信託法 第96条(受益権の質入れ)
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- 受益者は、その有する受益権に質権を設定することができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
- 2.前項の規定にかかわらず、受益権の質入れを禁止し、又は制限する旨の信託行為の定め(以下この項において「質入制限の定め」という。)は、その質入制限の定めがされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった質権者その他の第三者に対抗することができる。
この条文の基本情報
受益権の質入れとは何ですか?
定義受益権の質入れとは、信託法第96条に定められた規定で、「受益者は、その有する受益権に質権を設定することができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第96条(受益権の質入れ)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第96条の条文原文は「受益者は、その有する受益権に質権を設定することができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。」で始まります。
- 信託法第96条は第一款 受益権の譲渡等に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第96条の前の条は信託法第95条の2です。
- 信託法第96条の次の条は信託法第97条です。
- 信託法第96条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第96条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第96条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/96
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法96条は、受益者が受益権に質権を設定できると定める。ただし信託行為の質入制限の定めは、悪意又は重大な過失のある質権者その他の第三者に対抗できる。
Q · 信託の受益権って、借金の担保にできるの?
原則できるが、信託契約の質入制限に注意
信託法96条1項により、受益者は受益権に質権を設定できます。ただし受益者本人への給付が信託の目的であるなど、性質上許されない受益権は例外です。また同条2項により、信託契約に質入れを禁止・制限する定めがあれば、それを知っていた貸し手や、重大な過失で知らなかった貸し手には、その制限を主張されます。融資前に信託契約の全文を確認することが決定的に重要です。
解説
「信託」と聞いて資産家や信託銀行の話だと思ったなら、半分は正しく、半分は危うい。信託から利益を受け取る権利、つまり受益権は、それ自体が一個の財産である。だから信託法96条1項は、受益者がその受益権に質権(借金のカタとして押さえる担保権)を設定できると定める。ただし、受益者本人に給付されなければ信託の目的が崩れるような「性質上許されない」受益権は例外になる。本当の勝負は2項にある。信託契約に「質入れ禁止」と一行あれば、それを知っていた貸し手、または少し確認すれば分かったのに怠った貸し手(重大な過失)には、その禁止を突きつけられる。貸す側にとっては、信託契約書を読まずに融資した瞬間、担保が担保でなくなるリスクを背負うということだ。受益者にとっては、禁止条項を隠して借りれば、担保の効力をめぐる紛争の火種を自分で抱え込むことになる。
法的な位置づけ
信託法96条は、受益権を目的とする質権の設定を定める規定である。受益者は原則として受益権に質権を設定できるが、その性質が許さない場合は除かれる。信託行為による質入制限の定めは、その定めを知り、又は重大な過失によって知らなかった質権者その他の第三者に対抗することができる。
手順
- 1.信託契約の全文を融資条件として取得する 抜粋ではなく信託契約の全文と変更契約の有無を、融資実行前の条件として借り手に要求する。受益権の譲渡・質入れに関する条項を特定する
- 2.質入制限の定めの有無と内容を確認する 質入れの全面禁止か、受託者の承諾を条件とする制限かを確認する。承諾制なら承諾の取得方法と様式を特定する
- 3.受託者の承諾書を取得する 制限の有無にかかわらず、受託者に質権設定を通知し承諾を得ておく。配当が受益者本人に支払われてしまうトラブルの予防にもなる
- 4.確認の記録を保存する 信託契約を受領した日時、メールの添付履歴、確認者、受益者の表明保証を時系列で保存する。後日争われたとき、重過失がなかったことの証拠になる
よくある質問 AI による整理
Q1信託受益権に質権は設定できる?
できます。信託法96条1項は受益者が受益権に質権を設定できると定めています。ただし性質上許されない受益権と、信託行為による質入制限には注意が必要です。
Q2質入制限の定めとは?
信託契約などの信託行為で、受益権の質入れを禁止したり、受託者の承諾を条件にしたりする条項です。信託法96条2項でこう呼ばれています。
Q3受益権の質入れが「性質上許されない」のはどんな場合?
受益者本人に給付されなければ信託の目的が達成できない場合などが想定されます。生活保障を目的とする福祉型信託の受益権などが典型的な検討対象です。
Q4重大な過失はどの程度で認定される?
少し注意すれば制限を知り得たのに著しく怠った場合です。金融機関が信託受益権を担保に取る際に信託契約の全文を確認しないことは、重過失と評価されやすいとされます。
Q5信託受益権担保ローンの審査で何を見る?
