信託法 第58条(受託者の解任)
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- 委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、受託者を解任することができる。
- 2.委託者及び受益者が受託者に不利な時期に受託者を解任したときは、委託者及び受益者は、受託者の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
- 3.前二項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
- 4.受託者がその任務に違反して信託財産に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、委託者又は受益者の申立てにより、受託者を解任することができる。
- 5.裁判所は、前項の規定により受託者を解任する場合には、受託者の陳述を聴かなければならない。
- 6.第四項の申立てについての裁判には、理由を付さなければならない。
- 7.第四項の規定による解任の裁判に対しては、委託者、受託者又は受益者に限り、即時抗告をすることができる。
- 8.委託者が現に存しない場合には、第一項及び第二項の規定は、適用しない。
この条文の基本情報
受託者の解任とは何ですか?
定義受託者の解任とは、信託法第58条に定められた規定で、「委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、受託者を解任することができる。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第58条(受託者の解任)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第58条の条文原文は「委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、受託者を解任することができる。」で始まります。
- 信託法第58条は第一款 受託者の任務の終了に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第58条の前の条は信託法第57条です。
- 信託法第58条の次の条は信託法第59条です。
- 信託法第58条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第58条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第58条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/58
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法58条により、委託者と受益者は合意でいつでも受託者を解任できる。合意できない場合は、重要な事由があれば裁判所に解任を申し立てられる。
Q · 家族信託の受託者を途中で替えることはできるの?
合意なら理由不要で解任可。無理なら裁判所に申立て
信託法58条1項により、委託者と受益者が合意すれば、理由を示さずにいつでも受託者を解任できます。受託者本人の同意も裁判所の手続も不要です。ただし受託者に不利な時期の解任は、やむを得ない事由がない限り損害賠償義務を負います(2項)。委託者が亡くなっているなど合意の道が使えない場合は、任務違反など重要な事由があるときに限り、委託者又は受益者が裁判所に解任を申し立てます(4項)。信託契約に別段の定めがあれば、そちらが優先します(3項)。
解説
家族信託で長男を受託者にした。数年後、信託口座のお金が長男のローン返済に流れていると分かった。受託者を替えたい。そのときに使うのが本条である。道は二本ある。一本目は、委託者と受益者が合意すれば、理由を示さずにいつでも受託者を解任できる道である(1項)。裁判所の手続も、受託者本人の同意も要らない。ただし、受託者に不利な時期に解任すると、やむを得ない事由がない限り損害賠償の義務を負う(2項)。二本目は、任務違反によって信託財産に著しい損害を与えたなど「重要な事由」がある場合に、委託者または受益者が単独で裁判所へ解任を申し立てる道である(4項)。落とし穴は二つある。委託者が現に存しなければ、一本目の道は使えない(8項)。また、信託契約に別段の定めがあれば、1項と2項よりその定めが優先する(3項)。つまり受託者を替えられるかどうかは、問題が起きた日ではなく、信託契約に判を押した日にほぼ決まっている。
法的な位置づけ
信託法58条は受託者の解任を定める規定であり、委託者及び受益者の合意による任意の解任、不利な時期の解任に伴う損害賠償、信託行為による別段の定めの優先、重要な事由がある場合の裁判所による解任とその手続、並びに委託者が現に存しない場合における合意解任規定の不適用を規律する。
手順
- 1.信託契約書の解任条項を確認する 信託契約書を開き、受託者の解任について別段の定め(3項)があるかを確認する。解任権者、通知期間、第三者の承諾要件などが書かれていれば、法律より先にそれに従う
- 2.合意解任が可能か見極める 委託者が存命で意思表示できるか、受益者と合意できるかを確認する。委託者が亡くなっている、または判断能力を失っている場合は、合意解任の道は事実上閉じている
- 3.解任と新受託者選任を同時に行う 委託者と受益者の連名書面で受託者を解任し、同じ書面または同日に新受託者を選任する(62条)。前受託者には引継ぎまでの財産保管義務が残ることを書面で伝える
- 4.合意できない場合は裁判所に申し立てる 任務違反の証拠(通帳の写し、登記事項証明書、帳簿開示請求の記録)を固めたうえで、4項に基づき地方裁判所に解任を申し立てる。財産流出が進んでいれば44条の差止めを並行する
- 5.名義と口座を新受託者へ切り替える 解任後、信託口座の名義変更と、不動産があれば受託者変更の登記を行う。この手続が終わるまで財産は事実上動かせないため、解任前に段取りを決めておく
よくある質問 AI による整理
Q1受託者の解任とは?
信託財産を管理する受託者をその地位から外すことです。信託法58条が根拠で、委託者と受益者の合意による解任と、裁判所による解任の二つの方法があります。
Q2委託者が亡くなったら受託者は解任できない?
委託者が現に存しない場合、合意による解任(1項)は使えません(8項)。重要な事由があれば受益者が裁判所に申し立てるか、信託契約の定めに従って解任します。
Q3受託者の解任に本人の同意は必要?
