民事訴訟法 第258条(裁判の脱漏)
クイックジャンプ
- 裁判所が請求の一部について裁判を脱漏したときは、訴訟は、その請求の部分については、なおその裁判所に係属する。
- 2.訴訟費用の負担の裁判を脱漏したときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、その訴訟費用の負担について、決定で、裁判をする。この場合においては、第六十一条から第六十六条までの規定を準用する。
- 3.前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
- 4.第二項の規定による訴訟費用の負担の裁判は、本案判決に対し適法な控訴があったときは、その効力を失う。この場合においては、控訴裁判所は、訴訟の総費用について、その負担の裁判をする。
この条文の基本情報
裁判の脱漏とは何ですか?
定義裁判の脱漏とは、民事訴訟法第258条に定められた規定で、「裁判所が請求の一部について裁判を脱漏したときは、訴訟は、その請求の部分については、なおその裁判所に係属する。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事訴訟法第258条(裁判の脱漏)は、日本の民事訴訟法に含まれる条文です。
- 民事訴訟法第258条の条文原文は「裁判所が請求の一部について裁判を脱漏したときは、訴訟は、その請求の部分については、なおその裁判所に係属する。」で始まります。
- 民事訴訟法第258条は第五章 判決に置かれています。
- 民事訴訟法の公布日は平成8年6月26日です。
- 民事訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月2日時点では廃止情報はありません。
- 民事訴訟法第258条の前の条は民事訴訟法第257条です。
- 民事訴訟法第258条の次の条は民事訴訟法第259条です。
- 民事訴訟法第258条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第258条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/408AC0000000109 - 本サイト収録
民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第258条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月2日)https://lawplayer.com/jp/article/408AC0000000109/258
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事訴訟法258条は、裁判所が請求の一部を判断し忘れた場合、その部分はなお第一審に係属すると定める。救済は控訴ではなく元の裁判所への追加の裁判である。
Q · 判決をよく読んだら、請求した項目の一つがどこにも書かれていません。負けたということですか?
いいえ。脱漏なら元の裁判所に追加の裁判を求められます
民事訴訟法258条1項により、裁判所が請求の一部の判断を脱漏したときは、その部分はなお元の第一審裁判所に係属します。つまり「負けた」のではなく「まだ決着していない」状態です。救済手段は控訴ではなく、元の裁判所に残った部分の追加の裁判を求めることです。控訴審に持ち込むと審判の対象外として扱われ、控訴期間と費用を無駄にします。ただし判決理由中で実質的に判断されている場合は黙示の棄却であり、その場合は控訴が正しい道になります。
解説
判決正本を受け取って勝訴を確認したあなたが、よく読むと請求していた三つの損害項目のうち一つが、判決のどこにも書かれていない。慰謝料は認められたが、休業損害について裁判所が一言も触れていない。これが「裁判の脱漏」だ。多くの人はここで「判断されなかった=負けた」と勘違いし、控訴で争おうとする。それが落とし穴。民事訴訟法258条1項は、脱漏した部分について訴訟はなおその裁判所に係属し続けると定める。つまり休業損害の部分は、まだ第一審に残っている。あなたがすべきは控訴ではなく、元の裁判所に「残った部分を判断してほしい」と求めることだ。控訴審に持っていけば「その部分は審判の対象外」と門前払いされ、控訴期間も費用も無駄になる。訴訟費用の負担が漏れた場合は、2項以下が決定という別の簡易ルートを用意している。
法的な位置づけ
裁判の脱漏とは、裁判所が請求の一部または訴訟費用の負担について判断を落としたまま終局判決をした状態をいう。民事訴訟法258条1項により、脱漏した請求部分は控訴によって移審せず、なお元の第一審裁判所に係属する。費用負担の脱漏は同条2項以下が決定という簡易な手続で補充する仕組みをとる。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.判決正本到着当日に請求の趣旨と主文を照合 判決正本が届いたら、主文を頭から読む前に、訴状の請求の趣旨と判決主文を一項目ずつ突き合わせ、判断されていない項目を特定する。控訴期間が走り出す前に発見できれば選択肢が広い
- 2.脱漏か黙示の棄却かを見極める 判断のない項目が、判決理由中で触れられているか確認する。一言でも触れていれば黙示の棄却で控訴の対象、完全に無視されていれば脱漏で追加裁判の対象。この線引きで救済手段が正反対になる
- 3.脱漏なら元の第一審に追加の裁判を申し立て 脱漏部分はなお元の第一審裁判所に係属しているので(民訴258条1項)、その裁判所に残った部分の追加の裁判を求める。控訴審に持ち込むと審判の対象外として却下される
- 4.訴訟費用の脱漏なら2項の決定を申し立て 費用負担の裁判が漏れている場合、民訴258条2項により申立てで費用負担の決定を求める。職権発動を待たず、自分に有利な費用負担の主張から先手を打つ
- 5.費用決定に不服なら1週間以内に即時抗告 費用負担の決定の中身に不服なら、裁判の告知を受けた日から1週間以内に即時抗告する(民訴258条3項・332条)。期限を逃すと不利な負担が確定する
よくある質問 AI による整理
Q1裁判の脱漏とは何ですか?
