信託法 第20条(信託財産に属する財産についての混同の特例)
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- 同一物について所有権及び他の物権が信託財産と固有財産又は他の信託の信託財産とにそれぞれ帰属した場合には、民法第百七十九条第一項本文の規定にかかわらず、当該他の物権は、消滅しない。
- 2.所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が信託財産と固有財産又は他の信託の信託財産とにそれぞれ帰属した場合には、民法第百七十九条第二項前段の規定にかかわらず、当該他の権利は、消滅しない。
- 3.次に掲げる場合には、民法第五百二十条本文の規定にかかわらず、当該債権は、消滅しない。
- 一信託財産に属する債権に係る債務が受託者に帰属した場合(信託財産責任負担債務となった場合を除く。)
- 二信託財産責任負担債務に係る債権が受託者に帰属した場合(当該債権が信託財産に属することとなった場合を除く。)
- 三固有財産又は他の信託の信託財産に属する債権に係る債務が受託者に帰属した場合(信託財産責任負担債務となった場合に限る。)
- 四受託者の債務(信託財産責任負担債務を除く。)に係る債権が受託者に帰属した場合(当該債権が信託財産に属することとなった場合に限る。)
この条文の基本情報
信託財産に属する財産についての混同の特例とは何ですか?
定義信託財産に属する財産についての混同の特例とは、信託法第20条に定められた規定で、「同一物について所有権及び他の物権が信託財産と固有財産又は他の信託の信託財産とにそれぞれ帰属した場合には、民法第百七十九条第一項本文の規定にかかわらず、当該他の物…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第20条(信託財産に属する財産についての混同の特例)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第20条の条文原文は「同一物について所有権及び他の物権が信託財産と固有財産又は他の信託の信託財産とにそれぞれ帰属した場合には、民法第百七十九条第一項本文の規定にかかわらず、当該他の物…」で始まります。
- 信託法第20条は第二章 信託財産等に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第20条の前の条は信託法第19条です。
- 信託法第20条の次の条は信託法第21条です。
- 信託法第20条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第20条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第20条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/20
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法20条は、同じ物の所有権と抵当権等や債権と債務が信託財産と受託者の固有財産に分かれて帰属しても、民法の混同による消滅を生じさせないと定める特例である。
Q · 家族信託で預かった親の家に自分の抵当権が付いていたら、抵当権は消えるの?
消えない。信託財産と固有財産は別扱いのため混同しない
信託法20条1項により、同じ不動産の所有権が信託財産に、抵当権が受託者の固有財産にそれぞれ帰属する場合、民法179条1項の混同は生じず、抵当権は存続します。ただし、受託者がその抵当権を信託財産に対して行使することは、信託法31条の利益相反規制の対象となり、信託行為の定めや受益者の承認などの要件を満たす必要があります。権利が残ることと、行使してよいことは別問題です。
解説
民法には、権利を自動で消す仕組みがある。土地の所有者がその土地の抵当権まで手に入れれば、抵当権は役目を失って消える(民法179条)。貸した人と借りた人が同じになれば、債権も消える(民法520条)。自分が自分に請求する必要はないからだ。ところが信託では、この仕組みがそのまま働くと困る。受託者(財産を預かって管理する人)の名義は一つだが、手元には「預かった財産」と「自分の財産」という二つの財布がある。財布が違えば、利害も違う。本条は、この二つの財布の間(同じ受託者が抱える別の信託との間も含む)で所有権と抵当権、債権と債務が一人にそろっても、権利を消さないと定めている。権利が消えて損をするのは、財布の中身を最後に受け取る受益者か、受託者自身の債権者だ。家族信託で親の家を預かる子、自社の銀行勘定から信託口へお金を回す信託銀行。名義が一つにまとまる場面ほど、本条が目立たないところで権利を守っている
法的な位置づけ
信託法20条は混同の特例を定める規定であり、同一物の所有権と他の物権、所有権以外の物権とこれを目的とする権利、または債権と債務が、信託財産と固有財産もしくは他の信託の信託財産とにそれぞれ帰属した場合に、民法179条および520条による混同消滅を生じさせない旨を定める。信託財産の独立性を権利存続の面から担保する。
よくある質問 AI による整理
Q1信託法20条とは何ですか?