不要です。1項の合意解任は委託者と受益者の合意だけで成立し、受託者の承諾も理由の説明も要りません。ただし不利な時期なら損害賠償の問題が残ります。
Q4受託者を解任したら信託は終了する?
終了しません。解任で受託者の任務が終わるだけで、新受託者を選任して信託は続きます(62条)。ただし新受託者が就任しない状態が1年続くと信託は終了します(163条)。
Q5受託者解任の申立てはどこの裁判所にする?
信託法上の非訟事件として、原則として受託者の住所地を管轄する地方裁判所に申し立てます。家庭裁判所ではない点に注意が必要です。
Q6家族信託の受託者を変更する方法は?
委託者と受益者の合意で現受託者を解任し、同時に新受託者を選任します。その後、信託口座の名義変更と、不動産があれば受託者変更の登記を行います。
Q7受益者だけで受託者を解任できる?
1項の合意解任は委託者と受益者の双方が必要です。受益者単独で解任するには、信託契約にその旨の定めを置くか(3項)、4項で裁判所に申し立てます。
Q8受託者を解任したら登記はどうなる?
信託財産に不動産がある場合、名義は自動では移りません。新受託者への所有権移転と信託目録の変更を登記しなければ、新受託者は売却や管理を進められません。
この条文についての質問 AI による整理
Q1家族信託で受託者の兄が親のお金を使い込んでるっぽい。どうやったら外せる?
委託者と受益者が健在で意思を示せるなら、58条1項により合意だけで解任できる。理由はいらない。それが無理なら、4項に基づき裁判所に申し立てる。実務のポイント:解任しても、預金口座の名義も不動産登記も兄のまま残る。新受託者の選任(62条)、口座の切替え、信託登記の変更を同じ日に動かす段取りを組まないと、財産が数か月凍結する
Q2いきなり解任されたんだけど、損害賠償って請求できるの?
請求できるのは、受託者に不利な時期の解任で、やむを得ない事由がなかった場合に限られる(58条2項)。任務違反が原因の解任なら、通常はやむを得ない事由にあたる。実務のポイント:賠償の範囲に残りの期間の信託報酬まで含むかは、実務上、解釈が分かれている。無報酬で引き受けた家族受託者は、損害自体を示しにくい。報酬を払う信託なら、契約に解任時の精算方法を書いておくのが一番の予防策である
Q3裁判所に解任を申し立てたら、どんな流れになるの?
4項の申立ては非訟事件として審理される。裁判所は必ず受託者の陳述を聴き(5項)、理由を付けて裁判する(6項)。不服がある委託者、受託者、受益者は即時抗告ができる(7項)。実務のポイント:「重要な事由」は、使い込みに限らない。報告の拒否や帳簿の不作成が続き、信頼関係が壊れていることも判断材料になりうる。37条の帳簿開示を先に請求し、拒まれた記録を残しておくと申立てが強くなる
間違えやすい点 AI による整理
- 「受託者を辞めさせるには、使い込みを立証して裁判で勝つ必要がある」と思われがちだが、それは4項の道にすぎない。委託者と受益者がそろって合意できるなら、1項により理由なしで解任できる。立証が必要になるのは、合意の道が閉じたときだけである
- 「兄が本当に使い込んだか、どう証明するか」と悩む人は多い。しかし本当に問うべきは「今、委託者と受益者の合意が成り立つか」である。自益信託(委託者と受益者が同じ人の信託)なら、本人の意思表示一つで解任できる。本人が認知症などで意思を示せなくなった瞬間から、同じ解任が裁判の案件に変わる。証拠集めより先に、時間との勝負になっている
- 家族から見れば「親子で話し合って担当を替えるだけ」の話でも、法律から見れば受託者は信託財産の名義人そのものである。解任しても、預金口座や不動産登記の名義は自動では戻らない。新受託者が選任されるまで、前の受託者には財産を保管し引き継ぐ義務が残る(59条)。解任を通知した日と、財産を実際に動かせる日には大きな時間差がある。その空白期間に家族の生活費が止まる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 誰が動くか | 信託法58条:委託者と受益者(合意)、又は委託者・受益者の申立てで裁判所 | 信託法57条:受託者自身(辞任) 信託法44条:受益者(違反行為の差止め) |
| 要件 | 合意解任は理由不要、裁判所解任は任務違反など重要な事由 | 委託者と受益者の同意、又はやむを得ない事由による裁判所の許可 法令・信託行為違反のおそれと信託財産への著しい損害のおそれ |
| 効果 | 受託者の任務が終了し、新受託者の選任へ進む | 受託者の任務が終了し、新受託者の選任へ進む 受託者は地位に留まり、違反行為のみが止まる |
| 使いどころ | 受託者そのものへの信頼が失われたとき | 受託者側が続けられない事情を抱えたとき 解任前に財産流出を緊急に止めたいとき |
他国ではどう定めているか 5 か国
台湾は受託人の任務違反その他重大な事由がある場合に、委託人又は受益人の申立てで法院が解任できる。日本旧信託法の構造を受け継いでいる
