国税徴収法 第18条(質権及び抵当権の優先額の限度等)
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- 前三条の規定に基き国税に先だつ質権又は抵当権により担保される債権の元本の金額は、その質権者又は抵当権者がその国税に係る差押又は交付要求の通知を受けた時における債権額を限度とする。ただし、その国税に優先する他の債権を有する者の権利を害することとなるときは、この限りでない。
- 2.質権又は抵当権により担保される債権額又は極度額を増加する登記がされた場合には、その登記がされた時において、その増加した債権額又は極度額につき新たに質権又は抵当権が設定されたものとみなして、前三条の規定を適用する。
この条文の基本情報
質権及び抵当権の優先額の限度等とは何ですか?
定義質権及び抵当権の優先額の限度等とは、国税徴収法第18条に定められた規定で、「前三条の規定に基き国税に先だつ質権又は抵当権により担保される債権の元本の金額は、その質権者又は抵当権者がその国税に係る差押又は交付要求の通知を受けた時における債…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 国税徴収法第18条(質権及び抵当権の優先額の限度等)は、日本の国税徴収法に含まれる条文です。
- 国税徴収法第18条の条文原文は「前三条の規定に基き国税に先だつ質権又は抵当権により担保される債権の元本の金額は、その質権者又は抵当権者がその国税に係る差押又は交付要求の通知を受けた時における債…」で始まります。
- 国税徴収法第18条は第三節に置かれています。
- 国税徴収法の公布日は昭和34年4月20日です。
- 国税徴収法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 国税徴収法第18条の前の条は国税徴収法第17条です。
- 国税徴収法第18条の次の条は国税徴収法第18条の2です。
- 国税徴収法第18条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)第18条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000147 - 本サイト収録
国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)第18条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000147/18
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点国税徴収法18条は、国税に優先する抵当権等の元本を、担保権者が差押え又は交付要求の通知を受けた時の債権額を限度とする。極度額の増額登記も増加分は新規設定とみなされる。
Q · 契約中の根抵当権、税務署に差し押さえられたら枠いっぱいまで守られるの?
通知を受けた時の残高までしか国税に優先できません
国税徴収法18条1項により、法定納期限等以前に設定された質権・抵当権が国税に優先できるのは、担保権者が差押え又は交付要求の通知を受けた時点の元本残高までです。通知後に同じ根抵当権の枠内で追加融資しても、その部分は国税に劣後します。2項は、極度額や債権額を増加する登記がされても、増加分はその登記の時に新たに設定されたものとみなすと定めるため、後から登記で優先枠を買い戻すことはできません。
解説
銀行が握る根抵当権の極度額が1億円、いま借りているのは3000万円。そこへ税務署の差押えが入り、その通知が銀行に届く。この瞬間、銀行が国税に優先できる元本は3000万円で固定される。翌日、銀行が同じ根抵当権の枠内で5000万円を追加融資しても、その5000万円は国税の後ろに並ぶ。18条1項が定めているのはそれだけだが、実務上の効果は残酷だ。銀行は通知を受けた時点で、その担保枠を事実上閉じる。さらに2項が逃げ道も塞ぐ。極度額や債権額を増やす登記をしても、増えた部分は「その登記の時に新しく設定された質権・抵当権」とみなされ、法定納期限等より後の設定として15条から17条の保護を失う。あなたの資金繰りを止めるのは税務署ではなく、通知を受け取った銀行である。
法的な位置づけ
国税徴収法18条は、国税に優先する質権又は抵当権により担保される債権の元本額の限度を定める規定である。1項は差押え又は交付要求の通知を受けた時の債権額を上限とし、2項は債権額又は極度額を増加する登記について、その増加分をその登記時の新規設定とみなして15条から17条を適用する。
手順
- 1.差押え又は交付要求の通知の受領日を記録に残す 通知書の封筒、受付印、社内受領簿、メールの受信時刻を同時に保全する。18条1項の基準時は発送日ではなく「受けた時」であり、数日のずれがそのまま優先額のずれになる
- 2.受領日当日の貸付元本残高を証拠化する 通知受領日時点の元本残高、実行済み・未実行の区分、当日入出金の内訳を勘定系から出力し、担当者の記名押印付きで確定させる。配当段階で再構成すると評価を削られる
- 3.通知後の追加実行を止め、別の手当てに切り替える 同一根抵当権枠内の追加実行は国税に劣後するため原則停止する。必要な与信は別物件への追加担保設定、人的保証、代替スキームで手当てする
- 4.極度額の増額登記で優先枠を広げようとしない 18条2項により増加分はその登記時の新規設定とみなされ、法定納期限等より後の設定として15条から17条の保護を失う。登録免許税だけが無駄になる
- 5.換価・配当段階で優先額の根拠を主張する 配当計算書を受領したら、通知受領日と当日残高を根拠に優先額を検算する。1項但書により限度の適用が除外される配当関係かどうかも併せて確認する
よくある質問 AI による整理
Q1優先額の限度とは何ですか?
