民事再生法 第136条(否認の請求)
クイックジャンプ
- 否認の請求をするときは、その原因となる事実を疎明しなければならない。
- 2.否認の請求を認容し、又はこれを棄却する裁判は、理由を付した決定でしなければならない。
- 3.裁判所は、前項の決定をする場合には、相手方又は転得者を審尋しなければならない。
- 4.否認の請求を認容する決定があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
- 5.否認の請求の手続は、再生手続が終了したときは、終了する。
この条文の基本情報
否認の請求とは何ですか?
定義否認の請求とは、民事再生法第136条に定められた規定で、「否認の請求をするときは、その原因となる事実を疎明しなければならない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事再生法第136条(否認の請求)は、日本の民事再生法に含まれる条文です。
- 民事再生法第136条の条文原文は「否認の請求をするときは、その原因となる事実を疎明しなければならない。」で始まります。
- 民事再生法第136条は第二節 否認権に置かれています。
- 民事再生法の公布日は平成11年12月22日です。
- 民事再生法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 民事再生法第136条の前の条は民事再生法第135条です。
- 民事再生法第136条の次の条は民事再生法第137条です。
- 民事再生法第136条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第136条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225 - 本サイト収録
民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第136条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/411AC0000000225/136
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事再生法136条は、否認権を決定手続で行使する「否認の請求」を定める。申立側は原因事実を疎明すれば足り、裁判所は相手方を審尋して理由付き決定で判断する。
Q · 倒産した取引先から前に受け取ったお金、正式な裁判もされていないのに返せと言われるのはなぜ?
否認の請求という簡易な決定手続で取り戻されるからです
民事再生法136条の否認の請求は、通常の訴訟ではなく裁判所の決定で否認の可否を判断する簡易手続です。申立側は原因事実を疎明すれば足り(1項)、裁判所は理由を付した決定で認容・棄却を判断します(2項)。決定の前には相手方または転得者を必ず審尋しなければならず(3項)、これが唯一の反論機会です。認容決定の裁判書が送達されると(4項)、不服があれば異議の訴え(137条)を期間内に提起する必要があります。
解説
取引先が経営難に陥る直前、あなたは売掛金を全額回収した、あるいは担保を設定してもらった。半年後、その相手が民事再生を申し立てる。あなたは「もう受け取った金だ、いまさら関係ない」と構えている。だが否認権を持つ監督委員は、あなたを正式に訴える必要すらない。民事再生法136条は「否認の請求」という簡易な決定手続を用意している。通常の訴訟と違い、申立側は原因事実を「疎明」(証明より軽い、一応確からしいと裁判所に思わせる程度の説明)すれば足り(1項)、裁判所は理由を付した決定で結論を出す(2項)。ただし、あなたには一度だけ反論の窓がある。裁判所は決定の前に必ずあなた(相手方)または転得者を審尋しなければならない(3項)。ここで黙っていれば、あなたの言い分は記録に残らない。認容の決定が出れば裁判書が送達され(4項)、その瞬間からあなたが反撃できる時間が刻み始める。
法的な位置づけ
民事再生法136条は、否認権を訴訟ではなく決定手続によって行使する「否認の請求」を定める規定である。申立人は否認の原因事実を疎明すれば足り、裁判所は相手方または転得者を審尋したうえで、理由を付した決定により認容または棄却を判断する。再生手続が終了すれば本手続も終了する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.裁判書を弁護士に即日渡し、何を求められているか確認 監督委員から否認の請求の裁判書や審尋の通知が届いたら、放置せず即日に倒産事件に強い弁護士へ渡す。対象行為が詐害行為否認か偏頗行為否認か、返還を求められている財産・金額を特定する
- 2.審尋で反論を出し切る 決定が出る前に必ず審尋に応じる(136条3項)。取得時に支払不能を知らなかったこと、対価の相当性、正当な取引であったことを主張・疎明する。ここで出した証拠は後の異議の訴えでも効く
- 3.認容決定の送達日を起点に異議の訴えの期限をカレンダー化 否認の請求を認容する決定の裁判書が送達されたら(136条4項)、送達日を起点に異議の訴え(137条)の不変期間を即カレンダーに記入する。一日でも過ぎれば決定が確定する
- 4.期間内に異議の訴えを提起し、簡易手続から正式訴訟へ移す 認容決定に不服があれば、不変期間内に異議の訴えを提起する(137条)。これにより決定手続から通常訴訟へ土俵を移し、返還の対象・範囲(現物返還か価額償還か)も含めて争う
よくある質問 AI による整理
Q1否認の請求とは何ですか?
