民事再生法 第129条(権利変動の対抗要件の否認)
クイックジャンプ
- 支払の停止等があった後権利の設定、移転又は変更をもって第三者に対抗するために必要な行為(仮登記又は仮登録を含む。)をした場合において、その行為が権利の設定、移転又は変更があった日から十五日を経過した後悪意でしたものであるときは、これを否認することができる。ただし、当該仮登記又は仮登録以外の仮登記又は仮登録があった後にこれらに基づいてされた本登記又は本登録は、この限りでない。
- 2.前項の規定は、権利取得の効力を生ずる登録について準用する。
この条文の基本情報
権利変動の対抗要件の否認とは何ですか?
定義権利変動の対抗要件の否認とは、民事再生法第129条に定められた規定で、「支払の停止等があった後権利の設定、移転又は変更をもって第三者に対抗するために必要な行為(仮登記又は仮登録を含む。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事再生法第129条(権利変動の対抗要件の否認)は、日本の民事再生法に含まれる条文です。
- 民事再生法第129条の条文原文は「支払の停止等があった後権利の設定、移転又は変更をもって第三者に対抗するために必要な行為(仮登記又は仮登録を含む。」で始まります。
- 民事再生法第129条は第二節 否認権に置かれています。
- 民事再生法の公布日は平成11年12月22日です。
- 民事再生法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 民事再生法第129条の前の条は民事再生法第128条です。
- 民事再生法第129条の次の条は民事再生法第130条です。
- 民事再生法第129条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第129条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225 - 本サイト収録
民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第129条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/411AC0000000225/129
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事再生法129条は、支払停止後に権利移転の日から15日を過ぎ、悪意で備えた対抗要件(登記・登録)を否認できると定める。権利移転自体は残り、対抗力だけが巻き戻る。
Q · 支払停止の後に慌てて登記を入れたら、その登記は取り消されてしまうの?
権利移転から15日超かつ悪意なら否認されうる
民事再生法129条は、支払停止等の後に対抗要件(登記・登録)を備える行為をしても、権利移転の日から15日を経過した後に悪意でしたものは否認できると定めます。否認されるのは対抗要件具備行為だけで、売買や譲渡そのものは有効なまま残ります。その結果、権利は持つのに第三者に対抗できない宙吊り状態になります。逆に15日以内であれば、たとえ悪意でも否認は届きません。守るべきは心の善悪ではなくカレンダーの日数です。
解説
会社から不動産を買った、あるいは債権の担保に資産を譲り受けた。だが登記費用や手間を惜しんで、対抗要件(登記・登録、つまり自分の権利を第三者に主張するための手続)を後回しにした。その数週間後、相手企業が支払を停止し、慌ててあなたは登記に走る。この瞬間、あなたは民事再生法129条の射程に踏み込んでいる。本条は、権利の移転そのものではなく、その移転を世間に主張するための「対抗要件を備える行為」だけを狙い撃ちにして否認(巻き戻し)できると定める。条件は二つ。権利移転の日から15日を過ぎた後にしたこと、そして支払停止等を知った悪意でしたこと。この二つが揃うと、監督委員や管財人(再生手続で債権者全体の利益を守る役)はあなたの登記を覆し、せっかく備えた対抗力を奪える。あなたが安心していた「登記したから大丈夫」は、タイミング次第で砂上の楼閣に変わる。
法的な位置づけ
対抗要件の否認とは、支払停止等の後に権利の設定・移転・変更を第三者へ対抗するために備えた行為を、一定の要件の下で巻き戻す制度である。民事再生法129条は、権利変動の日から15日を経過した後に悪意でされた対抗要件具備行為(仮登記・仮登録を含む)を否認の対象とし、権利移転自体ではなく対抗力の取得のみを否定する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.対抗要件はクロージング当日に備える 資産を譲り受けたら、登録免許税や手間を惜しまず、権利移転と同時(遅くとも15日以内)に登記・登録を入れる。この一手で、後に相手が支払停止に陥っても129条の否認は永遠に届かなくなる
- 2.15日ルールで自己診断する 対抗要件を備えた日と、権利の設定・移転・変更があった日(登記申請日ではない)の差を確認する。15日以内なら悪意でも否認は届かない。15日超なら善意・仮登記先行の有無を次に検討する
- 3.否認する側は登記簿の日付を全件洗う 監督委員・管財人の立場なら、再生債務者の不動産登記簿・債権譲渡登記を取り寄せ、権利変動の原因日付と対抗要件具備日の差が15日超のものを抽出。支払停止後で相手が窮状を知っていた悪意の証拠を固め、否認の請求(民再135条)へ進む
- 4.否認される側は善意と仮登記先行を主張する 受益者の立場なら、まず15日以内かを確認し、超えていても支払停止を知らなかった善意を主張する(悪意の立証責任は否認する側)。先行する仮登記・仮登録があれば、ただし書によりそれに基づく本登記は否認対象外となる旨を示す
よくある質問 AI による整理
Q1対抗要件の否認とは何ですか?
