信託法 第94条(受益権の譲渡の対抗要件)
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- 受益権の譲渡は、譲渡人が受託者に通知をし、又は受託者が承諾をしなければ、受託者その他の第三者に対抗することができない。
- 2.前項の通知及び承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、受託者以外の第三者に対抗することができない。
この条文の基本情報
受益権の譲渡の対抗要件とは何ですか?
定義受益権の譲渡の対抗要件とは、信託法第94条に定められた規定で、「受益権の譲渡は、譲渡人が受託者に通知をし、又は受託者が承諾をしなければ、受託者その他の第三者に対抗することができない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第94条(受益権の譲渡の対抗要件)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第94条の条文原文は「受益権の譲渡は、譲渡人が受託者に通知をし、又は受託者が承諾をしなければ、受託者その他の第三者に対抗することができない。」で始まります。
- 信託法第94条は第一款 受益権の譲渡等に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第94条の前の条は信託法第93条です。
- 信託法第94条の次の条は信託法第95条です。
- 信託法第94条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第94条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第94条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/94
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法94条は、受益権の譲渡を受託者に対抗するには譲渡人の通知か受託者の承諾が必要で、受託者以外の第三者に対抗するにはそれが確定日付のある証書によることを要すると定める。
Q · 信託受益権を買ったら、契約書だけで自分のものだと主張できるの?
受託者には通知で足りるが、第三者には確定日付が必要
信託法94条1項により、受益権の譲渡は、譲渡人が受託者に通知するか受託者が承諾しなければ、受託者その他の第三者に対抗できません。さらに同条2項により、差押債権者や二重譲受人など受託者以外の第三者に対抗するには、通知・承諾が内容証明郵便や公証役場の日付印などの確定日付のある証書でなければなりません。契約書や代金の支払だけでは足りない点に注意が必要です。
解説
受益権を買い、代金も払い、契約書もそろっている。それでも受託者に知らせていなければ、受託者から配当を受け取れないことがある。信託法94条は、受益権の譲渡を外に向けて主張するために二つの関門を置いている。一つ目は受託者に対するもので、譲渡人からの通知か受託者の承諾があれば足りる。二つ目は差押えをした債権者や二重に買った人など、受託者以外の第三者に対するものである。こちらは通知や承諾が「確定日付のある証書」(内容証明郵便や公証役場の日付印など、後から日付を書き換えられない書面)でなければならない。売主が同じ受益権を二人に売った場合、どちらが勝つかは契約日の先後では決まらない。民法467条の判例法理をあてはめると、確定日付のある通知が受託者に先に届いた側が勝つと解されている。さらに、通知を出すのは買主のあなたではなく、譲渡人である点も見落とされやすい。
法的な位置づけ
信託法94条は、受益権譲渡の対抗要件を定める規定である。受益権の譲渡は、譲渡人による受託者への通知または受託者の承諾がなければ、受託者その他の第三者に対抗できない。受託者以外の第三者に対抗するには、通知・承諾が確定日付のある証書によることを要する。民法467条の債権譲渡の対抗要件にならった二段構造をとる。
手順
- 1.信託契約の譲渡制限を確認 受益権の売買契約を結ぶ前に、信託契約(信託行為)に譲渡制限や受託者の承諾を要する旨の定めがないかを確認する(信託法93条2項)。受益証券発行信託かどうかも確認し、94条の適用場面かを見極める
- 2.売主名義の通知書を準備 譲渡人(売主)名義で受託者宛ての受益権譲渡通知書を作成させる。買主名義の通知では対抗要件を満たさないため、決済書類の中に売主の署名押印済み通知書を組み込む
- 3.決済当日に確定日付を付けて差し出す 決済日当日、通知書を配達証明付きの内容証明郵便で受託者に送付する。または受託者の承諾書を取得し、その足で公証役場にて確定日付を取得する。投函を売主任せにしない
- 4.到達日時の証拠を保管 配達証明書や確定日付印のある承諾書の原本を保管し、受託者に通知の到達日時を書面で確認しておく。差押えや二重譲渡が生じたときの先後判断の証拠となる
よくある質問 AI による整理
Q1信託受益権の譲渡とは何ですか?
信託から利益や給付を受ける権利(受益権)を他人に移すことです。原則として自由に譲渡でき、第三者への対抗には信託法94条の通知・承諾が必要です。
Q2受益権譲渡の通知は誰が出すのですか?
譲渡人(売主側)が受託者に出します。買主が自分の名義で通知しても、信託法94条1項の対抗要件を満たさないと解されています。
Q3受益権譲渡の通知は普通郵便でも有効?
