信託法 第10条(訴訟信託の禁止)
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信託は、訴訟行為をさせることを主たる目的としてすることができない。
この条文の基本情報
訴訟信託の禁止とは何ですか?
定義訴訟信託の禁止とは、信託法第10条に定められた規定で、「信託は、訴訟行為をさせることを主たる目的としてすることができない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第10条(訴訟信託の禁止)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第10条の条文原文は「信託は、訴訟行為をさせることを主たる目的としてすることができない。」で始まります。
- 信託法第10条は第一章 総則に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第10条の前の条は信託法第9条です。
- 信託法第10条の次の条は信託法第11条です。
- 信託法第10条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
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下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第10条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第10条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/10
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法10条は、訴訟行為をさせることを主たる目的とする信託を禁止する。違反した信託は無効となるが、財産管理に付随して受託者が訴えることは妨げられない。
Q · 債権を業者に「信託」して代わりに訴えてもらうのは有効なの?
訴訟が主目的の信託は信託法10条で無効になる
信託法10条は、訴訟行為をさせることを主たる目的とする信託を禁止しています。債権を業者に信託し、業者の名義で訴えてもらうことが主な狙いであれば、信託そのものが無効となり、訴えも退けられるおそれがあります。主たる目的かどうかは契約書の題名ではなく、受託者の業務内容や報酬の仕組みなど実態から判断されます。一方、家族信託のように財産管理が主目的で、その管理の一環として受託者が訴えることは本条に反しません。
解説
条文はわずか一行、しかし狙いは鋭い。「信託は、訴訟行為をさせることを主たる目的としてすることができない」。信託とは、財産を誰か(受託者)に移して管理や処分を任せる仕組みである。ところが財産を移せば、法律上の権利者も受託者に変わる。この性質を悪用すると、弁護士資格のない者が他人の債権を「信託」の形で引き受け、自分の名前で訴訟を起こして報酬を抜くことができてしまう。本条はこの抜け道を封じている。信託の主な目的が訴えることにあると判断されれば、信託そのものが無効になる。あなたが回収できない売掛金や賠償請求権を「代わりに訴えてあげます」という業者に信託や譲渡の形で渡したとする。裁判所が実態を見て訴訟信託だと判断すれば、訴えは退けられる。そのうえ権利がどちらに帰属しているのかが宙に浮く。形式を整えれば通る、という発想そのものを本条は否定している。
法的な位置づけ
訴訟信託の禁止とは、信託法10条が定める規律であり、訴訟行為をさせることを主たる目的とする信託の設定を許さないものをいう。これに違反する信託は無効となる。受託者が信託財産の管理に付随して訴訟を行うことは対象外であり、主たる目的か否かは受託者の業務内容、報酬構造、信託設定の経緯などの実態から判断される。
手順
- 1.勧誘してきた相手の資格を確認する 「債権を信託・譲渡してくれれば回収します」と持ちかけられたら、相手が弁護士か、法務大臣の許可を受けた債権回収会社かを最初に確認する。日本弁護士連合会の弁護士検索や法務省の許可業者一覧で照合する
- 2.契約書の目的条項と報酬条項を読む 契約書の題名ではなく、受託者が訴訟以外に何を任されているか、報酬が回収額の歩合になっていないかを確認する。訴訟だけが実質的な業務なら署名しない
- 3.すでに契約した場合は証拠を保全して相談する 契約書、報酬の取り決め、勧誘時のメッセージや通話記録を保全し、弁護士に信託の有効性と権利の帰属を相談する。本来の請求権の消滅時効も同時に確認する
- 4.信託取得を名乗る原告に訴えられたら答弁書で争う 答弁書の段階で信託契約書等の提出を求め、受託者の業務内容と報酬構造を確認したうえで、信託法10条違反と弁護士法73条違反を主張する。本来の債務についての反論(時効・弁済・相殺)も並行して準備する
よくある質問 AI による整理
Q1訴訟信託とは何ですか?
他人に訴訟をさせることを主な目的として財産や権利を信託することです。信託法10条で禁止され、これに当たる信託は無効になります。
Q2訴訟信託はなぜ禁止されているのですか?
信託の形を使えば、弁護士資格のない者が他人の権利を引き受けて自分の名義で訴え、報酬を得られてしまうためです。弁護士法の資格制度の潜脱を防ぐ趣旨です。
Q3訴訟信託に当たると訴えはどうなりますか?
信託が無効とされるため、受託者は権利者として訴える資格を欠くことになり、訴えは退けられるおそれがあります。時間と費用だけが失われかねません。
Q4訴訟信託かどうかはどう判断されますか?