倒産事件で、否認権を通常の訴訟ではなく裁判所の決定で行使する簡易手続です(民事再生法136条)。申立側は原因事実を疎明すれば足り、数か月で結論が出ます。
Q2否認の請求と否認の訴えはどう違いますか?
否認の訴えは判決まで年単位かかる通常訴訟、否認の請求は決定で判断する簡易手続です。後者は疎明で足り迅速ですが、認容決定には異議の訴えで争えます(137条)。
Q3否認の請求 異議の訴えの期限はいつですか?
認容決定の裁判書の送達日を起点とする不変期間内に異議の訴えを提起する必要があります(137条)。期間を過ぎると決定は確定判決と同一の効力を持ちます。
Q4疎明と証明はどう違いますか?
証明は裁判官に確信を抱かせる立証、疎明は一応確からしいと思わせる程度の説明です。否認の請求では疎明で足り、申立側のハードルが下がります(136条1項)。
Q5監督委員は否認の請求をできますか?
裁判所から否認権限を付与された監督委員は、申立権者として否認の請求をできます(民事再生法56条)。再生債務者に代わって財産の回復を図ります。
Q6転得者でも否認の請求の相手方になりますか?
なります。財産の流れの下流で取得した転得者も、一定の要件を満たせば否認の対象です(134条)。取得時に事情を知らなかった善意なら保護される余地があります。
Q7偏頗行為の否認とは何ですか?
支払不能後などに特定の債権者だけに弁済・担保提供する行為を、債権者平等の観点から取り消す否認類型です。倒産直前の回収や担保設定が対象になりやすい類型です。
Q8審尋に欠席するとどうなりますか?
審尋は決定前に言い分を記録に残せる唯一の機会です(136条3項)。欠席すると不利な決定が出やすく、後は異議の訴えという重い手続で一からやり直すことになります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1否認の請求って、普通の裁判とどう違うんですか?
通常の否認の訴えは判決まで年単位かかりますが、否認の請求は裁判所が決定で判断する簡易手続で、数か月で結論が出ます(136条)。申立側は事実を疎明すれば足り、証明までは不要なので、スタートのハードルも低い。実務のポイント:監督委員がどちらを選ぶかは戦略次第です。相手が財産を隠しそう、または争点が単純なら否認の請求を選ぶ。逆に複雑な事案は最初から訴えを選ぶこともある。あなたが相手方なら、決定手続で来たという事実自体が「相手は簡単に取れると踏んでいる」というシグナルだ
Q2審尋に呼ばれたけど、行かなくても後で異議の訴えで争えますよね?
争えますが、それは悪手です。審尋は決定が出る前にあなたの言い分を記録に残せる唯一の機会です(3項)。ここを飛ばすと、不利な決定が出てから異議の訴えという重い手続で一からやり直すことになる。実務のポイント:審尋で出した主張と証拠は、その後の異議の訴えでも効いてきます。早い段階で『取得時に事情を知らなかった』『対価は相当だった』という筋を作っておくと、裁判官の心証が初手から変わる。面倒でも審尋には全力で臨む
Q3相手から物を買っただけの自分が、なんで返さなきゃいけないんですか?
