信託法 第21条(信託財産責任負担債務の範囲)
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- 次に掲げる権利に係る債務は、信託財産責任負担債務となる。
- 一受益債権
- 二信託財産に属する財産について信託前の原因によって生じた権利
- 三信託前に生じた委託者に対する債権であって、当該債権に係る債務を信託財産責任負担債務とする旨の信託行為の定めがあるもの
- 四第百三条第一項又は第二項の規定による受益権取得請求権
- 五信託財産のためにした行為であって受託者の権限に属するものによって生じた権利
- 六信託財産のためにした行為であって受託者の権限に属しないもののうち、次に掲げるものによって生じた権利
- 一第二十七条第一項又は第二項(これらの規定を第七十五条第四項において準用する場合を含む。ロにおいて同じ。)の規定により取り消すことができない行為(当該行為の相手方が、当該行為の当時、当該行為が信託財産のためにされたものであることを知らなかったもの(信託財産に属する財産について権利を設定し又は移転する行為を除く。)を除く。)
- 二第二十七条第一項又は第二項の規定により取り消すことができる行為であって取り消されていないもの
- 七第三十一条第六項に規定する処分その他の行為又は同条第七項に規定する行為のうち、これらの規定により取り消すことができない行為又はこれらの規定により取り消すことができる行為であって取り消されていないものによって生じた権利
- 八受託者が信託事務を処理するについてした不法行為によって生じた権利
- 九第五号から前号までに掲げるもののほか、信託事務の処理について生じた権利
- 2.信託財産責任負担債務のうち次に掲げる権利に係る債務について、受託者は、信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う。
- 一受益債権
- 二信託行為に第二百十六条第一項の定めがあり、かつ、第二百三十二条の定めるところにより登記がされた場合における信託債権(信託財産責任負担債務に係る債権であって、受益債権でないものをいう。以下同じ。)
- 三前二号に掲げる場合のほか、この法律の規定により信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負うものとされる場合における信託債権
- 四信託債権を有する者(以下「信託債権者」という。)との間で信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う旨の合意がある場合における信託債権
この条文の基本情報
信託財産責任負担債務の範囲とは何ですか?
定義信託財産責任負担債務の範囲とは、信託法第21条に定められた規定で、「次に掲げる権利に係る債務は、信託財産責任負担債務となる。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第21条(信託財産責任負担債務の範囲)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第21条の条文原文は「次に掲げる権利に係る債務は、信託財産責任負担債務となる。」で始まります。
- 信託法第21条は第二章 信託財産等に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第21条の前の条は信託法第20条です。
- 信託法第21条の次の条は信託法第22条です。
- 信託法第21条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第21条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第21条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/21
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法21条は、信託財産から履行すべき債務(信託財産責任負担債務)を9号で列挙し、うち受益債権など4類型に限り受託者は信託財産のみで責任を負うと定める。
Q · 家族信託の受託者になったら、信託の借金を自分の財産で払うことになる?
