民事再生法 第128条(手形債務支払の場合等の例外)
クイックジャンプ
- 前条第一項第一号の規定は、再生債務者から手形の支払を受けた者がその支払を受けなければ手形上の債務者の一人又は数人に対する手形上の権利を失う場合には、適用しない。
- 2.前項の場合において、最終の償還義務者又は手形の振出しを委託した者が振出しの当時支払の停止等があったことを知り、又は過失によって知らなかったときは、第五十六条第一項の規定により否認権を行使する権限を付与された監督委員(以下「否認権限を有する監督委員」という。)又は管財人は、これらの者に再生債務者が支払った金額を償還させることができる。
- 3.前条第一項の規定は、再生債務者が再生手続開始前の罰金等につき、その徴収の権限を有する者に対してした担保の供与又は債務の消滅に関する行為には、適用しない。
この条文の基本情報
手形債務支払の場合等の例外とは何ですか?
定義手形債務支払の場合等の例外とは、民事再生法第128条に定められた規定で、「前条第一項第一号の規定は、再生債務者から手形の支払を受けた者がその支払を受けなければ手形上の債務者の一人又は数人に対する手形上の権利を失う場合には、適用しない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事再生法第128条(手形債務支払の場合等の例外)は、日本の民事再生法に含まれる条文です。
- 民事再生法第128条の条文原文は「前条第一項第一号の規定は、再生債務者から手形の支払を受けた者がその支払を受けなければ手形上の債務者の一人又は数人に対する手形上の権利を失う場合には、適用しない。」で始まります。
- 民事再生法第128条は第二節 否認権に置かれています。
- 民事再生法の公布日は平成11年12月22日です。
- 民事再生法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 民事再生法第128条の前の条は民事再生法第127条の3です。
- 民事再生法第128条の次の条は民事再生法第129条です。
- 民事再生法第128条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第128条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225 - 本サイト収録
民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第128条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/411AC0000000225/128
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事再生法128条は、手形の支払を受けた者が遡求権を失う場合に否認権を適用しないと定める。代わりに、支払停止を知って手形を振り出させた最終の償還義務者が支払額の償還義務を負う。
Q · 倒産した取引先から直前に手形で代金を受け取ったけど、返さないといけないの?
原則返さなくてよい。手形なら128条1項で守られる
民事再生法128条1項により、再生債務者から手形の支払を受けた者が、その支払を受けなければ手形上の債務者一人又は数人に対する手形上の権利(遡求権)を失う場合には、127条1項1号の否認は適用されません。普通の振込弁済なら偏頗弁済として否認され得ますが、手形は支払拒絶により遡求権を失うため、法は末端の受取人を保護します。代わりに、支払の停止等を知りながら、又は過失により知らずに手形を振り出させた最終の償還義務者等が、2項により支払額の償還義務を負います。
解説
取引先から約束手形で工事代金を受け取った。その数週間後、相手が民事再生を申し立てた。ここであなたを襲うのが「否認権」という制度だ。再生手続では、倒産直前に一部の債権者だけが弁済を受けると、その弁済を後から取り消して財産を取り戻せる(127条、127条の3)。普通の振込なら、あなたが受け取った金も返還対象になりうる。ところが128条はあなたを守る。手形は、支払を拒むと裏書人など他の手形債務者に対する遡求権(払ってもらう権利)を失ってしまう。法はその酷さを認め、手形で支払を受けた末端のあなたからは取り戻さないと定めた。代わりに矛先が向かうのは、支払停止を知りながら手形を振り出させた最終の償還義務者だ。つまりこの条文は、善意で手形を握った末端のあなたを盾で守り、本当の責任者へ請求を付け替える仕組みである。
法的な位置づけ
民事再生法128条は、否認権の適用除外を定める規定である。再生債務者から手形の支払を受けた者が、その支払を受けなければ手形上の権利を失う場合、同法127条1項1号の否認は適用されない。この場合、支払の停止等を知りながら手形を振り出させた最終の償還義務者等が、再生債務者の支払額を償還する義務を負う。
よくある質問 AI による整理
Q1民事再生法128条とは何ですか?
