信託法 第193条(共有者による権利の行使)
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受益証券発行信託の受益権が二人以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該受益権についての権利を行使する者一人を定め、受益証券発行信託の受託者に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該受益権についての権利を行使することができない。ただし、当該受託者が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。
この条文の基本情報
共有者による権利の行使とは何ですか?
定義共有者による権利の行使とは、信託法第193条に定められた規定で、「受益証券発行信託の受益権が二人以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該受益権についての権利を行使する者一人を定め、受益証券発行信託の受託者に対し、その者の氏…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第193条(共有者による権利の行使)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第193条の条文原文は「受益証券発行信託の受益権が二人以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該受益権についての権利を行使する者一人を定め、受益証券発行信託の受託者に対し、その者の氏…」で始まります。
- 信託法第193条は第一節 総則に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第193条の前の条は信託法第192条です。
- 信託法第193条の次の条は信託法第194条です。
- 信託法第193条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第193条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第193条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/193
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法193条は、受益証券発行信託の受益権が共有のとき、共有者が権利行使者一人を定めて受託者に通知しない限り、権利を行使できないと定める。
Q · 兄弟で相続した信託の受益権、自分の持分だけ先に使えないの?
代表者一人を受託者に通知するまで原則行使できない
信託法193条により、受益証券発行信託の受益権が共有になった場合、共有者は権利を行使する者一人を定め、その氏名又は名称を受託者に通知しなければ、分配金の請求や議決権などの権利を行使できません。持分ごとに分けて行使することは想定されていません。例外は受託者が権利行使に同意した場合ですが、共有者間で民法の共有規定に沿った決定を欠くと、後から適法性を争われるおそれがあります。
解説
相続で受益権が兄弟の共有になった瞬間、その受益権は声を失う。信託法193条は、受益証券発行信託(受益権を有価証券化して売買できるようにした信託)の受益権が二人以上の共有に属するとき、共有者が権利を行使する者を一人決め、その氏名を受託者(信託財産を預かり管理する信託銀行など)に通知しない限り、誰も権利を行使できないと定める。分配金の請求も、受益者集会での議決権も、原則として止まる。受託者から見れば、共有者三人がばらばらに指示してくれば事務が崩壊するからだ。例外は受託者が同意した場合だけである。押さえるべきは代表者の決め方だ。株式や持分の同種規定について、最高裁は全員一致ではなく持分価格の過半数で決められるとした(最判平成9.1.28)。本条も同じ枠組みで考える見解が有力である。一人の反対者が全体を人質に取れるとは限らない。
法的な位置づけ
信託法第193条は、受益証券発行信託の受益権が二人以上の者の共有に属する場合の権利行使方法を定める規定である。共有者は権利行使者一人を定め、その氏名又は名称を受託者に通知することを要し、通知がない限り当該受益権についての権利を行使できない。受託者が権利行使に同意した場合は例外とされる。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.共有受益権の棚卸し 共有になった受益権の銘柄・口数、受託者、取扱証券会社、次回の分配・受益者集会の基準日を一覧にする。基準日が最も近いものから優先順位を付ける
- 2.受託者に通知方法を書面で確認 受託者または取扱証券会社に、権利行使者の通知に必要な書式・添付書類・共有者全員の署名の要否を書面で問い合わせる
- 3.共有者間で権利行使者を選任 遺産分割の協議とは切り離し、権利行使者の選任だけを議題にする。全員一致にならない場合は持分価格の過半数で決める考え方があるため、各人の持分割合と協議経過を議事メモに残す
- 4.権利行使者の通知を提出 選任した権利行使者の氏名又は名称を受託者に通知する。全員一致でない場合は、持分過半数による選任の根拠と協議の経過を添付し、提出日の記録を残す
よくある質問 AI による整理
Q1受益証券発行信託とは何ですか?
信託行為の定めにより受益権を受益証券として発行し、有価証券のように譲渡しやすくした信託です(信託法185条以下)。上場信託の一部がこの仕組みを使っています。
Q2共有受益権の権利行使者には誰がなれる?
