刑事訴訟法 第312条の2
クイックジャンプ
- 検察官は、訴因変更等請求書面に記載された第二百七十一条の二第一項第一号又は第二号に掲げる者の個人特定事項について、必要と認めるときは、裁判所に対し、前条第五項の規定による訴因変更等請求書面の謄本の送達により当該個人特定事項が被告人に知られないようにするための措置をとることを求めることができる。
- 2.前項の規定による求めは、裁判所に対し、訴因変更等請求書面とともに、被告人に送達するものとして、当該求めに係る個人特定事項の記載がない訴因変更等請求書面の抄本その他の訴因変更等請求書面の謄本に代わるもの(以下この条において「訴因変更等請求書面抄本等」という。)を提出して行わなければならない。
- 3.裁判所は、前項の規定による訴因変更等請求書面抄本等の提出があつたときは、前条第五項の規定にかかわらず、遅滞なく訴因変更等請求書面抄本等を被告人に送達しなければならない。
- 4.第二百七十一条の三から第二百七十一条の八までの規定は、第二項の規定による訴因変更等請求書面抄本等の提出がある場合について準用する。この場合において、第二百七十一条の三第三項中「前条第一項第一号ハ(1)」とあるのは「第二百七十一条の二第一項第一号ハ(1)」と、第二百七十一条の五第一項中「第二百七十一条の二第四項」とあるのは「第三百十二条の二第三項」と、第二百七十一条の六第五項及び第二百七十一条の八第一項中「同条第一項第一号」とあるのは「第二百七十一条の二第一項第一号」と読み替えるものとする。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 刑事訴訟法第312条の2は、日本の刑事訴訟法に含まれる条文です。
- 刑事訴訟法第312条の2の条文原文は「検察官は、訴因変更等請求書面に記載された第二百七十一条の二第一項第一号又は第二号に掲げる者の個人特定事項について、必要と認めるときは、裁判所に対し、前条第五項の…」で始まります。
- 刑事訴訟法第312条の2は第一節 公判準備及び公判手続に置かれています。
- 刑事訴訟法の公布日は昭和23年7月10日です。
- 刑事訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年9月5日時点では廃止情報はありません。
- 刑事訴訟法第312条の2の前の条は刑事訴訟法第312条です。
- 刑事訴訟法第312条の2の次の条は刑事訴訟法第313条です。
- 刑事訴訟法第312条の2には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第312条の2 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131 - 本サイト収録
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第312条の2(LawPlayer 収録、取得日 令和8年9月5日)https://lawplayer.com/jp/article/323AC0000000131/312_2
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点刑事訴訟法312条の2は、検察官が訴因変更の書面でも被害者の個人特定事項を伏せた抄本を被告人へ送達するよう裁判所に求められると定める。起訴状段階の秘匿を裁判途中まで連続させる。
Q · 起訴状で住所を隠してもらっても、裁判の途中で訴因が変わったら被告人に住所がバレるの?
訴因変更の書面でも個人特定事項は伏せたまま守られます
刑事訴訟法312条の2により、検察官は訴因変更等請求書面に記載された被害者等の個人特定事項を、必要と認めるときは伏せた抄本に差し替えて被告人へ送達するよう裁判所に求められます。裁判所は提出があれば遅滞なく抄本を被告人へ送達します(3項)。起訴状で守った秘密が訴因変更のすき間から漏れることを防ぐ規定です。被告人側は準用される刑訴271条の5により、防御に必要なら個人特定事項の通知を請求できます。
解説
ストーカーに待ち伏せされた、痴漢の常習犯に被害を受けた、元交際相手から暴力を振るわれた。あなたが刑事事件の被害者になり、起訴状ではあなたの氏名や住所が被告人に伏せられた(刑訴271条の2)。ここまでは知っている人もいる。だが裁判の途中で、検察官が「訴因」、つまり起訴で主張した犯罪事実の中身を変更することがある。傷害から殺人未遂へ、窃盗から強盗へ。このとき訴因変更請求書面が被告人に送られるが、もしその書面にあなたの氏名や住所が書かれていたら、起訴状で守られたはずの秘密が、変更手続のすき間から漏れる。312条の2は、その穴をふさぐ条文だ。検察官は裁判所に対し、被告人へ送る書面を、あなたの個人特定事項を消した抄本に差し替えるよう求められる。あなたの安全は、起訴の一瞬だけでなく、裁判が動き続ける間ずっと連続して守られる。
法的な位置づけ
刑事訴訟法312条の2は訴因変更における個人特定事項の秘匿措置を定める規定であり、検察官が訴因変更等請求書面の被告人への送達に際し、被害者等の氏名・住所等を伏せた抄本の提出を裁判所に求められる旨を規定する。起訴状秘匿(271条の2)の趣旨を訴因変更手続へ準用により延長する役割を担う。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.被害者:早期に検察官へ秘匿継続を申し入れる 捜査・公判の早い段階で担当検察官に、起訴状だけでなく訴因変更があっても個人特定事項の秘匿を継続してほしい旨を明確に伝える。秘匿対象(氏名・住所・勤務先)を具体的に列挙する
- 2.被害者:危険性を具体的根拠とともに示す 措置を求めるかは検察官の「必要と認めるとき」の裁量のため、過去の接触・付きまとい・報復のおそれを時系列で具体的に示す。被害者参加弁護士を通じて働きかけると通りやすい
- 3.被告人:抄本受領後すぐに防御上の必要性を判断 訴因変更等請求書面抄本(黒塗り版)を受け取ったら、伏せられた個人特定事項が自分の防御に不可欠か冷静に判断する。本案弁論が本格化する前に動くことが重要
- 4.被告人:刑訴271条の5を準用して通知を請求 防御に不可欠と判断したら、準用される刑訴271条の5に基づき裁判所へ個人特定事項の通知を請求する。可否は裁判所が裁定し、認められなければさらに争う手段を弁護人と検討する
よくある質問 AI による整理
Q1刑事訴訟法312条の2はいつから施行されたの?