原則は個人財産も責任財産。2項の4類型だけ信託財産限り
信託法21条1項は、受託者が信託事務で負った債務などを信託財産責任負担債務とします。このうち同条2項の4類型(受益債権、登記された限定責任信託の信託債権、法律上の特則、責任財産限定合意のある債権)に当たらない債務は、信託財産だけでなく受託者の固有財産も責任財産になります。修繕代金や融資の返済がその典型で、個人の責任を外すには契約前の責任財産限定特約か限定責任信託の登記が必要です。
解説
信託の世界には財布が二つある。受託者が預かった「信託財産」と、受託者自身の「固有財産」だ。21条は二段で働く。1項は、どの借りを信託財産から払うのかを九つの号で列挙する。2項は、そのうち受託者個人の財布には手が届かないものを四つに絞り込む。落とし穴はこの二段の隙間にある。1項に入っても2項に当たらない債務は、信託財産だけでなく受託者の個人財産でも払う責任が残る。たとえば家族信託で親のアパートを預かった子が修繕業者と契約すれば、その代金は信託財産の負担になる。それでも足りなければ、業者は子自身の預金にまで請求できる。逆に、受益者が配当を求める権利(受益債権)は2項1号により信託財産からしか払われない。受託者を引き受ける人も、受益者として配当を待つ人も、自分の請求や負担がどちらの財布につながっているのかを知らないまま署名していることが多い
法的な位置づけ
信託財産責任負担債務とは、受託者が負う債務のうち信託財産に属する財産をもって履行する責任を負うものをいう(信託法2条9項)。信託法21条1項はその範囲を9号で列挙し、同条2項は、そのうち受託者が固有財産では責任を負わず信託財産のみで履行責任を負う4類型の債務(物的有限責任)を定める。
手順
- 1.信託契約と信託目録で受託者の権限を確認する 信託契約書と不動産登記事項証明書の信託目録を突き合わせ、予定している取引が受託者の権限に属するかを確認する。権限内の行為から生じた債務は21条1項5号の信託財産責任負担債務になる
- 2.融資・工事の契約前に責任財産限定特約を交渉する 金融機関や工務店と契約を結ぶ前に、「受託者は信託財産に属する財産のみをもって履行の責任を負う」旨の条項(21条2項4号)を入れるよう申し入れる。署名後に一方的に主張しても効力はない
- 3.限定責任信託を選ぶ場合は定めと登記を両方そろえる 信託行為に216条1項の定めを置き、232条に基づく登記を済ませる。登記がなければ2項2号の保護は受けられない。登記後も悪意・重過失があれば224条で第三者に個人責任を負う点に注意する
- 4.固有財産から支払った費用は償還を請求する 2項に当たらない債務を受託者個人の財産から払った場合、48条に基づき信託財産から費用の償還を受ける。支払の証拠と信託事務との関連を記録しておく
よくある質問 AI による整理
Q1信託財産責任負担債務とは?
受託者が信託財産で履行する責任を負う債務です(信託法2条9項)。21条1項が受益債権や信託事務で生じた権利など9類型を列挙しています。
Q2家族信託の受託者に個人責任はある?
あります。信託事務で負った債務は21条2項に当たらない限り、信託財産に加えて受託者自身の預金や不動産も責任財産になります。
Q3信託財産は差し押さえできる?
信託財産責任負担債務に係る債権に基づく場合に限りできます(23条1項)。受託者個人の債権者は原則として信託財産を差し押さえられません。
Q4責任財産限定特約とは何ですか?
信託債権者との間で、信託財産のみで履行責任を負うと合意する特約です(21条2項4号)。合意があれば受託者の固有財産は責任財産から外れます。
Q5限定責任信託 登記しないとどうなる?
信託行為に216条1項の定めがあっても232条の登記がなければ2項2号は適用されず、受託者は信託債権について固有財産でも責任を負います。
Q6受託者が立て替えた費用は取り戻せる?
固有財産から信託事務の費用を支払った受託者は、48条により信託財産から費用の償還を受けられます。信託財産が不足すると回収しきれない場合があります。
Q7信託前の抵当権は信託後も実行できる?
できます。信託前の原因によって生じた権利(21条1項2号)に当たり、信託財産責任負担債務として信託財産に対し実行できます。
Q8受託者の不法行為の賠償は誰が払う?
信託事務の処理についてした受託者の不法行為による債務は1項8号で信託財産責任負担債務となり、2項に当たらないため受託者の固有財産も責任財産です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1家族信託で受託者になったけど、アパートのローンが返せなくなったら自分の家も取られるんですか?
取られる可能性がある。受託者として借りた債務は21条1項5号の信託財産責任負担債務で、2項に当たらなければ固有財産も責任財産になる。避ける手段は、責任財産限定特約(2項4号)か限定責任信託(2項2号)だ。実務のポイント:信託内融資の契約書には、受託者個人の責任を外す一文が入っていないことが多い。署名前に条項を確認し、入っていなければ交渉の対象にする
Q2親に金を貸してたのに、親が家を信託しちゃいました。もう差し押さえられないんですか?