否認権の手形特則です。手形の支払を受けた者が遡求権を失う場合、127条1項1号の否認を適用せず、代わりに最終の償還義務者から償還させる規定です。
Q2取引先が民事再生に入ったら手形代金は返還必要?
原則不要です。支払を受けなければ手形上の債務者への権利を失う関係にあれば、128条1項で否認の対象外となり、返還義務は生じません。
Q3否認権はいつまで行使できる?
否認権には期間制限があり、再生手続開始の日から一定期間の経過や、対象行為から長期間の経過で行使できなくなります。最新の条文と改正状況の確認が必要です。
Q4最終の償還義務者とは誰のことですか?
手形の遡求の連鎖で最終的に負担を負う者を指します。手形の振出しを委託した者と並び、128条2項で償還請求の相手方となります。
Q5手形なら善意でも償還を求められる?
支払を受けた末端の者は保護されます。償還を求められるのは、振出し当時に支払の停止等を知り、又は過失により知らなかった最終の償還義務者等に限られます。
Q6監督委員から返還通知が来たらどうする?
まず弁済が手形の支払だったかを確認します。手形であれば128条1項を書面で示し、任意返金する前に倒産法に詳しい弁護士へ相談してください。
Q7破産手続でも同じ扱いになりますか?
破産法にも同趣旨の手形例外規定が置かれています。手続の種類は違っても、手形所持人を保護し真の責任者へ請求を付け替える構造は共通します。
Q8128条3項は何を定めていますか?
再生手続開始前の罰金等について、その徴収権限を有する者に対してした担保の供与や債務消滅行為には、127条1項の否認を適用しない旨を定めます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1取引先が民事再生に入ったら、直前に受け取った手形の代金は返さないといけないんですか?
原則として、手形の支払を受けたあなたからは取り戻せません(128条1項)。普通の振込弁済なら偏頗弁済として否認され得ますが、手形は支払を拒むと遡求権を失う特殊事情があるため、法はあなたを保護します。実務のポイント:管財人側がこの手形特則を見落とし、機械的に返還を求めてくることがある。手形だったと一言示すだけで請求が引っ込む場合があるので、慌てて返金しない
Q2じゃあ手形なら誰も損をしないんですか? お金はどこから出るんですか?
末端の受取人は守られますが、代わりに最終の償還義務者や手形の振出しを委託した者が狙われます(128条2項)。これらの者が支払停止を知りながら、または過失で知らずに手形を振り出させていた場合、再生債務者が支払った額を償還させられます。実務のポイント:与信が悪化した取引先に手形を振り出させると、後でこの償還義務を負うリスクがある。振出しを依頼する側こそ、相手の支払停止情報に敏感であるべき
間違えやすい点 AI による整理
- 倒産直前に手形で回収できたから一安心、と思うのは早計だが、その不安の方向も間違っている。普通の振込弁済なら否認で取り戻されるが、手形は128条で守られる。あなたの安心が正しいかどうかは、受け取ったのが「手形だったか、振込だったか」という一点で決まる。問うべきは金額の多寡ではなく決済手段である
- 「否認されても、お金を返せば終わり」と軽く考えている人がいる。実際は、返還した後で自分が他の手形債務者への遡求権をすでに失っていれば、二重に損をする。128条はその二重の損から守る規定であり、その深刻さを知らずに任意で返金すると、もはや遡求もできず取り返しがつかない
- 「手形なら誰も傷つかない」という理解も危うい。手形を受け取ったあなたは守られるが、支払停止を知って手形を振り出させた最終の償還義務者は、2項によって支払額の償還を求められる。守られる人と狙われる人が、同じ一枚の手形の中に同居している
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 条文の役割 | 128条:否認権の適用除外(手形・罰金等) | 127条:否認権の一般規定(詐害行為否認) 127条の3:偏頗行為の否認 |
| 適用の効果 | 手形の支払を受けた者から取り戻せない | 再生債務者の財産を減少させた行為を否認 特定債権者への抜け駆け弁済を否認 |
| 請求の矛先 | 最終の償還義務者・手形振出しを委託した者(2項) | 受益者・転得者 弁済を受けた債権者 |