信託財産と受託者の固有財産の間で権利と義務が同じ受託者に集まっても、民法の混同で権利が消えないと定める特例規定です。
Q2混同とはどういう意味ですか?
同じ人に権利と義務、または所有権と制限物権がそろったとき、その権利が自動的に消える民法上の仕組みです(民法179条・520条)。
Q3受託者が受益者を兼ねると信託は終わりますか?
受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年間継続すると、信託は終了します(信託法163条2号)。本条の混同特例とは別のルールです。
Q4家族信託で受託者の子の抵当権は登記上どう扱われますか?
本条により抵当権は存続するため、抹消する必要はありません。信託登記と抵当権登記が並存する形になり、区分を記録で明確にしておくことが重要です。
Q5信託財産の債権を受託者が相殺できますか?
原則としてできません。信託法22条が相殺を制限しており、本条で債権が存続しても、相殺による回収は別途要件を満たす必要があります。
Q6他の信託との間でも混同は起きない?
起きません。本条は同じ受託者が管理する別の信託の信託財産との間にも適用され、信託ごとに権利を区別して存続させます。
Q7混同で消えたと処理された債権は取り戻せますか?
本条により債権は法的に存続しているため、帳簿の誤処理は是正を求められます。受託者の損失てん補責任(40条)を追及する余地もあります。
Q8信託法20条は信託業法にも関係しますか?
信託銀行や信託会社が受託者となる場合も信託法20条は適用されます。業者固有の行為規制は信託業法が別途定めています。
この条文についての質問 AI による整理
Q1親の家を信託で預かる前に、私が親に貸していたお金の抵当権ってどうなるんですか?
消えない。所有権は信託財産に、抵当権はあなたの固有財産に属するので、信託法20条1項により民法179条の混同は起きない。ただし、受託者であるあなたが信託財産にその抵当権を行使する場面は、31条の利益相反として厳しく見られる。実務のポイント:既存の貸付と担保を信託契約書に明記し、受益者の承認を取っておけば、後の兄弟間の争いの原因になりにくい
Q2信託銀行が、お客さんの信託のお金を自分の銀行に預けるのってアリなんですか?
利益相反取引にあたるが、信託法31条2項の要件(信託行為の定め、受益者の承認など)を満たせば許される。預金債権は信託財産に、払い戻す債務は銀行の固有財産側に属するので、20条3項1号により混同は起きず、預金は信託財産として残る。実務のポイント:運用報告書の資産明細で、預金先が受託者自身になっていないかを確認するとよい。そこを見るかどうかで、資金の置き場所に気付けるかが変わる
間違えやすい点 AI による整理
- 受託者がすべての名義人なのだから、所有権と抵当権の両方を受託者が持てば一本化されて抵当権は消える、と考えがちだ。実際は逆で、信託財産と固有財産(受託者自身の財産)は別の財布として扱われ、抵当権は残る
- 「混同で消えないなら、受託者は自分の抵当権を信託財産に実行してよいのか」という問いは、立て方がずれている。本条が決めるのは権利が残るかどうかだけで、行使してよいかは別の問題だ。受託者と信託の間の取引は信託法31条の利益相反規制を受け、相殺は22条で制限される。権利が残ることと、それを使ってよいことは別に判断される
- 受益者から見れば受託者の内部の帳簿処理に見えても、法律上は受益者の取り分そのものの問題だ。受託者が混同を理由に信託財産の債権を帳簿から落とせば、その分だけ信託財産が減る。これは分別管理義務(34条)違反や損失てん補責任(40条)の問題に直結する
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律の対象 | 信託法20条:権利が混同で消えるかどうか(存続の問題) | 信託法22条:信託財産に関する債権で相殺できるか 信託法31条:受託者と信託財産の間の取引が許されるか |
| 基本ルール | 信託財産と固有財産等に分かれて帰属すれば権利は消滅しない | 財産の区分をまたぐ相殺は原則として禁止 利益相反行為は原則として禁止 |
| 例外・許容要件 | 3項各号の括弧書き(信託財産責任負担債務となった場合等)で範囲を調整 | 法定の例外要件を満たす場合に限り相殺可能 信託行為の定め、受益者の承認など31条2項の要件を満たせば許容 |
| 受益者にとっての意味 | 信託財産に属する権利が帳簿処理一つで消えるのを防ぐ | 相殺による信託財産の流出を防ぐ 受託者が自己の利益のために権利を使うのを防ぐ |
他国ではどう定めているか 2 か国