国税に優先する質権・抵当権が守られる元本額の上限のことです。国税徴収法18条1項により、差押え又は交付要求の通知を受けた時の債権額が限度になります。
Q2通知後に追加融資した分の抵当権は無効になりますか?
無効にはなりません。担保権自体は有効ですが、その追加分は国税に劣後します。配当では通知時の残高までしか国税より先に回収できないという順位の問題です。
Q3通知前に実行済みの融資は国税より優先されますか?
法定納期限等以前に設定された質権・抵当権であれば、通知時点の残高までは15条から17条により国税に優先します。実行済みかどうかが分かれ目になります。
Q4社会保険料の滞納でも同じように優先枠は固定されますか?
固定されます。厚生年金保険法89条により保険料等は国税徴収の例により徴収されるため、年金事務所からの差押通知が担保権者に届いた時が基準時になります。
Q5個人の住宅ローンや自宅の抵当権にも適用されますか?
適用されます。個人が税を長く滞納して差押えを受けると、その通知以後に同じ抵当権枠で借り増した分は国税に劣後します。法人限定の規定ではありません。
Q6市町村の税金の滞納処分でも国税徴収法18条は使われますか?
使われます。地方税の滞納処分は地方税法により国税徴収法の例によるとされるため、住民税や固定資産税の差押通知でも同じ時点切断が働きます。
Q7税金を滞納している状態で新規融資は受けられますか?
法律上は禁じられていませんが、多くの金融機関は差押通知の受領を与信停止のトリガーとして内規化しています。実務上は通知前に実行を終える必要があります。
Q8配当計算書の優先額に納得できないときはどうしますか?
裁判所の強制換価手続なら配当期日から1週間以内の配当異議の訴え(民事執行法90条)、滞納処分による換価なら処分を知った日の翌日から3か月以内の審査請求です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1税金を滞納したら、銀行の根抵当権ってどうなるんですか?
法定納期限等以前に設定された質権・抵当権は国税に優先する(15条から17条)。ただし18条1項で、優先できる元本は差押えまたは交付要求の通知を受けた時点の残高が上限になる。実務のポイント:この通知は国税徴収法55条により担保権者へ直接送られる。「税務署と話をつけてから銀行に説明する」という順番は成り立たない。銀行はあなたより先に知る
Q2今から極度額を上げれば、優先枠も一緒に広がりますよね?
広がらない。18条2項は、債権額または極度額を増加する登記がされた場合、その増加分についてその登記の時に新たに担保が設定されたものとみなす。法定納期限等より後の設定になるため、増額分は国税に劣後する。実務のポイント:実務では増額登記ではなく、別物件の追加担保や保証で手当てする。増額登記は登録免許税(増加額に対して4/1000)まで無駄になる(最新の改正状況をご確認ください)
Q31項の但書にある「他の債権を有する者の権利を害する」って、どういう場面ですか?
限度額の制限をそのまま適用すると、本来は後順位のはずの債権者が繰り上がって想定外の利得を得る配当関係が生じることがある。その場合は制限を適用しない、というのが但書である。実務のポイント:この種の配当は循環関係を生み、あん分計算で処理される。計算書を見ても素人には検算できない。争うなら税務の専門家ではなく、執行・配当実務に強い弁護士に配当計算書ごと渡すのが実質的な分かれ目になる
Q4通知って、いつ、どこに届くんですか?