| 主観要件 | 償還義務者が支払停止等を知り、又は過失で知らなかったこと | 受益者の悪意 債権者の支払停止等の認識 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾破產法は撤銷權を定めるが、手形支払を撤銷の対象から明示的に外す特則は置かれていない。追索權喪失の不利益をどう扱うかは解釈に委ねられる
韓国も手形の支払を受けた者を否認の対象から除外し、支払停止等を知る最終の償還義務者に償還させる同型の規定を持つ。日本法経由の継受構造が明瞭
ドイツ倒産法も、手形所持人が支払を受けないと手形上の請求権を失う場合には Anfechtung(否認)を排除し、代わりに最終の償還義務者に償還させる。本条の系譜上の原型にあたる
米国は偏頗弁済否認を広く認める一方、§ 547(c) に通常業務基準など複数の抗弁を置く。手形決済に特化した一般的除外規定は持たず、抗弁の枠組みで処理する点で構造が異なる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 下請けの建設会社として、元請けから工事代金を約束手形で受け取った。その3週間後、元請けが民事再生を申し立てた。他の取引先は「直前に振込で受けた金を返せ」と否認を迫られているが、手形のあなたは128条1項で守られる。同じ倒産でも、決済手段の違いで明暗が分かれた
- もし、監督委員から「受領額を返還せよ」という否認の通知が届いたら? あなたが受け取ったのが手形なら、慌てて応じる必要はない。返答期限までに、これは手形の支払で遡求権を失う場面だったと書面で示せば、返還義務そのものが消える可能性がある
- あなたは資金繰りに窮した子会社に頼まれ、その支払のために手形を振り出させた。子会社の支払停止を、あなたは薄々知っていた。後日、管財人があなたに支払額の償還を求めてくる(128条2項)
- 知人の町工場が、倒産した取引先から手形で800万円を回収していた。「これ、返さなきゃいけないのか」と青ざめて相談してきた。手形なら原則返さなくていいと一言告げるだけで、その夜の知人の眠りが変わる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 管財人・監督委員から否認による返還を求められたら、まずその弁済が手形の支払だったかを確認する2. 手形だった場合、支払を拒めば裏書人など他の手形債務者への遡求権を失う関係にあったかを検討、該当すれば128条1項で返還義務を否定できる3. 返答は書面で、手形のコピーと遡求関係を示す資料を添えて主張する4. 任意に返金すると保護を放棄したと扱われかねないので、応じる前に倒産法に詳しい弁護士へ相談する
訴えられた側:1. あなたが最終の償還義務者または手形振出しを委託した者として償還を求められたら、争点は「支払停止等を知っていたか、過失で知らなかったか」の一点に絞られる2. 支払停止を知らず、知らなかったことに過失もなかったと立証できれば2項の償還義務を免れる3. 手形振出しを委託した当時の自社の認識を示す記録(与信調査、稟議書、メール)を保全する4. 善意無過失の主張は時系列が命なので、いつ何を知ったかを客観資料で固める
時効(請求できる期限):否認権は、再生手続開始の日から2年を経過すると行使できなくなり、否認対象行為の時から20年を経過したときも同様(破産法176条に相当する規定、最新の改正状況をご確認ください)。2項の償還請求も否認権行使の一環であり、この期間制限の枠内で行われる
学説
通説:128条1項の趣旨は、手形の転々流通に対する信頼保護にある。支払を拒めば遡求権を失う所持人を否認の対象とすれば、手形決済の受領を誰も安心して行えなくなるため、末端所持人を保護し、2項により支払停止等を知る最終の償還義務者へ負担を移転して債権者平等を回復すると解される
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.平成11年(1999年) 新設:民事再生法(平成11年法律第225号)制定に伴い、旧破産法以来の否認権の手形特則を再生手続版として128条に規定
- 民事再生法 第127条否認権の一般規定、本条はその適用除外
- 民事再生法 第127条の3偏頗行為否認、適用除外の対象(現行効力を要確認)
- 民事再生法 第56条監督委員への否認権限の付与
- 民事再生法 第130条の2支払停止を要件とする否認の時期的制限(現行効力を要確認)
- 手形法 第43条支払を受けないと失う遡求権の根拠規定
- 破産法 第163条破産手続における同一趣旨の手形例外
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める