民事再生法 第127条の3(特定の債権者に対する担保の供与等の否認)
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- 次に掲げる行為(既存の債務についてされた担保の供与又は債務の消滅に関する行為に限る。)は、再生手続開始後、再生債務者財産のために否認することができる。
- 一再生債務者が支払不能になった後又は再生手続開始、破産手続開始若しくは特別清算開始の申立て(以下この節において「再生手続開始の申立て等」という。)があった後にした行為。ただし、債権者が、その行為の当時、次のイ又はロに掲げる区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事実を知っていた場合に限る。
- 一当該行為が支払不能になった後にされたものである場合支払不能であったこと又は支払の停止があったこと。
- 二当該行為が再生手続開始の申立て等があった後にされたものである場合再生手続開始の申立て等があったこと。
- 二再生債務者の義務に属せず、又はその時期が再生債務者の義務に属しない行為であって、支払不能になる前三十日以内にされたもの。ただし、債権者がその行為の当時他の再生債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
- 2.前項第一号の規定の適用については、次に掲げる場合には、債権者は、同号に掲げる行為の当時、同号イ又はロに掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事実(同号イに掲げる場合にあっては、支払不能であったこと及び支払の停止があったこと)を知っていたものと推定する。
- 一債権者が前条第二項各号に掲げる者のいずれかである場合
- 二前項第一号に掲げる行為が再生債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が再生債務者の義務に属しないものである場合
- 3.第一項各号の規定の適用については、支払の停止(再生手続開始の申立て等の前一年以内のものに限る。)があった後は、支払不能であったものと推定する。
この条文の基本情報
特定の債権者に対する担保の供与等の否認とは何ですか?
定義特定の債権者に対する担保の供与等の否認とは、民事再生法第127条の3に定められた規定で、「次に掲げる行為(既存の債務についてされた担保の供与又は債務の消滅に関する行為に限る。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事再生法第127条の3(特定の債権者に対する担保の供与等の否認)は、日本の民事再生法に含まれる条文です。
- 民事再生法第127条の3の条文原文は「次に掲げる行為(既存の債務についてされた担保の供与又は債務の消滅に関する行為に限る。」で始まります。
- 民事再生法第127条の3は第二節 否認権に置かれています。
- 民事再生法の公布日は平成11年12月22日です。
- 民事再生法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 民事再生法第127条の3の前の条は民事再生法第127条の2です。
- 民事再生法第127条の3の次の条は民事再生法第128条です。
- 民事再生法第127条の3には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第127条の3 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225 - 本サイト収録
民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第127条の3(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/411AC0000000225/127_3
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事再生法127条の3は、支払不能後などにされた既存債務への弁済や担保供与を偏頗行為として否認できると定める。ただし債権者の悪意が原則要件となる。
Q · 倒産しかけの取引先から正当に回収した代金でも、後で返せと言われるの?
倒産を知って受け取った弁済なら、後で返還を命じられます
民事再生法127条の3により、支払不能になった後や再生手続開始等の申立て後にされた既存債務への弁済・担保供与は、債権者がその事実を知っていた場合、再生手続開始後に否認され、受け取った財産を返還することになります。また、義務に属しない前倒しの弁済などは、支払不能前30日以内にされたものであれば、他の債権者を害すると知らなかったことを立証しない限り否認されます。否認権を行使するのは監督委員または管財人です。
解説