原則として、信託前の一般債権で信託財産に強制執行はできない(23条)。例外は、信託前からの抵当権など(21条1項2号)と、信託行為で債務を引き継ぐと定めた場合(同3号)だ。債権者を害すると知りながらした信託なら、詐害信託(11条)として取消しを求められる。実務のポイント:信託した当時、親が債務超過だったかどうかが分かれ目になる。信託時点の財産状況を示す資料を早めに集める
Q3受益者なのに配当が来ません。受託者の個人財産から払わせることはできますか?
配当の請求、つまり受益債権は21条2項1号により信託財産からしか払われない。ただし、受託者の任務違反で信託財産が減ったのであれば話は別だ。40条の損失てん補請求で、受託者に個人の財産から信託財産へ穴埋めさせられる。実務のポイント:「配当を払え」と迫るより、「信託財産の損失を補填せよ」という筋に切り替えるほうが、受託者個人の財布に届きやすい
間違えやすい点 AI による整理
- 「信託した財産は誰からも差し押さえられない金庫になる」と思われがちだが、金庫の鍵を持つ債権者は1項に列挙されている。信託前から付いていた抵当権(2号)、信託行為で引き継ぐと定めた委託者の債務(3号)、受託者が信託事務でした取引や不法行為から生じた債権(5号から9号)は、どれも信託財産に強制執行できる。倒産隔離が守ってくれるのは、受託者個人の債権者と、条件を満たさない委託者の債権者に対してだけだ
- 受託者を引き受けた家族から見れば「親の財産を預かって管理しているだけ」だが、法律から見れば信託財産の名義人であり、取引の当事者そのものである。2項に当たらない債務については、自分の住宅や預金まで責任財産になる。善意で引き受けた役割と法的な責任の重さがずれていて、このずれに気付くのは請求書が届いてからになりやすい
- 「限定責任信託にすれば受託者は安全」とよく言われるが、深刻さを見落としている。2項2号が効くのは、信託行為に216条1項の定めを置き、さらに232条の登記を済ませた場合だけだ。登記を忘れれば、ただの信託と同じ扱いになる。しかも登記をしていても、職務について悪意または重大な過失(ほぼ故意に近い著しい不注意)があれば、受託者は第三者に個人として損害賠償責任を負う(224条)
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律の対象 | 信託法21条:信託財産で履行すべき債務の範囲と、受託者の物的有限責任の範囲 | 信託法23条:信託財産に対する強制執行等の可否 信託法216条:限定責任信託の成立要件 |
| 受託者の固有財産への影響 | 2項の4類型に当たらない債務は固有財産にも及ぶ | 直接の定めなし(信託財産を受託者個人の債権者から守る規定) 登記された限定責任信託では、信託財産責任負担債務すべてについて信託財産限りの責任となる(224条の例外あり) |
| 債権者が確認すべき点 | 自分の債権が1項の何号に当たり、2項に当たるかどうか | 自分の債権が信託財産責任負担債務に係る債権かどうか 限定責任信託の登記の有無 |
他国ではどう定めているか 5 か国
台湾も信託財産への強制執行を原則禁止し、受益者に対する受託者の債務は信託財産の限度で責任を負うとする。日本の旧信託法を母法とする
韓国も2011年の全部改正で強制執行の禁止と受益者に対する有限責任を規定し、유한책임신탁(限定責任信託)制度も導入した
中国は信託事務の処理で第三者に負った債務を信託財産で負担すると定める一方、受託者の固有財産への責任範囲は日本ほど明確に類型化されていない
フランスのフィデュシーでは、信託財産が債権者の引当てとなり、不足する場合は原則として設定者の財産が引当てとなる。契約で受託者に負担させることも可能
米国統一信託法典は、受託者が受託者の資格で締結したことを明示した契約について、原則として個人責任を負わないとする
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 父の賃貸アパートを家族信託で預かった長男が、受託者として外壁の大規模修繕を工務店に発注した。家賃収入が落ち込んで代金を払えないと、工務店は信託口座だけでなく長男名義の個人預金の差押えにも動ける。受託者の権限内でした契約から生じる債権は1項5号に当たり、2項のどの号にも当たらないからだ