裁判所が請求の一部や訴訟費用の負担について判断を落としたまま判決した状態です。民事訴訟法258条1項により、脱漏部分はなお元の第一審裁判所に係属します。
Q2黙示の棄却とは何ですか?
判決主文に明示されていなくても、理由中で実質的に判断され請求が退けられた状態です。脱漏と異なり既に判断済みなので、争うなら控訴になります。
Q3追加の裁判を求める手続はどこの裁判所に申し立てますか?
控訴審ではなく、脱漏した判決を出した元の第一審裁判所に申し立てます。脱漏部分はそこに係属したままだからです(民訴258条1項)。
Q4脱漏部分の追加裁判に出訴期限はありますか?
請求部分の追加裁判には特定の出訴期間はありません。ただし脱漏か黙示の棄却かの見極めは、本案の控訴期間である2週間内に済ませるのが安全です。
Q5訴訟費用の負担決定は誰が申し立てられますか?
当事者の申立てだけでなく、裁判所の職権でも決定できます(民訴258条2項)。勝訴した被告側からも有利な費用負担を取りに行けます。
Q6費用負担の決定に不服なときの即時抗告の期限は?
民訴258条3項により即時抗告ができます。期間は裁判の告知を受けた日から1週間以内(民訴332条)で、これを逃すと不利な費用負担が確定します。
Q7本案判決に控訴があると費用負担の決定はどうなりますか?
民訴258条4項により、本案判決に適法な控訴があると費用負担の決定は効力を失い、控訴裁判所が訴訟の総費用について改めて裁定します。
Q8請求項目が多い訴訟で脱漏を防ぐコツは?
判決正本が届いた当日に、訴状の請求の趣旨と判決主文を一項目ずつ照合することです。項目が十数個ある建築・損害賠償訴訟ほど効果があります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1判決をよく見たら、請求した一部がまるごと抜けてました。控訴すれば取り返せますか?
それは逆効果になりかねません。民事訴訟法258条1項により、脱漏した部分は元の裁判所になお係属しているので、控訴審ではなく第一審に追加の裁判を求めるのが筋です。控訴審に持ち込んでも審判の対象外として扱われます。実務のポイント:弁護士はまず『判決理由中でその請求に触れているか』を確認します。一言でも触れていれば黙示の棄却で控訴の対象、完全な無視なら脱漏で追加裁判。この線引きを誤ると、救済手段ごと間違える
Q2勝訴したのに判決に『訴訟費用は誰の負担』と書いてなかったんですが、自腹ですか?