あなたが資材を卸している取引先の経営が傾き、ある日「今のうちに払っておきます」と先方が約束していた代金を全額振り込んできた。あるいは、未回収分の担保にと工場の機械に譲渡担保を設定させた。胸をなで下ろしたその数か月後、裁判所から選ばれた監督委員の名前で一通の請求が届く。「先の弁済(または担保設定)は否認する。受け取った金を再生債務者の財産に戻せ」。民事再生法127条の3は、倒産寸前の債務者が一部の債権者にだけ返済したり担保を渡したりする行為(偏頗行為)を、後から巻き戻す権限を再生手続に与えている。狙われるのは二つの場面。第一に、支払不能になった後、または再生・破産の申立て後にされた弁済や担保供与で、しかもあなたがその時「もう払える状態じゃない」と知っていた場合。第二に、本来払う義務のない時期に前倒しでされた弁済などが、支払不能の30日前以内にされた場合。あなたが何ら不正をしていなくても、正当な債権を正当に回収しただけでも、タイミングと知っていたか否かで、受け取った財産はなかったことにされる。
法的な位置づけ
民事再生法127条の3は偏頗行為否認を定める規定であり、既存の債務についてされた担保の供与または債務消滅行為のうち、支払不能後もしくは再生手続開始等の申立て後にされたもの、または非義務行為で支払不能前30日以内にされたものを、再生手続開始後に再生債務者財産のために否認できる旨を規定する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.否認請求書が届いたら争点類型を特定 請求が『支払不能後の弁済・担保供与』(1項1号)か『非義務・前倒しの行為』(1項2号)かをまず特定する。要件と立証責任の所在が類型ごとに異なるため、争い方の設計がここで決まる
- 2.行為当時の主観を示す資料を収集 1号型なら、行為当時に支払不能・支払停止・申立てを知らなかったことを示す与信判断資料、相手の平常営業を示す証拠を集める。あなたが内部者でなければ、知っていたという立証責任は監督委員側にある
- 3.内部者推定・支払不能推定の反証を組む 自社が内部者でないことを明確にして2項の悪意推定を回避する。支払停止から1年以内は支払不能が推定される(3項)ため、行為時点が推定の射程外であることを時系列で示す
- 4.全面抗争か一部返還和解かを判断 回収額・担保価値と訴訟コスト・敗訴時の返還範囲を天秤にかける。争点が主観の一点に絞れる外部債権者は反撃余地が大きいが、証拠が薄ければ早期の一部返還和解も選択肢になる
よくある質問 AI による整理
Q1偏頗行為否認とは何ですか?
倒産間際に特定の債権者だけが受けた既存債務への弁済や担保供与を、再生手続開始後に巻き戻して再生債務者財産に戻す制度です。債権者平等を守るための否認類型です。
Q2否認権はいつまで行使できますか?
再生手続開始の日から2年、または対象行為の日から20年を過ぎると行使できません(民事再生法136条)。受け取った側は開始決定から2年でリスクが消えます。
Q3支払不能とは民事再生法でどういう意味ですか?
弁済期にある債務を一般的・継続的に弁済できない客観的状態を指します。支払停止(再生申立て等の前1年以内)があった後は支払不能と推定されます(3項)。
Q4偏頗弁済で30日以内が問題になるのはなぜですか?
義務に属しない前倒し弁済などの非義務行為は、支払不能前30日以内にされると、債権者が他の再生債権者を害すると知らなかったことを立証しない限り否認されます(1項2号)。
Q5内部者は悪意が推定されるのですか?
はい。債権者が役員・親族などの内部者である場合、支払不能等を知っていたものと推定されます(2項)。推定を覆す立証責任は債権者側が負います。
Q6否認権は誰が行使しますか?
個々の債権者ではなく、監督委員または管財人が行使します(民事再生法132条)。他の債権者は情報提供により行使を促す形で動きます。
Q7受任通知が出たら支払停止はいつからですか?
弁護士の受任通知は事実上の支払停止の起点とされ、以後の駆け込み回収は否認されやすくなります。通知後の弁済は原則として戻すと考えるのが安全です。
Q8担保供与が否認されない方法はありますか?
相手が支払不能・支払停止に陥る前の通常取引の流れの中で担保を取得し、対抗要件(登記等)も速やかに具備しておくことです。危機を知った後の駆け込み設定は的になります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1ちゃんと貸したお金を返してもらっただけなのに、なんで返さなきゃいけないんですか?
債権が本物かどうかは問題ではありません。127条の3が守るのは『倒産間際に一部の債権者だけが満額回収して、他の債権者との平等を崩すのを防ぐ』という債権者平等の原則です。あなたの債権が正当でも、相手が支払不能になった後に、あなたがそれを知って受け取った弁済は否認されます。実務のポイント:弁護士は受任通知(『当社が代理人になりました、今後の連絡はこちらへ』という通知)が出た日付を真っ先に確認します。これが事実上の支払停止の起点になり、その後の駆け込み回収は否認されやすい。通知後に振り込まれた金は、原則として戻すと思っておく方が安全です
Q2倒産しそうな取引先から、悪意なく普通に代金を受け取っただけでも危ないんですか?
