刑事訴訟法 第90条
クイックジャンプ
裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 刑事訴訟法第90条は、日本の刑事訴訟法に含まれる条文です。
- 刑事訴訟法第90条の条文原文は「裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不…」で始まります。
- 刑事訴訟法第90条は第八章 被告人の召喚、勾引及び勾留に置かれています。
- 刑事訴訟法の公布日は昭和23年7月10日です。
- 刑事訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年9月5日時点では廃止情報はありません。
- 刑事訴訟法第90条の前の条は刑事訴訟法第89条です。
- 刑事訴訟法第90条の次の条は刑事訴訟法第91条です。
- 刑事訴訟法第90条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第90条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131 - 本サイト収録
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第90条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年9月5日)https://lawplayer.com/jp/article/323AC0000000131/90
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点刑事訴訟法90条は、権利保釈が除外事由で認められない場合でも、裁判所が逃亡・罪証隠滅のおそれと勾留による不利益を比較して職権で保釈を許せる裁量保釈を定める。
Q · 前科があって権利保釈が通らなくても、保釈してもらう方法はありますか?
あります。刑訴90条の裁量保釈で職権保釈を求められます
刑事訴訟法90条の裁量保釈があります。権利保釈(89条)が前科や罪証隠滅のおそれで除外されても、裁判所は職権で保釈を許せます。2023年改正で、逃亡・罪証隠滅のおそれの程度に加え、勾留継続による健康上・経済上・社会生活上・防御準備上の不利益も考慮することが明文化されました。解雇予告通知や診断書など、勾留が生活をどう壊すかを示す疎明資料を添えるかが鍵になります。
解説
家族が逮捕され、勾留が決まった。弁護士に保釈を相談したら「権利保釈は前科や罪証隠滅のおそれがあって難しい」と言われた。多くの人はここで諦める。だが刑事訴訟法90条という第二の扉がある。89条の権利保釈(原則として認めるべき保釈)が除外事由で閉ざされても、裁判所は職権で裁量保釈を許せる。そして2023年の改正で、この条文は様変わりした。今や裁判官は、逃亡や罪証隠滅のおそれの程度だけでなく、勾留が続くことで被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上、防御準備上の不利益まで天秤にかけることが明文で求められる。つまり「会社を解雇される」「持病が悪化する」「裁判の準備ができない」という事情が、保釈を勝ち取る正式な土俵に乗った。あなたが弁護人に渡すべき情報は、罪の話ではなく、勾留があなたや家族の生活を具体的にどう壊すかだ。
法的な位置づけ
刑事訴訟法90条は裁量保釈を定める規定であり、権利保釈(89条)の除外事由に該当する場合でも、裁判所が逃亡・罪証隠滅のおそれの程度と勾留継続による被告人の不利益を比較考量し、適当と認めるときは職権で保釈を許すことができる旨を規定する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.弁護人を確保し起訴を待って保釈請求を準備 保釈は起訴後にしか使えないため、まず弁護人を確保する。起訴前なら勾留取消請求や準抗告で対応し、起訴されたら速やかに保釈請求の準備に入る
- 2.89条の除外事由を確認し90条へ切り替え 権利保釈(89条)の除外事由(重大事件・前科・罪証隠滅のおそれ等)に当たるか確認する。当たる場合は90条の裁量保釈に切り替え、職権保釈を求める
- 3.勾留による不利益を疎明資料で立証 解雇予告通知、診断書、扶養家族の状況、事業の損害見込みを書面化し、勾留継続で何をいくら失うかを数字で示す。請求と同時に提出する
- 4.逃亡・罪証隠滅のおそれを下げる条件を提案 身元引受人、保証金、住居制限、必要に応じて位置測定端末(GPS)の装着など、逃亡や罪証隠滅のおそれを下げる条件を自ら提案する
- 5.却下時は準抗告または再請求 却下決定には準抗告(刑訴429条)で不服を申し立てる。あるいは証拠開示の進展など状況変化を待って保釈を再請求する
よくある質問 AI による整理
Q1裁量保釈とは何ですか?
権利保釈の除外事由に当たる場合でも、裁判所が職権で許せる保釈です。刑訴90条が根拠で、逃亡・罪証隠滅のおそれと勾留の不利益を比較して判断されます。
Q2権利保釈と裁量保釈の違いは何ですか?
権利保釈(89条)は除外事由がなければ原則認めるべき保釈。裁量保釈(90条)は除外事由があっても裁判所が職権で許せる第二の道です。
Q3保釈はいつから請求できますか?
起訴された後から判決確定までいつでも請求できます(刑訴88条)。起訴前の勾留段階では保釈は使えず、勾留取消請求や準抗告で対応します。
Q4保釈請求は何回でもできますか?
できます。一度却下されても、証拠開示で罪証隠滅のおそれが下がった時点などで再請求すると、状況変化を理由に判断が変わることがあります。
Q52023年の刑事訴訟法改正で保釈はどう変わりましたか?