差押えをしたときは質権者・抵当権者などに通知され(国税徴収法55条)、他の手続に交付要求をした場合も担保権者へ通知される(同82条2項)。この受領時が18条1項の基準時になる。実務のポイント:基準となるのは発送日ではなく「受けた時」。受付印の日付が数日ずれるだけで、その間に実行した貸付が優先枠に入るか外れるかが変わる。封筒と受付記録は捨ててはいけない
間違えやすい点 AI による整理
- 極度額まで担保されているのだから枠が空いていれば国税より先に回収できる、と考えられがちだが、極度額は民法上の担保枠であって国税に対する優先枠ではない。18条1項が優先を認めるのは、差押えまたは交付要求の通知を受けた時の元本残高までである
- 通知後の追加融資が国税に劣後することは金融実務では知られている。だがその深刻度が過小評価されている。劣後するのは配当の順位だけではない。多くの金融機関は差押通知の受領を与信取引の停止トリガーとして内規に組み込んでおり、法的な順位の問題と資金供給の停止が同時に起きる。滞納が資金繰りを殺すのは、税務署の取立てを通じてではなく、銀行の判断を通じてである
- 「今から極度額を増やせば優先枠を広げられるか」という問いの立て方自体が誤っている。2項は増額分を新規設定とみなすので、増やせるのは民法上の枠だけであり、国税との優先順位は法定納期限等との時間関係で既に確定している。後から登記で買い戻せる性質のものではない
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律している内容 | 国税徴収法18条:優先できる元本額の上限(時点による切断) | 国税徴収法16条:法定納期限等以前に設定された抵当権が国税に優先すること 国税徴収法8条:国税がすべての公課・債権に先立つという原則 |
| 基準となる時点 | 差押え又は交付要求の通知を受けた時 | 法定納期限等と抵当権設定登記の先後 時点の概念なし(一般的な優先原則) |
| 効果 | その時点の元本残高までしか国税に優先できない | 設定が先なら国税に優先する立場を得る 特則がなければ国税が優先する |
| 登記による事後的な回復 | 2項により増額登記は新規設定とみなされ回復不可 | 設定時期は事後に変えられない 原則自体を登記で覆すことはできない |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は税捐の一般債権に対する優先を定め、土地増値税・地価税・房屋税等は抵当権にも優先する。日本のような「通知時点で優先元本を固定する」明文の限度規定は置かれていない
韓国は法定期日(법정기일)と担保権設定日の先後で優先を決める点が日本の法定納期限等と近い。担保元本の限度を通知時点で切る構造は日本ほど明確ではない
ドイツは租税債権に一般的な優先権を認めず、租税も原則として通常の債権者として執行・倒産手続に参加する。担保権との衝突は執行法・倒産法の一般ルールで処理される
米国は連邦租税リエンの通知登録後、担保権者が行った将来貸付を原則として劣後させ、通知から45日以内の貸付のみ保護する。通知を境に将来貸付の優先を切る発想は日本18条1項と機能的に共通する
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 消費税と源泉所得税の滞納が積み上がり、税務署から差押えの予告が届いた。手元に残された時間はおよそ10日。この10日で運転資金を実行してもらえるかどうかで来期の仕入れが決まる。通知が銀行に届いた翌日では、枠が空いていても融資担当者は稟議を上げられない
- もし、あなたの会社の工場と売掛金が差し押さえられ、その通知が取引銀行に届いたとしたら、翌月の決済資金はどこから出す? 根抵当権の極度額には余裕がある。だが国税に優先できるのは通知を受けた時の元本残高までで、そこから先の貸付は国税に負ける
- あなたが融資担当者の側に立つ。差押通知を受け取った日の残高を証拠化し忘れた。数か月後の配当で優先額を立証しきれず、回収額が削られる
- 極度額を5000万円から1億円に増やす登記を、いつもどおりの流れで申請した。ところが会社は社会保険料を半年分滞納していた。増額した5000万円は登記の時に新設された担保とみなされ、既に発生していた滞納分に丸ごと劣後する。増額登記の前に納税状況を確認しなかった一手が、後で説明責任になる
- 友人が経営する会社の資金繰りが苦しいと相談してきた。あなたが最初に聞くべきは滞納額ではなく、差押えの通知がもう銀行に行ったかどうかである
取るべき行動
被害を受けた側:担保権者(貸し手)の立場。1. 差押えまたは交付要求の通知を受けたら、受領日を記録に残し、同日付の貸付残高を証拠化する。2. 通知後の追加実行は原則停止し、必要なら別物件への担保設定や人的保証で手当てする。3. 極度額の増額登記は2項で新規設定扱いになるため救済にならない。4. 換価手続では配当の計算書を必ず検算し、通知受領日と残高を優先額の根拠として主張する
訴えられた側:滞納して差押えを受ける側の立場。1. 差押えが実行されれば通知は担保権者へ直接飛ぶ。銀行に自分から説明できる時間は想定より短い。2. 差押え前に納税の猶予・換価の猶予(国税通則法46条、国税徴収法151条の2)の申請可否を検討する。3. 必要な資金調達は通知前に実行を終える。4. 一部納付や分割の合意で差押え自体を回避できる場合があるため、税務署との接触を先送りにしない
時効(請求できる期限):18条1項の基準時は「差押え又は交付要求の通知を受けた時」であり、日付のずれがそのまま優先額のずれになる。条文自体に固有の時効はないが、国税の徴収権は法定納期限から5年で時効消滅する(国税通則法72条)。配当を争う場合、裁判所の強制換価手続なら配当異議の訴えは配当期日から1週間以内(民事執行法90条)、税務署自身の滞納処分による換価なら審査請求は処分を知った日の翌日から3か月以内(国税通則法77条)
学説
通説:18条1項は、担保権者が滞納の存在を知り得た時点を境に、それ以後の与信拡大に国税への優先を認めない趣旨と解される。2項の増額登記みなし規定も、登記による事後的な順位の買い戻しを封じる同一の発想に立つ
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和34年(1959年) 改正:国税徴収法の全部改正(昭和34年法律第147号)により現行の徴収手続体系が成立し、国税と担保権の優先関係を定める8条・15条から18条の枠組みが整備された
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