信託法 第40条(受託者の損失てん補責任等)
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- 受託者がその任務を怠ったことによって次の各号に掲げる場合に該当するに至ったときは、受益者は、当該受託者に対し、当該各号に定める措置を請求することができる。ただし、第二号に定める措置にあっては、原状の回復が著しく困難であるとき、原状の回復をするのに過分の費用を要するとき、その他受託者に原状の回復をさせることを不適当とする特別の事情があるときは、この限りでない。
- 一信託財産に損失が生じた場合当該損失のてん補
- 二信託財産に変更が生じた場合原状の回復
- 2.受託者が第二十八条の規定に違反して信託事務の処理を第三者に委託した場合において、信託財産に損失又は変更を生じたときは、受託者は、第三者に委託をしなかったとしても損失又は変更が生じたことを証明しなければ、前項の責任を免れることができない。
- 3.受託者が第三十条、第三十一条第一項及び第二項又は第三十二条第一項及び第二項の規定に違反する行為をした場合には、受託者は、当該行為によって受託者又はその利害関係人が得た利益の額と同額の損失を信託財産に生じさせたものと推定する。
- 4.受託者が第三十四条の規定に違反して信託財産に属する財産を管理した場合において、信託財産に損失又は変更を生じたときは、受託者は、同条の規定に従い分別して管理をしたとしても損失又は変更が生じたことを証明しなければ、第一項の責任を免れることができない。
この条文の基本情報
受託者の損失てん補責任等とは何ですか?
定義受託者の損失てん補責任等とは、信託法第40条に定められた規定で、「受託者がその任務を怠ったことによって次の各号に掲げる場合に該当するに至ったときは、受益者は、当該受託者に対し、当該各号に定める措置を請求することができる。ただし…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第40条(受託者の損失てん補責任等)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第40条の条文原文は「受託者がその任務を怠ったことによって次の各号に掲げる場合に該当するに至ったときは、受益者は、当該受託者に対し、当該各号に定める措置を請求することができる。ただし…」で始まります。
- 信託法第40条は第三節 受託者の責任等に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第40条の前の条は信託法第39条です。
- 信託法第40条の次の条は信託法第41条です。
- 信託法第40条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第40条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第40条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/40
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法40条は、受託者の任務懈怠で信託財産に損失や変更が生じたとき、受益者が損失のてん補や原状回復を請求できると定める。原状回復は困難な場合等に除外される。
Q · 家族信託で受託者のきょうだいが信託のお金を使い込んだら、取り戻せるの?
受託者に信託財産への穴埋め(てん補)を請求できる
信託法40条1項により、受託者が任務を怠って信託財産に損失が生じた場合、受益者は受託者に損失のてん補を請求できます。戻ったお金は受益者個人ではなく信託財産に入ります。受託者が帳簿もなく自分の財産と混ぜていた場合(34条違反)は、「分けていても損は出た」ことを受託者側が証明しない限り責任を免れません(同条4項)。自己取引などの利益相反行為では、受託者等が得た利益額が損失と推定されます(同条3項)。
解説
受託者が信託のお金を使い込んだとき、受益者が取り戻すお金は、まず自分の財布ではなく信託財産に戻る。40条が定めるのは「損失のてん補」と「原状の回復」、つまり信託財産を元の姿に戻させる請求だからだ。本条の真価は2項から4項にある。受託者が許されない形で第三者に事務を丸投げした場合(28条違反)や、自分の財産と信託財産を区別せずに管理した場合(34条違反)は、「そうしなくても損は出た」と証明する責任が受託者側に移る。自分や利害関係人(身内や関連会社など)に有利な取引をした場合(30条から32条違反)は、そこで得た利益と同額の損失が信託財産に生じたものと推定される。家族信託できょうだいが親の不動産を管理し、あなたが受益者の立場にいるなら、損失額を一円単位で証明できなくても戦える足場がここにある。
法的な位置づけ
信託法40条は、受託者の損失てん補責任等を定める規定であり、受託者が任務を怠ったことにより信託財産に損失または変更が生じた場合、受益者が当該受託者に対し損失のてん補または原状の回復を請求できる旨を定める。委託違反および分別管理違反では受託者に因果関係不存在の証明責任を課し、利益相反行為等では受託者側の利益額を損失額と推定する。
よくある質問 AI による整理
Q1受託者の損失てん補責任とは?