90条に、勾留継続による健康・経済・社会生活・防御準備上の不利益を考慮することが明文化され、長期勾留批判に配慮した運用が求められるようになりました。
Q6保釈で勾留の不利益はどうやって証明しますか?
解雇予告通知、診断書、扶養家族の状況、事業の収支見込みなどを書面化して疎明します。口頭で「困る」ではなく、何をいくら失うかを数字で示します。
Q7保釈が却下されたらどうすればいいですか?
却下決定には準抗告(刑訴429条)で不服を申し立てられます。また状況の変化を待って保釈を再請求する方法もあります。
Q8GPS(位置測定端末)を付ければ保釈は通りやすくなりますか?
2023年改正で導入された位置測定端末の装着を保釈条件として申し出ると、逃亡のおそれを技術的に下げ、裁量保釈の可能性を開く材料になります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1保釈金って、いくらくらいで、ちゃんと返ってきますか?
金額は事件の軽重、被告人の資力、逃亡や罪証隠滅のおそれを総合して裁判所が決め(刑訴93条)、一般的な事件で150万円から300万円程度が多いとされます。判決確定後、約束を守って出頭していれば全額返還されます。実務のポイント:保釈金が用意できない場合、日本保釈支援協会などの立替制度や保釈保証書の利用という手があります。現金一括が無理でも保釈をあきらめる必要はない。弁護人がこの選択肢を案内するかどうかで、出られるかどうかが変わる
Q2逮捕されてすぐ保釈の手続きをしたいのですが、どうすればいいですか?
実は起訴される前は保釈という制度自体が使えません。逮捕・勾留の段階(起訴前)で身柄を解くには、勾留の取消請求や勾留決定への準抗告という別の道を使います。保釈が登場するのは起訴された後です(刑訴88条)。実務のポイント:起訴前と起訴後で取れる手段がまったく違うので、今が逮捕・勾留段階なのか起訴後なのかをまず弁護人に確認すること。ここを取り違えて「保釈、保釈」と動いても空回りする
Q3前にやった罪と似た事件で逮捕されました。前科があると保釈はもう無理ですか?
権利保釈(89条)では一定の前科が除外事由になりますが、それで終わりではありません。90条の裁量保釈なら、裁判所は逃亡や罪証隠滅のおそれの程度に加え、勾留による健康・経済・社会生活・防御準備上の不利益も考慮して職権で許せます(2023年改正で明確化、最新の改正状況をご確認ください)。実務のポイント:前科がある事件こそ、不利益を具体的な資料で立証する勝負になる。漠然と「反省しています」ではなく、勾留が続くと何をいくら失うかを数字で示せる弁護人を選ぶ
Q4保釈中に逃げたらどうなりますか?お金を捨てれば自由になれる?
甘い計算です。逃亡すれば保釈は取り消され(刑訴96条)、保証金は全額没取されたうえ再び収監されます。さらに逃走行為自体が新たな罪に問われ、量刑でも著しく不利になります。2023年改正では位置測定端末(GPS 監視)の制度や、保釈中の出頭確保のための規定も強化されました。実務のポイント:保釈は「逃げない」という信頼の上に成り立つ制度なので、一度約束を破ると次の保釈はまず通らない。目先の自由と引き換えに、その後の防御の自由をすべて失うことになる
間違えやすい点 AI による整理
- 「逮捕されたらすぐ保釈を申請したい」と多くの人が口にするが、問いそのものが時期を外している。保釈は起訴された後にしか使えない制度で、逮捕・勾留の段階(起訴前)には保釈という選択肢が存在しない。起訴前に身柄を解く道は勾留の取消・準抗告であって、保釈ではない。ここを取り違えると、最初の数日を無駄に走り回ることになる
- 「保釈金さえ払えば出られる」と知っている人は多いが、その保釈金の本当の性質を知らない人がほとんどだ。保釈金(保証金)は返ってくる預け金ではなく、逃亡や約束違反をすれば全額没取されたうえ再び収監される人質である(民訴96条の取消事由)。出られる代金ではなく、逃げないことへの担保だ
- 「保釈が認められた=ほぼ無罪に近い」と受け取られがちだが、保釈は身柄を解くかどうかの判断にすぎず、有罪か無罪かとは別軌道で動く。裁判から見れば、保釈された被告人も裁判中の被告人であることに変わりはない。出られたからといって、戦いが終わったわけではない
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 保釈の性質 | 90条:裁量保釈(除外事由があっても職権で許せる) | 89条:権利保釈(除外事由がなければ原則認める) 91条:不当に長い拘禁による保釈・勾留取消 |
| 判断の主体・契機 | 裁判所の職権(請求がなくても可) | 被告人側の請求 + 除外事由の不存在 拘禁が不当に長いという事情 |
