信託法 第104条(受益権の価格の決定等)
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- 受益権取得請求があった場合において、受益権の価格の決定について、受託者と受益者との間に協議が調ったときは、受託者は、受益権取得請求の日から六十日を経過する日(その日までに効力発生日が到来していない場合にあっては、効力発生日)までにその支払をしなければならない。
- 2.受益権の価格の決定について、受益権取得請求の日から三十日以内に協議が調わないときは、受託者又は受益者は、その期間の満了の日後三十日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることができる。
- 3.裁判所は、前項の規定により価格の決定をする場合には、同項の申立てをすることができる者の陳述を聴かなければならない。
- 4.第二項の申立てについての裁判には、理由を付さなければならない。
- 5.第二項の規定による価格の決定の裁判に対しては、申立人及び同項の申立てをすることができる者に限り、即時抗告をすることができる。
- 6.前項の即時抗告は、執行停止の効力を有する。
- 7.前条第七項の規定にかかわらず、第二項に規定する場合において、受益権取得請求の日から六十日以内に同項の申立てがないときは、その期間の満了後は、受益者は、いつでも、受益権取得請求を撤回することができる。
- 8.第一項の受託者は、裁判所の決定した価格に対する同項の期間の満了の日後の利息をも支払わなければならない。
- 9.受託者は、受益権の価格の決定があるまでは、受益者に対し、当該受託者が公正な価格と認める額を支払うことができる。
- 10.受益権取得請求に係る受託者による受益権の取得は、当該受益権の価格に相当する金銭の支払の時に、その効力を生ずる。
- 11.受益証券(第百八十五条第一項に規定する受益証券をいう。以下この章において同じ。)が発行されている受益権について受益権取得請求があったときは、当該受益証券と引換えに、その受益権取得請求に係る受益権の価格に相当する金銭を支払わなければならない。
- 12.受益権取得請求に係る債務については、受託者は、信託財産に属する財産のみをもってこれを履行する責任を負う。ただし、信託行為又は当該重要な信託の変更等の意思決定において別段の定めがされたときは、その定めるところによる。
- 13.前条第一項又は第二項の規定により受託者が受益権を取得したときは、その受益権は、消滅する。ただし、信託行為又は当該重要な信託の変更等の意思決定において別段の定めがされたときは、その定めるところによる。
この条文の基本情報
受益権の価格の決定等とは何ですか?
定義受益権の価格の決定等とは、信託法第104条に定められた規定で、「受益権取得請求があった場合において、受益権の価格の決定について、受託者と受益者との間に協議が調ったときは、受託者は、受益権取得請求の日から六十日を経過する日(そ…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第104条(受益権の価格の決定等)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第104条の条文原文は「受益権取得請求があった場合において、受益権の価格の決定について、受託者と受益者との間に協議が調ったときは、受託者は、受益権取得請求の日から六十日を経過する日(そ…」で始まります。
- 信託法第104条は第四款 受益権取得請求権に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第104条の前の条は信託法第103条です。
- 信託法第104条の次の条は信託法第105条です。
- 信託法第104条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第104条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第104条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/104
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法104条は、受益権取得請求後の価格決定手続を定める。請求日から30日以内に協議が調わなければ、その後30日以内に受託者または受益者が裁判所へ価格決定を申し立てられる。
Q · 家族信託から抜けたいとき、受益権の買取価格はどうやって決まるの?