韓国は2011年全部改正で、委託者と受益者の合意による解任と、委託者がいない場合の受益者単独解任を定めた。日本よりも合意解任の道を広く残している
中国は受託者が信託目的に違反して財産を処分した場合などに、委託者が信託文書に従い解任し、又は人民法院に解任を申し立てられる
フランスのフィデュシーでは、契約に交代条件の定めがない場合、受託者の義務違反などのとき、関係者が裁判所に受託者の交代を求められる
米国統一信託法典は、委託者・共同受託者・受益者の申立てにより、重大な信託違反や協調の欠如などを理由に裁判所が受託者を解任できると定める
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 認知症が進んだ母の財産を守るため、兄を受託者にして家族信託を組んだ。その兄が、信託した実家を勝手に担保に入れようとしていたら、どうなる? 母が自分の意思を示せなくなっていれば、母と受益者の合意による解任(1項)は事実上成り立たない。残るのは4項に基づく裁判所への申立てと、40条による損失てん補の請求である
- あなたは受託者として、父のアパート3棟の管理と確定申告を一人で回してきた。申告期限の直前、父と妹が連名で解任を通知してきた。理由は書いていない。1項によれば、理由がなくても解任は有効である。ただ、この時期の解任で生じた具体的な損害は2項で請求できる余地がある。まず、作業途中で何が止まり、いくらの損失が出るのかを書面で整理しておく
- 委託者の父が亡くなった。信託契約には「委託者の地位は相続しない」と書いてある。受託者の兄を替えたくても、合意で解任する道(1項)は8項で閉じている。裁判所に申し立てるしかない
- 兄を解任する決定が出た。兄側は即時抗告(決定に対する不服申立て)をする構えである。抗告期間は決定の告知から2週間しかない(非訟事件手続法67条)。その間に新しい受託者の候補と口座名義の切替え手順を決めておかなければ、決定が確定しても財産は宙に浮いたままになる
- 不動産の受益権を保有する投資 SPC の担当者として、運用の悪い信託銀行を替えたい。しかし信託契約を読み返すと、3項の「別段の定め」として、解任には事前通知期間と貸付人の承諾が必要と書かれていた。法律より先に契約書が解任のルールを決めている
取るべき行動
被害を受けた側:1. 信託契約書を開き、受託者の解任について3項の「別段の定め」がないかを確認する2. 委託者と受益者が健在で意思表示できるなら、連名の書面で解任し、同時に新受託者を選任する(62条) 3. 合意の道が使えない場合は、任務違反の証拠を固めたうえで4項に基づき裁判所へ申し立てる4. 財産の流出が進んでいるなら44条の差止めを並行し、損害については40条の損失てん補を請求する
訴えられた側:1. 理由なき解任でも1項の合意解任は有効である。争うより、不利な時期の解任で生じた具体的な損害を記録し、2項の賠償請求を検討する2. 裁判所の解任手続では、受託者の陳述が必ず聴かれる(5項)。帳簿と業務記録で、任務違反がないこと、損害が著しくないことを示す3. 解任決定には2週間以内に即時抗告できる(7項) 4. 解任後も新受託者への引継ぎまでの保管義務(59条)は残る。放置すれば別の責任を問われる
時効(請求できる期限):1項による解任そのものに期間制限はない。2項の損害賠償請求に特定の時効はなく、一般の消滅時効(民法166条:権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年)が適用される。4項の解任の裁判に対する即時抗告は、裁判の告知を受けた日から2週間(非訟事件手続法67条)
学説
通説:1項・2項は任意規定であり、3項により信託行為で解任権者や要件を自由に設計できる。委託者が存しない場合に備え、受益者単独の解任権や受益者代理人を定めておくことが実務上推奨される
有力説(損害賠償の範囲):2項の損害には残存期間の信託報酬が含まれるかについて見解が分かれる。委任の任意解除に関する民法651条2項の議論が参照されることが多い
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.大正11年(1922年) 新設:旧信託法47条が、受託者の任務違反その他重要な事由があるときに裁判所が委託者・相続人・受益者の請求により受託者を解任できると規定
- 2.平成18年(2006年) 改正:信託法全部改正により現行58条を新設。委託者と受益者の合意による解任、不利な時期の解任の損害賠償、信託行為による別段の定め、委託者不存在時の不適用を明文化
- 信託法 第57条受託者の辞任、本条と対をなす任務終了
- 信託法 第59条前受託者の通知・保管義務
- 信託法 第62条解任後の新受託者の選任
- 信託法 第40条任務違反による損失てん補責任
- 信託法 第44条受益者による違反行為の差止め
- 民法 第651条委任の任意解除と不利時期の賠償の原型
- 非訟事件手続法 第67条即時抗告期間2週間
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