信託法 第103条(受益権取得請求)
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- 次に掲げる事項に係る信託の変更(第三項において「重要な信託の変更」という。)がされる場合には、これにより損害を受けるおそれのある受益者は、受託者に対し、自己の有する受益権を公正な価格で取得することを請求することができる。ただし、第一号又は第二号に掲げる事項に係る信託の変更がされる場合にあっては、これにより損害を受けるおそれのあることを要しない。
- 一信託の目的の変更
- 二受益権の譲渡の制限
- 三受託者の義務の全部又は一部の減免(当該減免について、その範囲及びその意思決定の方法につき信託行為に定めがある場合を除く。)
- 四受益債権の内容の変更(当該内容の変更について、その範囲及びその意思決定の方法につき信託行為に定めがある場合を除く。)
- 五信託行為において定めた事項
- 2.信託の併合又は分割がされる場合には、これらにより損害を受けるおそれのある受益者は、受託者に対し、自己の有する受益権を公正な価格で取得することを請求することができる。ただし、前項第一号又は第二号に掲げる事項に係る変更を伴う信託の併合又は分割がされる場合にあっては、これらにより損害を受けるおそれのあることを要しない。
- 3.前二項の受益者が、重要な信託の変更又は信託の併合若しくは信託の分割(以下この章において「重要な信託の変更等」という。)の意思決定に関与し、その際に当該重要な信託の変更等に賛成する旨の意思を表示したときは、前二項の規定は、当該受益者については、適用しない。
- 4.受託者は、重要な信託の変更等の意思決定の日から二十日以内に、受益者に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない。
- 一重要な信託の変更等をする旨
- 二重要な信託の変更等がその効力を生ずる日(次条第一項において「効力発生日」という。)
- 三重要な信託の変更等の中止に関する条件を定めたときは、その条件
- 5.前項の規定による通知は、官報による公告をもって代えることができる。
- 6.第一項又は第二項の規定による請求(以下この款において「受益権取得請求」という。)は、第四項の規定による通知又は前項の規定による公告の日から二十日以内に、その受益権取得請求に係る受益権の内容を明らかにしてしなければならない。
- 7.受益権取得請求をした受益者は、受託者の承諾を得た場合に限り、その受益権取得請求を撤回することができる。
- 8.重要な信託の変更等が中止されたときは、受益権取得請求は、その効力を失う。
この条文の基本情報
受益権取得請求とは何ですか?
定義受益権取得請求とは、信託法第103条に定められた規定で、「次に掲げる事項に係る信託の変更(第三項において「重要な信託の変更」という。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第103条(受益権取得請求)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第103条の条文原文は「次に掲げる事項に係る信託の変更(第三項において「重要な信託の変更」という。」で始まります。
- 信託法第103条は第四款 受益権取得請求権に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第103条の前の条は信託法第102条です。
- 信託法第103条の次の条は信託法第104条です。
- 信託法第103条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
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下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第103条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第103条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/103
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法103条は、信託の目的変更など重要な信託の変更に反対する受益者が、受託者に受益権を公正な価格で取得するよう請求できると定める。期限は通知から20日以内。
Q · 家族信託の目的を勝手に変えられたら、受益権を買い取ってもらえるの?
できる。ただし通知から20日以内、賛成していないことが条件
信託法103条1項により、信託の目的の変更や受益権の譲渡制限といった重要な信託の変更がされる場合、受益者は受託者に対して、自己の受益権を公正な価格で取得するよう請求できます。目的の変更と譲渡制限の場合は、損害を受けるおそれの立証は要りません。ただし、変更に賛成の意思を示した受益者は請求できず(同3項)、受託者からの通知または官報公告の日から20日以内に、対象の受益権を明らかにして請求する必要があります(同6項)。
解説
信託の中身は、始めた後でも書き換えられる。目的を変える、受益権を自由に譲れなくする、受託者の責任を軽くする、受け取れる配当の中身を変える。こうした「重要な信託の変更」で損をしそうな受益者に、信託法103条は出口を用意している。受託者に対して、自分の受益権を「公正な価格」で買い取るよう請求できるのだ。特に強いのは、信託の目的の変更と受益権の譲渡制限の二つである。この二つの場合は、自分が損をするおそれがあることを証明しなくても請求できる。信託の併合(二つの信託を一つにまとめること)や分割でも同じ権利が使える。ただし落とし穴が二つある。一つは、変更に賛成票を投じた受益者はこの権利を失うこと。もう一つは期限の短さである。受託者からの通知、または官報公告の日から20日以内に、どの受益権を買い取ってほしいのかを明らかにして請求しなければならない。気付いたときには20日が過ぎていた、というのが典型的な負け方である。
法的な位置づけ
受益権取得請求とは、信託法103条に基づき、重要な信託の変更または信託の併合・分割がされる場合に、受益者が受託者に対し、自己の有する受益権を公正な価格で取得するよう求める権利をいう。信託の目的の変更および受益権の譲渡制限の場合は損害のおそれを要せず、変更に賛成した受益者には認められない。
手順
- 1.通知・公告の日付から期限を確定する 受託者からの通知書の日付、または官報公告の日を確認し、その日から20日以内という請求期限をカレンダーに記録する。通知がない場合は官報公告が出ていないかも確認する
- 2.変更の種類と要件を確認する 変更が信託の目的の変更・受益権の譲渡制限(損害のおそれ不要)か、受託者の義務の減免・受益債権の内容変更・信託行為で定めた事項(損害のおそれが必要)か、または併合・分割かを確かめる。信託行為(信託契約書)の変更条項も併せて読む
- 3.賛成の意思表示をしない 受益者集会での議決や同意書への署名で賛成の意思を示すと、103条3項により請求権を失う。署名を求められても、請求するか判断がつくまでは賛成しない
- 4.受益権を特定して請求書を送る 対象となる受益権の内容を明らかにした受益権取得請求書を作成し、期限内に受託者へ内容証明郵便で送付する。到達日を証明できる方法を選ぶ
- 5.価格を協議し、まとまらなければ裁判所へ 公正な価格について受託者と協議する。不動産が中心の信託なら鑑定書を用意する。協議が調わない場合は、信託法104条に基づき裁判所に価格の決定を申し立てる(申立期間は同条で確認する)
よくある質問 AI による整理
Q1受益権取得請求とは何ですか?
