民事訴訟法 第142条(重複する訴えの提起の禁止)
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裁判所に係属する事件については、当事者は、更に訴えを提起することができない。
この条文の基本情報
重複する訴えの提起の禁止とは何ですか?
定義重複する訴えの提起の禁止とは、民事訴訟法第142条に定められた規定で、「裁判所に係属する事件については、当事者は、更に訴えを提起することができない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事訴訟法第142条(重複する訴えの提起の禁止)は、日本の民事訴訟法に含まれる条文です。
- 民事訴訟法第142条の条文原文は「裁判所に係属する事件については、当事者は、更に訴えを提起することができない。」で始まります。
- 民事訴訟法第142条は第一章 訴えに置かれています。
- 民事訴訟法の公布日は平成8年6月26日です。
- 民事訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 民事訴訟法第142条の前の条は民事訴訟法第141条です。
- 民事訴訟法第142条の次の条は民事訴訟法第143条です。
- 民事訴訟法第142条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第142条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/408AC0000000109 - 本サイト収録
民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第142条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/408AC0000000109/142
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事訴訟法142条は、裁判所に係属中の事件について当事者が更に訴えを提起することを禁じる。当事者と請求(訴訟物)が同一の後訴は、本案審理に入らず不適法として却下される。
Q · 同じ相手に、別の裁判所でもう一度同じ訴えを起こせますか?
できません。後から出した訴えは二重起訴として却下されます。
民事訴訟法142条により、裁判所に係属している事件と当事者・請求(訴訟物)が同一の訴えを、別途提起することはできません。後発の訴えは本案審理に入らないまま不適法として却下されます。狙いは矛盾する判決の防止と重複審理の回避です。訴訟係属は訴状が相手に送達された時(民訴138条)に生じるため、どちらの訴えが先かは送達の先後で決まります。なお当事者または請求が異なれば、この禁止は及びません。
解説
貸した百万円を返せと東京地裁で訴えた。半年経っても結審せず、苛立ったあなたは「いっそ大阪地裁でもう一度出せば早いのでは」と考える。それは通らない。民事訴訟法142条は、裁判所に係属している事件について、当事者が更に訴えを提起することを禁じる。後から出した訴えは、中身の審理に一切入らないまま「不適法」として却下される(門前払い)。狙いは二つ。同じ争いに二つの判決が出て矛盾するのを防ぐこと、そして同じ審理を二度させる無駄をなくすこと。あなたが押さえるべき急所は、禁止に引っかかるのは「当事者が同じ」かつ「請求の中身(訴訟物)が同じ」場合に限られるという点だ。逆に言えば、相手が違えば、あるいは請求の組み立てを変えれば、別の土俵を開ける余地がある。さらに、相手の債権をこちらの「相殺の抗弁」に使う場面では、二重起訴に当たるかどうか実務上、解釈が分かれており、ここで足を滑らせる人が後を絶たない。
法的な位置づけ
二重起訴の禁止とは、裁判所に係属中の事件について、当事者が同一の請求につき更に訴えを提起することを禁じる民事訴訟法上の原則である。当事者の同一と訴訟物の同一を要件とし、矛盾する判決の発生防止と重複審理の回避を目的とする。要件を満たす後発の訴えは、本案審理に入らず不適法として却下される。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.訴える前に同一事件の係属を確認 新たに訴えを起こす前に、同じ当事者・同じ請求の手続(訴訟、支払督促、調停の一部)が既に係属していないか確認する。係属は訴状送達時(民訴138条)に生じる点を押さえる
- 2.別訴ではなく反訴・訴えの変更に切り替える 同じ紛争を別の裁判所へ持ち込みたい場合でも別訴は避け、今の手続の中で訴えの変更(民訴143条)または反訴(民訴146条)に組み替える。審理を一本化でき二重起訴に当たらない
- 3.一部請求は「一部であること」を訴状に明示 請求額の一部だけを先に訴える場合、訴状に「一部請求である」と明示する。明示なき一部請求は残部の別訴が既判力(民訴114条)や142条で封じられうる
- 4.被告は二重起訴の抗弁を早期に提出 原告が同一請求を二つの裁判所に出してきたら、後発の訴えに対し第一回口頭弁論期日より前に二重起訴の禁止(民訴142条)を主張する。両事件の訴状を並べ、送達日の先後を立証する
よくある質問 AI による整理
Q1二重起訴とは何ですか?
裁判所に係属中の事件について、同じ当事者が同じ請求(訴訟物)で更に訴えを起こすことです。民事訴訟法142条が禁じ、後発の訴えは却下されます。
Q2二重起訴の禁止の要件は何ですか?
「当事者の同一」と「請求(訴訟物)の同一」の二つです。どちらかが異なれば禁止は及びません。相手や請求の組み立てを変える余地があります。
Q3二重起訴で却下されたら印紙代は戻りますか?
