民事再生法 第134条の4(否認権のための保全処分)
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- 裁判所は、再生手続開始の申立てがあった時から当該申立てについての決定があるまでの間において、否認権を保全するため必要があると認めるときは、利害関係人(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)の申立てにより又は職権で、仮差押え、仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができる。
- 2.前項の規定による保全処分は、担保を立てさせて、又は立てさせないで命ずることができる。
- 3.裁判所は、申立てにより又は職権で、第一項の規定による保全処分を変更し、又は取り消すことができる。
- 4.第一項の規定による保全処分及び前項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
- 5.前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
- 6.第四項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
- 7.前各項の規定は、再生手続開始の申立てを棄却する決定に対して第三十六条第一項の即時抗告があった場合について準用する。
この条文の基本情報
否認権のための保全処分とは何ですか?
定義否認権のための保全処分とは、民事再生法第134条の4に定められた規定で、「裁判所は、再生手続開始の申立てがあった時から当該申立てについての決定があるまでの間において、否認権を保全するため必要があると認めるときは、利害関係人(保全管理人…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事再生法第134条の4(否認権のための保全処分)は、日本の民事再生法に含まれる条文です。
- 民事再生法第134条の4の条文原文は「裁判所は、再生手続開始の申立てがあった時から当該申立てについての決定があるまでの間において、否認権を保全するため必要があると認めるときは、利害関係人(保全管理人…」で始まります。
- 民事再生法第134条の4は第二節 否認権に置かれています。
- 民事再生法の公布日は平成11年12月22日です。
- 民事再生法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 民事再生法第134条の4の前の条は民事再生法第134条の3です。
- 民事再生法第134条の4の次の条は民事再生法第134条の5です。
- 民事再生法第134条の4には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第134条の4 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225 - 本サイト収録
民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第134条の4(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/411AC0000000225/134_4
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事再生法134条の4は、再生手続の開始決定前であっても、裁判所が否認権を保全するため仮差押え・仮処分を命じられると定める。職権でも担保なしでも発令でき、即時抗告に執行停止効はない。
Q · 取引先から倒産前に返してもらったお金、再生手続が始まる前なのに凍結されることがあるって本当?
本当です。開始決定前でも否認権保全で凍結されえます
民事再生法134条の4により、再生手続開始の申立てがあった時から開始決定までの間でも、裁判所は否認権を保全する必要があると認めれば、利害関係人の申立てまたは職権で仮差押え・仮処分を命じられます。この保全処分は担保を立てさせずに発令でき(2項)、即時抗告をしても執行停止の効力はありません(5項)。つまり開始決定を待たずに、駆け込み弁済や安値処分で受け取った財産が凍結されうるのです。
解説
取引先が経営危機に陥り、あなたは焦って貸金の全額を回収した。あるいは傾きかけた会社から不動産を相場より安く買い取った。数か月後、その会社が民事再生を申し立てる。あなたは「もう自分の手に渡った財産だ、今さら関係ない」と考えている。ところが民事再生法134条の4は、手続が正式に開始される前、つまり申立てから開始決定までの空白期間に、裁判所が否認権(債権者を害する財産流出を後から取り消す権利、例:駆け込み返済や安売り処分の巻き戻し)を守るため、あなたの受け取った財産に仮差押え・仮処分をかけられると定める。しかも職権でもできるし、担保なしでも命じられる。開始決定を待っていたら相手が財産を費消・転売してしまう、その取りこぼしを防ぐ早撃ちの装置だ。あなたが安心していた財産は、会社が正式に倒れる前に凍結されうる。
法的な位置づけ
民事再生法134条の4は否認権保全処分を定める規定であり、再生手続開始の申立てから開始決定までの間に、裁判所が否認権を保全する必要があると認めるとき、利害関係人の申立てまたは職権で仮差押え・仮処分その他の保全処分を命じうる旨を規定する。担保の有無を問わず発令でき、これに対する即時抗告に執行停止の効力はない。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.債務者の財産流出の兆候を証拠化する 急な名義変更、特定債権者への駆け込み弁済、相場より安い処分など、債権者を害する財産流出の兆候を、日付・金額・取引相手が分かる客観的資料とともに整理する
- 2.申立て段階で保全処分を促す 再生手続開始の申立てから開始決定までの空白期間に、利害関係人として134条の4の仮差押え・仮処分を申し立てる。職権発動を促す上申書も併せて提出する
- 3.否認の見込みと保全の必要性を疎明する 担保なしでも発令されるが、対象行為が偏頗弁済・詐害行為に当たり否認される見込みがあること、開始決定を待てば財産が逸失する必要性を疎明資料で示す
- 4.監督委員と連携し本案否認へつなぐ 監督委員が選任され否認権限を付与されたら連携し、保全処分が保全する本案の否認請求(135条)に確実につなげる。保全はあくまで本案の前哨であることを意識する
よくある質問 AI による整理
Q1否認権とは何ですか?