受託者が任務を怠って信託財産に損失を出したとき、その損失分を信託財産に補填する責任です。信託法40条1項1号が根拠で、受益者が請求できます。
Q2信託財産の原状回復が認められないのはどんな場合?
原状回復が著しく困難なとき、過分の費用を要するとき、その他不適当とする特別の事情があるときは請求できません(40条1項ただし書)。その場合は損失のてん補で対応します。
Q3受託者の使い込み いつまで請求できる?
知った時から5年、行使できる時から10年で時効にかかります(信託法43条1項・民法166条)。受益者指定を知るまでは進行せず、任務違反から20年の期間制限もあります。
Q4親の家族信託で、自分は帰属権利者だけど受託者を訴えられる?
信託存続中は原則として40条の請求者になりません。請求できるのは受益者のほか、信託監督人や受益者代理人などです。まず契約書で自分の地位を確認しましょう。
Q5受託者の損失てん補責任は免除できる?
受益者は42条に基づき責任を免除できます。ただし、免除の意思表示をすると後から請求できなくなるため、事実関係を確認する前の安易な免除は避けるべきです。
Q6家族信託の使い込み 証拠がないときはどうする?
まず36条の報告請求、38条の帳簿閲覧請求を書面で行います。帳簿がない事実自体が分別管理違反を示し、40条4項で立証責任を受託者側に移す材料になりえます。
Q7受託者を辞めさせることはできる?
任務違反で信託財産に著しい損害を与えたなど重要な事由があれば、裁判所に受託者の解任を申し立てられます(58条4項)。てん補請求と並行して検討するのが一般的です。
Q8信託監督人は受託者に損失てん補を請求できる?
できます。信託監督人は受益者のために、自己の名で受益者の権利に関する裁判上・裁判外の行為をする権限を持ちます(132条)。受益者が判断能力を失った場面で特に重要です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1家族信託の受託者をやってる兄が、親の家を自分に安く売ったみたい。何が言えますか?
信託財産を受託者の固有財産にする取引は利益相反行為として禁止されており(31条1項1号)、2項の例外にあたらない限り原則として無効です(同条4項)。あわせて、兄が得た利益と同額の損失が信託財産に生じたものと推定されます(40条3項)。実務のポイント:「無効だから家を返せ」と「得た利益を信託財産に戻せ」は別々の武器である。名義変更の登記が済んでいても、どちらを先に出すかで交渉の主導権が変わる
Q2受託者が専用の口座を作ってなかったんですけど、それだけでアウトですか?
金銭については、帳簿などで計算を明らかにしておけば分別管理として足ります(34条1項2号ロ)。ただし帳簿もなく混ざっていれば34条違反となり、損失が出ている場合は、受託者が「分けていても同じ損が出た」と証明しない限り責任を負います(40条4項)。実務のポイント:信託口口座に対応する金融機関は限られ、個人口座で代用している家族信託は少なくない。本当に問われるのは口座の名義よりも、毎月の入出金の記録である
Q3使い込まれたお金を取り返せたら、それって自分がもらえるんですか?
40条1項1号の「損失のてん補」は、信託財産への補填であって、受益者個人への支払ではありません。戻ったお金は信託財産に組み込まれ、信託行為の定めに従って給付されます。実務のポイント:受託者を替えないまま補填させると、同じ人の手元に資金が戻るだけになる。てん補の請求と同時に、受託者の解任(58条)と新受託者の選任(62条)をセットで考えるのが定石である
Q4親の信託の受託者を無報酬で引き受けたんですけど、それでも責任ってあるんですか?