信託法193条は「一人を定め」と規定するだけで、資格を明文で限定していません。実務では共有者の一人を選ぶのが通常で、受託者の受理基準は事前に確認が必要です。
Q3権利行使者の通知に期限はありますか?
条文上の期限はありません。ただし分配や受益者集会の基準日までに通知が受理されていないと、その回の権利は行使できないため、基準日が事実上の締切になります。
Q4受託者が同意すれば共有者の一人が単独で行使できる?
193条ただし書で可能とされます。ただし株式の同種規定の判例では、共有者間の決定を欠くと行使が不適法とされたため、同意だけに頼るのは危険です。
Q5一度届け出た権利行使者は変更できますか?
共有者が改めて権利行使者を定め、受託者に通知し直せば変更できると考えられます。変更の決定方法も共有規定に従うのが通説的な整理です。
Q6権利行使者は他の共有者の意向に従う必要がある?
権利行使者は共有者全体のために行使する立場です。内部の取り決めに反して行使し損害を与えれば、共有者間で責任や清算を問われる可能性があります。
Q7金ETFなど上場信託を相続したら最初に何をすべき?
銘柄と受託者・取扱証券会社を確認し、共有のまま基準日を迎えそうなら、遺産分割より先に権利行使者の選任と通知を検討します。
Q8受益権が共有になるのはどんな場合ですか?
典型は相続で、遺産分割が終わるまで相続人の準共有になります。共同購入や共同出資で一つの受益権を複数人で持つ場合も共有になります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1相続した信託の分配金、証券会社が止めてるんだけど違法じゃないの?
共有状態の受益権については、信託法193条により権利行使者の通知がない限り権利を行使できないため、受託者側が支払を留保すること自体は通常この条文に沿った扱いである。実務のポイント:窓口は『遺産分割協議書を出してください』と案内しがちだが、条文上の要件は権利行使者一人の通知である。分割協議がまとまる前でも代表者の届出で動かせないか、受託者本体に確認する価値はある
Q2兄弟の一人がどうしても代表者決めに反対しています。全員の同意がないと無理ですか?
株式・持分の同種規定では、最高裁が持分価格の過半数で権利行使者を決められるとしており(最判平成9.1.28)、信託法193条も同様に考える見解が有力である。ただし、本条について直接の判例は乏しく、実務上は解釈が分かれる余地がある。実務のポイント:受託者は紛争に巻き込まれるのを嫌うため、全員の署名を求めることが多い。過半数で決めたなら、その根拠と協議経過を最初から書面で添えると、受託者が受理しやすくなる
間違えやすい点 AI による整理
- 「共有者の一人として、自分の持分の分くらいは単独で請求できるはずだ」と思うのは自然だが、本条は持分ごとに分けて行使することを想定していない。権利行使者の通知がなければ、持分9割の共有者であっても原則として何も行使できない
- 但書の『受託者の同意』を安全な抜け道と見るのは危うい。株式の同種規定について最高裁は、会社が同意した場合でも、共有者間で民法の共有規定に沿った決定がないまま一人が議決権を行使すれば不適法になるとした(最判平成27.2.19)。受託者が同意しても、共有者内部の手続が欠けていれば、後から決議が覆されるおそれは残る
- 共有者から見ればこれは『家族の中の問題』にすぎない。だが受託者から見れば『誰に払えば免責されるか』という問題である。この見え方の差を理解せずに受託者の窓口で家族の事情を延々と説明しても、手続は一歩も進まない。受託者が求めているのは事情の説明ではなく、通知書一枚である
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 対象 | 信託法193条:受益証券発行信託の受益権の共有 | 会社法106条:株式の共有 民法264条:所有権以外の財産権の準共有(共有規定を準用) |
| 通知・届出の相手 | 受託者 | 株式会社 定めなし(共有者内部の規律) |
| 例外 | 受託者が権利行使に同意した場合 | 株式会社が権利行使に同意した場合 法令に特別の定めがあればそれに従う(民法264条ただし書) |
| 代表者の決め方 | 明文なし。民法の共有規定(持分過半数)による見解が有力 | 判例上、持分価格の過半数で決定可能 管理事項は持分価格の過半数で決定(民法252条) |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾では信託受益権の共有について直接の対応規定は確認できないが、株式共有では共有人中一人を推定して権利を行使させる同構造の規定がある