令和5年(2023年)改正で新設され、令和6年(2024年)2月15日に施行されました。犯罪被害者等の個人特定事項の秘匿制度の一環として導入された比較的新しい規定です。
Q2訴因変更等請求書面抄本とは何ですか?
被害者等の氏名・住所などの個人特定事項を伏せた、訴因変更等請求書面の謄本に代わる書面です。検察官がこれを裁判所に提出し、裁判所が被告人へ送達します。
Q3個人特定事項にはどんな情報が含まれますか?
氏名や住所のほか、被害者を特定させる事項が対象です。痴漢・盗撮・ストーカー等で身元が立証に不要な事件ほど秘匿が認められやすい傾向があります。
Q4検察官は必ず秘匿措置をとってくれますか?
いいえ。措置を求めるかは検察官が「必要と認めるとき」の裁量です。報復のおそれ等の危険性を早い段階で具体的に伝えると採られやすくなります。
Q5被告人は抄本を受け取ったら何をすべき?
黒塗り部分が防御に不可欠か判断し、必要なら準用される刑訴271条の5で個人特定事項の通知を裁判所に請求します。期日が進む前に動くのが重要です。
Q6訴因変更等請求書面抄本はいつ送達されますか?
検察官の抄本提出があれば、裁判所は遅滞なく被告人へ送達しなければなりません(本条3項)。送達後は通知請求等の検討時計が動き始めます。
Q7公判廷での被害者秘匿は312条の2で守られますか?
いいえ。公判廷での被害者特定事項の秘匿は刑訴290条の2が支えます。312条の2は訴因変更書面の送達局面のみを対象とします。
Q8秘匿措置は後から取り消されることがありますか?
あります。準用される刑訴271条の8により、要件を欠く場合などに秘匿措置が取り消されることがあります。状況の変化に応じて見直されます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1被告人に住所を隠したまま裁判するなんて、フェアじゃないのでは?
公平性は確保されています。隠せるのは氏名や住所などの「個人特定事項」だけで、何をしたと主張されているかの事実そのものは被告人に示されます。さらに被告人は防御に必要なら準用される刑訴271条の5で通知を請求でき、裁判所が必要性を裁定します。実務のポイント:実務では、被害者の住所が犯罪の成否に関わる事件(住居侵入など)では秘匿が認められにくく、痴漢・盗撮・ストーカーのように被害者の身元が立証に不要な事件で通りやすい。事件類型で結論がかなり読めます
Q2訴因変更って、急に罪が重くなることもあるんですか?
あります。検察官は審理の途中で訴因を変更でき、傷害から傷害致死、窃盗から強盗へ格上げされることもあります。312条の2はその変更書面でも被害者の個人特定事項を守る仕組みであって、訴因変更そのものを縛る条文ではありません。実務のポイント:訴因変更が出た瞬間が被告人にとって防御方針の転換点。新しい訴因に対し求釈明や証拠の補充、場合によっては公判前整理手続のやり直しを求める余地があります。黒塗りに気を取られて変更の中身への対応が遅れると、そこが命取りになる
間違えやすい点 AI による整理
- 「起訴状で住所さえ隠してもらえれば、もう被告人に知られる心配はない」と考えるのは、問いの立て方が片手落ちだ。守るべきは起訴の一瞬ではなく、裁判が続く全期間。訴因変更、証拠調べ、証人尋問、それぞれの局面に漏洩の入口がある。312条の2はそのうち訴因変更の入口だけをふさぐ条文で、公判廷での秘匿は別に290条の2が支えている。守りの全体図を知らないと、どこが手薄かも分からない
- 「黒塗りの書面が届いた、つまり自分は不利だ」と被告人が思うのは、深刻さの在りかを取り違えている。本当に効くのは黒塗りされているかどうかではなく、黒塗りされたまま防御できるか否か。準用される刑訴271条の5で通知を請求でき、争いがあれば裁判所が裁定する。黒塗りの有無より、その先の請求権を使えるかどうかが勝敗を分ける
- 「被害者の情報を隠すなんて、被告人の防御権の侵害だ」と見えるかもしれない。だが被告人から見れば情報の欠落でも、法律から見れば「真に防御に必要な情報か」を裁判所が選別する仕組みだ。氏名や住所そのものは多くの事件で有罪無罪の判断に不要であり、この視角の落差を理解しないと、的外れな異議で時間を浪費する
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 対象となる手続局面 | 312条の2:訴因変更等請求書面の被告人への送達 | 271条の2:起訴状の被告人への送達 290条の2:公判廷での審理 |