信託契約の全文、質入制限の有無、受託者の承諾の要否、信託財産の価値と配当の見込み、受益者の表明保証などを確認するのが一般的です。
Q6受託者の承諾がないと受益権は質入れできない?
法律上は原則として承諾不要です。ただし信託契約で承諾を条件とする質入制限の定めがあれば、その定めを知る貸し手には制限を主張されます。
Q7信託受益権の質権は不動産登記簿に載る?
載りません。質権の目的は不動産ではなく受益権だからです。受託者への通知や承諾の取得など、受益権側の手続で権利を保全するのが実務です。
Q8質入制限に違反して質入れした受益者に責任はある?
あり得ます。制限を隠して担保に差し出した場合、貸し手への表明保証違反や不法行為(民法709条)による損害賠償責任を問われる可能性があります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1家族信託で受益者になってる親の受益権、担保にしてお金を借りられるんですか?
原則として可能である(信託法96条1項)。ただし信託契約に質入れ禁止の定めがあれば、それを知る貸し手には対抗され、実際には貸してもらえない。実務のポイント:家族信託の雛形の多くは、受益権の譲渡・質入れを受託者の承諾なしに禁止している。作成時に誰も将来の借入れを想定していないだけで、承諾制にしておくか全面禁止にするかで、将来の選択肢が大きく変わる
Q2契約書に質入れ禁止って書いてあったのに担保に入れちゃった場合、その質権は無効になりますか?
一律に無効とはならない。96条2項は、制限を知っていたか、重大な過失で知らなかった質権者などの第三者にだけ対抗できるとする。本当に知らず落ち度もない相手には主張できない。実務のポイント:争いになると、貸し手が信託契約の全文をいつ受け取り、何を確認したかが事実上の主戦場になる。メールの添付履歴一つで勝敗が分かれる
Q3受益権に質権をつけたら、質権者は信託からの配当を直接受け取れるんですか?
受け取れる。質権の効力は受益債権に基づき受託者から給付される金銭などに及び(信託法97条)、質権者はその金銭を受領して他の債権者に先立って自分の債権の弁済に充てることができる(同98条)。実務のポイント:実務では、受託者に質権設定を通知し承諾を得ておかないと、受託者が受益者本人に配当を払ってしまうトラブルが起きる。融資実行と同時に受託者の承諾を取るのが定石である
間違えやすい点 AI による整理
- 「信託財産は受託者名義だから、受益者側には担保にできるものが何もない」と考えがちだが、これは問いの立て方が間違っている。担保にするのは信託財産そのものではなく、受益者が持つ受益権という別個の財産である。不動産の名義が受託者でも、受益権への質権設定は96条1項で原則として認められている
- 質入れ禁止条項があれば質権は一律に無効になる、と信託を設計する側は安心しがちである。法律の側から見ると、制限を対抗できるのは、制限を知っていた第三者か、重大な過失で知らなかった第三者に限られる。本当に知らず、知らなかったことに落ち度もない貸し手には禁止を主張できない。条項を書いただけで守りが完結すると思っていると、その落差に足をすくわれる
- 貸し手側は「重大な過失」のハードルを低く見積もりがちだが、プロの金融機関が信託受益権を担保に取る場面で、信託契約の全文を確認しないことは、それだけで重過失と評価されやすい。個人間の貸し借りと、業として融資する者とでは、求められる確認の水準が段違いである
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 対象となる行為 | 信託法96条:受益権への質権設定 | 信託法93条:受益権の譲渡 信託法97条:質権の効力が及ぶ範囲 |
| 原則 | 受益者は受益権に質権を設定できる | 受益者は受益権を譲渡できる 質権の効力は受益債権に基づき受託者から給付される金銭等に及ぶ |
| 信託行為による制限 | 質入制限の定めは悪意・重過失の質権者その他の第三者に対抗可 | 譲渡制限の定めも同様の構造で第三者への対抗が問題となる 有効に成立した質権を前提とし、制限の対抗は96条で決まる |
| 実務での論点 | 貸し手が信託契約全文を確認したか(重過失の有無) | 受益権売買の買主が制限を確認したか 配当・償還金を質権者が押さえられる範囲 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾信託法は日本法の影響を受けて制定され、受益権の譲渡に民法の債権譲渡規定を準用する。受益権への質権は民法の権利質の枠組みで扱われる
韓国の2011年全面改正信託法は受益権への質権を明文化しており、日本法と類似の構造をとる
中国信託法は受益権の譲渡を認めつつ信託文件による制限を許容する。質権設定は民法典の権利質の規定との関係で整理される