倒産者が一部の債権者を優遇したり財産を流出させた行為を後から取り消し、債権者全体の公平な満足を回復する権利です。民事再生では監督委員や管財人が行使します。
Q2否認権保全処分はいつまでに申し立てられますか?
再生手続開始の申立てがあった時から、その申立てについての決定(開始決定または棄却)があるまでの空白期間に発令される時限的処分です。開始決定後は本案の否認手続に移ります。
Q3民事再生の否認権保全処分に担保は必要ですか?
不要な場合があります。134条の4第2項は担保を立てさせて、または立てさせないで命じることができると定めており、裁判所の判断で担保なしでも発令されます。
Q4偏頗弁済とは何ですか?
支払不能などの状態で、特定の債権者だけに弁済や担保提供をして他の債権者より優遇する行為です。否認の対象となり、保全処分で受領した財産が凍結されえます。
Q5監督委員は否認権を行使できますか?
できます。民事再生では管財人ではなく監督委員が選任され、否認権限を付与されることが多く、保全処分の申立てや本案の否認請求を担います。
Q6否認権保全処分に即時抗告はできますか?
できます。134条の4第4項により保全処分および変更・取消しの裁判に即時抗告できますが、第5項によりその抗告に執行停止の効力はありません。
Q7否認権保全処分はいつ失効しますか?
本案の否認が認められなければ保全の前提が崩れ失効します。また裁判所は申立てまたは職権で保全処分を変更・取消しできます(3項)。
Q8破産手続にも同じような否認権保全処分はありますか?
あります。破産法にも開始前の否認権保全に相当する制度が置かれており、趣旨は共通します(具体の条番号は現行効力をご確認ください)。
この条文についての質問 AI による整理
Q1まだ会社が正式に倒産していないのに、もう財産を差し押さえられるんですか?
できます。134条の4は再生手続開始の申立てから開始決定までの空白期間に、否認権を保全するための仮差押え・仮処分を認めています。正式な開始決定を待つと相手が財産を費消・移転してしまうため、前倒しで凍結する制度です。実務のポイント:この保全処分は職権でも、担保なしでも発令できます。通常の民事保全のように申立人が高額の担保を積む必要がないため、裁判所が必要と判断すれば驚くほど速く動く。標的にされた側は「気づいたら凍結されていた」という事態になりやすい
Q2凍結されたお金、即時抗告すれば使えるようになりますか?
なりません。5項が即時抗告に執行停止の効力がないと明記しています。抗告して争っている間も、仮差押え・仮処分は効力を持ち続けます。凍結を解くには本案の否認請求(135条)で否認が認められないことを示すか、保全処分自体の取消し・変更(3項)を勝ち取る必要があります。実務のポイント:抗告で争うより、受け取った弁済や取引が偏頗弁済や詐害行為に当たらない正常な取引だったと早期に疎明する方が実益が大きい。否認の見込みが薄いと裁判所が判断すれば、保全の必要性が崩れて凍結が解ける
間違えやすい点 AI による整理
- 「会社が正式に倒産してから否認されるかどうか考えればいい」と問いを立てる人が多いが、その立て方自体がずれている。134条の4は開始決定の前、申立て段階から財産を凍結できる。あなたが「まだ大丈夫」と思っている空白期間こそ、裁判所が最も素早く動ける時間帯だ
- 否認権保全処分があることは知っていても、それが担保なしで、しかも裁判所の職権で発動できる点までは見落とされがちだ。通常の民事保全なら申立人が担保を積む必要があるが、ここでは担保なしで命じられる(2項)。標的にされた側が「担保金を盾に争う」という反撃ルートが、最初から塞がれていることがある
- 「即時抗告すれば凍結はいったん止まる」と思われているが、5項が明記するとおり即時抗告に執行停止の効力はない。抗告中も仮差押え・仮処分は生き続ける。争っている間も、あなたの財産は凍結されたままだ
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 性質 | 134条の4:開始決定前の暫定的な保全(仮差押え・仮処分) | 135条:本案としての否認権の行使(取消し) 127条:否認の実体的根拠(詐害行為否認) |
| 発令時期 | 申立てから開始決定までの空白期間 | 再生手続開始後 —(否認の要件規定) |
| 担保・職権 | 担保なしで可(2項)、職権発動可 | 否認権者(監督委員・管財人)の請求 — |
