信託法 第29条(受託者の注意義務)
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- 受託者は、信託の本旨に従い、信託事務を処理しなければならない。
- 2.受託者は、信託事務を処理するに当たっては、善良な管理者の注意をもって、これをしなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる注意をもって、これをするものとする。
この条文の基本情報
受託者の注意義務とは何ですか?
定義受託者の注意義務とは、信託法第29条に定められた規定で、「受託者は、信託の本旨に従い、信託事務を処理しなければならない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第29条(受託者の注意義務)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第29条の条文原文は「受託者は、信託の本旨に従い、信託事務を処理しなければならない。」で始まります。
- 信託法第29条は第二節 受託者の義務等に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第29条の前の条は信託法第28条です。
- 信託法第29条の次の条は信託法第30条です。
- 信託法第29条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第29条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第29条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/29
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法29条は、受託者が信託の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって信託事務を処理する義務を定める。信託行為に別段の定めがあれば、その注意基準による。
Q · 家族信託で無報酬の受託者になったら、注意義務は軽くなるの?
軽くならない。無報酬でも善管注意義務が原則
信託法29条2項は、受託者に善良な管理者の注意をもって信託事務を処理する義務を課しており、報酬の有無で区別していません。民法659条の無償寄託のような軽減規定もありません。注意の程度を下げられるのは、信託行為(信託契約など)に別段の定めを置いた場合だけです(同項ただし書)。ただし受託者が信託会社なら信託業法28条の義務も重なります。
解説
「家族のためだから」と無報酬で親のアパートを預かった瞬間から、法律はあなたを信託銀行と同じ物差しで測る。信託法29条は受託者(財産を預かって管理する人)に二つの義務を課している。1項は「信託の本旨に従う」義務である。本旨とは、契約書の文言だけではなく、財産を託した人が本当に実現したかった目的を指す。2項は「善良な管理者の注意」、つまりプロとして当然払うべき注意をもって処理する義務である。民法では、無償で物を預かった人は「自己の財産に対するのと同一の注意」で足りる(民法659条)。ところが信託には、無償だから注意の水準が下がるという規定がない。報酬ゼロの長男にも善管注意が求められる。逃げ道は2項ただし書の一つだけである。信託契約(信託行為)に別の注意基準を書いておけば、その基準が適用される。この一行を入れるかどうかは、信託が始まる前にしか決められない。
法的な位置づけ
信託法29条は受託者の基本的義務を定める規定であり、1項で信託の本旨に従って信託事務を処理する義務を、2項で善良な管理者の注意をもって処理する義務を課す。2項ただし書により、信託行為に別段の定めがある場合は、その定める注意の程度が適用される。報酬の有無による区別は置かれていない。
手順
- 1.信託契約の注意義務条項と信託目的を確認 信託契約書を開き、受託者の注意義務の程度を定めた条項(29条2項ただし書の別段の定め)と信託目的の条項を確認する。軽減条項の有無で、受託者の行為を測る物差しが変わる
- 2.報告請求と帳簿閲覧で事実を固める 受益者として信託法36条に基づき信託事務の処理状況の報告を求め、38条に基づき帳簿等の閲覧・謄写を請求する。売買価格、運用先、修繕履歴を書面で出させる
- 3.本旨違反・注意義務違反の箇所を特定 入手した資料を信託目的と照らし、目的外の運用や相場から乖離した処分、放置された修繕などを特定する。査定書や見積りを取り、損失額を数字で示せるようにする
- 4.差止め・損失てん補を請求する 損失が出る前なら信託法44条で差止めを請求し、損失が出ていれば40条で損失のてん補を請求する。委託者が存命なら58条1項による受託者の解任も検討し、時効(43条)に注意して弁護士に相談する
よくある質問 AI による整理
Q1信託の本旨とは何ですか?
契約書の文言だけでなく、委託者が信託によって本当に実現したかった目的を指します。受託者は信託法29条1項によりこの目的に沿って事務を処理しなければなりません。
Q2受託者の善管注意義務とは?
受託者の職業や地位にある人として通常期待される程度の注意を払う義務です。信託法29条2項が定め、報酬の有無にかかわらず原則として適用されます。
Q3家族信託の受託者 できないこと
信託目的から外れた投機的運用、信託財産と自分の財産の混同、自己取引などの利益相反行為は原則として許されません(信託法29条・31条・34条)。
Q4受託者 損失てん補 いつまで請求できる?