信託財産が所有権以外の権利である場合、受託者がその権利の目的である財産権を取得しても混同により消滅しないと定める。日本の旧信託法の規定を継受したもので、債権の混同の類型化は日本の現行法ほど細かくない
2011年の全部改正後の韓国信託法も、信託財産に関する混同の特例を置く。日本の旧法を継受した経緯から構造が類似する
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 父の賃貸アパートを家族信託で預かることになった長男。実は数年前に父へ800万円を貸し、アパートに抵当権を付けていた。信託登記をした時点で、所有権(信託財産)と抵当権(長男の固有財産)が同じ長男の名義にそろう。本条1項がなければ抵当権は混同で消え、長男の800万円は担保のない貸付になっていた
- 同じ信託銀行がA信託とB信託を受託していて、A信託の資金でB信託に貸し付けたらどうなる? 債権者も債務者も名義上は同じ銀行だが、本条3項により債権は消えない。A信託の受益者は、B信託の財産から回収を求める立場を保てる。ただし、信託どうしの取引そのものは信託法31条の利益相反規制を受ける
- 受託者のあなたが、信託財産である地上権に、自分のお金で融資して抵当権を付けた。抵当権は本条2項で消えない。それでも、受益者からその融資が利益相反取引だと突かれる余地は残る
- 信託が終わり、清算受託者から最終計算の報告が届いた。帰属権利者(信託終了後に財産を受け取る人)のあなたが読み進めると、受託者個人が信託に負っていた借金が『混同により消滅』と処理されている。異議を述べられる期間は通知から1か月(信託法77条)。本条3項1号を根拠に、その期間内に書面で異議を出さなければ、計算を承認したものとみなされる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 信託の財産目録と受託者の固有財産との取引記録を受託者に請求する(受益者は帳簿などの閲覧・謄写を請求できる。信託法38条) 2. 『混同により消滅』『相殺済み』と処理された債権・担保がないか確認する3. 見つかったら、本条を根拠に、その権利が信託財産として残っていることを書面で指摘する4. 受託者が是正しなければ、損失てん補などを請求する(40条)。計算承認を求められている場合は、1か月以内に異議を出す
訴えられた側:1. 受託者として、信託財産・固有財産・ほかの信託財産の間で、同じ物や同じ債権に権利が重なっていないかを棚卸しする2. 重なっている権利は消えない前提で、帳簿と登記を区分して管理する(34条) 3. その権利を行使したり相殺したりする前に、31条・22条の要件(信託行為の定め、受益者の承認など)を満たしているか確認し、承認は書面で取る4. 帳簿で誤って消滅扱いにしていたら、気付いた時点で訂正し、受益者に報告する
時効(請求できる期限):本条そのものに特定の時効はなく、一般消滅時効(民法166条、債権5年または10年)が適用される。受託者の損失てん補責任などに関する債権については、受益者が受益者として指定されたことを知るまで時効が進まないなどの特則がある(信託法43条)。清算時の計算は、通知から1か月以内に異議を述べないと承認したものとみなされる(同77条)。(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:本条は信託財産の独立性を権利存続の面から具体化した規定であり、名義の同一性ではなく帰属する財産の区分を基準に混同の成否を判断する。権利の行使の可否は31条・22条等で別途規律されると解されている
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 旧信託法下の混同の特例を引き継ぎつつ、物権の混同(1項・2項)と債権の混同(3項各号)に分けて類型を明文化したとみられる。旧法との対応関係や施行後の改正の有無は人的検証が必要
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:旧信託法(大正11年法律第62号)を全面的に見直した新信託法の制定に伴い設けられた。旧法の混同特例を拡充し、物権の混同(1項・2項)と債権の混同(3項各号)に分けて規定
- 信託法 第2条固有財産・信託財産責任負担債務の定義
- 信託法 第22条信託財産に関する相殺の制限
- 信託法 第31条存続した権利の行使を縛る利益相反規制
- 信託法 第34条財布を区分する分別管理義務
- 民法 第179条物権の混同による消滅の原則
- 民法 第520条債権の混同による消滅の原則
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