刑事訴訟法 第99条
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- 裁判所は、必要があるときは、証拠物又は没収すべき物と思料するものを差し押えることができる。ただし、特別の定めのある場合は、この限りでない。
- 2.差し押さえるべき物が電子計算機であるときは、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、当該電子計算機で作成若しくは変更をした電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)又は当該電子計算機で変更若しくは消去をすることができることとされている電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから、その電磁的記録を当該電子計算機又は他の記録媒体に複写した上、当該電子計算機又は当該他の記録媒体を差し押さえることができる。
- 3.裁判所は、差し押えるべき物を指定し、所有者、所持者又は保管者にその物の提出を命ずることができる。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 刑事訴訟法第99条は、日本の刑事訴訟法に含まれる条文です。
- 刑事訴訟法第99条の条文原文は「裁判所は、必要があるときは、証拠物又は没収すべき物と思料するものを差し押えることができる。ただし、特別の定めのある場合は、この限りでない。」で始まります。
- 刑事訴訟法第99条は第九章 押収及び捜索に置かれています。
- 刑事訴訟法の公布日は昭和23年7月10日です。
- 刑事訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年9月5日時点では廃止情報はありません。
- 刑事訴訟法第99条の前の条は刑事訴訟法第98条の11です。
- 刑事訴訟法第99条の次の条は刑事訴訟法第99条の2です。
- 刑事訴訟法第99条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第99条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131 - 本サイト収録
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第99条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年9月5日)https://lawplayer.com/jp/article/323AC0000000131/99
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点刑事訴訟法99条は、裁判所が証拠物等を差し押さえる権限を定める。2項では電子計算機に接続するクラウド等の電磁的記録を複写して押収でき、3項は提出命令を認める。
Q · 押収されるのは家にある物だけですか?スマホやクラウドの中身も対象になりますか?
クラウド上の電磁的記録も複写して押収できる
刑事訴訟法99条1項は、裁判所が証拠物又は没収すべき物を差し押さえる権限を定めます。2項では、差押え対象が電子計算機(PC・スマホ等)であるとき、その端末から電気通信回線で接続する記録媒体(クラウド・サーバー)の電磁的記録を複写した上で押収できます(2011年改正で新設)。物理的に端末が手元になくても、端末からアクセスできるデータは射程内です。3項は所有者・所持者・保管者への提出命令を規定し、業務上秘密は105条の押収拒絶権で保護されます。
解説
あなたのスマホやノートパソコンが、ある日法廷の証拠として押収される。しかも本体だけではない。その端末からログインできる Gmail、Dropbox、LINE のトーク履歴、クラウド上のデータまで、まるごと複写して押収できる。これが刑事訴訟法99条2項、2011年(平成23年)のサイバー犯罪対策改正で加わった「リモートアクセスによる複写の処分」だ。1項は裁判所が証拠物や没収すべき物を差し押さえる基本権限、3項はモノの提出を命じる「提出命令」(役所や裁判所があなたに特定の物を出せと命じる強制処分)を定める。多くの人は押収を「家にある物を持っていかれること」だと思っているが、今や射程はあなたが契約しているクラウドサーバーの中身にまで及ぶ。端末が手元になくても、端末からアクセスできるデータは押収対象になりうる。紙とモノの時代の感覚で読むと、最も足をすくわれる条文だ。
法的な位置づけ
刑事訴訟法99条は、裁判所による差押えと提出命令を定める規定である。1項は証拠物又は没収すべき物の差押え権限、2項は差押え対象の電子計算機から電気通信回線で接続する記録媒体の電磁的記録を複写して押収する「リモートアクセスによる複写の処分」、3項は所有者・所持者・保管者に対する提出命令を規律する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.差押許可状の罪名・対象物・対象範囲を確認 押収の現場では、まず許可状に記載された罪名、対象物、対象範囲を確認する。許可状の範囲を超える押収や複写には異議を述べ、立会人として調書に記録させる
- 2.リモートアクセス複写の範囲を記録に残させる クラウドやサーバーへのリモートアクセス複写(99条2項)が行われる場合、複写の範囲・対象アカウント・無関係データの扱いをその場で調書に記録させる。後の準抗告や違法収集証拠排除を争う土台になる
- 3.業務上秘密に当たる物は押収拒絶を主張 弁護士・医師等の業務上他人の秘密に関する物が含まれるなら、その場で押収拒絶権(刑訴105条)を主張する。出してしまうと盾を自ら手放すことになる
- 4.違法・範囲逸脱なら準抗告を申し立てる 押収や複写が違法または許可状の範囲を逸脱すると考えるなら、処分を知った後、速やかに準抗告(刑訴429条)を申し立てる。時機を逃すとデータが残り続ける
- 5.無関係データの還付・複製返還を請求 押収物に事件と無関係な私的データが含まれるなら、事件係属中の還付請求(刑訴123条)や複製の返還を求める
よくある質問 AI による整理
Q1押収と差押えの違いは何ですか?