債務不履行の例により時効にかかり、知った時から5年・行使できる時から10年です(信託法43条1項、民法166条)。任務違反から20年で消滅します。
Q5信託契約で注意義務を軽くできる?
できます。信託法29条2項ただし書により、信託行為に別段の定めを置けばその注意の程度が適用されます。ただし故意・重過失の免責まで認められるかは争いがあります。
Q6受託者の義務違反 違法?
本旨違反や善管注意義務違反があれば任務懈怠となり、受益者は損失てん補(40条)や差止め(44条)を請求できます。受託者の解任事由にもなりえます。
Q7信託銀行と家族受託者の責任は同じ?
信託法上はどちらも善管注意義務が原則です。ただし信託会社には信託業法28条の義務も重なるため、契約で軽減しても業法上の責任は残ると解されています。
Q8受託者の注意義務違反はどう証明する?
36条の報告請求と38条の帳簿閲覧で取引記録を入手し、信託目的や相場との乖離を数字で示します。修繕見積りや査定書も重要な証拠になります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1親の家族信託の受託者、タダで引き受けたのに責任はそんなに重いんですか?
重い。信託法29条2項は報酬の有無で区別しておらず、無償でも善管注意義務が原則である。民法659条の無償寄託のような軽減規定はない。実務のポイント:契約書の雛形をそのまま使うと、注意義務の条項がないまま組成されることが多い。家族が受託者になるなら、但書に基づく軽減条項と、受託者を見守る信託監督人の設置をセットで検討すると、受託者自身を守る効果が大きい
Q2契約に「受託者は一切責任を負わない」って書けば大丈夫ですか?
安心はできない。29条2項ただし書で注意の程度は変えられるが、故意や重過失まで免責する条項は公序良俗などの観点から効力を否定される可能性があり、実務上、解釈が分かれている。実務のポイント:全面免責を書くより、「自己の財産と同一の注意」のように具体的な基準を置き、重要な処分は受益者の同意を条件にするほうが、紛争になったときに受託者を守る力が強い
Q3受託者の兄が勝手に不動産を安く売りました。何ができますか?
信託目的に照らして不当な処分なら、29条違反として信託法40条で損失のてん補を請求できる。権限外の行為であれば、27条の取消しも検討の対象になる。実務のポイント:まず36条の報告請求と38条の帳簿閲覧で売買価格と査定書を出させる。相場との差を数字で示すと、交渉は感情論から計算の話に変わり、早期の補填につながりやすい
間違えやすい点 AI による整理
- 「家族なんだし報酬ももらっていないから、責任は軽いはず」と思われがちだが、信託法には無償受託者の注意義務を軽くする規定がない。民法659条(無償寄託)の感覚を持ち込むと、信託では通用しない。下げたいなら、信託契約に書くしかない
- 受託者になった人の多くは「どこまで注意すれば足りるか」を気にする。だが先に問うべきは注意の量ではなく「信託の本旨は何か」である。目的が「母の安定した生活費」なのに利回りを追う運用をすれば、どれだけ慎重に銘柄を選んでも、本旨違反という別の軸でつまずく
- 但書があるので「信託契約に書けば注意義務はいくらでも下げられる」と考える人もいる。下げられるのは確かだが、故意・重過失まで免責するような条項の有効性には疑問があり、実務上、解釈が分かれている。受託者が信託会社なら、信託業法28条の義務も重なる。軽減条項は万能の盾ではなく、範囲の限られた緩衝材である
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 義務の中身 | 信託法29条:信託の本旨に従い善管注意で処理する義務 | 信託法30条:受益者のために忠実に処理する義務(忠実義務) 信託法34条:信託財産を固有財産等と分別して管理する義務 |
| 違反の典型例 | 目的外の投機的運用、修繕の長期放置、相場より著しく安い売却 | 受託者自身や親族の利益を優先する取引 信託口口座と個人口座の資金を混ぜる |
| 信託行為による調整 | 2項ただし書で注意の程度を変更可能 | 利益相反行為は31条2項の例外要件の範囲で許容 34条1項ただし書で分別管理の方法を別段に定めることが可能(登記等を除く) |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も「信託本旨」と「善良管理人之注意」を併記する。日本旧信託法の影響が色濃く、家族信託の受託者にも同水準の注意が求められる
韓国も受託者に善良な管理者の注意義務を課す。2011年の全面改正で、信託行為による別段の定めを認める構成が採られている
中国は「受益者の最大利益のため」「誠実・信用・謹慎・有効な管理」を求め、忠実義務と注意義務を一条にまとめて規定する
米国は信託条項と目的に従う義務(§801)と、思慮ある者としての注意(§804)を分けて規定し、日本の29条1項・2項の構造と近い