| 争う手段 | 即時抗告(執行停止効なし・5項)、変更/取消し(3項) | 本案否認手続での反論 否認要件(害意・認識)の不存在を主張 |
他国ではどう定めているか 3 か国
台湾も裁判所が破産宣告前に財産の保全処分を命じうる点で共通し、撤銷權(否認に相当)の実効性を確保する構造を持つ
ドイツは手続開始前の Sicherungsmaßnahmen(保全措置)と Anfechtung(否認)を分けて規律し、日本の本条はこの構造に近い
米国はファイリング時の自動停止(automatic stay)と preference/fraudulent transfer の否認で対応し、保全の入口の仕組みが異なる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 経営難の発注元から、未払いだった外注費を期日前に全額振り込んでもらった。ほっとしたのも束の間、数か月後にその会社が民事再生を申し立て、あなたの口座のその入金分に仮差押えの通知が届く。偏頗弁済の否認を保全するための処分だ。手続開始前なのに、もう自由に動かせない
- もし、あなたの会社が再生を申し立てた直後に、ある債権者が財産を海外へ移し始めたと分かったら? 開始決定まで待っていては間に合わない。利害関係人としてこの134条の4で職権発動を促し、その日のうちに仮処分で動きを止められるかが勝負を分ける
- 親族が経営する会社から、倒産直前に車を格安で譲り受けた。再生手続の準備中、裁判所がその車に仮処分をかける。名義はあなたでも、もう売れない。
取るべき行動
被害を受けた側:1. 債務者が財産を流出・隠匿している兆候(急な名義変更、特定債権者への駆け込み弁済、安値処分)を具体的な証拠とともに整理する2. 民事再生の申立て段階で、利害関係人として裁判所に134条の4の保全処分(仮差押え・仮処分)を申し立てる。職権発動を促す上申も有効3. 担保なしでも命じられるが、保全の必要性と否認の見込みを疎明できる資料を添える4. 監督委員が選任されたら、否認権限を持つ監督委員と連携し、本案の否認請求(135条)につなげる
訴えられた側:1. 決定書が送達されたら送達日を記録し、即時抗告の不変期間を最優先で確認。執行停止効はないので抗告しても凍結は続く2. 争点は保全の必要性と否認の見込み。受け取った弁済・財産が正常な取引で、債権者を害する意図も認識もなかったことを示す資料を集める3. 担保を立てさせた処分なら、不当な場合は取消し・変更(3項)を申し立てる4. 本案で否認が認められなければ保全処分は失効するため、本案否認手続(135条)での反論準備も同時に進める
時効(請求できる期限):保全処分の決定および3項の申立てについての裁判に対する即時抗告は、裁判書の送達を受けた日から起算する不変期間内(4項・6項、一般に1週間)。ただし即時抗告に執行停止の効力はない(5項)。本条の保全処分は、再生手続開始の申立てから開始決定までの間に発令される時限的な処分である(最新の即時抗告期間の規定をご確認ください)
学説
通説:134条の4の保全処分は、本案の否認権を実効的に保全するための暫定的措置であり、開始決定前の財産逸失を防ぐ点に意義がある。担保不要・職権発動・執行停止効なしという強い保全力を持つ一方、変更・取消し(3項)と即時抗告(4項)により相手方の手続保障を図るものと理解されている。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.平成11年(1999年) 制定:民事再生法制定(平成11年法律第225号、2000年施行)。再建型倒産手続として、否認権およびその保全に関する規律を整備した(本条の具体的な追加・改正の沿革は現行版でご確認ください)。
- 民事再生法 第135条保全処分が保全する本案の否認権行使手続
- 民事再生法 第127条保全の対象となる詐害行為否認の実体的根拠
- 民事再生法 第127条の3偏頗行為(担保供与・弁済)の否認の根拠(現行効力を要確認)
- 民事再生法 第36条申立棄却決定への即時抗告への準用(7項)
- 民事再生法 第10条送達の特則(6項が10条3項本文の適用を除外)
- 破産法 第171条破産手続における同趣旨の否認権保全処分(現行効力を要確認)
- 民事保全法 第20条一般的な仮差押命令の手続的基盤、再生手続上の特則がこれに優先
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