契約書の名称ではなく実態で判断されます。受託者に訴訟以外の管理業務があるか、報酬が回収額に連動しているか、設定の経緯などが考慮されます。
Q5訴訟信託に罰則はありますか?
信託法10条自体は信託を無効とする規定です。ただし業として他人の権利を譲り受けて訴訟で実行すると、弁護士法73条違反として刑事罰の対象になりえます。
Q6受託者が訴訟をするのは違法ですか?
違法ではありません。受託者は信託財産を守るために訴えることができます。問題になるのは、訴訟をさせることが信託設定の主たる目的だった場合に限られます。
Q7訴訟信託が無効になったら権利はどうなりますか?
信託が無効なら権利は原則として元の権利者に残る扱いになりますが、帰属をめぐって争いが生じやすくなります。早めに弁護士へ相談し、時効管理も必要です。
Q8債権回収を合法的に任せられるのは誰ですか?
原則として弁護士と、法務大臣の許可を受けた債権回収会社(サービサー)です。サービサーが扱える債権の範囲は法律で限定されています。
この条文についての質問 AI による整理
Q1家族信託で長男に任せたアパート、家賃滞納者を長男の名前で訴えるのはアウトですか?
信託の主な目的が財産の管理・運用であれば、受託者が信託財産を守るために訴えることは本条に反しない(信託法10条は「主たる目的」を問う)。実務のポイント:信託契約の目的条項が「本件不動産を受託者に管理させる」の一行だけだと、紛争時に相手方から目的を攻められる余地が残る。賃貸管理・修繕・売却判断などの具体的な業務を列挙しておくと、後で受託者が動きやすくなる
Q2知り合いの会社が『債権を譲ってくれたら回収するよ』と言ってます。信託じゃなくて譲渡なら大丈夫?
形を譲渡に変えても安心はできない。他人の権利を譲り受けて訴訟などで実行することを業とすれば、弁護士法73条違反となり、2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象になる(同法77条、最新の改正状況をご確認ください)。実務のポイント:判例は、訴訟目的の債権譲渡を公序良俗違反(民法90条)として無効とする方向でも本条の趣旨を及ぼしている。業として回収を行えるのは原則として弁護士と許可を受けたサービサーだけである
Q3同じ被害に遭った仲間20人で、一人に権利を集めて代表で訴えたいんですが。
権利を信託や譲渡で一人に集める方法は本条に触れるおそれがある。正規の方法は民事訴訟法30条の選定当事者で、権利は各自に残したまま、代表者が全員のために訴訟を担当できる。実務のポイント:消費者被害であれば、特定適格消費者団体が被害回復を代わりに進める制度もある。費用負担が小さく、個人で弁護士を探す前に該当するかを確認する価値がある
間違えやすい点 AI による整理
- 「契約書に信託と書いて登記や通知も済ませれば、法的には受託者が正式な権利者だ」と考えがちである。しかし本条は形式を問題にしていない。訴訟行為が主たる目的かどうかは、受託者の業務内容、報酬の取り決め、信託に至った経緯などの実態から判断される。書類の整い方は防波堤にならない
- 訴訟信託は、信託を無効にするだけの民事のルールだと思われている。実際には弁護士法72条・73条と表裏一体の規制であり、業として他人の権利を譲り受けて訴訟で実行すれば、弁護士法違反として刑事罰の対象にもなりうる。無効で済めばまだましな部類である
- 「受託者が訴訟をするのは違法なのか」という問い自体がずれている。受託者は信託財産を守るために訴えることができるし、むしろその義務を負う場面もある。問われているのは訴訟をしたかどうかではなく、訴訟をさせることが信託を設定した主な理由だったかどうかである
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規制の対象 | 信託法10条:訴訟行為をさせることを主たる目的とする信託 | 信託法9条:法令上享受できない権利を受益者として享受する目的の信託(脱法信託) 信託法11条:委託者が債権者を害することを知ってした信託(詐害信託) |
| 判断の着眼点 | 信託設定の主たる目的が訴訟にあるか | 法令上の享受制限を信託でくぐろうとしているか 委託者の債権者を害するかどうか、関係者の認識 |
| 効果 | 信託は無効 | 当該権利を受益者が享受する信託はできない 委託者の債権者による取消し等の対象 |
| 主に守る利益 | 訴訟代理の資格制度と司法の公正 | 各法令が定める権利享受の制限 委託者の債権者 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も訴願または訴訟を主要目的とする信託行為を無効とする。日本法と同趣旨の規律で、訴願(行政不服申立て)も明示している点が特徴