韓国も株式共有では権利行使者一人の指定を求める。信託受益証券への適用関係は要確認
ドイツは株式の共同権利者に共同代理人を通じた権利行使を求めており、窓口一本化という発想が共通する
フランスは不分割株式の共有者について、共有者の一人または単一の代理人による総会代表を定める
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 父が遺した純金上場信託の受益権を、兄・姉・あなたの三人で相続した。遺産分割協議はまとまらず、半年が過ぎた。分配や議決の通知が来ても、代表者を通知していない以上、三人のうち誰もその権利を単独では行使できない。動かないまま時間だけが経っていく
- 共同出資の受益権を持つ側で、あなたは持分2割の少数派である。残る8割の共有者が、相談もなく自分たちの仲間を権利行使者に決めて受託者に通知した。これを止められるのか? 持分の過半数で決められるという考え方に立つと、あなたの反対だけでは覆らない。協議に加わる機会がなかったことを争点にできるかが勝負になる
- 受益者集会の基準日まで、あと10日。共有者全員の署名入り通知書がまだ揃っていない。一人でも署名が遅れると、議決権がまるごと空白になる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 共有になった受益権の銘柄・口数と、受託者または取扱証券会社を一覧にする2. 受託者に権利行使者の通知方法(書式、必要書類、全員の署名が必要か)を書面で問い合わせる3. 共有者に対して、分割協議とは切り離して代表者だけを先に決めようと提案する4. 合意できない場合は、持分価格の過半数で選任した記録(議事メモ、送付履歴)を残して通知する。少数派として排除された側なら、協議の機会がなかった経緯を記録し、弁護士に相談する
訴えられた側:1. 代表者として行使した経緯について、選任の根拠となった持分割合と協議の経過を資料で示せるように整える2. 受託者の同意だけに頼って行使した場合は、共有者内部の決定がないと適法性を争われうるため、事後的にでも持分過半数の承認を取り付ける3. 代表者は共有者全体のために行使する立場にあり、受け取った分配金を独り占めすれば別途、民法上の清算請求を受けると心得る4. 紛争が深刻なら、遺産分割調停(家庭裁判所)での整理を検討する
時効(請求できる期限):本条そのものに特定の時効はないが、一般消滅時効(民法166条、債権5年または10年)が適用される。実務上の締切は受益者集会の基準日や分配の基準日である。相続が原因なら、相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月、相続税法27条)も同時に意識する(最新の改正状況をご確認ください)
学説
有力説:受益権の共有は民法264条の準共有であり、権利行使者の選任は管理行為として民法252条により持分価格の過半数で決定できる。会社法106条に関する判例の枠組みを本条にも及ぼす立場。
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 受益証券発行信託の制度創設に伴い、共有受益権の権利行使に関する規定として新設されたと考えられる。施行は平成19年(2007年)。その後の改正の有無は人的検証が必要
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:信託法の全部改正(平成18年法律第108号)で受益証券発行信託の制度が設けられ、共有受益権の権利行使に関する本条が置かれた。平成19年(2007年)施行。
- 信託法 第185条受益証券発行の定め、本章適用の前提
- 信託法 第186条受益権原簿の作成、受益者把握の基盤
- 信託法 第192条無記名受益権の権利行使の特則(現行効力を要確認)
- 信託法 第214条受益者集会による意思決定(現行効力を要確認)
- 民法 第264条受益権の準共有に共有規定を準用
- 民法 第252条持分過半数による管理事項の決定
- 会社法 第106条共有株式の権利行使、同構造の規定
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