30日協議し、不調なら次の30日内に裁判所へ申立てる
信託法104条により、受益権取得請求の日から30日間は受託者と受益者が価格を協議します。協議が調えば、受託者は請求日から60日以内に支払わなければなりません。30日以内に協議が調わなければ、その満了日後30日以内に受託者または受益者が裁判所に価格決定を申し立てられます。60日以内に申立てがなければ、受益者は請求をいつでも撤回できます。支払は原則として信託財産のみから行われます(12項)。
解説
信託の中身が途中で書き換えられたとき、受益者には信託から出ていく権利がある。前条(103条)の受益権取得請求である。だが実際に揉めるのは出口の値段であり、その決め方を定めるのが本条だ。手順は三段階になっている。請求から30日は受託者(信託財産を預かり管理する人)との協議にあてられる。まとまらなければ、その次の30日以内に受託者か受益者のどちらかが裁判所に価格決定を申し立てる。誰も申し立てないまま60日が過ぎると、受益者は請求をいつでも撤回して受益者の立場に戻れる。裁判所が決めた価格には、60日の期間が満了した日より後の利息が上乗せされる。見落とされやすい点がもう一つある。支払は原則として信託財産からしか受けられない(12項)。受託者個人の財産には、原則として手が届かない。裁判で値段を勝ち取っても、信託財産が空なら回収はできない。
法的な位置づけ
信託法104条は、重要な信託の変更等に伴い受益者が受益権取得請求をした場合における受益権の価格決定手続を定める規定である。当事者間の協議期間、裁判所への価格決定申立期間、即時抗告、利息、仮払い、取得の効力発生時期、支払責任の範囲および取得した受益権の消滅について規律する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.取得請求の日付を確定させる 受益権取得請求は内容証明郵便などで行い、請求日を客観的に証明できるようにする。30日の協議期間と60日の期間はすべてこの日から数える
- 2.評価資料を集めて協議する 請求日から30日以内に受託者と価格を協議する。代金の支払までは受益者の地位にあるため、帳簿や信託財産の資料を確認し、不動産が中心なら私的鑑定を取って協議に提出する
- 3.協議不調なら裁判所へ価格決定を申し立てる 30日以内に協議が調わなければ、その満了日後30日以内に、受託者の住所地を管轄する地方裁判所へ価格決定を申し立てる(信託法262条)。この期間を逃すと裁判所に価格を決めてもらう道が閉じる
- 4.決定内容を確認し、必要なら即時抗告する 裁判所は申立てができる者の陳述を聴き、理由を付けて決定する。不服があれば告知から2週間以内に即時抗告を検討する。即時抗告には執行停止の効力がある
- 5.支払と受益証券の引渡しで手続を完了させる 受託者から決定価格と60日満了後の利息の支払を受ける。受益証券が発行されている場合は証券と引き換えに支払われる。支払時に取得の効力が生じる
よくある質問 AI による整理
Q1受益権取得請求とは何ですか?
重要な信託の変更等によって不利益を受けるおそれのある受益者が、受託者に自分の受益権を公正な価格で取得するよう求める権利です。要件は信託法103条、価格の決め方は104条が定めます。
Q2受益権の価格決定の申立てはいつまでにすればいいですか?
請求日から30日の協議期間が満了した日の翌日から30日以内です。つまり請求日から数えて31日目から60日目までの間に申し立てる必要があります。
Q3受益権の価格決定は受託者からも申し立てられますか?
できます。104条2項は受託者と受益者のどちらからでも申立てができると定めています。受託者が先に申し立てて価格を早く確定させることもできます。
Q4受益権取得請求は撤回できますか?
原則として受託者の承諾が必要です(103条7項)。ただし請求日から60日以内に価格決定の申立てがなければ、その後は受益者がいつでも撤回できます(104条7項)。
Q5受益権の買取代金にも利息はつきますか?
つきます。裁判所が価格を決めた場合、受託者は請求日から60日の期間が満了した日より後の利息も支払わなければなりません(104条8項)。
Q6価格決定が出る前に代金を払うことはできますか?
できます。受託者は、裁判所の決定が出るまでの間でも、自分が公正と考える額を受益者に支払うことができます(104条9項)。利息負担を抑える手段として使われます。
Q7受益権取得請求をしたら、いつ受益者でなくなりますか?
請求した時点ではなく、受託者が価格に相当する金銭を支払った時です(104条10項)。それまでは受益者の地位にとどまります。
Q8受託者が取得した受益権はどうなりますか?
原則として消滅します(104条13項)。ただし信託行為や重要な信託の変更等の意思決定で別の定めをした場合は、その定めに従います。
この条文についての質問 AI による整理
Q1裁判所に値段を決めてもらうのって、普通の裁判みたいにお金も時間もかかるんですか?
公開の法廷で争う訴訟ではなく非訟事件として扱われ、受託者の住所地を管轄する地方裁判所に申し立てる(262条)。裁判所は申立てができる者の陳述を聴き(3項)、理由を付けて決定する(4項)。不服があれば即時抗告ができ、即時抗告には執行停止の効力がある(5項、6項)。実務のポイント:最大のコストは手数料ではなく鑑定費用である。不動産が中心の信託では、私的鑑定を先に取って協議に出しておくと、裁判所の鑑定を待たずに決着することが多い
Q2信託のお金が少なかったら、決まった値段を全額もらえないこともあるんですか?