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 認知症が進む前に、母が自宅とアパートを長男に家族信託した。長男は本業が忙しく、外壁の雨漏りを1年放置した。空室が埋まらず、家賃収入は半分になった。母の生活費を受益者として受け取るはずだった次男から「善管注意義務違反だ。減った分を補填しろ」と内容証明が届く。無報酬でも、この主張は法的に成り立つ
- 受託者の兄が、信託口口座の2,000万円を「増やしてあげよう」と値動きの激しい個別株に入れ、800万円を失った。この場合はどうなるのか。父の生活費と介護費用を確保するという信託の本旨から外れた運用なので、29条違反が問われる。さらに信託法40条の損失てん補責任を追及され、兄が自分の財布から埋め戻すことになりうる
- 信託契約書に「受託者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって信託事務を処理する」という一行がある。それだけで、義務の物差しが一段下がる
- あなたは信託銀行で信託事務を担当している。顧客の契約書に注意義務の軽減条項が入っていたので安心していた。しかし信託会社には信託業法28条が善管注意義務を直接課しており、契約で水準を下げても業法上の義務まで消えるわけではないと解されている。行政処分のリスクは別の軌道で残る
- 父が亡くなって信託が終わってから、受託者だった姉が3年前に信託不動産を相場の半値で知人に売っていたと分かった。損失てん補を請求する債権は、債務不履行の例により時効にかかる(信託法43条1項)。知った時から5年である。知ってからすでに4年半が過ぎていれば、残りは半年しかない
取るべき行動
被害を受けた側:1. 受益者として信託法36条で受託者に事務処理の状況を報告させ、38条で帳簿の閲覧を請求する。2. 売買契約書、通帳、修繕見積りを集め、信託目的から外れた点を特定する。3. 損失が出そうなら44条で差止めを請求し、出てしまった損失は40条で補填を請求する。4. 委託者が存命なら、委託者と受益者の合意で受託者を解任できる(58条1項)。合意できなければ、裁判所への解任申立てや信託監督人の選任を検討する
訴えられた側:1. まず信託契約の但書を確認する。注意基準が軽減されていれば、それが判断の物差しになる。2. 信託目的の条項と照らして、自分の判断が本旨に沿っていたことを説明できる資料(専門家への相談記録、見積り比較、議事メモ)を揃える。3. 分別管理(34条)が守られていたかを点検する。混同があると立場は一気に不利になる。4. 早い段階で税理士・弁護士に相談し、てん補の範囲と和解の水準を見極める
時効(請求できる期限):受託者の損失てん補責任などに関する債権は、債務不履行の例により時効にかかる(信託法43条1項)。権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年である(民法166条)。受益者が受益者に指定されたことを知るまでは時効が進まない(信託法43条3項)。任務違反の行為から20年で消滅する(同条4項)(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:29条2項の善管注意義務は任意規定であり、信託行為で注意の程度を軽減・加重できる。ただし故意・重過失まで免責する定めは公序良俗等の観点から効力が否定されうるとする見解が有力である
本旨義務と注意義務の区別:1項の本旨に従う義務は事務処理の方向性を、2項の注意義務は処理の丁寧さを問うもので、慎重に処理しても信託目的から外れれば1項違反となりうると整理される
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法改正(新信託法制定、2007年施行) 旧信託法20条の善管注意義務を承継して29条とし、1項で信託の本旨に従う義務を定めた。2項ただし書で、信託行為により注意の程度を変更できることを明文化した(任意規定化)
改正の年表
- 1.大正11年(1922年) 新設:旧信託法20条が、受託者は信託の本旨に従い善良な管理者の注意をもって信託事務を処理することを要すると規定
- 2.平成18年(2006年) 改正:新信託法の制定により29条へ移行。1項(本旨に従う義務)と2項(善管注意義務)に分け、2項ただし書で信託行為による注意の程度の変更を明文化。2007年施行
- 信託法 第30条忠実義務、受益者のための行動義務
- 信託法 第31条利益相反行為の制限
- 信託法 第34条分別管理義務、財産混同の禁止
- 信託法 第40条任務懈怠による損失てん補責任
- 信託法 第44条受益者による受託者の行為の差止請求
- 信託業法 第28条信託会社への業法上の善管注意義務
- 民法 第644条受任者の善管注意義務、比較基準
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