韓国も受託者に訴訟行為をさせることを主たる目的とする信託を無効とし、日本の旧信託法11条と同系統の規定を置く
中国は信託の無効事由の一つとして、訴訟または債権取立てのみを目的とする信託を挙げ、取立て目的まで明示している
米国では訴訟への第三者介入を規制するコモンロー上の法理が州ごとに残存・廃止されており、訴訟資金提供の許容範囲も州により異なる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 取引先の未払い300万円を回収できず悩んでいたところ、「債権を信託してくれれば当社名義で訴えて、回収額の4割で引き受けます」と持ちかけられた。契約書の題名は「債権管理信託契約」。だが受託者が実際にやることは訴訟だけ。訴えた先の裁判所で「訴訟信託であり無効」と判断されれば、半年の時間と着手金だけが消える
- もし家族信託で親の賃貸アパートを長男に託した後、滞納入居者を長男名義で明渡し訴訟にかけたらどうなる? 信託の主な目的が財産管理なら、受託者として訴えることは本条に触れない。目的の主従こそが分かれ目になる
- あなたは小さな債権回収コンサルを始めた。顧客から債権を「信託」で預かり、自社名義で少額訴訟を量産するビジネスモデルを組んだ。相手方の代理人がこれに気付き、本条と弁護士法73条を持ち出してくる。訴えが退けられるだけでなく、刑事告発のリスクまで抱える
- SNS での誹謗中傷の被害者が十数人集まり、全員の損害賠償請求権を一人の代表に信託して訴訟を一本化しようとしている。気持ちは分かるが、その構成は危うい。民事訴訟法30条の選定当事者という正規の通路があるのに、わざわざ無効のリスクを取る理由はない
- 相手方から訴えられた。原告は元の債権者ではなく、債権を「信託で取得した」と名乗る会社である。第一回口頭弁論まであと10日。信託契約書の提出を求め、受託者が訴訟以外に何を任されているかを確かめられるかどうかが反撃の起点になる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 信託や譲渡の形で権利を渡すよう勧誘されたら、相手が弁護士か、法務大臣の許可を受けた債権回収会社(債権管理回収業に関する特別措置法3条)かを最初に確認する2. すでに契約してしまった場合、契約書・報酬条項・やり取りの記録を保全し、弁護士に信託の有効性と権利の帰属を相談する3. 被害者が多数いるなら、権利を一人に移すのではなく、民事訴訟法30条の選定当事者や集団での弁護士委任を検討する
訴えられた側:1. 信託や譲渡で権利を取得したと名乗る者から訴えられたら、答弁書で信託契約書等の提出を求め、受託者の業務内容と報酬構造を確認する2. 訴訟が主たる目的と読める事情(訴訟以外の管理業務がない、回収額に連動する報酬など)を拾い、本条違反と弁護士法73条違反を主張する3. 元の権利者からの再訴に備え、本来の債務自体の争点(時効・弁済・相殺)も並行して整理する
時効(請求できる期限):本条に特有の時効はない。違反した信託は最初から無効とされる。背後にある本来の請求権には一般消滅時効(民法166条、権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年)が適用されるため、無効な信託に頼って時間を空費すると時効が完成するおそれがある
学説
通説:本条は訴訟代理の資格制度(弁護士法72条・73条)の潜脱防止と、濫訴の防止を趣旨とする。主たる目的の判断は実態によるとされ、財産管理に付随する受託者の訴訟は本条の対象外と解されている
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 旧信託法11条「信託ハ訴訟行為ヲ為サシムルヲ主タル目的トシテ之ヲ為スコトヲ得ス」を現代語化し、新信託法10条に移した。規律の実質は維持されている
改正の年表
- 1.大正11年(1922年) 新設:旧信託法11条として「信託ハ訴訟行為ヲ為サシムルヲ主タル目的トシテ之ヲ為スコトヲ得ス」と規定
- 2.平成18年(2006年) 改正:信託法全部改正により現代語化され、現行信託法10条に移行。規律の実質は維持された
- 信託法 第2条信託・受託者の定義
- 信託法 第3条信託の設定方法(契約・遺言・自己信託)
- 信託法 第9条脱法信託の禁止、同じく潜脱を封じる規定
- 信託法 第11条詐害信託の取消し、信託濫用の別類型
- 弁護士法 第72条非弁護士による法律事務取扱いの禁止
- 弁護士法 第73条譲り受けた権利の実行を業とすることの禁止
- 債権管理回収業に関する特別措置法 第3条許可制サービサーによる回収業の特例
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