信託法 第57条(受託者の辞任)
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- 受託者は、委託者及び受益者の同意を得て、辞任することができる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
- 2.受託者は、やむを得ない事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。
- 3.受託者は、前項の許可の申立てをする場合には、その原因となる事実を疎明しなければならない。
- 4.第二項の許可の申立てを却下する裁判には、理由を付さなければならない。
- 5.第二項の規定による辞任の許可の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
- 6.委託者が現に存しない場合には、第一項本文の規定は、適用しない。
この条文の基本情報
受託者の辞任とは何ですか?
定義受託者の辞任とは、信託法第57条に定められた規定で、「受託者は、委託者及び受益者の同意を得て、辞任することができる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第57条(受託者の辞任)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第57条の条文原文は「受託者は、委託者及び受益者の同意を得て、辞任することができる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。」で始まります。
- 信託法第57条は第一款 受託者の任務の終了に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第57条の前の条は信託法第56条です。
- 信託法第57条の次の条は信託法第58条です。
- 信託法第57条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第57条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第57条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/57
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法57条により、受託者は委託者及び受益者の同意を得て辞任できる。やむを得ない事由があれば裁判所の許可でも辞任できるが、一存では辞められない。
Q · 家族信託の受託者を引き受けたけど、途中で辞めることはできるの?
一存では不可。同意・契約の定め・裁判所許可のいずれかが必要
信託法57条により、受託者は委託者及び受益者の同意を得れば辞任できます(1項)。信託契約や遺言などの信託行為に辞任の定めがあれば、そちらが優先します。同意が得られない場合でも、病気や遠方への転居などやむを得ない事由があれば、その事実を疎明して裁判所の許可を得て辞任できます(2項・3項)。ただし委託者が現に存しない場合は同意による辞任が使えません(6項)。
解説
家族信託の受託者を引き受けた長男が、五年後に海外転勤を命じられる。「もう降りたい」と言っても、本人の一存では降りられない。信託法57条が用意する出口は限られている。委託者と受益者の両方から同意を得るか、やむを得ない事由を裁判所に疎明(裁判官に「一応確からしい」と思わせる程度の説明)して許可をもらうか、である。信託行為(信託契約や遺言)に別の定めがあれば、それが優先する。委任であれば民法651条でいつでも解除できるのに、受託者はそうはいかない。他人の財産を自分の名義で預かっている以上、勝手に手を離せば財産が宙に浮くからだ。盲点はもう一つある。委託者が亡くなるなどして「現に存しない」場合、同意による辞任の道そのものが閉じる(6項)。契約書を作る段階で辞任条項と後継受託者を書き込んだかどうかが、十年後に家族が負う手間を決める。
法的な位置づけ
信託法57条は受託者の辞任の要件を定める規定である。受託者は委託者及び受益者の同意を得て辞任でき、信託行為に別段の定めがあるときはその定めに従う。やむを得ない事由があるときは、原因となる事実を疎明して裁判所の許可を得て辞任できる。許可の裁判に対する不服申立ては認められず、委託者が現に存しない場合は同意による辞任の規定が適用されない。
手順
- 1.信託契約書の辞任条項を確認する 信託契約書や遺言(信託行為)に辞任の定めと後継受託者の定めがあるかを確認する。別段の定めがあれば57条1項本文ではなくその定めに従う
- 2.後任候補と引継資料を準備する 辞任を切り出す前に後任候補を決め、財産目録・帳簿・賃貸借契約書・通帳など引継資料を揃える。同意ルートでは新受託者が事務を処理できるまで義務が続くため、準備が早いほど責任期間が短くなる
- 3.委託者・受益者から書面で同意を得る 委託者と受益者の同意を書面で取得する。受益者が複数なら原則全員の一致が必要。委託者が現に存しない場合はこのステップは使えない
- 4.同意が得られなければ裁判所に許可を申し立てる 病気・高齢・遠方への転居・受益者との深刻な対立などやむを得ない事由を診断書等の資料で疎明し、辞任許可を申し立てる。後任候補を併せて示すと信託の空白への懸念を払拭しやすい
- 5.辞任後の通知・引継ぎ・計算承認を済ませる 受益者への通知、新受託者への財産引継ぎ、名義変更登記を行い、信託事務の計算について受益者の承認を求める(77条)。承認を得れば不正行為がない限り責任を免除されたものとみなされる
よくある質問 AI による整理
Q1受託者の辞任とは何ですか?
