信託法 第97条(受益権の質入れの効果)
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- 受益権を目的とする質権は、次に掲げる金銭等(金銭その他の財産をいう。以下この条及び次条において同じ。)について存在する。
- 一当該受益権を有する受益者が受託者から信託財産に係る給付として受けた金銭等
- 二第百三条第六項に規定する受益権取得請求によって当該受益権を有する受益者が受ける金銭等
- 三信託の変更による受益権の併合又は分割によって当該受益権を有する受益者が受ける金銭等
- 四信託の併合又は分割(信託の併合又は信託の分割をいう。以下同じ。)によって当該受益権を有する受益者が受ける金銭等
- 五前各号に掲げるもののほか、当該受益権を有する受益者が当該受益権に代わるものとして受ける金銭等
この条文の基本情報
受益権の質入れの効果とは何ですか?
定義受益権の質入れの効果とは、信託法第97条に定められた規定で、「受益権を目的とする質権は、次に掲げる金銭等(金銭その他の財産をいう。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第97条(受益権の質入れの効果)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第97条の条文原文は「受益権を目的とする質権は、次に掲げる金銭等(金銭その他の財産をいう。」で始まります。
- 信託法第97条は第一款 受益権の譲渡等に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第97条の前の条は信託法第96条です。
- 信託法第97条の次の条は信託法第98条です。
- 信託法第97条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第97条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第97条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/97
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法97条は、受益権を目的とする質権の効力が、配当、受益権取得請求の代金、受益権や信託の併合・分割で受ける金銭等にも及ぶと定める。
Q · 信託受益権に質権を付けたら、配当や買取代金にも質権は及ぶの?
及ぶ。配当・買取代金・併合分割後の財産まで対象
信託法97条により、受益権を目的とする質権は、受益者が受託者から受ける信託財産の給付(配当や元本給付)、103条の受益権取得請求による代金、受益権の併合・分割や信託の併合・分割で受ける金銭等、その他受益権に代わるものとして受ける金銭等に及びます。ただし実際に現金を押さえるには、受託者への通知・承諾などの対抗要件を備え、98条の直接受領権を行使する段取りが別に必要です。
解説
信託の受益権に質権を設定したら、その質権は受益権という「器」にしか効かない。そう考えるのは自然だが、法律は別の答えを用意している。信託法97条は、質権の効力が受益権から生まれる金銭等(金銭その他の財産)まで及ぶと定め、その範囲を五つ挙げている。(1)受託者から受けた配当や元本の給付、(2)受益権取得請求(信託の重要な変更に反対した受益者が、受託者に受益権を公正な価格で買い取らせる手続)で受け取る代金、(3)受益権の併合・分割で受け取るもの、(4)信託の併合・分割で受け取るもの、(5)その他、受益権に代わるものとして受け取るもの。つまり、信託が合併しても、分割されても、買い取られても、質権は形を変えた価値を追いかけていく。お金を貸す側にとっては、担保が蒸発しない保証になる。受益者にとっては、受益権を質に入れた瞬間から、配当も買取代金も自由に使えるとは限らなくなるということだ。ただし、受益者の口座に入って他の預金と混ざったお金まで追いかけるのは、実務上きわめて難しい。質権者は98条の直接受領権を使い、お金が受益者に渡る前に押さえることになる
法的な位置づけ
信託法97条は、信託受益権に設定された質権の効力が及ぶ範囲を定める規定である。受託者からの信託財産に係る給付、受益権取得請求による金銭等、受益権の併合・分割および信託の併合・分割により受ける金銭等、その他受益権に代わる金銭等を列挙し、受益権が形を変えても質権が存続することを明らかにする。民法304条の物上代位に相当する信託法上の特則である。
手順
- 1.質権設定と同時に受託者の承諾を取る 質権設定契約の締結日に、受託者へ質権設定を通知し承諾を得る。承諾書には確定日付を付し、第三者にも対抗できる状態にする
- 2.配当の振込先を合意で固定する 受託者・受益者・質権者の三者で、信託配当の振込口座を質権者指定口座とするか、債務不履行事由発生時に切り替える条件を書面で定める
- 3.信託の変更・併合・分割の通知ルートを確保 重要な信託の変更や併合・分割の通知が受益者経由でなく質権者にも直接届くよう契約に定める。103条の取得請求期間(通知・公告から20日)に間に合わせるため
- 4.金銭等の発生時に98条で直接受領または供託請求 配当・買取代金・併合分割に伴う金銭等が出る場合、被担保債権の弁済期到来後は受託者に直接支払を請求し、弁済期前であれば供託を請求する
よくある質問 AI による整理
Q1信託受益権 質権設定とは?
