要点厚生年金保険法44条の3は老齢厚生年金の繰下げを定め、一年を経過した日前に請求しなかった者が申出でき、支給は申出の翌月から始まる。在職により支給停止された額は加算の基礎から外れる。
Q · 年金を受け取らずに待てば、その分ちゃんと増えるんですか?
原則は増えるが、他の年金の受給権と在職停止で目減りする
厚生年金保険法44条の3第1項により、受給権取得日から一年を経過した日前に請求しなかった者は支給繰下げの申出ができ、第3項により申出のあった月の翌月から増額された年金が支給されます。ただし第1項ただし書により他の年金たる給付の受給権者であったときは申出ができず、第2項により待機中に他の年金たる給付の受給権が発生すればその日に申出があったものとみなされます。さらに第4項は、第46条第1項の例により計算した支給停止額を勘案して加算額を定めるため、在職中に止められていた部分は増額の基礎から外れます。
年金を受け取る時期を1か月遅らせるごとに、額は0.7%増える。75歳まで待てば120か月分、84%増だ。だが厚生年金保険法44条の3が本当に告げているのは、その増額率ではない。第1項ただし書が突きつけるのは「他の年金たる給付の受給権者でないこと」という条件で、配偶者が先に亡くなり遺族厚生年金の受給権が発生した瞬間、あなたの繰下げは止まる。第4項が「第46条第1項の規定の例により計算したその支給を停止するものとされた額を勘案して」とわざわざ書いているのは、在職老齢年金で止められていた部分は増額の計算基礎に入らないという意味だ。働きながら待った人ほど、増える額は思ったより小さい。さらに44条の加給年金(配偶者分で年約40万円前後、年度で変動)は待機中まるごと支給されず、後から補填もされない。0.7%という数字だけを見て決めると、自分の家族構成と働き方を計算に入れないまま5年、10年を捨てることになる。
厚生年金保険法44条の3は老齢厚生年金の支給繰下げ制度を定める規定であり、受給権取得日から一年を経過した日前に請求しなかった者が実施機関に繰下げの申出をすることを認める。支給は第36条第1項の原則にかかわらず申出のあった月の翌月から始まり、年金額には受給権取得月の前月までの被保険者期間および在職による支給停止額を勘案した政令所定の額が加算される。
老齢厚生年金を受給権取得後すぐに請求せず、実施機関に支給繰下げの申出をして受給開始を遅らせ、その代わりに年金額の加算を受ける制度です。厚生年金保険法44条の3が根拠となります。
第3項により、第36条第1項の原則にかかわらず申出のあった月の翌月から支給が始まります。申出をした月自体は支給対象外なので、月末をまたぐ手続きのタイミングに注意が必要です。
第2項により、受給権取得日から十年を経過した日後に申出をしても、その十年を経過した日に申出があったものとみなされます。原則65歳受給権なら75歳が事実上の上限です。
もらえません。第4項の加算対象は第43条第1項および第46条第1項ベースの額で、第44条の加給年金額は含まれません。待機中の加給年金は不支給で、後からの補填もありません。
できます。老齢厚生年金の繰下げは厚生年金保険法44条の3、老齢基礎年金の繰下げは国民年金法28条で別制度です。片方だけ繰下げる使い分けが可能です。
申出後の撤回はできません。ただし申出前であれば、待機をやめていつでも本来額を請求できます。逆に一年を経過した日前に請求すると、繰下げの申出権そのものが失われます。
できません。44条の3の対象は65歳から受給権が発生する老齢厚生年金です。60歳台前半の特別支給分は繰下げの対象外で、請求しないまま放置すると時効で消滅します。
第2項により、その給付を支給すべき事由が生じた日に繰下げの申出があったものとみなされます。そこで増額は打ち切られ、以後は待っても加算は増えません。
額面だけなら繰下げ開始から約12年で追いつきます。65歳から70歳まで待てば42%増(0.7%×60月)で、分岐点は81歳11か月前後。ただし第4項の加算対象に44条の加給年金は含まれません。業界裏話ヒント:分岐点の計算は全部額面ベースです。増えた年金は住民税・介護保険料・国民健康保険料の算定基礎にそのまま乗るため、手取りベースの分岐点は2、3年後ろにずれます。手取り換算は自分から頼まないと出てきません
増えません。第4項は「第46条第1項の規定の例により計算したその支給を停止するものとされた額を勘案して政令で定める額」と書いており、在職老齢年金で支給停止されていた部分は増額の計算基礎から外れます。業界裏話ヒント:高収入で働き続ける人ほど厚生年金の繰下げ効果は薄れます。支給停止の対象外である老齢基礎年金だけを繰下げる方が効率のいいケースが多いのに、この使い分けが窓口から積極的に説明されることはまずない
増額は消えます。遺族は未支給年金として本来額を請求できますが、厚生年金保険法92条の5年時効にかかった分は戻りません。第5項の5年前みなし繰下げは、本人が請求する場合の規定です。業界裏話ヒント:繰下げを一律に勧める記事は平均余命を前提に組まれています。健康状態は平均ではなく個別の事情で決まる。持病がある人にとって繰下げは貯金ではなく賭けである、という前提が抜けた試算は信用しない
手遅れではありません。第5項により、繰下げ申出をせずに請求すれば請求日の5年前(67歳時点)に申出があったものとみなされ、16.8%増の年金が5年分さかのぼって支払われます。ただし受給権取得から十五年経過後、または5年前の日までに他の年金たる給付の受給権者となった場合は対象外です。業界裏話ヒント:この規定は令和5年(2023年)4月施行と新しく、対象となる生年月日に制限があります。まず自分の生年月日で適用されるかの確認が最初の一手(最新の改正状況をご確認ください)
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 制度の目的 | 44条の3:受給開始を遅らせた対価として年金額を加算する | — |
| 発動条件 | 一年を経過した日前に請求せず、実施機関に繰下げの申出をすること | — |
| 年金額への効果 | 第4項の政令所定額が加算され、増額は生涯継続する | — |
| 待機・停止中の扱い | 待機中は一切不支給。死亡すれば増額は消え未支給年金の本来額のみ | — |
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