信託財産を管理する受託者が、その任務を自ら終わらせることです。信託法57条が要件を定め、同意・信託行為の定め・裁判所の許可のいずれかが必要です。
Q2家族信託の受託者を辞めたいときはどうすればいい?
まず信託契約書の辞任条項を確認します。条項がなければ委託者と受益者の同意を書面で取り、得られなければ裁判所に辞任の許可を申し立てます。
Q3受託者の辞任に受益者全員の同意は必要?
受益者が複数いる場合、信託行為に別段の定めがない限り、意思決定は原則として全員一致です(信託法105条)。一人でも反対すれば同意ルートは使えません。
Q4委託者が亡くなったら受託者は辞任できない?
同意による辞任は使えなくなります(57条6項)。ただし信託行為に辞任の定めがあればそれに従え、やむを得ない事由があれば裁判所の許可で辞任できます。
Q5受託者が辞任したら不動産の登記はどうなる?
信託不動産は受託者名義のため、新受託者への名義変更登記が必要です。前受託者の協力が要る場面もあり、辞任前に段取りを決めておくと止まりません。
Q6後継受託者を決めていないとどうなる?
辞任後に新受託者を選ぶ必要があり、合意できなければ裁判所に選任を申し立てます(62条)。受託者不在が1年続くと信託は終了します(163条3号)。
Q7受託者の辞任に決まった書式はある?
法律上の書式はありません。実務では後日の争いを防ぐため、委託者・受益者の同意書と辞任通知を書面で残し、日付と署名を明確にしておきます。
Q8受託者が勝手に管理をやめたら違法?
同意も許可もなければ法的にはまだ受託者です。管理放棄で信託財産に損失が出れば、損失てん補責任(40条)や裁判所による解任(58条)の対象になり得ます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1親が認知症になったら、受託者の自分はもう辞められないんですか?
同意ルートが難しくなるだけで、道が消えるわけではない。受益者代理人(138条)がいれば受益者側の同意は代理人が出せるが、委託者側の同意を誰が出せるかは実務上、解釈が分かれる。確実なのは2項の裁判所の許可である。実務のポイント:契約時に「受益者代理人の同意で辞任できる」と書いておけば、この迷路ごと回避できる
Q2裁判所の許可って、どんな理由なら通るんですか?
病気、高齢、遠方への転居、受益者との深刻な対立などが典型とされるが、個別の判断である。求められるのは疎明(3項)であり、厳密な証明までは要らない。許可されれば不服申立てはできず(5項)、却下するときは理由が付される(4項)。実務のポイント:申立てと同時に後任候補を示すと、信託の空白を心配する裁判所の懸念を先回りして消せる
Q3辞めたら、もう何の責任もないですよね?
ない、とは言えない。前受託者には受益者への通知と財産の引継ぎ義務がある(59条)。在任中の任務違反による損失てん補責任(40条)も辞任では消えない。実務のポイント:新受託者が就任したら、信託事務の計算をして受益者の承認を得ておく(77条)。承認されると、不正行為がない限り責任を免除されたものとみなされる。この一手を省く人が多い
間違えやすい点 AI による整理
- 「受託者は委任と同じで、嫌になったらいつでも辞められる」と思われがちだが、逆である。民法651条の委任は各当事者がいつでも解除できるが、受託者は委託者と受益者の同意、信託行為の定め、裁判所の許可のいずれかがなければ辞任できない
- 同意を得て辞任できれば、そこで肩の荷が下りると思われている。実際には、信託行為に別段の定めがない限り、新受託者などが事務を処理できるようになるまで受託者としての権利義務が続く(59条)。在任中の任務違反について負う責任も、辞任しただけでは消えない。辞任届を出して鍵を返せば終わり、ではない
- 「誰の同意を取ればいいのか」と悩むこと自体がずれている場合がある。委託者が現に存しなければ、同意ルートはそもそも適用されない(6項)。その場合に問うべきは、契約書に辞任条項があるか、裁判所に何を疎明できるか、である
- 受託者の側から見れば「家族のために好意で引き受けた役目」にすぎない。法律から見れば、他人の財産の名義人として善管注意義務(29条、プロとして当然払うべき注意のレベル)を負う地位である。この見え方の落差が、辞め方を誤った人を損失てん補責任へ追い込む
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 誰が終わらせるか | 信託法57条:受託者自身が辞任 | 信託法58条:委託者・受益者の合意、または裁判所が受託者を解任 民法651条:委任者・受任者のいずれもが解除 |
| 当事者の意思による終了 | 委託者及び受益者の同意が必要(信託行為の定めが優先) | 委託者及び受益者はいつでも合意で解任できる 相手方の同意なしにいつでも解除できる |
| 裁判所の関与 | やむを得ない事由を疎明して許可を得る。許可には不服申立て不可 | 任務違反による著しい損害その他重要な事由があるとき、委託者または受益者の申立てで解任 裁判所の関与なし |
