国税徴収法 第63条(差し押える債権の範囲)
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徴収職員は、債権を差し押えるときは、その全額を差し押えなければならない。ただし、その全額を差し押える必要がないと認めるときは、その一部を差し押えることができる。
この条文の基本情報
差し押える債権の範囲とは何ですか?
定義差し押える債権の範囲とは、国税徴収法第63条に定められた規定で、「徴収職員は、債権を差し押えるときは、その全額を差し押えなければならない。ただし、その全額を差し押える必要がないと認めるときは、その一部を差し押えることができる。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 国税徴収法第63条(差し押える債権の範囲)は、日本の国税徴収法に含まれる条文です。
- 国税徴収法第63条の条文原文は「徴収職員は、債権を差し押えるときは、その全額を差し押えなければならない。ただし、その全額を差し押える必要がないと認めるときは、その一部を差し押えることができる。」で始まります。
- 国税徴収法第63条は第三款に置かれています。
- 国税徴収法の公布日は昭和34年4月20日です。
- 国税徴収法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 国税徴収法第63条の前の条は国税徴収法第62条の2です。
- 国税徴収法第63条の次の条は国税徴収法第64条です。
- 国税徴収法第63条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)第63条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000147 - 本サイト収録
国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)第63条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000147/63
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点国税徴収法63条は、徴収職員が債権を差し押さえるときは原則として全額を差し押さえると定める。ただし全額の差押えが必要でないと認めるときは、一部差押えができる。
Q · 税金を滞納したら、売掛金は滞納額の分だけ差し押さえられるの?
いいえ。滞納額に関係なく原則は債権の全額です
国税徴収法63条本文は、徴収職員が債権を差し押さえるときはその全額を差し押さえなければならないと定めます。滞納税額が100万円でも、売掛金が800万円あれば800万円全額が差押えの対象になり、超過部分は取立て後に還付されるまで手元に戻りません。ただし但書により、全額を差し押さえる必要がないと認めるときは一部差押えにとどめることができます。この判断権は徴収職員にあるため、差押通知が第三債務者へ発送される前の折衝が実務上の分岐点になります。
解説
税金を滞納したとき、役所が差し押さえるのは預金や不動産だけではない。あなたが誰かに対して持っている「債権」、つまり売掛金、給料の請求権、貸付金、敷金返還請求権、保険の解約返戻金、これらも差押えの対象になる。そして国税徴収法63条が定めるのは、その差押えの「範囲」だ。原則は全額差押え。100万円の滞納に対して500万円の売掛金があっても、徴収職員は500万円まるごと差し押さえられる。ここで多くの人が誤解する。差押えの範囲は滞納額と比例しない。ただし但書がある。「その全額を差し押える必要がないと認めるとき」は一部でよい。この「認めるとき」の判断権を握っているのは徴収職員であって、あなたではない。だからこそ、差押え前の折衝でこの但書を持ち出せるかどうかが、あなたの事業のキャッシュフローが止まるか止まらないかを分ける。
法的な位置づけ
国税徴収法63条は、滞納処分としての債権差押えの範囲を定める規定である。本文は債権の全額差押えを原則とし、滞納税額との比例を要求しない。但書は、全額を差し押さえる必要がないと徴収職員が認める場合に一部差押えを許容し、超過差押えの調整を職員の裁量判断に委ねる構造を採る。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.催告書が届いた日に期限をカレンダー化 封を切り、納期限、換価の猶予の申請期限(納期限から6か月)、審査請求期限(処分を知った日の翌日から3か月)の三つを書き出す。放置している期間だけ選択肢が減っていく
- 2.税務署に納付相談を申し込み、数値で示す 電話ではなく書面で財産目録と直近の資金繰り表を出す。売上、入金予定、仕入支払、手元現預金を月次で提示し、一括納付が困難な理由を金額で説明する
- 3.換価の猶予を納期限から6か月以内に申請 国税徴収法151条の2の申請書に分割納付計画を添える。事業継続により将来の納税可能額が増えることを、猶予期間中の納付額として具体的に示す
- 4.売掛金以外の代替財産を先に提示する 徴収職員は取立コストの低い財産を優先する。預金、車両、機械など即換価できる財産を自ら差し出し、主要取引先への売掛金差押えを回避する交渉材料にする
- 5.差押え後は解除と一部差押えを同時に求める すでに差押えを受けたら、事業継続が著しく困難であることを疎明して差押えの解除(79条)を申請しつつ、63条但書による一部差押えへの変更を求める。取立ての確実性と債権額の乖離を資料で示す
よくある質問 AI による整理
Q1債権差押えとは何ですか?
滞納者が第三者に対して持つ売掛金・預金・敷金返還請求権などの権利を、徴収職員が差し押さえて直接取り立てる滞納処分です。手続は国税徴収法62条以下が定めます。
Q2国税徴収法63条の但書はどんなときに使えますか?