受託者に対しては普通郵便の通知でも対抗できます。ただし差押債権者や二重譲受人に対抗するには、確定日付のある証書(内容証明郵便など)が必要です。
Q4受益権の譲渡に受託者の承諾は必ず必要?
必須ではありません。譲渡人からの通知か受託者の承諾のどちらかがあれば対抗要件を満たします。ただし信託行為に譲渡制限があれば別途確認が必要です。
Q5信託目録の変更登記をすれば受益権譲渡を対抗できる?
それだけでは足りません。受益権譲渡の対抗要件は信託法94条の通知・承諾であり、信託目録の変更登記は実務上別の手続と整理されています。
Q6買った受益権が売主の債権者に差し押さえられたらどうなる?
確定日付のある通知の到達と差押命令の送達の先後で優劣が決まると解されています。通知に確定日付がなければ、差押債権者に対抗できません。
Q7信託受益権の譲渡は禁止できますか?
信託行為で譲渡制限を定めることができます(信託法93条2項)。その定めを知っていた、または重大な過失で知らなかった譲受人には対抗できます。
Q8受益証券発行信託の受益権も94条で譲渡する?
受益証券発行信託には特則があります。受益証券の交付(194条)や受益権原簿への記載(195条)が問題となり、94条とは別のルールで処理されます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1同じ受益権を二人が買っちゃったら、契約が先の方が勝つんですよね?
勝つとは限らない。94条2項により、受託者以外の第三者に対抗するには確定日付のある通知・承諾が必要である。双方が確定日付を備えているなら、民法467条の判例(最判昭和49.3.7)と同じく、通知が受託者に届いた先後で決まると解されている。実務のポイント:確定日付の日付そのものより「到達日時」が勝負になる。内容証明は配達証明を付けて出すのが実務の定石である
Q2確定日付って、どこでどうやってもらうんですか?
代表的な方法は二つある。一つは配達証明付きの内容証明郵便で、通知を出すと同時に確定日付が付く。もう一つは公証役場で承諾書などに日付印を押してもらう方法で、手数料は1件700円程度である(最新の改正状況をご確認ください)。実務のポイント:受託者から承諾書をもらった場合、その足で公証役場に持ち込めば、郵便の到達を待たずに第三者対抗要件を備えられる
Q3家族信託の受益権を、親から弟に移したいんだけど、何に気をつければいい?
まず信託契約に譲渡制限の定め(93条2項)がないかを確認する。そのうえで、受託者に通知するか承諾をもらう(94条)。無償で移せば、相続税法9条の2により贈与とみなされ、贈与税が問題になりうる。実務のポイント:家族信託では受託者が兄弟であることが多い。通知を省くと、兄弟間でもめたときに受託者から「聞いていない」と言われる。家族だからこそ書面を残すべきである
Q4不動産の信託受益権を売り買いするのに、宅建業者じゃなくても大丈夫?
信託受益権は金融商品取引法2条2項1号で有価証券とみなされる。そのため、売買の媒介を業として行うには、原則として第二種金融商品取引業の登録が必要になる。宅建業の免許だけでは足りない場面がある。実務のポイント:受益権の売買契約書には、94条の通知や受託者承諾の取得を決済条件として書き込むのが定番である。この条項がない契約書は、作り手の経験不足を疑ってよい
間違えやすい点 AI による整理
- 不動産の信託受益権を買ったなら、登記簿の信託目録で受益者の表示を変えれば足りると考える人は多い。しかし受益権の譲渡を第三者に主張するための要件は、94条が定める受託者への通知・承諾である。信託目録の変更登記は、実務上これとは別の手続と整理されている。登記を済ませても通知を忘れれば、守りに穴が残る
- 「受託者が承諾してくれたから大丈夫」という安心は、半分しか正しくない。受託者に対してはそれで対抗できるが、差押債権者や二重譲受人に対しては、承諾書に確定日付がなければ対抗できない。受託者の承諾印だけをもらって公証役場に行かない取引は、相手方の債権者が動いた瞬間に危うくなる
- 「買主の自分が受託者に通知すればいい」という発想そのものがずれている。94条1項の通知は譲渡人が出すものである。買主が自分の名前で出した通知では、対抗要件を満たさないと解されている。決済の場で、売主名義の通知書を用意させることが肝心になる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 対象 | 信託法94条:受益証券を発行しない一般の受益権 | 信託法195条:受益証券発行信託の受益権 民法467条:指名債権(一般の債権) |
| 対抗要件の方法 | 譲渡人の受託者への通知または受託者の承諾 | 受益権原簿への記載・記録(証券発行の場合は証券の交付が別途問題) 譲渡人の債務者への通知または債務者の承諾 |
| 第三者対抗の追加要件 | 確定日付のある証書による通知・承諾 | 受益権原簿の記載・証券の占有によって処理 確定日付のある証書による通知・承諾 |
