁護人を通じ、検査の必要性・方法の相当性を裁判官の判断前に争う。捜査段階の鑑定処分なら225条の許可状の要件も確認する
時効(請求できる期限):172条の請求自体に固有の時効はない。ただし鑑定や身体検査は証拠の散逸を防ぐため迅速に行われる。被疑者の場合、身柄拘束期間(逮捕72時間+勾留最大20日)という時間枠の中で手続が進み、拒否への過料や直接強制の判断もその期間内に裁判官が下す
学説
通説:鑑定人には身体検査を強制する権限がなく、被検査者が拒めば検査は実施できないとするのが通説。172条はこの限界を前提に、強制の判断と実行を中立の裁判官に留保することで、専門的必要性と強制力の正統性を切り分けたと理解される。
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