信託法 第268条(国外犯)
クイックジャンプ
- 前条第一項の罪は、日本国外においてこれらの罪を犯した者にも適用する。
- 2.前条第二項の罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第二条の例に従う。
この条文の基本情報
国外犯とは何ですか?
定義国外犯とは、信託法第268条に定められた規定で、「前条第一項の罪は、日本国外においてこれらの罪を犯した者にも適用する。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第268条(国外犯)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第268条の条文原文は「前条第一項の罪は、日本国外においてこれらの罪を犯した者にも適用する。」で始まります。
- 信託法第268条は第十三章 罰則に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第268条の前の条は信託法第267条です。
- 信託法第268条の次の条は信託法第269条です。
- 信託法第268条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第268条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第268条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/268
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法268条は、受託者等の収賄罪を日本国外での行為にも適用し、贈賄罪は刑法2条の例により国籍を問わず国外犯として処罰すると定める規定である。
Q · 家族信託の受託者が海外で賄賂を受け取ったら、日本の法律で罪になるの?
なりうる。国外での収賄も贈賄も処罰対象になる
信託法268条1項により、受託者・信託監督人・受益者代理人などが職務に関して不正の請託を受けて利益を得る収賄罪(267条1項)は、日本国外で行われても処罰されます。2項により、利益を供与・申込み・約束する贈賄罪(267条2項)は刑法2条の例に従い、行為者の国籍を問わず国外での行為も対象になります。また、犯人が国外にいる間は公訴時効の進行が停止します(刑事訴訟法255条)。
解説
国境を越えれば日本の刑法は追ってこない、という感覚は、信託の世界では通用しない。信託法267条は、受託者・信託監督人・受益者代理人などが職務に関して不正の請託(「この件をうまく取り計らってくれ」という具体的な頼み事)を受け、見返りの利益を受け取る行為を罰する。受け取った側が収賄罪、渡した側が贈賄罪である。本条はその適用範囲を国外まで広げる。1項により、収賄は日本国外で行っても処罰される。2項により、贈賄は刑法2条の例に従う。刑法2条は、犯人の国籍を問わず国外での行為も処罰する規定である。つまり、ハワイのコンドミニアムを信託財産とする家族信託で、現地の業者が受託者に「安く売ってくれれば礼をする」と持ちかけた場合、外国人の業者も、日本人の受託者も、日本の信託法の射程に入る。受益者であるあなたが「海外の話だから日本では何もできない」と思い込んでいれば、それだけで本条の存在は無意味になる。
法的な位置づけ
信託法268条は、受託者等の贈収賄罪(同法267条)の場所的適用範囲を定める国外犯規定である。1項は収賄罪を日本国外で犯した者にも適用すると定め、2項は贈賄罪について刑法2条の例に従うとして、国籍を問わず国外での行為を処罰対象とする。刑法1条の属地主義に対する特則として機能する。
よくある質問 AI による整理
Q1信託法268条とは何ですか?
受託者等の贈収賄罪(信託法267条)を日本国外での行為にも適用する国外犯規定です。1項が収賄、2項が贈賄の適用範囲を定めています。
Q2信託法の贈収賄罪は誰が対象になりますか?
受託者、信託財産管理者、信託監督人、受益者代理人などが職務に関して不正の請託を受けた場合が対象です。法人受託者の場合は行為をした役員等が罰せられます(269条)。
Q3信託法267条の罰則はどのくらいですか?
収賄は5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金、贈賄は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です(最新の改正状況をご確認ください)。
Q4刑法2条の例に従うとはどういう意味?
刑法2条は、日本国外で罪を犯したすべての者に日本の刑法を適用する規定です。その例に従うため、贈賄者の国籍は問われません。
Q5国外犯の公訴時効はいつまで?
収賄は5年、贈賄は3年ですが、犯人が国外にいる期間は時効の進行が停止します(刑事訴訟法255条1項)。海外滞在中は時効が完成しません。
Q6受託者の海外での不正を受益者はどう証明できる?