債権額が滞納額を大きく上回り、取立てが確実で、全額差押えが事業継続を妨げる場合です。判断は徴収職員の裁量のため、収支資料や取引実績で根拠を示す必要があります。
Q3差し押さえられた超過分はいつ戻ってきますか?
取立て後、滞納国税に充当した残額が還付されます。ただし手続に数か月かかることがあり、その間その資金は資金繰りに使えません。
Q4敷金の返還請求権も差し押さえられますか?
対象になります。退去後に大家に対して持つ敷金返還請求権は債権であり、63条本文により滞納額が少額でも原則として全額が差押えの対象です。
Q5生命保険の解約返戻金は差押えできますか?
解約返戻金請求権も債権として差押えの対象です。徴収職員は保険会社に照会でき、契約者貸付の残高もあわせて把握されます。
Q6換価の猶予はいつまでに申請しますか?
申請による換価の猶予は、原則として国税の納期限から6か月以内です(国税徴収法151条の2)。この窓を過ぎると申請の道が閉じます。
Q7差押えに納得できないときはどうしますか?
処分を知った日の翌日から3か月以内に審査請求ができます(国税通則法77条)。あわせて差押えの解除(国税徴収法79条)の申請も検討します。
Q8民事執行の差押えと国税の差押えは違いますか?
民事執行法146条2項は超過差押えを制限しますが、国税徴収法63条は逆に全額差押えを原則とします。同じ債権差押えでも範囲の規律が正反対です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1滞納が50万円なのに、300万円の売掛金を全部差し押さえられました。これって違法じゃないんですか?
違法ではない。国税徴収法63条本文が「その全額を差し押えなければならない」と定めており、債権の全額差押えが原則である。超過部分は取立後に還付される。実務のポイント:但書の一部差押えは徴収職員の裁量だが、実務では差押債権が高額で取立が確実な場合、一部差押えに応じる余地がある。ただし差押後に主張しても遅い。折衝は通知発送前に行うこと
Q2取引先に差押通知が行ったら、もう取引を切られますよね。防ぐ方法はありますか?
通知が発送された後に取り消す手段はほぼない。だが発送前であれば、他に差押可能な財産(預金、車両、機械)を自ら提示し、そちらを優先するよう交渉できる。実務のポイント:徴収職員は取立コストの低い財産を好む。売掛金は取立が容易なため優先されやすい。だから納税者側から「これなら即換価できる」という代替財産を出せると、売掛金差押えを回避できる場合がある
Q3給料も全額差し押さえられるんですか?生活できなくなります
給与債権は国税徴収法76条に差押禁止範囲があり、63条の全額差押え原則がそのまま働くわけではない。給与から所得税・住民税・社会保険料を控除した残額に対し、本人と生計を一にする親族の人数に応じた一定額が保護される。実務のポイント:この差押禁止額は民事執行法の4分の1ルールとは計算式が異なる。国税の方が生活保障の考え方が細かく、扶養家族の申告漏れがあると保護額が減る。給与差押えを受けたら扶養状況を必ず税務署に申告する
間違えやすい点 AI による整理
- 「滞納額が100万円なら、差し押さえられるのも100万円まで」と思い込んでいる人が圧倒的に多い。63条本文は逆を定めている。原則は債権の全額差押えであり、滞納額との比例は要求されていない。超過分は取立後に還付されるが、還付されるまでの数か月、その資金はあなたの手元にない
- 債権差押えの怖さを「お金が取られること」だと理解している人は、深刻度を半分しか把握していない。本当の破壊力は、差押通知が第三債務者(取引先、銀行、大家)に直接送られる点にある。取引先はその瞬間、あなたの滞納を知る。金銭的損失より先に、信用が消える
- 「差し押さえられたら終わり、もう打つ手はない」という前提そのものが誤っている。国税徴収法には換価の猶予(151条、151条の2)、差押えの解除(79条)という制度がある。事業継続が困難になる差押えは、解除や猶予の申請対象になりうる。問うべきは「どうやって差押えを避けるか」ではなく「どの猶予制度が自分の状況に合うか」だ
- 「一部差押えにしてもらえるかは運次第」と考えるのも実態と違う。但書の判断は徴収職員の裁量だが、裁量には理由がいる。取立の確実性、債権額と滞納額の乖離、事業継続への影響、これらを資料で示せば判断材料になる。何も出さない者と、根拠を出した者では結果が変わる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 差押えの範囲の原則 | 国税徴収法63条:債権の全額差押えが原則 | 国税徴収法76条:給与は差押禁止額を控除した残額のみ 民事執行法146条:超過する差押えは制限される |
| 滞納額との比例 | 比例は要求されない。超過部分は取立後に還付 | 本人と生計を一にする親族の人数に応じ保護額を計算 債権額が執行債権と費用を超えるときは超過部分の差押えを取り消す |