自腹にする必要はありません。民事訴訟法258条2項で、申立てまたは職権により、決定で訴訟費用の負担を別途裁判してもらえます(61条から66条を準用)。不服なら告知から1週間以内に即時抗告できます(3項、332条)。実務のポイント:ただし本案判決に適法な控訴があると、この費用負担決定は効力を失い、控訴裁判所が総費用をまとめて裁定します(4項)。控訴が見込まれる事案では費用決定を急ぐ実益が薄いので、タイミングを計るのが実務の勘どころ
間違えやすい点 AI による整理
- 「判断されなかった部分を控訴で取り返そう」という発想そのものが間違っている。脱漏部分は控訴審に移審せず、元の裁判所になお係属したまま。立てるべき問いは『どこで争うか』ではなく『そもそもこれは脱漏か、それとも理由中で実質判断された黙示の棄却か』だ
- 「判決に書いていない=請求が認められなかった」と思いがちだが、書かれていないことには二種類ある。脱漏(判断し忘れ、まだ係属中)と、黙示の棄却(実質判断済み)。前者なら追加の裁判、後者なら控訴と、進む道が正反対になる
- 訴訟費用の負担漏れは軽く見られがちだが、その深刻度を知る人は少ない。費用負担の裁判が漏れると、いくら勝っても印紙代や手続費用を相手から回収する根拠が宙に浮く。2項の決定申立てを知らないと、勝者が費用を自腹で被る
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 問題の対象 | 258条:請求の判断漏れ(判断そのものが欠落) | 281条:判決の内容に不服(判断はある) 257条:明白な誤記・計算違い(判断は正しいが表記ミス) |
| 係属先 | 脱漏部分はなお元の第一審に係属 | 控訴により控訴裁判所に移審 元の裁判所が更正決定で修正 |
| とるべき手段 | 元の裁判所への追加の裁判(費用脱漏は決定) | 控訴の提起(送達から2週間以内) 更正決定の申立てまたは職権更正 |
| 誤ると起きること | 控訴すれば審判対象外で却下、期間を浪費 | 期間を逃すと判決が確定 誤記を放置すると執行段階で支障 |
他国ではどう定めているか 4 か国
訴訟標的の一部または訴訟費用に脱漏があるとき、裁判所は申立てまたは職権で判決により補充すると定め、日本258条とほぼ同一の補充判決の枠組みをとる
裁判の누락(脱漏)があるときは追加判決(추가판결)で処理する。日本法を経由した補充判決の構造を共有する
主たる請求や付随請求、費用の判断が脱漏したとき、当事者の申立てにより追完判決で補充する。日本258条の母法にあたる規定
判決の修正・補充は判決後一定期間内の申立て(motion to alter or amend)で処理し、係属継続による追加裁判という日本型の枠組みとは構造が異なる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 貸金の元本と利息と遅延損害金の三つを請求したのに、判決は元本と利息だけで遅延損害金に一言も触れていなかったら、あなたはどう動く? これは脱漏。あなたは控訴ではなく、同じ裁判所に残った部分の追加の裁判を求める。控訴したら審判対象外で却下され、控訴期間だけ失う
- 訴訟費用の負担について判決が何も決めていない。あなたは2項により申立てで決定を求めたが、出た決定の中身が不服。即時抗告は告知を受けた日から1週間以内(民事訴訟法332条)。この1週間を逃すと、不利な費用負担が確定する。あと数日で期限という場面で動けるか
- あなたが被告で全面勝訴したが、判決は訴訟費用の負担を決め忘れた。費用を相手に負わせる決定を、あなたの側から申し立てられる。裁判所の職権発動を待つ必要はない
取るべき行動
被害を受けた側:1. 判決正本が届いたら、訴状の請求の趣旨と判決主文を一項目ずつ照合し、判断されていない項目を特定2. その項目が『脱漏』か『黙示の棄却』かを見極める。判決理由中で触れられていれば棄却、完全に無視されていれば脱漏の可能性3. 脱漏なら、その部分は元の裁判所になお係属しているので(1項)、追加の裁判を求める。控訴ではない4. 訴訟費用の脱漏なら、2項により申立てで費用負担の決定を求める。判断に迷うなら控訴期間である2週間内に弁護士へ相談
訴えられた側:1. あなたが被告で勝訴したが訴訟費用の負担が判決から漏れている場合、2項の申立てで自分に有利な費用負担決定を取りに行く2. 相手が脱漏部分の追加裁判を求めてきたら、それが本当に脱漏か、すでに理由中で黙示的に棄却されたものかを争う3. 費用負担決定に不服なら告知から1週間以内に即時抗告(3項) 4. 本案判決に適法な控訴があると2項の費用負担裁判は効力を失い、控訴裁判所が総費用を裁定する(4項)ことを念頭に戦略を立てる
時効(請求できる期限):脱漏部分の追加裁判を求めることに特定の出訴期間はないが、訴訟費用負担の決定への即時抗告は裁判の告知を受けた日から1週間以内(民事訴訟法332条)。本案判決への控訴は判決送達の日から2週間以内。脱漏か棄却かの見極めはこの控訴期間内に済ませるのが安全
学説
通説:請求の一部に判断がない場合、判決理由中での実質的判断の有無により脱漏と黙示の棄却を区別する。脱漏なら258条1項により元の裁判所に係属し追加の裁判で処理し、黙示の棄却なら控訴による。費用の脱漏は同条2項以下の決定で補充する。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.平成8年(1996年) 改正:民事訴訟法の全部改正により、請求の脱漏と訴訟費用の負担の脱漏の処理を現行258条として整備。費用脱漏を決定という簡易手続で補い、本案控訴があれば費用裁判が失効する構造を明確化した
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める