あなたが転得者(財産の流れの下流で取得した人)にあたる場合、一定の要件を満たせば否認の対象になります(民事再生法134条の転得者に対する否認権)。ただし、取得時に否認の原因を知らなかった善意なら保護される余地がある。実務のポイント:転得者否認では『知っていたか』が決定的です。倒産直前の安すぎる取引や、親族間の不自然な譲渡が絡むと『知っていたはず』と推認されやすい。取引の経緯と価格の合理性を示す資料が生命線になる
間違えやすい点 AI による整理
- 「裁判できちんと争えばいい」と身構える人が多いが、問いの立て方そのものが間違っている。否認の請求は訴訟ではなく決定手続だ。あなたが訴状を待っている間に、決定が出て確定してしまう。立てるべき問いは「審尋はいつ来るか」「異議の訴えの期限はいつか」である
- 「受け取った金は自分のものだ」とあなたは思っている。だが倒産法の視点では、それは『他の債権者を出し抜いて先取りした財産』に見える。同じ一筆の入金が、立場を変えると意味が反転する。この認識のズレが、あなたを無防備にする
- 「決定なんて軽いもの、後でいくらでも覆せる」と思われがちだが、異議の訴えを期間内に起こさなければ、その決定は確定判決と同一の効力を持つ。一通の通知を机に放った代償が、確定した返還義務になる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 手続の種類 | 否認の請求(136条):裁判所の決定で判断する簡易手続 | 否認の訴え(135条の行使方法):通常の訴訟、判決まで年単位 異議の訴え(137条):認容決定への不服を争う通常訴訟 |
| 立証の程度 | 原因事実の疎明で足りる(1項) | 原則として証明が必要 通常訴訟として証明が必要 |
| 相手方の防御 | 決定前の必要的審尋(3項)+ 認容後の異議の訴え | 訴訟手続のなかで全面的に防御 送達日起点の不変期間内に提起して争う |
| 終了事由 | 再生手続の終了により当然に終了(5項) | 判決の確定まで継続 判決の確定まで継続 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も倒産手続で詐害行為・偏頗行為の否認を認めるが、簡易な決定手続という枠組みは日本ほど明確ではない
韓国は日本法の影響を強く受け、否認権の類型(詐害行為・偏頗行為)も日本と類似する
ドイツの倒産否認は否認類型を詳細に定めるが、行使は原則として訴訟による。日本の決定手続は手続的工夫の点で特徴的
米国連邦倒産法は偏頗弁済(preference)と詐害譲渡(fraudulent transfer)を区別し、管財人が adversary proceeding で回復を図る
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 取引先の倒産直前に売掛金800万円を全額回収した。再生手続開始後、監督委員から否認の請求の裁判書が届く。異議の訴えを起こせるのは送達からわずかな不変期間だけ。決定を放置すれば確定し、800万円を返す義務が固まる
- もし、あなたが買い取った不動産が、実は売主が倒産直前に親族へ安く売り抜けた物件だったら? あなたは転得者として否認の請求の相手方になりうる。3項の審尋で、取得時に事情を知らなかったことを主張できるかが分かれ目になる
- 債務者から弁済を受けた。それが「特定の債権者への偏った弁済」と見られた。訴訟ではなく決定一本で取り戻されにかかる。
- あなたが監督委員側で、相手が財産を隠す前に動きたい。訴訟だと判決まで年単位、否認の請求なら決定まで数か月。レールの選択が回収率を左右する
取るべき行動
被害を受けた側:1. 否認対象行為(詐害行為か偏頗行為か)を特定し、疎明資料を整える。証明までは要らないが、一応確からしいと裁判所に思わせる資料は必須(1項) 2. 訴訟か否認の請求かを選ぶ。スピードと回収可能性を重視するなら否認の請求が有利3. 相手が財産を処分する前に動く。再生手続が終了すれば手続も終わる(5項)ので、時間切れに注意4. 認容決定後は裁判書の送達を確実に行い、異議の訴えの期間経過を見届ける
訴えられた側:1. 審尋の通知が来たら必ず応じる。決定前に反論できる唯一の機会だ(3項)。取得時に事情を知らなかったこと、対価の相当性を主張・立証する2. 認容決定の裁判書が送達されたら、送達日を起点に異議の訴えの期限(137条)を即カレンダー化3. 期間内に異議の訴えを提起し、簡易な決定手続から正式な訴訟へ土俵を移す4. 返還の対象や範囲が過大なら、否認の効果(現物返還か価額償還か)も争点に立てる
時効(請求できる期限):否認の請求自体に固有の申立期限はないが、再生手続が終了すれば手続も当然に終了する(5項)。認容決定に不服がある相手方・転得者は、裁判書の送達を受けた日から1か月の不変期間内に異議の訴えを提起しなければならない(137条)。この期間を過ぎると決定は確定判決と同一の効力を持つ(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:否認の請求(136条)は、否認権を訴訟によらず決定手続で迅速に実現するための簡易手続と理解される。疎明で足りるとした1項と必要的審尋を定めた3項、認容決定後の異議の訴え(137条)により、迅速性と相手方の手続保障の調和が図られていると説明される。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.平成11年(1999年) 新設:民事再生法の制定(平成11年法律第225号)により、和議法に代わる再生手続の一環として否認制度を整備。否認権の行使方法として通常の否認の訴えと並び、決定手続である否認の請求を設けた
- 民事再生法 第135条否認権の行使方法の総則規定
- 民事再生法 第137条認容決定に対する異議の訴え
- 民事再生法 第134条転得者に対する否認権
- 民事再生法 第56条否認権限を有する監督委員(申立権者)
- 民事再生法 第127条否認の対象となる詐害行為の要件
- 破産法 第174条破産手続のほぼ同一の否認の請求手続
- 破産法 第175条破産の否認請求認容決定への異議の訴え
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める