| 守られるもの | 訴因変更書面に記載された被害者等の個人特定事項 | 起訴状に記載された被害者等の個人特定事項 公判廷で明らかにされうる被害者特定事項 |
| 被告人の対抗手段 | 準用される271条の5で通知請求(本条4項) | 271条の5で通知請求 公判廷での意見・異議 |
| 性質 | 271条の2の秘匿を訴因変更へ延長する補強規定 | 個人特定事項秘匿制度の起点規定 公開法廷における秘匿の別系統規定 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は性犯罪被害者の身分資訊を保密する明文を持つが、訴因変更手続に特化した秘匿の連続性規定は日本ほど細分化されていない
韓国は通報者・被害者の人的事項を調書に記載しない措置を認める。手続段階を通じた秘匿の連続性は運用に委ねられる部分が大きい
ドイツは証人・被害者の住居や身元を秘匿する一般規定を持ち、生命・身体への危険があれば氏名の開示も制限しうる。日本の局面別の精緻な準用構造とは設計が異なる
米国は被害者の私生活を尊重される権利を連邦法で保障するが、被告人の対面権(Confrontation Clause)との緊張が強く、身元秘匿の範囲は判例で争われる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- もし、加害者があなたの住所を知らないまま起訴されたのに、裁判の途中で検察官が訴因を変更したらどうなる? その変更書面にあなたの住所が再び書き込まれていれば、せっかくの秘匿が水の泡になる。312条の2がなければ、変更手続のたびにあなたの情報が漏れ出すリスクが残っていた
- あなたが被告人で、ある日「訴因変更請求書面抄本」という、ところどころ黒塗りされた書面を受け取る。誰に何をしたと言われているのか、肝心の相手の名前が分からず不安になる。だが準用される刑訴271条の5により、防御に必要だと示せれば、個人特定事項の通知を裁判所に請求できる。黒塗りは泣き寝入りの合図ではない
- 公判中、検察官が訴因変更を申し立てた。裁判所は遅滞なく抄本を被告人へ送達しなければならない(本条3項)。被告人なら、その抄本を受け取った瞬間から開示請求や異議の検討時計が動き出す。期日は待ってくれない
取るべき行動
被害を受けた側:1. 早い段階で担当検察官に個人特定事項の秘匿希望を口頭または書面で明確に伝え、訴因変更時も継続してほしい旨を含める2. 秘匿対象(氏名・住所・勤務先など)を具体的に列挙する3. 検察官が措置を求めるかは「必要と認めるとき」の裁量なので、過去の接触や報復のおそれといった危険性を具体的根拠とともに示す4. 被害者参加制度の弁護士を通じて検察官に働きかけると通りやすい
訴えられた側:1. 訴因変更請求書面抄本(黒塗り版)を受け取ったら、まず黒塗り部分が自分の防御に不可欠か冷静に判断する2. 不可欠なら準用される刑訴271条の5に基づき裁判所へ個人特定事項の通知を請求する3. 通知の可否は裁判所が判断、認められなければさらに争う手段を弁護人と検討する4. ただし氏名や住所が有罪無罪の判断に無関係な事件では、的外れな異議で心証を損ねないよう戦略的に動く
時効(請求できる期限):本条に固有の出訴期間はないが、裁判所は訴因変更等請求書面抄本等の提出があれば遅滞なく被告人へ送達しなければならない(本条3項)。送達後、準用される刑訴271条の5以下の通知請求や異議は、公判の進行に応じて時機に後れず速やかに行う必要がある
学説
立法趣旨(通説的理解):本条は犯罪被害者等の個人特定事項秘匿制度(271条の2以下)を訴因変更の局面へ延長するもので、起訴から判決まで秘匿を途切れさせない趣旨と理解される。271条の3から271条の8までを準用し、被告人の防御権は通知請求権の保障で均衡が図られる。
改正沿革 AI による整理
- 令和5年(2023年)改正(法律第28号) 犯罪被害者等の個人特定事項の秘匿制度の一環として新設。訴因変更等請求書面の被告人への送達時に、検察官が個人特定事項を伏せた抄本の提出を求められる仕組みを導入。施行は令和6年(2024年)2月15日
改正の年表
- 1.令和5年(2023年) 新設:犯罪被害者等の個人特定事項の秘匿制度の一環として、令和5年法律第28号により新設。訴因変更等請求書面の送達時に検察官が個人特定事項を伏せた抄本の提出を求められる仕組みを導入。施行は令和6年(2024年)2月15日
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める