重要な信託の変更や信託の併合・分割の際に、受益者が受託者に自分の受益権を公正な価格で買い取るよう求める権利です。根拠は信託法103条です。
Q2受益権取得請求はいつまでにすればいいですか?
受託者からの通知、または官報公告の日から20日以内です(信託法103条6項)。どの受益権を対象にするのかを明らかにして請求する必要があります。
Q3信託の変更に賛成した受益者も買取請求できますか?
できません。意思決定に関与して賛成の意思を表示した受益者には、103条1項・2項が適用されません(同3項)。反対するか、賛成しないことが前提です。
Q4受益権取得請求に損害の証明は必要ですか?
信託の目的の変更と受益権の譲渡制限では不要です。受託者の義務の減免や受益債権の内容変更などでは、損害を受けるおそれがあることが要件になります。
Q5信託の併合や分割でも買取請求できますか?
できます。信託法103条2項により、併合・分割で損害を受けるおそれのある受益者は請求できます。目的の変更などを伴う場合は損害のおそれも不要です。
Q6受益権取得請求を取り下げることはできますか?
受託者の承諾がある場合に限り撤回できます(信託法103条7項)。受益者の一存では撤回できないため、請求前に意思を固めておくことが大切です。
Q7信託の変更が中止されたら請求はどうなりますか?
重要な信託の変更等が中止されると、受益権取得請求は効力を失います(信託法103条8項)。改めて手続をする必要はありません。
Q8受託者は受益者に何を通知しなければなりませんか?
意思決定の日から20日以内に、変更等をする旨、効力発生日、中止条件を定めた場合はその条件を通知します(103条4項)。官報公告で代えることもできます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1家族信託の受託者をやってる兄が勝手に中身を変えたんですけど、止められないんですか?
信託行為(信託契約)が、受託者だけでの変更や受益者の多数決による変更を認めている場合、変更そのものを止めるのは難しい(信託法149条)。その代わり、重要な変更であれば、103条に基づいて受益権を公正な価格で買い取らせ、信託から抜けることができる。実務のポイント:家族信託の契約書には、受託者に変更権限を持たせる条項がよく入っている。親が元気なうちに契約書の写しを手に入れ、変更条項を読んでおくこと。トラブルの半分はそれで予測できる
Q2「公正な価格」って、結局誰がどうやって決めるんですか?
まずは受託者と受益者の協議で決まる。協議が調わなければ、裁判所に価格の決定を申し立てられる(104条)。何をもって公正とするかは、実務上、解釈が分かれている。変更がなかった場合の価値を基準にするのか、変更後に見込まれる価値も考えるのか、という点である。実務のポイント:会社法の株式買取請求をめぐる判例の考え方が参考にされることが多い。不動産を中心とする信託なら、早いうちに自分で鑑定を取っておいたほうが協議で強く出られる
Q3請求したあとで、やっぱりやめたくなったら取り下げられますか?