| 範囲を絞る手段 | 63条但書による一部差押え(徴収職員の裁量) | 扶養状況の申告により保護額が増減 債務者の申立てによる超過部分の取消し |
| 対象になりやすい債権 | 売掛金、報酬請求権、敷金返還請求権、解約返戻金請求権 | 雇用契約に基づく給与・賞与・退職手当 民事の債務名義に基づく金銭債権全般 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は公法上の金銭給付義務の執行に民事の強制執行法を準用し、超過査封の禁止が原則として働く。日本の63条本文が全額差押えを原則とするのと出発点が逆で、台湾では滞納額に見合う範囲での執行が基本となる
韓国も国税徴収のために債権差押えの制度を持ち、第三債務者への通知により効力が生じる点は日本と共通。個別条番号は改正により変動しているため要確認
ドイツは AO § 309以下で金銭債権の差押えを定めつつ、§ 281 Abs. 2が Überpfändungsverbot(超過差押えの禁止)を明文化する。必要な範囲を超える差押えが禁じられる点で、日本の全額差押え原則と対照的である
米国は IRS による levy(差押え)を § 6331が根拠づけ、§ 6334が差押禁止財産を列挙する。給与についても継続的 levy と免除額の枠組みがあり、免除の範囲が明文で定められている
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 取引先への売掛金800万円が入金予定の月末、税務署から取引先に「債権差押通知書」が届いた。滞納額は120万円。それでも800万円全額が凍結される。取引先はあなたに支払えず、あなたは仕入先への支払いができず、連鎖倒産の入口に立つ。取引先はこの通知で、あなたが税金を滞納している事実を知る
- 従業員として給与差押えを受けた場合はどうか。給与債権は国税徴収法76条で差押禁止範囲が別に定められており、63条の全額差押え原則がそのまま働くわけではない。生活に必要な部分は残る。ここを混同して「給料が全部持っていかれる」と怯える人は多い
- 賃貸物件から退去し、大家に対して敷金30万円の返還請求権を持っている。滞納額は8万円。徴収職員がこれを30万円全額差し押さえるか、8万円分だけにするか。但書の適用を求める交渉余地はここにある
- もし、あなたの会社が特定の一社に売上の9割を依存していたとしたら? その一社への売掛金が全額差し押さえられた瞬間、事業は止まる。差押通知は予告なしに第三債務者へ直送される。あなたが知るのは、取引先から電話がかかってきたときだ
- 納付催告書が届いてから実際の差押えまで、通常は数週間から数か月。だがその間に何もしなければ、猶予申請の窓は閉じる。残された時間は、あなたが催告書を机の引き出しにしまった日から数え始めている
取るべき行動
被害を受けた側:納税者側の立場で読むこと。1. 催告書が届いた時点で納付相談を申し込み、財産状況と事業収支を数値で示す2. 一括納付が困難なら換価の猶予(国税徴収法151条の2)を滞納から6か月以内に申請、分割納付計画を提出3. すでに差押えを受けたら、生活や事業の継続が著しく困難であることを疎明し、差押えの解除(同法79条)または換価の猶予を求める4. 主要取引先への売掛金が対象になりそうなら、他の差押可能財産を自ら提示して、そちらを優先するよう交渉する
訴えられた側:第三債務者(取引先、銀行、大家)の立場で読むこと。1. 債権差押通知書を受け取ったら、滞納者への支払いを直ちに停止する。無視して支払うと、税務署への二重払いのリスクを負う2. 差押えの範囲と自社の債務額を照合し、範囲外の部分は通常どおり処理3. 取立ての請求を受けたら国に支払う。応じない場合は取立訴訟を提起されうる4. 供託が認められる場合もあるので、複数の差押えが競合しているときは税務署と法務局に確認する
時効(請求できる期限):差押えそのものに応答期限はないが、換価の猶予の申請は原則として納期限から6か月以内(国税徴収法151条の2)。差押処分に不服がある場合の審査請求は、処分を知った日の翌日から3か月以内(国税通則法77条)。国税の徴収権の消滅時効は法定納期限の翌日から5年(同法72条)だが、差押えにより時効は更新される(最新の改正状況をご確認ください)
学説
実務運用(国税徴収法基本通達に基づく理解):63条本文が全額差押えを原則としたのは、第三債務者の無資力、債権額の争い、相殺の抗弁など取立ての不確実性を織り込むためと理解されている。但書の一部差押えは徴収職員の裁量だが、取立ての確実性が高く債権額が滞納額を著しく上回る場合には一部差押えが相当とされる。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和34年(1959年) 改正:現行国税徴収法(昭和34年法律第147号)が全部改正として成立し、滞納処分の手続が体系的に再編された。債権差押えの範囲に関する規律も本法の中に整理された
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