通常の取引の範囲内(弁済期が来た債務を、普段どおりの方法で受け取る)で、かつあなたが支払不能を知らなかったなら、1項1号の否認は成立しにくいです。危険なのは、期日前の前倒し弁済や、普段と違う方法での回収(1項2号の非義務・非本旨行為)で、これは支払不能の30日前以内なら、あなたが他の債権者を害すると知らなかったことを立証しない限り否認されます。実務のポイント:『相手から頼まれて先に払ってもらった』という親切が、実は最も危ない。義務のない時期の弁済は、あなたの善意悪意のハードルが一段下がる。倒産間際の前倒し回収は、感謝されても断るのが結果的に安全です
Q3否認の請求が来たら、もう返すしかないんですか?争えますか?
争えます。1項1号の否認は『あなたが行為当時、支払不能や支払停止を知っていたこと』が要件で、あなたが内部者でなければ、知っていたという立証責任は監督委員・管財人の側にあります。当時あなたが相手の倒産を知り得なかったことを示せば、否認は退けられます。実務のポイント:勝敗は『その時点で何を知っていたか』の一点に集約されます。だからこそ、与信判断の稟議書や相手とのやり取りの日付入り記録が決定的な武器になる。否認請求が来てから慌てて記録を探すのではなく、与信を絞り始めた時点の判断根拠を残しておくのが、後の防御線になります
間違えやすい点 AI による整理
- 「ちゃんと存在する債権を、正規に回収しただけだから否認されるはずがない」と思い込みがちだが、127条の3が狙うのはまさに『正当な債権の正当な回収』である。問題は債権の有無ではなく、倒産間際に特定の債権者だけが満足を得て、他の債権者との平等を崩したという一点。正当だからこそ巻き戻される、という逆説をまず理解する
- 否認という制度は知っていても、その深刻度を見誤っている人が多い。否認が確定すれば、受け取った金や担保を返すだけでなく、あなたの債権は元の無担保の再生債権に戻り、結局は数パーセントの配当しか得られない。『一度満額回収した』という既成事実は、何の盾にもならない
- 「自分が善意(知らなかった)なら大丈夫か」と問いを立てる人がいるが、あなたが債務者の役員・親族などの内部者であれば、その問いの立て方自体がずれている。法は内部者を『知っていた』と推定し、善意の立証責任をあなたに負わせる。外部の第三者と内部者では、スタートラインがまるで違う
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 対象行為 | 127条の3:既存債務への弁済・担保供与(偏頗行為) | 127条:詐害行為(財産減少行為) 127条の2:相当の対価を得てした財産処分行為 |
| 主観要件 | 原則、債権者の悪意(支払不能・支払停止の認識) | 再生債務者の害意 + 受益者の悪意 隠匿等の処分をする意思 + 相手方の悪意 |
| 時期の基準 | 支払不能後・申立て後、または支払不能前30日以内(非義務) | 害意ある行為であれば時期の限定は緩やか 対価隠匿等のおそれがある処分時 |
| 推定規定 | 内部者の悪意推定(2項)・支払停止からの支払不能推定(3項) | 内部者の害意推定あり 内部者の意思推定あり |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も破産宣告前の一定期間内における特定債権者への偏頗弁済・担保供与を撤銷の対象とする。個人は消費者債務清理条例による対応がある
韓国は債務者回生・破産法で否認権(부인권)を統一的に規定し、偏頗行為(편파행위)否認と内部者に関する推定を日本と類似の構造で置く
ドイツは支払不能後の弁済等を kongruente Deckung(§130)、非本旨・前倒しを inkongruente Deckung(§131)として区別し、後者はより広く否認を認める
米連邦倒産法は申立前90日以内(内部者は1年以内)の偏頗弁済を否認対象とし、支払不能を法律上推定する点で日本の推定規定と発想が近い
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 取引先の社長から「資金繰りが厳しくて、御社の分だけでも先に」と言われ、まだ期日前なのに弁済を受けた。30日後にその会社が民事再生を申し立てた。この前倒し弁済は『義務に属しない時期の弁済』として、あなたの善意悪意に関わらず否認の射程に入る。あなたが知っておくべきは、ここでは『害することを知らなかった』ことをあなた側が立証しないと守れないという点