受益者の判断だけでは撤回できない。受託者が承諾した場合に限り撤回できる(103条7項)。一方、受託者が変更自体を中止すれば、請求は自動的に効力を失う(同8項)。実務のポイント:受託者側は、反対者が多いときに変更を中止するという条件を通知に書いておくことがある。請求が集まれば変更そのものが取りやめになる可能性があるので、受益者どうしで足並みをそろえることにも意味がある
間違えやすい点 AI による整理
- 「受益者なのだから、信託の中身は自分の同意なしには変えられない」と思いがちである。だが信託行為で多数決や受託者単独での変更を認めていれば、あなたが反対しても変更は成立する。103条は、変更を止める権利ではない。変更から離脱する権利である
- 買取請求は「損をした証拠」を集めてからでないと使えない、と考えられやすい。たしかに受託者の義務の減免や受益債権の内容変更では「損害を受けるおそれ」が要件になる。しかし信託の目的の変更と受益権の譲渡制限では、その立証は要らない。証拠集めをしているうちに20日の期限が過ぎるほうが、よほど致命的である
- 「とりあえず賛成しておいて、まずかったら後で抜ければいい」。この考え方は前提から崩れている。意思決定に関わって賛成の意思を示した時点で、103条3項により買取請求権は消える。反対するか、少なくとも賛成しないことが、出口を確保するための唯一の手段になる
- 受益者から見れば「受託者が買い取ってくれる」話だが、法律上は、支払いは原則として信託財産から出る(104条)。受託者の個人財産が当てにできるわけではない。反対者が多いほど信託財産が減り、残った受益者の取り分も目減りする。誰が最初に請求するかで結果が変わりうる構造である
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律する内容 | 信託法103条:重要な信託の変更等に反対する受益者の離脱(受益権取得請求) | 信託法149条:信託の変更をどのような方法・合意で行うか 信託法104条:取得価格の協議と裁判所による価格決定 |
| 受益者にとっての機能 | 変更を止めずに、公正な価格で信託から抜ける出口 | 変更の成立要件(関係者の合意、信託行為の定め)を通じて変更そのものに関与 請求後の価格をめぐる紛争を解決 |
| 主な期限・タイミング | 通知または官報公告の日から20日以内に請求 | 変更の意思決定時 効力発生日以後の協議、調わなければ裁判所へ申立て(期間は同条) |
他国ではどう定めているか 2 か国
台湾信託法は信託財産の管理方法の変更を関係者の同意または裁判所の判断で行う仕組みであり、反対する受益者に受益権の買取りを請求させる一般規定は置いていない
韓国は2011年の信託法全面改正で、信託の変更・合併・分割に反対する受益者の受益権買取請求権を導入し、日本と近い構造をとる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 父が設定した家族信託で、あなたは受益者の一人。受託者である兄が、他の受益者の多数決で「自宅の維持」という目的を「賃貸アパートの建設資金」に書き換えた。目的の変更なので、損害を証明しなくても、受益権を公正な価格で兄(受託者)に買い取らせる請求ができる
- 受益者集会で賛成に手を挙げた三か月後、変更のせいで配当が半分になった。買取請求をしようとしても、賛成の意思を示した時点で103条3項によりその道は閉じている。「とりあえず賛成」の一票は高くつく
- 受託者の立場で、信託の統合(併合)を準備している。反対の受益者が受益権の買取りを一斉に請求してきたら、どうなる? 支払いは原則として信託財産から出ていくので、統合後の信託の現金が足りなくなる。統合の計画書には中止条件を入れ、通知にもその条件を書いておく必要がある(103条4項3号)
- 受託者から「信託の変更のお知らせ」が届いた日付は9月10日。請求期限は通知の日から20日以内。書面を引き出しにしまったまま一週間が過ぎた。残りは13日である
- 受託者が通知の代わりに官報公告で済ませた。官報を毎日読む人はいない。それでも、20日の期限は公告の日から進んでいく
取るべき行動
被害を受けた側:1. 通知書または官報公告の日付を確認し、そこから20日後の期限をカレンダーに入れる。2. 変更の内容が信託の目的の変更か、受益権の譲渡制限か、それ以外の重要な変更かを確かめる(前の二つなら損害の立証は不要)。3. 変更に賛成する意思表示はしない。4. 対象となる受益権を特定した買取請求書を、期限内に内容証明郵便で受託者に送る。5. 価格の協議が調わなければ、裁判所に価格決定を申し立てる(104条)
訴えられた側:1. 意思決定の日から20日以内に、変更の内容、効力発生日、中止条件を受益者全員に通知する。2. 所在が分からない受益者がいるなら官報公告も検討する。3. 買取請求が集中した場合に信託財産がどれだけ流出するかを試算し、中止条件を設計しておく。4. 「公正な価格」は、評価の根拠を説明できる資料(不動産鑑定など)を用意してから提示する
時効(請求できる期限):受託者は、重要な信託の変更等の意思決定の日から20日以内に受益者へ通知する(103条4項)。受益者の買取請求は、その通知または官報公告の日から20日以内に行う(同6項)。価格の協議が調わない場合の裁判所への申立て期間は104条に定めがある(最新の改正状況をご確認ください)
学説
立法趣旨(通説的理解):信託の変更を受益者全員の同意なしに行えるようにする代わりに、反対する受益者には公正な価格での離脱を保障する制度。会社法の反対株主の株式買取請求権と同じ発想に立ち、変更の柔軟性と少数受益者の保護を両立させる
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 旧信託法にはなかった受益権取得請求の制度が、新しい信託法の制定時に設けられた。信託の変更・併合・分割に反対する受益者の離脱手段である(その後の改正の有無は人による確認が必要)
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:信託法(平成18年法律第108号)の制定により、旧信託法になかった受益権取得請求の制度が新設された
- 信託法 第104条買取価格の協議と裁判所による決定手続
- 信託法 第149条信託の変更の方法と要件
- 信託法 第151条信託の併合の手続
- 信託法 第105条受益者が複数いる場合の意思決定方法
- 投資信託及び投資法人に関する法律 第18条約款変更時の反対受益者の買取請求の特則(現行効力を要確認)
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