信託受益権を担保として債権者に質入れすることです。信託法96条で原則として質入れが認められ、97条でその効力が配当や買取代金などに及ぶ範囲が定められています。
Q2信託受益権の質権 対抗要件は何ですか?
受託者への通知または受託者の承諾が必要で、第三者に対抗するには確定日付のある証書による通知・承諾が求められます。受益権譲渡の対抗要件(94条)と同じ考え方です。
Q3受益権に質権を付けると信託の分配金は使えない?
当然に使えなくなるわけではありませんが、分配金にも質権の効力が及びます。質権者が受託者に直接請求すれば、分配金の流れ先は質権者に切り替わります。
Q4受益権取得請求の代金に質権は及ぶ?
及びます。97条2号が、103条の受益権取得請求によって受益者が受ける金銭等を明記しています。反対して買い取らせても質権からは外れません。
Q5信託の併合 質権 どうなる?
信託の併合・分割によって受益者が受ける金銭等(新しい受益権を含む)に質権が及びます(97条4号)。スキームを組み替えても担保は消えません。
Q6家族信託の受益権 担保にできる?
信託行為で質入れが制限されていなければ可能です(96条)。ただし残余財産の分配金にも質権が及ぶと解され、家族の生活資金が債権者の回収原資になる可能性があります。
Q7信託受益権 質権 物上代位 違い?
民法304条の物上代位は払渡し前の差押えが必要とされる一般則です。信託法97条は受益権の質権について対象となる金銭等を個別に列挙した特則です。
Q8受託者は質権者と受益者どちらに払う?
質権の対抗要件が備わっていれば、98条により質権者が直接受け取れます。迷う場合は支払を止め、双方から書面で支払指図を取り付けるのが実務です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1受益権に質権を付けたら、毎月の配当はもう受け取れないんですか?
当然に止まるわけではない。97条1号で質権の効力は配当に及ぶが、質権者が98条に基づいて受託者に直接請求するまでは、契約次第で受益者が受け取る運用もある。実務のポイント:証券化融資では、平時は配当を受益者に流し、債務不履行などの事由が起きた瞬間に質権者口座へ切り替える条項が定番だ。サイン前にこの切替条件を読むべきである
Q2信託が終わって残りの財産が分配されたら、質権はどうなりますか?
残余財産の給付は、受託者から受ける信託財産に係る給付(97条1号)、または受益権に代わるもの(同5号)として質権の効力が及ぶと解される。実務のポイント:信託の終了は分配の直前に決まることが多い。質権者は信託終了事由(163条)を融資契約の期限の利益喪失事由に入れ、分配前に動ける状態を作っておく
Q3受託者として、受益者と質権者のどちらに払えばいいのか分かりません
質権設定の通知・承諾を受けていれば、98条により金銭は質権者が直接受け取れる。被担保債権の弁済期前なら、質権者は供託を請求できる。実務のポイント:判断に迷うなら、受益者への振込を止めたうえで、双方から支払指図書を取り付けるのが受託者実務の定石である。誤払いの責任を負うのは受託者自身だからだ
間違えやすい点 AI による整理
- 「受益権を質に入れても、配当は今までどおり自分のものだ」と思っている受益者は多い。だが97条1号は、受託者から受け取る給付に質権の効力が及ぶと明記している。質権者が98条に基づいて受託者に直接請求してきた時点で、配当の流れ先は変わる
- 質権者の側は「97条があるから担保は万全だ」と考えがちだが、ここに落とし穴がある。条文は質権の効力が及ぶ範囲を決めただけで、受託者や第三者に効力を主張するための対抗要件、すなわち受託者への通知・承諾、第三者に対しては確定日付のある証書(94条の考え方)を備えていなければ、受託者は受益者に払ってしまう。お金が受益者の口座で他の預金と混ざれば、追跡はほぼ不可能になる
- 「信託を合併させれば、古い受益権の質権は消える」という発想は、問いの立て方そのものがずれている。法律は受益権を一つの価値の流れとして見ており、併合・分割で受け取る新しい受益権や金銭にも質権が及ぶ(97条3号・4号)。スキームを組み替えても、担保の追跡からは逃げられない
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規定の内容 | 信託法97条:受益権の質権が及ぶ金銭等の範囲 | 信託法98条:質権者の直接受領権と供託請求 民法304条:物上代位の一般則 |
| 機能 | 質権の効力が及ぶ対象を確定する(どこまで追えるか) | 現金を実際に回収する手段を与える(どう取るか) 担保目的物の売却・賃貸・滅失による金銭への追及 |
| 対象 | 配当、取得請求代金、受益権・信託の併合分割による金銭等、代替物 | 97条の金銭等のうち金銭 先取特権・質権・抵当権の目的物の価値代替物 |