押収は証拠物等を取得する処分の総称で、差押えはその一類型です。99条は裁判所による差押えと提出命令を定めます。領置(任意提出物の取得)と異なり、差押えは強制処分です。
Q2提出命令に従わないとどうなりますか?
正当な理由なく従わなければ過料等の制裁が問題となりえます。ただし被告人本人への提出命令には自己負罪拒否特権(憲法38条)との関係で限界があり、出すべきでない物まで差し出さない判断が重要です。
Q3リモートアクセスによる複写の処分とは何ですか?
99条2項により、差し押さえる端末から回線で接続するクラウドやサーバーの電磁的記録を複写して押収する処分です。2011年のサイバー犯罪対策改正で新設されました。
Q4押収された物を取り戻すにはどうすればいいですか?
事件係属中であれば還付請求(刑訴123条)が可能です。押収処分そのものに不服があるときは準抗告(429条)を、処分を知ってから速やかに申し立てます。
Q5押収拒絶権は誰が使えますか?
医師・弁護士・公証人など業務上他人の秘密を扱う者が、その業務で委託を受けた他人の秘密に関する物について押収を拒めます(刑訴105条)。99条1項但書の「特別の定」の典型例です。
Q6押収に対する準抗告はいつまでにできますか?
押収処分そのものに時効はありませんが、不服があるときの準抗告は処分を知った後、速やかに行う必要があります。時機を逃すとデータが複写されたまま残り続けます。
Q7提出命令を拒否できる場合はありますか?
業務上秘密(刑訴105条)に当たる物、自己負罪拒否特権(憲法38条)が及ぶ局面では拒める余地があります。命令が来た瞬間に応じると、この盾を自ら捨てることになります。
Q8会社の PC が押収されたら取引先の共有データも対象になりますか?
対象 PC から回線で接続できる状態にある共有クラウドフォルダは、99条2項の複写対象になりえます。顧客情報や契約書が一括で証拠化されるリスクがあります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1スマホを押収されたら、LINE やクラウドの中身まで全部見られるんですか?
端末から自動ログインできる状態なら、99条2項により接続先のクラウド上の電磁的記録まで複写して押収されうります。パスワードが端末に保存されているサービスは特に対象になりやすい。実務のポイント:実務では、端末のロック解除に本人が積極的に協力する義務まではないと解されていますが、指紋や顔認証による解除は供述ではないとして、パスコードより法的に守りにくいと議論されている。生体認証をかけている人ほど、いざという時に弱い
Q2裁判所が押収する99条と、警察が令状でやる差押えは何が違うんですか?
99条は公判段階で裁判所自身が職権で行う押収、警察や検察が捜査段階で行うのは218条以下の令状による差押えです。主体も局面も違いますが、複写の処分(110条の2)など技術的な仕組みは共通します。実務のポイント:報道される家宅捜索や押収のほとんどは捜査機関による218条のケース。99条が前面に出るのは公判が始まってからで、弁護人が証拠物の取扱いを争う局面で効いてくる。条文番号の違いが、どの段階で誰と戦うかを示している
間違えやすい点 AI による整理
- 「押収されるのは家にある物だけ」と思い込んでいるが、99条2項により、端末からアクセスできるクラウドやサーバー上の電磁的記録まで複写して押収できる。物理的にその場になくても、ログインできるデータは射程内だ
- 提出命令(3項)の存在は知っていても、その重みを軽く見ている人が多い。命令に従わなければ過料などの問題が生じうる一方、自己負罪拒否特権(憲法38条、自分に不利な供述を強いられない権利)との緊張関係があり、被告人本人への提出命令には限界がある。この線引きを知らないと、出すべきでない物まで自ら差し出してしまう
- 「これは捜査機関が令状でやる話で、裁判所は中立だから関係ない」と問いを立てている人がいるが、そもそも99条は裁判所自身の押収権限を定めた条文だ。公判段階で裁判所が職権で証拠物を差し押さえる局面があり、捜査段階の218条とは別の場面。見ていた構図そのものがずれている
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 主体と局面 | 99条:公判段階で裁判所が職権で差押え・提出命令 | 100条:裁判所による郵便物等の押収(対象別の特則) 218条:捜査機関が捜査段階で令状により差押え |