支払停止等の後に登記・登録など対抗要件を備えた行為を巻き戻す制度です。民事再生法129条が根拠で、否認されるのは対抗要件具備行為のみ、権利移転自体は残ります。
Q2否認権はいつまで行使できますか?
民事再生法139条により、再生手続開始の日から2年で行使できなくなります。害する行為の時から20年経過でも同様に消滅します。期間経過後は否認できません。
Q3否認の請求はどのように行いますか?
監督委員または管財人が、否認の訴え・否認の請求・抗弁のいずれかで行使します(民事再生法135条)。実務では簡易な否認の請求が用いられることが多いです。
Q4悪意の立証責任は誰が負いますか?
否認する側(監督委員・管財人)が、受益者が支払停止等を知っていた悪意を立証します。受益者は善意を主張して反論できます。取引履歴や督促の事実が証拠になります。
Q5否認されると支払った代金は戻りますか?
129条で否認されるのは対抗要件具備行為であり、原因たる権利変動は残るため、反対給付の扱いは事案により異なります。個別に弁護士へ相談すべき論点です。
Q6占有改定でも対抗要件の否認は成立しますか?
占有改定も対抗要件具備行為に含まれ得ますが、契約当日に備えていれば15日以内で否認は届きません。備えたタイミングが分かれ目になります。
Q7民事再生と会社更生で否認は同じですか?
会社更生法にも対抗要件否認の並行規定があります。基本構造は共通ですが、手続の主体や細部が異なるため、適用条文を確認する必要があります。
Q8対抗要件の否認は破産手続にもありますか?
あります。破産法164条が対応する規定で、支払停止後15日超・悪意という枠組みは民事再生法129条と平仄を合わせています。倒産法制に共通の仕組みです。
この条文についての質問 AI による整理
Q1売買は有効なのに、登記だけ取り消されるって、どういうことですか?
129条が否認するのは権利移転そのものではなく、それを第三者に主張するための対抗要件具備行為(登記・登録)だけだからです。だから売買契約は生きているのに対抗力だけが消え、登記名義を失います。実務のポイント:この『権利はあるが対抗できない』宙吊り状態は実務で最も厄介で、対抗要件は移転と同時に取るのが鉄則。節約のための登記先延ばしは弁護士が最も嫌う一手です
Q215日って、いつから数えるんですか?
登記を申請した日ではなく、権利の設定・移転・変更があった日(売買なら所有権移転の効力が生じた日)から数えます。この日から15日以内に対抗要件を備えれば、たとえ支払停止後で悪意でも129条の否認は届きません。実務のポイント:起算点を『登記から15日』と取り違えると、安全だと思った取引が否認圏内に入る。日付の起点こそが生命線です
Q3仮登記を先に入れておけば安全、というのは本当ですか?
本条ただし書が、先行する仮登記・仮登録に基づいてされた本登記・本登録は否認の対象外と定めています。早い段階で仮登記を打って順位を押さえておけば、後の本登記が15日を超えても巻き戻されません。実務のポイント:危ない取引先から担保や資産を取るとき、本登記を急げないなら最低限『仮登記』だけは先に入れる。この一手が後の否認を封じる保険になります
間違えやすい点 AI による整理
- 「登記さえ入れてしまえば自分の権利は確定で、誰も覆せない」と信じられている。だが129条は、登記が有効に入った後でも、その対抗要件を備える行為だけを否認できる。登記の存在は、否認権の前では絶対の盾ではない
- 対抗要件の否認があること自体は知っていても、その射程の広さを侮っている人が多い。狙われるのは「権利移転」ではなく「対抗要件を備える行為」そのもの。だから売買や譲渡自体は生き残るのに登記だけが消え、あなたは権利を持ちながら第三者に対抗できないという宙吊り状態に落ちる。この落差が致命傷になる
- 「悪意でなければ大丈夫か」と問いを立てがちだが、その問いは半分しか見ていない。129条は『15日を超えた』ことと『悪意』の二つが揃って初めて発動する。逆に言えば、悪意でも15日以内なら否認は届かない。守るべき変数は心の中の善悪ではなく、カレンダーの日数だ
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 否認の対象 | 民再129条:対抗要件を備える行為(登記・登録)のみ | 民再127条:財産を減少させる詐害行為そのもの 民再130条:執行行為(差押え等) |
| 主要な要件 | 権利変動日から15日超 + 悪意(支払停止等の認識) | 再生債権者を害する行為 + 受益者の悪意等 否認しようとする行為が執行行為であること |
| 否認後の権利変動 | 権利移転自体は残り、対抗力のみ喪失 | 行為自体が巻き戻され財産が回復 執行の効力が否定される |