帳簿の閲覧請求(信託法38条)や事務報告の請求(36条)を使い、送金記録・売買契約書・メールを早めに確保するのが出発点です。
Q7接待だけでも信託法の収賄罪になりますか?
「財産上の利益」には現金だけでなく飲食接待も含まれうると解されています。ただし不正の請託が前提であり、接待のみで直ちに成立するわけではありません。
Q8信託法の国外犯と会社法の国外犯は同じ仕組み?
ほぼ同じです。会社法971条も、取締役等の贈収賄罪について収賄は国外犯、贈賄は刑法2条の例によると定める同型の立法技術をとっています。
この条文についての質問 AI による整理
Q1海外に住んでる受託者が向こうで賄賂をもらってたら、日本で罪になるんですか?
なりうる。信託法267条1項の収賄罪は、268条1項により国外で行った場合にも適用される。法定刑は5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金である(最新の改正状況をご確認ください)。実務のポイント:国外犯で実際に立件するには、証拠の多くが海外にあるため捜査のハードルが高い。受益者が送金記録や契約書を自分で集めて持ち込めるかどうかで、捜査機関の動き方が大きく変わる
Q2贈った側が外国人だったら、日本の法律じゃ裁けないですよね?
裁ける可能性がある。267条2項の贈賄罪には刑法2条の例が適用され(268条2項)、国籍を問わず国外での行為も処罰対象になる。利益を実際に渡していなくても、申込みや約束の段階で成立しうる。実務のポイント:処罰の規定があっても、外国にいる人の身柄を確保できるとは限らない。実務上の分かれ目は、その人物が日本に入国するか、日本に資産や取引拠点を持っているかである
間違えやすい点 AI による整理
- 「海外で起きた賄賂は現地の法律の問題で、日本の法律は関係ない」と考えるのは誤りである。信託法267条の収賄は国外で行っても処罰対象になり(268条1項)、贈賄も刑法2条の例により国籍を問わず処罰されうる。現地法でも違法かどうかは関係ない
- 国外犯処罰規定があることを知っている人でも、その実際の重みは見落としがちである。犯人が国外にいる期間は公訴時効が停止する(刑事訴訟法255条)。海外に何年とどまっていても時効は完成しないため、帰国や入国の瞬間に責任を問われる可能性が残り続ける
- 「家族信託の受託者はただの親族だから、贈収賄なんて関係ない」という発想は、問いの立て方そのものが間違っている。267条は受託者を職業で限定していない。報酬をもらわない親族の受託者でも、職務に関して不正の請託を受け利益を得れば、条文上は対象になる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規定の役割 | 信託法268条:贈収賄罪の場所的適用範囲(国外犯) | 信託法267条:受託者等の贈収賄罪の構成要件と法定刑 信託法269条:法人受託者等の役員等への罰則適用 |
| 処罰の対象行為 | 267条の罪を日本国外で行った場合 | 職務に関し不正の請託を受け利益を収受・要求・約束、またはその供与・申込み・約束 法人が受託者等である場合の取締役・執行役・支配人等の行為 |
| 行為者の国籍 | 収賄(1項)は国外で犯した者に適用、贈賄(2項)は刑法2条の例で国籍不問 | 国内での行為なら国籍を問わない(刑法1条の属地主義) 国籍の限定なし(267条・268条の範囲に連動) |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は刑法総則で国外犯の範囲を定め、本国人の国外犯は最軽本刑3年以上の罪などに限る。信託の受託者に特化した贈収賄の国外犯規定は日本ほど明確ではない
韓国は内国人の国外犯を広く処罰する属人主義をとる。外国人の国外犯は列挙された罪や韓国・韓国民に対する罪に限られる
ドイツは取引上の贈収賄を刑法典で一般的に処罰し、国外行為への適用は § 7などの総則規定で判断する。信託に特化した規定ではない