あります。受託者は報酬の有無にかかわらず善管注意義務(プロとして当然払うべき注意のレベル、29条2項)を負い、任務を怠って損失を出せば40条によるてん補を求められます。注意義務の程度は信託行為で軽くできますが(同項ただし書)、責任を一切負わない受託者はつくれません。実務のポイント:毎月の入出金を家族のグループで共有しておけば、後の40条紛争の大半は未然に防げる。記録が武器になるのは、攻める側だけではない
間違えやすい点 AI による整理
- 「兄弟なんだから、受託者の使い込みを訴えられるはず」という問いの立て方そのものがずれている。40条で請求できるのは受益者であり、ほかに信託行為で権限を与えられた委託者、信託監督人、受益者代理人などが請求の担い手になる。親が唯一の受益者で、あなたが親の死後に財産を受け取る帰属権利者にとどまるなら、信託が続いているあいだは、原則としてあなた自身は40条の請求者にならない
- 受益者から見れば「兄の懐に入ったお金を自分に返せ」という話だが、法律から見れば「信託財産に戻せ」という話である。てん補された金銭は信託財産に入り、その後どう配るかは信託行為の定めに従う。勝てば自分の口座に直接振り込まれる前提で資金計画を立てると、そこで計算が狂う
- 分別管理義務があることは知っていても、違反したときの重さまで知っている人は少ない。金銭は専用口座が絶対条件ではなく、帳簿などで計算を明らかにしておけば足りる(34条1項2号ロ)。しかし帳簿すらない状態で自分のお金と混ぜると、40条4項によって「分けていても損は出た」と証明する責任が受託者にのしかかる。後から記録を再構成してこれを証明するのは、極めて難しい
- 「時価で買ったのだから損はさせていない」という言い分は、利益相反の場面ではそのまま通らない。40条3項は、受託者やその利害関係人が得た利益の額を損失と推定し、それを覆す責任を受託者側に負わせる。どこまでを「得た利益」として算定するかは実務上解釈が分かれるが、反証の負担が受託者の側にあることに変わりはない
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規定の性質 | 信託法40条:義務違反の効果(てん補・原状回復請求) | 信託法31条:利益相反行為の制限(行為規範) 信託法34条:分別管理義務(行為規範) |
| 違反時の立証 | 1項は原則どおり受益者が任務懈怠・損失・因果関係を主張立証 | 31条1項・2項違反 → 40条3項で受託者等の利益額を損失と推定 34条違反 → 40条4項で受託者が因果関係の不存在を証明 |
| 受託者側の防御手段 | 任務懈怠なし、または原状回復が著しく困難等の例外主張 | 信託行為の定め、重要事実を開示したうえでの受益者の承認等(31条2項) 帳簿等で計算を明らかにしていたこと(34条1項2号ロ) |
他国ではどう定めているか 5 か国
受託人が信託本旨に違反して信託財産に損害を生じさせた場合、金銭賠償または原状回復を請求できる構造で、日本と近い
韓国も受託者の任務違反に対し原状回復・損失填補を請求できる規定を置き、利益相反時の利益返還の考え方も備える
受託者が管理職責に違反した場合、委託者・受益者が原状回復または賠償を求めることができる
フランスのフィデュシーでは、受託者(fiduciaire)は職務遂行上の過失について自己の財産で責任を負う
受託者の責任額を信託財産の損失額と受託者の得た利益額の大きい方とする考え方で、40条3項の利益額推定と発想が近い
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 父を受益者とする家族信託で、受託者の長男が信託口座から800万円を引き出し、自分の住宅ローンの返済に充てていた。父の死亡で次の受益者となった母が40条1項に基づいて請求すれば、長男はその800万円を信託財産に戻す義務を負う。返す先は母の口座ではなく、あくまで信託財産である
- もしあなたが受託者で、空室続きの信託アパートを自分名義で安く買い取ったら、どうなる? 信託財産を自分の固有財産にする取引は31条1項の利益相反行為にあたる。信託行為の定めや、重要な事実を開示したうえでの受益者の承認といった例外がなければ違反となり、あなたが得た利益の額がそのまま信託財産の損失と推定される(40条3項)