- 信託したアパートの外壁タイルが落ちて通行人がけがをしたら、誰が払うのか? 登記上の所有者は受託者なので、民法717条の工作物責任を受託者が負う。この賠償債務は信託財産責任負担債務になる(1項8号または9号)。ただし2項に当たらないため、受託者個人の財産も責任財産に含まれる
- 受託者である兄が、信託契約で認められていないのに信託した土地を知人に安く売っていた。受益者のあなたがそれを知った日から3か月が過ぎると、取消権(27条)は時効で消える
- あなたは親戚に500万円を貸している。その親戚が自宅を家族信託で子に移したと聞いた。原則として、信託前から持っていた一般の貸金債権では信託財産を差し押さえられない(23条)。ただし、信託前からその家に設定されていた抵当権は1項2号で追いかけられる。また、債権者を害すると知りながらした信託なら、詐害信託として取消しを求められる(11条)
- 不動産ファンドの受託者側で融資契約を担当している。貸し手と「信託財産だけから返済する」と合意すれば、その債権は2項4号に当たり、受託者の固有財産は責任財産から外れる。ノンリコースローンという呼び名の法的な根拠は、この一行の合意にある
取るべき行動
被害を受けた側:1. 信託の有無を不動産登記簿の信託目録で確認し、相手方が受託者かどうかを特定する2. 自分の債権が1項のどの号に当たるかを整理する3. 受益債権なら信託財産からしか回収できない。信託債権(受益債権以外の信託財産責任負担債務に係る債権)なら、限定責任信託の登記と責任財産限定特約がない限り、受託者の固有財産にも請求できる4. 委託者の債権者として請求する場合は、詐害信託(11条)の要件を検討する
訴えられた側:1. 請求された債務が2項の各号に当たるかを確認し、当たれば「信託財産限りの責任」と反論する2. 当たらずに固有財産から払った場合は、48条に基づいて信託財産から費用償還を受ける。信託財産が足りないときは、受益者と償還の合意(48条5項)があるかを確認する3. 今後の契約には責任財産限定特約を必ず入れる4. 自分の行為が権限外と争われそうなら、信託契約と意思決定の記録を保全する
時効(請求できる期限):21条自体に特定の時効はないが、一般消滅時効(民法166条、債権5年または10年)が適用される。受益債権の消滅時効は、受益者が受益者として指定されたことを知るまでは進行しない(102条)。受託者の権限外行為の取消権は、受益者が取消しの原因を知った時から3か月、行為の時から1年で消滅する(27条4項)(最新の改正状況をご確認ください)
学説
立案担当者解説・通説的理解:21条1項は信託財産が責任を負う債務の範囲を画し、23条の強制執行制限と表裏をなす。受託者は信託財産の名義人として取引当事者となるため、原則として固有財産でも責任を負い、2項の4類型に限り物的有限責任が認められる
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 旧信託法を全面的に改めた新信託法(平成19年9月30日施行)で新設された。信託財産責任負担債務の範囲と、受託者の物的有限責任が及ぶ場合を明文化した。その後の改正の有無と内容は人による検証が必要
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:信託法の全部改正(平成18年法律第108号、平成19年9月30日施行)により新設。信託財産責任負担債務の範囲と、受託者が信託財産のみで責任を負う場合を明文化した
- 信託法 第2条信託財産責任負担債務の定義(9項)
- 信託法 第23条信託財産への強制執行の制限
- 信託法 第100条受益債権の信託財産限定責任
- 信託法 第48条受託者の費用償還請求権
- 信託法 第216条限定責任信託の要件
- 民法 第717条所有者たる受託者の工作物責任
- 民法 第470条委託者債務の併存的債務引受
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