| 情報の集約点 | 受託者 | 受益権原簿 債務者 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は受益権の譲渡に民法の債権譲渡規定を準用し、受託者への通知を要件とする。日本の確定日付のような第三者対抗の二段構えは明文化されていない
韓国も2011年の信託法全部改正で受益権譲渡の対抗要件を明文化し、通知・承諾と確定日付の構造は日本と類似する
中国は受益権の譲渡可能性を定めるが、受託者への通知や確定日付による対抗要件の詳細な規定はない
ドイツには信託法典がなく、Treuhand の権利移転は債権譲渡の一般規定で処理される。通知は対抗要件ではなく、債務者保護(§ 407)の問題として扱われる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 不動産ファンドの持分として、ビル一棟の信託受益権を3億円で買った。決済から二週間後、売主の債権者がその受益権を差し押さえたと連絡が入る。売主の通知は普通郵便で受託者に届いていただけだった。確定日付がないため、差押債権者に対しては自分の権利を主張できない
- もし、売主が同じ受益権をあなたと別の投資家の両方に売っていたら、どうなる? 契約はあなたの方が一週間早かった。しかし相手側の内容証明郵便が受託者に先に届いていれば、あなたは負ける側に回る
- 家族信託で、父が受託者の長男に実家の管理を任せ、受益権は父が持っている。父が受益権の一部を次男に譲ると口約束した。受託者である長男への通知がないままだと、長男は「聞いていない」と言って次男への給付を拒める
- あなたは受益権を売る側だ。買主から「今日中に確定日付付きの通知を出してほしい」と迫られている。明日の朝には、あなたの借入先が差押えの申立てをすると聞いている。通知の到達が差押命令の送達より一日遅れれば、買主は差押債権者に対抗できず、あなたは買主から責任を問われることになる
- 受託者を務める信託銀行の担当者として、ある日まったく同じ受益権について二通の譲渡通知を受け取った。どちらに配当を払うかは、通知の到達日時と確定日付の有無で決まる。判断を誤れば二重払いのリスクを負うため、供託も検討することになる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 受託者に、自分の譲渡通知がいつ届いたか、確定日付があるかを書面で照会する2. 他の譲受人や差押えがあれば、その通知・送達の日時も確認し、先後を比べる3. 確定日付がなかったときは、売主に担保責任や債務不履行責任(民法415条、564条)を問う準備を始める4. 受託者が支払先を決めかねているなら、供託による解決を提案し、紛争を受託者と自分の間から切り離す
訴えられた側:1. 受託者として二重の通知を受けたら、到達日時と確定日付の有無を記録し、独断で一方に払わない2. 権利者が確定できないときは債権者不確知を理由に供託を検討する3. 譲渡人として訴えられた場合は、通知を出した日、方法、到達の証拠をそろえる4. 信託行為に譲渡制限の定めがあれば、93条2項に基づき、それを知っていた、または重大な過失で知らなかった譲受人には対抗できる
時効(請求できる期限):特定の時効はないが、一般消滅時効(民法166条、債権5年または10年)が適用される。94条で実際に勝敗を分けるのは時効ではなく先後である。確定日付のある通知が受託者に届いた日時と、差押命令の送達や他の通知の到達日時を比べ、早い方が優先すると解されている
学説
通説:信託法94条は民法467条と同じ構造をとるため、同条をめぐる判例・学説(到達時説、通知は譲渡人が行う必要があること等)が受益権譲渡にも基本的に妥当すると解されている
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 旧信託法(大正11年)には受益権譲渡の対抗要件を定める明文がなく、民法の債権譲渡規定の類推に頼っていた。現行信託法の制定にあわせ、民法467条にならった本条が設けられた(平成19年(2007年)9月30日施行)
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:信託法の全部改正により新設。旧信託法(大正11年)には受益権譲渡の対抗要件の明文がなく、民法の債権譲渡規定の類推に頼っていた。平成19年(2007年)9月30日施行
- 信託法 第93条受益権の譲渡性と譲渡制限の定め
- 信託法 第95条譲渡時における受託者の抗弁の承継
- 信託法 第96条受益権の質入れ
- 信託法 第194条受益証券発行信託では証券交付が譲渡要件
- 信託法 第195条受益証券発行信託の受益権原簿による対抗
- 民法 第467条債権譲渡の対抗要件、94条の原型
- 相続税法 第9条の2無償の受益者変更をみなし贈与とする規定
- 金融商品取引法 第2条信託受益権を有価証券とみなす規定
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