| 除外・特則 | 先行仮登記に基づく本登記は否認対象外(ただし書) | 相当の対価を得た財産処分等の特則あり 執行機関を通じた行為であることの評価 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は破産法上の撤銷権(否認権)で偏頗行為・詐害行為を巻き戻す。対抗要件具備の時点を独立に切り出す日本の129条ほど条文化は明確でないが、機能は近い
韓国も回生・破産統合法で否認権(부인권)を定める。危機時期後の偏頗的行為を巻き戻す枠組みは日本と類似する
ドイツは InsO の Insolvenzanfechtung で否認を体系化。§ 140が行為時(対抗要件具備時点を含む)を規律し、日本129条の直接の淵源に位置する
米国破産法は偏頗的移転を否認。§ 547(e) が対抗要件(perfection)具備の時点を移転時点として擬制し、日本の15日ルールと発想を共有する
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 取引先から代物弁済として土地を譲り受けたが、登録免許税を惜しんで移転登記を半年放置した。取引先が手形を落とせず支払停止に陥った報を聞き、慌てて駆け込みで登記を入れた。移転原因の日付はとうに15日を過ぎ、相手の窮状も知っていた。監督委員はこの登記だけを否認し、あなたは無担保の一般債権者の列に逆戻りする
- もし、得意先が民事再生を申し立てる三日前に、あなたが譲り受けた債権の対抗要件(確定日付のある通知)を慌てて整えたとしたら? 債権譲渡そのものは有効でも、その対抗要件具備行為だけが129条で否認されうる。15日の壁を越えていれば、駆け込みの一手がそっくり裏目に出る
- 譲渡担保で機械設備を取った。占有改定で対抗要件は契約当日に済ませてあった。15日以内だから129条の否認は届かない
- 監督委員に選任され、再生債務者の登記簿を洗っていると、支払停止の直後に滑り込みで入った所有権移転登記が見つかった。移転原因の日付は三か月前。これは129条の典型例で、否認すれば再生債権者への配当原資が一気に積み上がる
取るべき行動
被害を受けた側:債権者全体の側(監督委員・管財人)として巻き戻す立場なら。1. 再生債務者の不動産登記簿・債権譲渡登記を取り寄せ、対抗要件を備えた行為の『日付』を全件洗う2. 権利移転の原因日付と対抗要件具備日の差が15日を超えるものを抽出3. 支払停止・再生申立て後で、相手が窮状を知っていた(悪意)ことの証拠(取引履歴・督促・認識)を固める4. 否認権限の付与を確認の上、否認の請求(民事再生法135条)で対抗要件を巻き戻し、配当原資へ組み入れる
訴えられた側:対抗要件を否認されそうな受益者の側なら。1. まず対抗要件を備えた日と権利移転の日の差を確認、15日以内なら否認は届かない2. 15日超でも『支払停止を知らなかった(善意)』ことを主張、悪意の立証責任は否認する側にある3. 仮登記・仮登録が先行していたなら、ただし書により、それに基づく本登記は否認の対象外、その先行登記の存在を示す4. 否認されても権利移転自体は残りうるため、対抗力なき権利者として何を主張できるか弁護士と整理する
時効(請求できる期限):否認権は再生手続開始の日から2年で行使できなくなる(民事再生法139条)。再生債権者を害する行為の時から20年経過でも同様。本条固有の起算点は『権利の設定・移転・変更があった日』で、ここから15日を超えた対抗要件具備行為が否認の射程に入る(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:129条の否認対象は対抗要件具備行為に限られ、原因たる権利移転自体は残る。15日の猶予は取引安全のための客観的基準であり、この期間内であれば悪意でも否認は及ばない。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.平成11年(1999年) 新設:民事再生法の制定(平成11年法律第225号)に伴い、支払停止後の駆け込み対抗要件具備を否認する129条を新設。破産法の対抗要件否認規定と平仄を合わせた。
- 民事再生法 第127条詐害行為の否認、否認権の基本類型
- 民事再生法 第127条の3特定の債権者への担保供与等の偏頗行為否認(現行効力を要確認)
- 民事再生法 第130条執行行為の否認、並ぶ特則類型
- 民事再生法 第135条否認権の行使方法(訴え・請求・抗弁)
- 民事再生法 第139条否認権行使の期間制限
- 破産法 第164条破産手続における対抗要件否認の並行規定
- 民法 第177条否認の対象となる不動産物権変動の対抗要件の根拠
- 民法 第467条否認の対象となる債権譲渡の対抗要件の根拠
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める