| 委託者が現に存しない場合 | 同意による辞任(1項本文)は適用されない(6項) | 合意による解任も適用されない(同条8項) 該当する規律なし |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も、信託行為に別段の定めがない限り委託人及び受益人の同意を辞任の要件とし、やむを得ない事由があれば法院の許可で辞任できる。日本の旧信託法を下敷きにした構造である
韓国も委託者と受益者の承諾、または正当な事由による法院の許可を辞任の要件とする点で日本と近い
中国も委託者と受益者の同意を辞任の要件とし、新受託者が選任されるまで辞任した受託者は職責を継続して負う
米国の統一信託法典は、受益者等への30日前の通知による辞任、または裁判所の承認による辞任を認め、日本より離脱しやすい設計である
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 父と結んだ家族信託で受託者になって三年。自分の離婚と転職が重なり、アパート三棟の管理がもう回らない。委託者兼受益者の父は認知症が進み、施設に入っている。意思能力がなければ有効な同意は出せない。受益者代理人が契約に定められているか、成年後見人をつけるか、裁判所の許可を求めるか。選択肢はそこから考えることになる
- 委託者だった母がすでに亡くなっていて、信託契約に「委託者の地位は相続により承継しない」と書かれていたら、どうなる? 57条6項により、同意による辞任という出口は使えない。残るのは信託行為の辞任条項か、裁判所の許可だけである
- 受託者のあなたは受益者の弟と不仲になり、「辞めるから勝手にしろ」と LINE を送って管理を放り出した。だが同意も許可もない以上、法的にはまだ受託者である。家賃の取りっぱぐれや修繕の放置で信託財産に損失が出れば、損失てん補責任(40条)を問われるのはあなたである
- 病気を理由に裁判所の許可を得て辞任した。後任の受託者が就任しない状態が一年続くと、信託そのものが終了する(163条3号)。残された時間で新受託者の選任(62条)を動かさなければ、何年もかけて組んだ承継設計が崩れる
- 友人から「叔父の信託の受託者を頼まれた」と相談された。引き受ける前に見るべきは報酬欄ではなく、辞任条項と後継受託者の欄である。そこが空白なら、降りたくなったとき関係者全員の同意か裁判所の手続が要る
取るべき行動
被害を受けた側:受益者として受託者に辞められそうな場合の手順である。1. 辞任の申し出を受けたら、同意書にサインする前に後任候補と引継計画を書面で出してもらう2. 同意しない選択もできるが、相手は裁判所の許可(2項)を求めることができる3. 受託者が無断で管理を放り出したなら、損失てん補の請求(40条)や裁判所への解任申立て(58条)を検討する4. 新受託者は委託者と受益者の合意で選び、まとまらなければ裁判所に選任を申し立てる(62条)
訴えられた側:受託者として辞めたい側の手順である。1. まず信託契約書の辞任条項を確認する。別段の定めがあればそれに従う2. 条項がなければ委託者と受益者の同意を書面で取る。受益者が複数なら原則として全員の一致が必要(105条) 3. 同意が得られない、または委託者が存在しない場合は、病気や転居などやむを得ない事由を資料で疎明し、裁判所に許可を申し立てる4. 辞任後も受益者への通知と引継ぎ(59条)、計算の承認手続(77条)を怠らない
時効(請求できる期限):辞任そのものに期限はない。特定の時効はないが、一般消滅時効(民法166条、債権5年または10年)が適用される。ただし受託者が欠けて新受託者が就任しない状態が1年続くと、信託は終了する(信託法163条3号)。受託者の損失てん補責任に関する債権の期間制限には信託法43条の特則がある(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:受託者は信託財産の名義人として受益者に対し善管注意義務・忠実義務を負うため、委任のような任意の離脱は認められない。辞任を同意または裁判所の許可にかからせるのは、信託財産の管理の継続性を確保する趣旨と解される
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 大正11年制定の旧信託法に代わって現行信託法が制定され(平成19年9月30日施行)、受託者の辞任は本条に規定された。旧法の規定から文言がどう変わったか、またその後の改正の有無は人による検証が必要
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 改正:信託法全部改正(平成18年法律第108号)により現行57条として規定。施行は平成19年(2007年)9月30日。その後の本条の改正の有無は e-Gov で要確認
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