戻りません。後発の訴えは内容を審理されないまま却下され、納めた印紙代(請求額に比例し数十万円のことも)は返還されません。
Q4訴訟係属はいつから生じますか?
訴状を裁判所に提出した時ではなく、訴状が相手方に送達された時です(民訴138条)。先後はこの送達日で決まります。
Q5反訴は二重起訴になりますか?
なりません。反訴(民訴146条)は同一手続内での請求であり、別訴ではないため二重起訴の禁止に触れません。別訴の代替手段になります。
Q6支払督促と訴訟を両方出すと二重起訴ですか?
支払督促は一定の局面で訴え提起とみなされるため、同一債権で本訴も重ねると二重起訴の問題が生じ得ます。督促と本訴の二段構えは一本化を求められます。
Q7二重起訴で却下される間に時効は進みますか?
進む危険があります。後発の訴えが却下されている間に元の請求権の消滅時効(民法166条)が完成しないか注意が必要です。
Q8二重起訴は裁判所が自分で調べますか?
はい。二重起訴の禁止は訴訟要件であり、被告の抗弁を待たず裁判所が職権で調査します(職権調査事項)。
この条文についての質問 AI による整理
Q1別の裁判で相手にお金を請求してるんですけど、その同じ債権を、今の裁判で相殺の抗弁として使ってもいいですか?
これがまさに二重起訴の禁止(民訴142条)で最も争われる論点で、実務上、解釈が分かれている。判例・通説はおおむね、別訴で請求中の債権を相殺の抗弁に供することを142条の趣旨(矛盾判決の防止)から制限する方向だが、例外を認める裁判例もある。実務のポイント:弁護士はこの場面で、相殺の抗弁を出す代わりに別訴を取り下げて反訴に組み替える、あるいは弁論を併合してもらう、という安全策を裏で選んでいる。正面から相殺をぶつけて抗弁ごと封じられるのを避けるためで、依頼者にはあまり説明されない
Q2とりあえず請求額の一部だけ訴えて、勝てそうなら残りを後でまた訴える、ってできますか?
明示的に「一部請求である」と訴状に書いておけば、残部を後で別訴できるのが判例の立場だ。だが「一部」と明示しなかった場合、その訴訟物は債権全体と扱われ、残部の後訴は142条や既判力(民訴114条)で封じられうる。実務のポイント:あえて少額の一部請求から入るのは、印紙代を抑えて相手の出方や裁判所の心証を探る実務テクニックだ。ただし「明示」の一文を入れ忘れた瞬間に残額数百万円の請求権を失う事故が起きるので、訴状のこの一行が生命線になる
Q3海外でも同じ相手と裁判をしているんですが、日本でまた訴えたら二重起訴で却下されますか?
民訴142条が想定するのは日本国内の裁判所に係属する事件で、外国裁判所での係属は原則として直接の対象外とされる。ただし日本の裁判所は、国際裁判管轄の場面で「特別の事情による却下」(民訴3条の9)を使い、海外での並行訴訟を理由に日本の訴えを却下できる。実務のポイント:国際紛争では、相手が判決を取りやすい国へ先に駆け込む「フォーラム・ショッピング」が横行する。どの国で先に係属させるかが勝敗を分けるため、紛争の兆候を感じた段階で、訴える前に提訴地を戦略的に選ぶのが渉外弁護士の腕の見せどころだ
間違えやすい点 AI による整理
- 「同じ相手に二回訴えられないのは知っているが、たいした問題ではない」と軽く見られがちだ。実際の深刻さは桁が違う。後発の訴えは内容の当否を一切審理されず却下され、納めた印紙代(請求額に比例し、数十万円になることもある)は戻らず、再提訴の間に消滅時効が完成する危険まで背負う。知っていることと、その重さを知っていることは別物だ
- 「相手の債権をこちらの相殺の抗弁に使うだけなら、訴えていないのだから二重起訴に当たらない」と思い込む人が多い。ここがまさに落とし穴で、別訴で請求中の債権を相殺の抗弁に持ち出す行為が142条の趣旨(矛盾判決の防止)に触れるかは、実務上、解釈が分かれている論点だ。安全と思って打った手が、抗弁ごと無効になりかねない
- そもそも「訴状を裁判所に提出した瞬間に二重起訴の禁止が働く」という前提が誤っている。禁止のスイッチが入るのは訴訟係属が生じた時点、つまり訴状が相手に送達された時(民訴138条)だ。提出と送達の間にはタイムラグがあり、どちらの訴えが先に係属したかは、この送達のタイミングで決まる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 手続の性質 | 民訴142条:係属中の別訴提起を禁止(後訴は却下) | 民訴146条:反訴(同一手続内で被告が請求) 民訴143条:訴えの変更(同一手続内で原告が請求を追加・変更) |
| 二重起訴に当たるか | 当たる場面そのものを規律(当事者同一・訴訟物同一) | 当たらない(別訴ではない) 当たらない(別訴ではない) |