米国は州法上の商業贈収賄を、州際・国外の通商手段を用いた場合に連邦犯罪として捕捉する。公務員向けの FCPA とは別系統である
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 父の遺産を家族信託にして、受託者の兄がシンガポールに移住した。兄が信託財産の現地不動産を相場より安く売却し、買主から「謝礼」を受け取っていた疑いがある。現地の取引だから日本では問題にできないと諦めかけていたが、国外での収賄も267条1項の対象になる
- 海外の投資仲介業者として、日本の信託監督人に香港で会食を設定し、運用先の選定で便宜を図ってほしいと頼んで現金を渡そうとした。あなたが外国籍でも、申込みの段階で贈賄罪は成立しうる。次に日本へ入国した時点が、捜査が動き出すタイミングになる
- 受託者を務める信託会社の担当役員が、海外の出張先で取引先から不正な頼み事とともに高額の謝礼を受け取ったら、どうなる? 受託者が法人のときは、実際に行為をした取締役や支配人が罰則の対象になる(信託法269条)
- 兄が海外にいる間に、公訴時効が先に切れてしまうのでは? 実際には、犯人が国外にいる期間、公訴時効は進行を停止する(刑事訴訟法255条)。ただし、証拠となる送金記録の保存期限は待ってくれない。今月中に銀行へ取引履歴を請求しておかないと、証拠が先に消える
取るべき行動
被害を受けた側:1. 不審な売買や運用について、信託事務の報告と帳簿の閲覧を受託者に請求する(信託法36条、38条) 2. 海外の送金記録、売買契約書、メール類を早めに確保する3. 信託監督人がいれば相談し、受託者の解任申立て(58条4項)と損失てん補請求(40条)を検討する4. 不正の請託と利益の受領を示す材料がそろったら、弁護士を通じて刑事告訴や告発を検討する
訴えられた側:1. 海外にいても日本法上の刑事責任は消えないと理解し、日本の刑事弁護人にすぐ相談する2. 争点は「不正の請託」の有無と、利益が職務に関するものかどうかである。受け取った経緯や趣旨を示す資料を保存する3. 不用意に入国する前に、弁護人を通じて捜査状況を確認する4. 受益者への損失回復や利益の返還を早期に申し出ることは、処分や量刑の判断で考慮されうる
時効(請求できる期限):公訴時効は、収賄罪(5年以下の拘禁刑)が5年、贈賄罪(3年以下の拘禁刑)が3年で、犯罪行為が終わった時から進行する(刑事訴訟法250条2項)。ただし犯人が国外にいる期間は時効の進行が停止する(同法255条1項)。民事の損失てん補請求には一般消滅時効(民法166条、知った時から5年、行使できる時から10年)が適用される(最新の改正状況をご確認ください)
学説
立法技術上の整理:1項(国外で犯した者に適用)と2項(刑法2条の例に従う)の書き分けは、会社法971条など商事関係法の贈収賄罪国外犯規定と同じ型である。両項で実際の適用範囲に差が生じるかについては解釈の余地がある
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)現行信託法制定 信託法(平成18年法律第108号)の制定に伴い、受託者等の贈収賄罪の国外犯規定として新設された。平成19年(2007年)9月30日施行
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:信託法(平成18年法律第108号)の全面改正・制定に伴い、受託者等の贈収賄罪(267条)の国外犯規定として新設。平成19年(2007年)9月30日施行
- 信託法 第267条国外犯の対象となる贈収賄罪本体
- 信託法 第269条法人受託者の役員等への罰則適用
- 信託法 第40条受託者の損失てん補責任、民事救済
- 信託法 第58条受託者の解任、裁判所への申立て
- 刑法 第2条すべての者の国外犯、贈賄罪の準拠
- 刑事訴訟法 第255条犯人国外滞在中の公訴時効停止
- 会社法 第971条取締役等贈収賄の同型国外犯規定
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める