| 考慮要素 | 逃亡・罪証隠滅のおそれの程度 + 勾留による健康・経済・社会生活・防御準備上の不利益 | 除外事由(重大事件・前科・常習・罪証隠滅・氏名住居不明等)に当たらないこと 拘禁期間の長短と必要性 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も保証金等を条件に羈押の停止を認める。裁判所の裁量で個別事情を考慮する点が日本の裁量保釈と類似する
韓国も必要的保釈(95条)と裁量的保釈(96条)の二段構成をとり、日本の89条/90条の関係に対応する
ドイツは保釈そのものより勾留状の執行停止という構成。条件付与で逃亡・証拠隠滅の危険を低減できる場合に執行を停止する点が機能的に近い
米国は釈放を原則とし、逃亡・社会への危険を理由に条件付与または勾留を判断する。連邦憲法修正8条が過大な保釈金を禁じる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 会社員の夫が痴漢の疑いで逮捕され、勾留が10日延長された。会社に知られれば解雇は確実。改正後の90条なら「経済上、社会生活上の不利益」を正面から主張できる。診断書や扶養家族の状況、解雇通知の可能性を疎明資料として添えるかどうかで、判断は変わってくる
- もし、あなたの個人事業が、あなたの勾留であと一週間も回らなくなりそうだとしたら? 取引先との契約、従業員の給与、これらが止まる具体的損害を数値で示すことが、裁量保釈の天秤を傾ける。漠然と「困る」では足りない、いくら失うかを書面にする
- 持病で毎日服薬が必要な高齢の親が勾留された。拘置所の医療体制では十分なケアが受けられない。健康上の不利益として診断書を提出する。これが命に関わる主張になる
- 起訴された直後、第一回公判まであと数日。このタイミングで保釈請求を出すのが定石だ。証拠が検察官の手元に固まり、もう罪証隠滅のおそれが下がったと主張できる窓が、ここで開く
- 外国籍の被告人。検察官は「逃亡(国外逃亡)のおそれが高い」と反対する。だが2023年改正で導入された位置測定端末(GPS 監視)の装着を保釈条件として申し出れば、逃亡のおそれを技術的に下げ、裁量保釈の可能性を開ける
取るべき行動
被害を受けた側:被害者として被告人の保釈に不安がある場合:1. 検察官に対し、保釈に対する意見(報復のおそれ、接触の不安)を被害者参加または意見聴取の機会で伝える。裁判所は保釈判断で被害者への影響も考慮する2. 接近禁止や被害者への接触禁止を保釈条件(刑訴93条)に付すよう検察官経由で求める3. 万一の接触に備え、連絡や付近での目撃の記録を残す4. 身の危険を感じたら警察に相談し、ストーカー規制法・DV 防止法の保護命令も別途検討する
訴えられた側:1. まず弁護人を確保し、起訴を待って(保釈は起訴後)速やかに保釈請求を準備2. 89条の権利保釈で除外事由(重大事件・前科・罪証隠滅のおそれ等)に当たるか確認、当たるなら90条の裁量保釈に切り替える3. 勾留による不利益を疎明:解雇予告通知、診断書、扶養家族の状況、事業の損害見込みを書面化4. 逃亡・罪証隠滅のおそれを下げる条件を自ら提案(身元引受人、保証金、住居制限、必要なら位置測定端末の装着) 5. 却下されても状況変化を待って再請求する
時効(請求できる期限):保釈請求自体に特定の出訴期間はなく、起訴後であれば判決確定までいつでも請求できる(刑訴88条)。ただし保釈は起訴後にしか使えないため、起訴前の勾留段階では勾留の取消請求や準抗告で対応する。保釈却下決定には準抗告(同429条)で不服を申し立てられる
学説
通説:90条の裁量保釈は、権利保釈が除外事由により認められない場合の補完的制度と位置づけられる。2023年改正前から運用上は勾留の不利益が考慮されていたが、改正はこれを明文化し、考慮の枠組みを透明化したと理解されている。
改正沿革 AI による整理
- 令和5年(2023年)改正、令和6年(2024年)施行 従来は「適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる」と簡潔に裁量を定めるのみだったが、逃亡・罪証隠滅のおそれの程度に加え、勾留継続により被告人が受ける健康上・経済上・社会生活上・防御準備上の不利益の程度その他の事情を考慮すべきことを明文化した。長期勾留への批判を踏まえた考慮要素の具体化(改正年・内容は確実だが過去の改正回数の全体像は人的検証が必要)
改正の年表
- 1.昭和23年(1948年) 新設:現行刑事訴訟法の制定に伴い、職権による裁量保釈の規定が設けられた
- 2.令和5年(2023年)改正・令和6年(2024年)施行 改正:逃亡・罪証隠滅のおそれの程度に加え、勾留継続による被告人の健康上・経済上・社会生活上・防御準備上の不利益の程度その他の事情を考慮すべきことを明文化(改正年・内容は確実だが詳細日付は人的検証が必要)
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める