| 効果 | 後発の訴えは本案審理に入らず不適法却下 | 本訴と併せて一つの判決で審理 変更後の請求として同一手続で審理 |
| 実務上の使い方 | 被告の抗弁・裁判所の職権で後訴を排除 | 別訴の代わりに反撃請求を一本化 別訴の代わりに請求を拡張・修正 |
他国ではどう定めているか 4 か国
「当事者は既に起訴した事件について、訴訟係属中に更に起訴できない」とし、当事者同一・請求同一の構造が日本とほぼ一致する。
係属中の事件と同一の訴えの提起を禁じる。要件・効果とも日本法と類似し、ドイツ法系の係属概念を共有する。
係属(Rechtshängigkeit)により他の裁判所への同一事件の提起が排除される。日本の二重起訴禁止の母法的位置にある。
先行係属中の同一訴訟がある場合に後訴を却下・停止する法理。連邦・州で扱いが分かれ、抽象的禁止規定ではなく判例法理として運用される。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- もし、あなたが取引先を売掛金請求で訴えている最中に、別の弁護士から「同じ債権を支払督促でも出しておけば回収が早い」と勧められたら、どうなる? 二重に手続を走らせた瞬間、後発の訴えは142条で却下され、印紙代と時間を捨てることになる。どちらが先に係属したかで生き残る手続が決まる
- あなたは被告側。原告が同じ請求を東京と名古屋の二つの裁判所に出してきた。これは原告の戦術ミスであり、あなたの武器になる。後願の裁判所で「二重起訴である」と主張すれば、相手は一つの戦線を自ら畳まされる
- 国際取引で、日本企業と米国企業が同じ契約紛争を、日本の裁判所と米国の裁判所に並行して提起した。国内の142条は国境を越えないため、海外での二重提訴は直接は止められない。日本側は民訴3条の9(特別の事情による却下)で対抗するしかなく、戦場が一気に複雑になる
- 離婚調停が不成立に終わり、あなたは離婚訴訟を起こした。その係属中に、配偶者が別の裁判所へ同じ離婚を求めて訴える。家事事件にも二重起訴の発想は及ぶが、人事訴訟には独自の管轄ルールがあり、単純な却下では済まないことがある
取るべき行動
被害を受けた側:1. 訴えを起こす前に、同じ相手・同じ請求の手続(訴訟、支払督促、調停の一部)が既に係属していないか確認する。係属は訴状送達時(民訴138条)に生じる2. 既に自分が別訴を抱えているなら、新たに訴えを起こすのではなく、その手続の中で訴えの変更(民訴143条)か反訴(民訴146条)に切り替える3. 一部だけ請求して残りを後で別訴する場合は、訴状に「一部請求である」と明示する。明示なき一部請求は残部の別訴が封じられうる4. 相殺の抗弁に別訴で請求中の債権を使う構成は、二重起訴該当性に争いがあるため、弁護士に可否を確認してから打つ
訴えられた側:1. 原告が同じ請求を二つの裁判所に出してきたら、後発の訴えに対し「二重起訴の禁止(民訴142条)」を主張する2. 当事者の同一と請求(訴訟物)の同一を、両事件の訴状を並べて立証する。どちらが先に係属したか(送達日)が決め手3. 二重起訴は裁判所の職権調査事項なので、第一回期日の冒頭で指摘すれば足りるが、早いほど相手の戦意を削げる4. 当事者や請求がわずかにずれている場合は単純却下にならないため、併合審理(民訴152条)の申立てや弁論の整理で対応する
時効(請求できる期限):本条は出訴期間を定める規定ではなく、二重起訴に当たるか否かは訴訟要件として裁判所が職権で随時審査する(職権調査事項)。被告の抗弁を待たずに却下されうるため、特定の期限はない。ただし後発の訴えが却下されている間に元の請求権の消滅時効(民法166条、債権は権利行使できると知った時から5年または権利行使できる時から10年)が進行する点に注意(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:二重起訴の禁止は「当事者の同一」と「訴訟物(請求)の同一」を要件とし、矛盾判決の防止と訴訟経済を根拠とする。別訴で請求中の債権を相殺の抗弁に供する場面の可否については、142条の趣旨から制限的に解する見解が有力である。
改正沿革 AI による整理
- 平成8年(1996年)民事訴訟法全部改正(平成10年施行) 二重起訴の禁止を定めていた旧民事訴訟法231条が、口語化された現行法で142条へと条文番号を移した。規律の実質(係属中の事件について更に訴えを提起できない)は維持された
改正の年表
- 1.平成8年(1996年) 改正:民事訴訟法全部改正(平成10年施行)。二重起訴の禁止を定めていた旧民事訴訟法231条が、口語化された現行法で142条へと条番号を移した。規律の実質は維持された。
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