ありうる。12項により、受託者は信託財産に属する財産のみで支払う責任を負うのが原則である。例外は、信託行為または重要な信託の変更等の意思決定で別段の定めをした場合に限られる。実務のポイント:変更の合意文書を作る段階で、取得請求の支払原資や受託者固有財産での補完について一文入れるよう交渉できる。変更が決まった後では、この交渉の余地はほとんど残らない
間違えやすい点 AI による整理
- 「いくらで買い取ってもらえるか」を問う前に、「誰の財布から払われるのか」を問うべきだ。12項により、受託者の支払責任は原則として信託財産の範囲に限られる。信託財産が不動産一棟だけで換金しにくい場合や、すでに目減りしている場合は、価格決定で勝っても全額を受け取れないおそれがある。信託行為や変更の決定で別の定めをしたときだけ、この原則を外せる
- 60日の期限があることは知っていても、それを過ぎたら何が起きるかまで知っている人は少ない。誰も申し立てずに60日が過ぎると、受益者は請求をいつでも撤回できる(7項)。しかし裁判所に価格を決めてもらう道は閉じ、あとは協議しか残らない。受託者が値段を下げたまま動かなければ、受益者は結局撤回して不利な変更を受け入れるしかなくなる。期限は単なる手続上の目安ではなく、交渉力そのものの期限である
- 請求書を出した瞬間に受益者でなくなったと感じがちだが、法律上の取得の効力が生じるのは代金を支払った時である(10項)。それまでは受益者のままであり、受益者としての権利(帳簿閲覧など)を行使する余地も残っている。この時間差に気づかず、請求後に情報収集を止めてしまう受益者は、価格交渉の材料を自分から捨てていることになる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律対象 | 信託法104条:受益権の価格決定の手続と支払 | 信託法103条:受益権取得請求ができる場合と請求期間 信託法149条:関係当事者の合意等による信託の変更 |
| 主な期間 | 協議30日→申立て30日→支払は請求日から60日以内 | 変更等の通知・公告から一定期間内に請求 期間の定めではなく変更の方法を規律 |
| 主体 | 受託者・受益者(いずれも申立て可) | 不利益を受けるおそれのある受益者 委託者・受託者・受益者 |
| 受益者にとっての意味 | 出口の「値段」と支払原資が決まる | 出口の「扉」が開く 出口が必要になる原因が生じる |
他国ではどう定めているか 2 か国
台湾信託法には受益権取得請求の価格決定手続に当たる規定は見当たらない。協議期間後に裁判所へ価格裁定を求める構造は、反対株主の株式買取請求手続に類似する
2011年の韓国信託法全部改正で受益権買取請求権が導入された。日本法と同様、信託の変更等に反対する受益者の離脱手段として位置づけられる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 父が設定した家族信託で受託者を務める長兄が、信託行為の変更条項を根拠に「受益権の譲渡には受託者の承諾が要る」と信託を変更した。次男のあなたは取得請求を出したが、兄が示した額は不動産評価額の半分程度だった。請求からすでに30日が過ぎている。残り30日以内に裁判所へ申し立てなければ、裁判所に値段を決めてもらう道は閉じる
- 受託者として取得請求を受け、協議が決裂したらどうなる? 決定が出るまで手続は長引き、60日の期間満了後の利息は日ごとに積み上がっていく。そこで9項を使い、自分が公正と考える額を先に支払っておけば、その支払った部分の利息負担は抑えられると解されている。払わずに争い続けるのが得とは限らない
- 受益証券が発行されている信託では、証券と引き換えでなければ代金は支払われない(11項)。証券を紛失していれば、手続が一段増える。
取るべき行動
被害を受けた側:1. 取得請求を出した日を書面で確定させる(内容証明郵便が確実)。30日と60日はこの日から数える2. 協議と並行して、信託財産の評価資料(不動産鑑定、帳簿)を集める。代金が支払われるまでは受益者の立場にある3. 30日以内に合意できなければ、請求日から31日目から60日目までの間に、受託者の住所地を管轄する地方裁判所へ価格決定を申し立てる4. 信託財産が十分にあるかを確認し、不足しそうなら別段の定めの有無を調べる
訴えられた側:1. 受託者として請求を受けたら、まず請求要件(103条:重要な信託の変更等に賛成していないか、損害のおそれは要件か)を確認する2. 公正な価格を根拠資料とともに示す3. 協議が長引きそうなら9項で仮払いし、利息負担を抑える4. 協議がまとまれば、請求日から60日以内(効力発生日がそれより後ならその日まで)に支払う。受益証券があれば証券と引き換えに支払う5. 不服な決定には即時抗告を検討する
時効(請求できる期限):協議期間=受益権取得請求の日から30日。価格決定の申立て=その満了日の翌日から30日以内(受託者・受益者のいずれからも可)。合意した場合の支払期限=請求日から60日経過日(効力発生日がそれより後ならその日)。60日以内に申立てがなければ、受益者はいつでも撤回できる。即時抗告は告知から2週間(非訟事件手続法67条)。利息は法定利率(民法404条、現行年3%、3年ごとに見直し)による(最新の改正状況をご確認ください)
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)新信託法制定 大正11年制定の旧信託法を全面的に改め、受益権取得請求制度とその価格決定手続を新設した。施行は平成19年(2007年)9月30日。その後の非訟事件手続法の制定に伴う整備などで文言が改正されたかどうかは、人による検証が必要
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:信託法(平成18年法律第108号)の制定により、受益権取得請求制度とその価格決定手続が新設された。施行は平成19年(2007年)9月30日
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