- もし、あなたが取引先の代表者の親族で、その会社から貸付金を返してもらった直後に会社が倒産したら、どうなるか。あなたは『支払不能なんて知らなかった』と言える立場だが、内部者は知っていたものと推定される(同条2項)。推定を覆す立証責任は、あなたの側に丸ごとのしかかる
- 銀行として、融資先の業績悪化を察知し、追加担保として不動産に抵当権を設定させた。その後の再生手続で監督委員は『支払不能後の担保供与で、銀行は当然知っていた』と否認を主張してくる。問題は、その担保がなければあなたの債権は無担保の再生債権に転落し、配当は数パーセントになるという点
- 監督委員から否認の請求書が届いた。応答期限まであと数週間。ここで『行為当時、支払不能も支払停止も知らなかった』という反証を組めるかどうかで、受け取った金額をまるごと吐き出すか、回収を守り切るかが決まる。動き出しが遅れると、当時のメール・稟議書という最良の証拠の整理が間に合わない
取るべき行動
被害を受けた側:1. あなたが他の再生債権者で、特定の債権者だけが倒産直前に弁済や担保供与を受けたと気付いたら、その事実(時期・金額・相手の属性)を整理して監督委員または管財人に情報提供する2. 否認権を行使するのは個々の債権者ではなく監督委員・管財人なので(民事再生法132条)、行使を促す形で動く3. 相手が内部者なら知っていたと推定される点、支払停止後1年以内なら支払不能が推定される点(同条3項)を指摘し、立証のハードルが下がることを伝える4. 否認が認められれば、戻された財産が全債権者への配当原資になることを確認する
訴えられた側:1. 否認請求書が届いたら、まず争点が『支払不能後の弁済・担保』(1項1号)か『非義務・前倒しの行為』(1項2号)かを特定する2. 1号型なら、行為当時、支払不能・支払停止・申立てを知らなかったことを示す当時の資料(与信記録、相手の営業状況)を集める3. あなたが内部者でないことを明確にし、知っていたという立証責任を相手側に押し返す4. 2号型(30日以内の非義務行為)なら、他の債権者を害すると知らなかったことを立証する5. 全面的に争うか、一部返還で早期に和解するか、回収額と訴訟コストを天秤にかける
時効(請求できる期限):否認権は、再生手続開始の日から2年を経過したとき、または否認の対象行為の日から20年を経過したときは行使できない(民事再生法136条)。受け取った側にとっては、開始決定から2年を無事に越えれば巻き戻しのリスクが消える、という防御ラインになる(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:127条の3の偏頗行為否認は、対象を既存債務への弁済・担保供与に限定し、原則として債権者の悪意(支払不能・支払停止の認識)を成立要件とすることで、債権者平等の確保と取引の安全の調整を図る制度と解される。内部者の悪意推定(2項)と支払停止からの支払不能推定(3項)は、立証困難による平等の骨抜きを防ぐ趣旨とされる
改正沿革 AI による整理
- 平成16年(2004年)公布、平成17年(2005年)施行 破産法全部改正に伴う整備で新設。従来の包括的な否認規定を、詐害行為否認(127条)・処分行為否認(127条の2)・偏頗行為否認(127条の3)に整理し、破産法162条と平仄を合わせて、支払不能・支払停止を基準とする偏頗行為否認の要件と推定規定を明文化した
改正の年表
- 1.平成16年(2004年)公布・平成17年(2005年)施行 新設:破産法全部改正に伴う整備で新設。従来の包括的な否認規定を、詐害行為否認(127条)・処分行為否認(127条の2)・偏頗行為否認(127条の3)に整理し、破産法162条と平仄を合わせて、支払不能・支払停止を基準とする偏頗行為否認の要件と推定規定を明文化した
- 民事再生法 第127条詐害行為等の否認、害意を要件とする否認類型
- 民事再生法 第127条の2相当の対価を得てした財産処分行為の否認
- 民事再生法 第128条手形債務支払の場合等の否認の特則
- 民事再生法 第129条権利変動の対抗要件具備行為の否認
- 民事再生法 第132条否認権を行使する主体と方法(監督委員・管財人)
- 民事再生法 第134条否認後の相手方の債権の回復
- 民事再生法 第136条否認権の行使期間(開始2年・行為後20年)
- 破産法 第162条破産手続における対応する偏頗行為否認規定
- 会社更生法 第86条の3会社更生手続における対応する偏頗行為否認規定
- 民法 第424条詐害行為取消権、否認権の平時における原型となる制度
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