- 受託者が帳簿もつけずに、家賃収入を自分の生活口座で受け取り続けていた。2年後、残高が300万円合わない。「分けて管理していても同じ損は出た」と証明できなければ、受託者はてん補を免れない(40条4項)
- 友人から相談を受けた。亡くなった父親の遺言でつくられた信託で、受託者になった叔父が不動産管理を知り合いの業者に丸投げし、その業者が修繕費を水増しして請求していたという。信託行為に委託を認める定めがなく、信託の目的からみて委託が相当ともいえなければ28条違反になる。その場合、「自分で管理しても同じ損が出た」ことを叔父の側が証明しない限り、叔父が責任を負う(40条2項)
- 受益者である母が認知症と診断された直後、受託者の兄が説明のつかない出金を続けていることが分かった。母本人はもう請求の意思表示ができない。信託契約に信託監督人も受益者代理人も定められていない。残る道は、利害関係人として裁判所に信託監督人の選任を申し立てること(131条)だが、手続が進むあいだにも兄の手元で資金は動き続ける
取るべき行動
被害を受けた側:1. 信託契約書を読み、自分が受益者か、あるいは信託監督人・受益者代理人・権限を与えられた委託者にあたるかを確認する2. 36条と38条に基づき、報告と帳簿の閲覧を書面で請求し、拒否された記録も残す3. 出金履歴を時系列に並べ、28条(丸投げ)、30条から32条(利益相反・競合)、34条(混同)のどれにあたるかを仕分ける4. 損失がさらに広がりそうなら、44条の差止請求や58条の受託者解任を並行して検討する
訴えられた側:1. 信託財産の入出金を一円単位で再現できる帳簿を、今すぐ整える2. 自己取引などをしていた場合は、31条2項の例外(信託行為の定め、重要な事実を開示したうえでの受益者の承認など)にあたることを示す証拠を集める3. 40条2項・4項が問題になる場面では、市況の悪化など、適切に管理していても損失が出たことを示す外部資料で反証する4. 42条に基づく受益者による責任の免除や、和解による早期の収束も選択肢に入れる
時効(請求できる期限):40条の責任にかかる債権の消滅時効は、債務不履行による責任の例による(43条1項)。受益者が権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年である(民法166条1項)。受益者が受益者として指定されたことを知るまでは時効が進行しない(信託法43条3項)。さらに、任務違反の行為の時から20年で消滅する旨の定めもある(同条4項)(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:40条1項の責任は受託者の任務懈怠を要件とする債務不履行責任の特則であり、2項から4項は受託者と受益者の情報格差を踏まえて立証負担を受託者側に移す規定と理解されている
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 旧信託法(大正11年法律)27条の損失填補・信託財産復旧の請求権を引き継ぎつつ、委託違反、利益相反、分別管理違反の場面について、立証責任の転換と利益額の推定を明文化した現行条文として制定された(平成19年9月30日施行)。その後の改正の有無は人的検証が必要
改正の年表
- 1.大正11年(1922年) 新設:旧信託法27条で、受託者の管理の失当による信託財産の損失填補・復旧請求権を規定
- 2.平成18年(2006年) 改正:信託法全部改正により現行40条として制定。委託違反・分別管理違反時の立証責任の転換と、利益相反行為時の利益額推定を明文化(平成19年9月30日施行)
- 信託法 第29条善管注意義務、任務懈怠の判断基準
- 信託法 第31条利益相反行為の制限、3項推定の前提
- 信託法 第34条分別管理義務、4項転換の前提
- 信託法 第42条受益者による損失てん補責任等の免除
- 信託法 第43条損失てん補責任等に係る債権の期間制限
- 民法 第415条債務不履行責任の一般規定に対する特則
- 信託業法 第28条信託会社の忠実義務・分別管理体制の業法規制
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