| 実務上の注意 | 対抗要件(受託者への通知・承諾)を備えないと実効性がない | 弁済期前は直接受領でなく供託請求 払渡し前の差押えが必要とされる |
他国ではどう定めているか 3 か国
台湾信託法は受益権の譲渡に債権譲渡規定を準用するが、質権の効力範囲を列挙する明文はなく、民法の権利質権の一般則で処理される
ドイツには日本型の信託法がなく、権利質の一般規定で処理される。信託的構成(Treuhand)は判例・学説で発展
米国では信託上の権利への担保権は UCC 第9編で扱われ、担保物の proceeds に担保権が自動的に及ぶ仕組みがある
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 不動産ファンドの合同会社が、オフィスビルの信託受益権を担保に銀行からノンリコースローン(返済原資を担保物件の収益だけに限る融資)を受けている。毎月の賃料は信託配当として流れてくるが、97条1号によって銀行の質権はその配当にも及ぶ。融資契約で配当の口座が銀行指定に固定されているのは、この条文を現実に機能させるための仕組みだ
- 家族信託の受益者である長男が、事業資金のために受益権を質に入れて知人から500万円を借りた。その後、信託契約が終了して残余財産が分配されたらどうなる? 「受益権に代わるもの」として質権の効力が及ぶと解される余地が大きく、長男が自由に使える分配金だと思っていた金額は、まず貸主の回収に回る可能性がある
- 受託者が信託の併合を決めた。受益者であるあなたは反対し、受益権取得請求をした。買取代金は103条に基づいて支払われるが、受益権に質権が付いているなら、その代金にも質権が及ぶ(97条2号)。反対して買い取らせれば質権から逃げられる、という計算は成り立たない
- あなたは受託者側の信託会社の担当者で、質権者から「配当は当行に直接払ってほしい」という通知を受け取った。受益者からは「いつもの口座に振り込んでくれ」と催促が来ている。払い先を間違えると、二重払いのリスクを負うのは受託者だ
- 受益権取得請求ができる期間は短い。通知や公告から20日以内(103条)だ。質権者の側も、その間に受託者への通知を整えなければ、買取代金が受益者の口座に先に流れてしまう
取るべき行動
被害を受けた側:(質権者の立場)1. 質権設定と同時に受託者への通知・承諾を取り、確定日付を付ける2. 配当の振込先を質権者指定口座にする合意を受託者と結ぶ3. 信託の変更・併合・分割の通知は受益者経由ではなく直接届く仕組みを契約に入れる4. 被担保債権の弁済期前に金銭が出るなら、98条に基づき受託者に供託を請求する
訴えられた側:(受益者・受託者の立場)受益者は、質入れ後の配当や買取代金を当然自分のものと扱わず、融資契約の資金使途制限を確認する。受託者は、質権の通知を受けたら支払先を内部で凍結し、受益者と質権者の双方に書面で支払方法を確認する。払い先を誤った支払いは、質権者に対抗できない可能性がある
時効(請求できる期限):本条に固有の時効はないが、被担保債権には一般消滅時効(民法166条、知った時から5年または権利を行使できる時から10年)が適用される。受益権取得請求は、重要な信託の変更等の通知または公告の日から20日以内(信託法103条、最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:97条は民法304条の物上代位に相当する信託法上の特則であり、受益権が併合・分割・取得請求などで形を変えた場合にも、受益者が受ける金銭等に質権の効力が及ぶことを明確にした規定と理解される。実際の回収は98条による。
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 旧信託法(大正11年法)に代わる新信託法の制定に伴い、受益権の質入れの効果を定める規定として置かれた。その後の改正の有無は人的検証が必要
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:旧信託法(大正11年法)に代わる新信託法の制定に伴い、受益権の質入れの効果として質権の効力が及ぶ金銭等を列挙する規定として新設された
- 信託法 第96条受益権の質入れの可否と制限
- 信託法 第98条質権者の直接受領権と供託請求
- 信託法 第103条受益権取得請求の要件と手続
- 信託法 第94条受益権譲渡の対抗要件、質入れ実務の基準
- 民法 第304条物上代位の一般則に対する信託特則
- 民法 第362条権利質の一般規定
- 民法 第366条質権者による債権取立ての一般則
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