米国では spendthrift provision により受益権の任意・強制的な移転を制限でき、債権者保護との関係が州法ごとに調整される
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 収益不動産を信託受益権の形で取得した投資会社に、銀行がノンリコースローンを出す。担保は不動産そのものではなく受益権への質権である。融資担当者が信託契約の「受託者の承諾なく質入れ不可」条項を確認し忘れていたら、後から質権の効力を争われたとき、重過失を否定するのは難しい
- 親を受益者、長男を受託者とする家族信託を組んだ。数年後、親の医療費のために受益権を担保に借入れをしようとしたら、信託契約に質入れ禁止の定めがあった。契約を作った司法書士に聞くと、受益者・受託者など関係者の合意で信託を変更する道があるという。最初の設計で担保化の余地を残しておくべきだった
- あなたは受益者で、資金繰りが苦しい。もし信託契約の質入れ禁止を伏せたまま、知人の事業者に受益権を担保に差し出したら、どうなる? 知人が契約書を確認しなかったことが重過失と評価されれば、質権は信託側に対抗できない。その矛先は、黙っていたあなたの信用と責任に向かう
- 融資実行日まで残り3日。借り手から届いたのは信託契約の抜粋だけで、全文がない。抜粋に質入れ制限の記載はないが、全文を確認しないまま実行すれば、後で制限条項が出てきたとき「確認を怠った」と言われかねない。全文の取得を融資条件にするか、実行を延ばすか、今決めるしかない
- 受益者の生活費を確保するための福祉型信託。受益者が受益権を担保に入れて浪費しようとした。信託の性質上、受益者本人への給付こそが目的であるなら、1項ただし書により質権設定自体が許されない可能性がある
取るべき行動
被害を受けた側:貸し手として質権の効力を争われた場合:1. 融資時に受領した信託契約の範囲、受託者とのやり取り、確認記録をすべて時系列で整理する2. 質入れ制限の定めを知らなかったこと、その確認に落ち度がなかったことを示す証拠(受益者の表明保証、受託者の承諾書など)を固める3. 受益者が制限を秘匿していたなら、表明保証違反や不法行為(民法709条)による損害賠償も並行して検討する4. 信託の受託者に対しては、質権の存在を通知しておく
訴えられた側:受益者または受託者として質権の効力を争う場合:1. 信託契約の質入制限条項の文言と、それが相手に示された時期を確認する2. 相手が金融機関なら、信託契約の全文確認を怠った事実が重過失の主張材料になる3. 受益者の生活保障など信託の目的上、受益者本人への給付が不可欠であれば、1項ただし書(性質上許されない)も主張する4. 制限を知りながら質入れした受益者側は、損害賠償リスクを踏まえ早期に貸し手と担保差替えを協議する
時効(請求できる期限):本条に特定の時効はないが、被担保債権には一般消滅時効(民法166条、権利を行使できることを知った時から5年または行使できる時から10年)が適用される。質入制限の対抗を受けるかどうかは、質権設定時点で知っていたか、重過失で知らなかったかで判断されるため、設定時の確認記録の保存が決定的である
学説
通説的理解:受益権は独立した財産権であり、原則として質入れが可能である。信託目的の保護は信託行為による制限で図られ、その対抗範囲を悪意・重過失の第三者に限ることで取引の安全と調和させる
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)新信託法制定 旧信託法(大正11年)を全面改正した新信託法で、受益権の質入れに関する規定が設けられた(要人的検証)
- 平成29年(2017年)民法改正に伴う整備法 民法の譲渡制限特約の規律見直しに合わせ、質入制限の定めを悪意または重過失の第三者に対抗できるとする現行の文言へ改められたとみられる(改正の有無と施行日は要人的検証)
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:旧信託法(大正11年)を全面改正した新信託法(平成18年法律第108号)の制定により、受益権の質入れに関する規定として設けられた
- 信託法 第93条受益権の譲渡性と譲渡制限の定め
- 信託法 第94条受益権譲渡の対抗要件
- 信託法 第97条受益権質権の効力が及ぶ範囲
- 信託法 第98条質権者による金銭受領と優先弁済
- 民法 第362条財産権を目的とする権利質の一般規定
- 民法 第364条債権質の対抗要件、実務上の参照枠組み
- 民法 第466条譲渡制限特約の悪意重過失基準と同構造
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