| 対象の射程 | 証拠物・没収すべき物 + 接続するクラウド等の電磁的記録(2項) | 被告人が発受する郵便物・電信に関する書類 捜査に必要な物 + 110条の2の複写処分 |
| 覆せる手段 | 押収拒絶権(105条)、準抗告(429条)、違法収集証拠排除 | 準抗告、通信の秘密(憲法21条2項)の主張 準抗告(430条)、令状の瑕疵の主張 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も扣押を強制処分として規律し、令状(搜索票)主義を採る。電磁紀録の扣押に関する運用は日本と類似の課題を抱える
韓国も押収(압수)を令状主義の下に置き、デジタル証拠の選別押収(出力・複製)に関する規定を整備している
ドイツは Beschlagnahme(差押え)と Durchsicht(精査)を区別し、電子データの保全と精査を段階的に規律する
米国は第4修正の令状主義の下、リモート電子捜索について2016年の Rule 41改正で管轄を拡張した
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- もし、ある朝、自宅に裁判所の差押許可状を持った人が来て、あなたのノートパソコンを押収していったら? 端末だけでは終わらない。その場で Gmail やクラウドストレージにログインされ、サーバー上のデータがまるごと複写される。立会いの権利を主張できるのは、その瞬間しかない
- あなたが経営する会社が事件の対象になり、業務用 PC が押収された。問題は、その PC からアクセスできる取引先との共有クラウドフォルダまで複写されること。顧客情報、契約書、経理データが一括で証拠化される。99条2項の射程を知らずに「本体さえ渡さなければ」と構えると致命傷になる
- 弁護士に預けた書類が押収されそうになった。だが105条の押収拒絶権が盾になる。99条1項但書の「特別の定のある場合」とは、まさにこれだ
- 押収された物の中に、事件と無関係な家族写真や私的なデータが大量に含まれていた。取り戻したいなら、押収処分への準抗告(429条)を速やかに。時機を逃すと、データは複写されたまま長く手元に残り続ける。動けるのは処分を知った直後の数日だ
取るべき行動
被害を受けた側:1. 差押許可状の罪名、対象物、対象範囲をその場で確認し、許可状の範囲を超える押収や複写には異議を述べ、立会人として調書に記録させる2. クラウドやサーバーへのリモートアクセス複写が行われる場合、その範囲と対象アカウントを記録に残させる3. 押収や複写が違法または範囲逸脱と考えるなら、速やかに準抗告(429条)を申し立てる4. 業務上秘密(105条)に当たる物が含まれるなら、その場で押収拒絶を主張する
訴えられた側:1. 押収された電磁的記録が事件と関連性を欠くなら、証拠調べ段階で証拠能力と関連性を争う2. 複写の過程に違法があれば違法収集証拠排除法則を主張する3. 提出命令を受けた場合、自己負罪拒否特権(憲法38条)や押収拒絶権の範囲を弁護人と精査してから対応する4. 無関係データの還付や複製の返還を求める
時効(請求できる期限):押収処分そのものに時効はない。ただし押収や差押えに不服があるときの準抗告(刑事訴訟法429条)は、処分を知ってから速やかに行う必要がある。押収物の還付請求は、事件係属中であれば随時可能(刑事訴訟法123条、最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:99条2項のリモートアクセス複写は、令状主義(憲法35条)と通信の秘密(憲法21条2項)の制約の下で、複写対象を令状記載の範囲に限定して運用されるべきとされる。無限定なクラウド探索は許されず、接続先の特定と範囲明示が要請される。
改正沿革 AI による整理
- 平成23年(2011年)情報処理高度化対処改正 サイバー犯罪条約対応として2項を新設。差し押さえるべき物が電子計算機であるとき、電気通信回線で接続する記録媒体(クラウド・サーバー等)の電磁的記録を複写した上で押収できる「リモートアクセスによる複写の処分」を導入した
改正の年表
- 1.昭和23年(1948年) 新設:現行刑事訴訟法の制定により、裁判所の差押え権限(1項)と提出命令(3項)を規定
- 2.平成23年(2011年) 改正:情報処理高度化対処改正(サイバー犯罪条約対応)により2項を新設。電子計算機に回線接続する記録媒体の電磁的記録を複写して押収する『リモートアクセスによる複写の処分』を導入
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