信託法 第23条(信託財産に属する財産に対する強制執行等の制限等)
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- 信託財産責任負担債務に係る債権(信託財産に属する財産について生じた権利を含む。次項において同じ。)に基づく場合を除き、信託財産に属する財産に対しては、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売(担保権の実行としてのものを除く。以下同じ。)又は国税滞納処分(その例による処分を含む。以下同じ。)をすることができない。
- 2.第三条第三号に掲げる方法によって信託がされた場合において、委託者がその債権者を害することを知って当該信託をしたときは、前項の規定にかかわらず、信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者のほか、当該委託者(受託者であるものに限る。)に対する債権で信託前に生じたものを有する者は、信託財産に属する財産に対し、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売又は国税滞納処分をすることができる。
- 3.第十一条第一項ただし書、第七項及び第八項の規定は、前項の規定の適用について準用する。
- 4.前二項の規定は、第二項の信託がされた時から二年間を経過したときは、適用しない。
- 5.第一項又は第二項の規定に違反してされた強制執行、仮差押え、仮処分又は担保権の実行若しくは競売に対しては、受託者又は受益者は、異議を主張することができる。この場合においては、民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第三十八条及び民事保全法(平成元年法律第九十一号)第四十五条の規定を準用する。
- 6.第一項又は第二項の規定に違反してされた国税滞納処分に対しては、受託者又は受益者は、異議を主張することができる。この場合においては、当該異議の主張は、当該国税滞納処分について不服の申立てをする方法でする。
この条文の基本情報
信託財産に属する財産に対する強制執行等の制限等とは何ですか?
定義信託財産に属する財産に対する強制執行等の制限等とは、信託法第23条に定められた規定で、「信託財産責任負担債務に係る債権(信託財産に属する財産について生じた権利を含む。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第23条(信託財産に属する財産に対する強制執行等の制限等)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第23条の条文原文は「信託財産責任負担債務に係る債権(信託財産に属する財産について生じた権利を含む。」で始まります。
- 信託法第23条は第二章 信託財産等に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第23条の前の条は信託法第22条です。
- 信託法第23条の次の条は信託法第24条です。
- 信託法第23条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第23条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第23条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/23
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法23条は、信託財産に対しては信託財産責任負担債務の債権者しか強制執行や国税滞納処分をできないと定める。詐害的な自己信託には2年間の例外がある。
Q · 受託者が借金を抱えたら、その債権者は信託財産を差し押さえられるの?
原則できない。差押えできるのは信託財産の債務の債権者だけ
信託法23条1項により、信託財産に対して強制執行、仮差押え、仮処分、競売、国税滞納処分ができるのは、信託財産責任負担債務(21条)に係る債権者に限られます。受託者個人の債権者は信託財産に手を出せません。ただし、委託者が自らを受託者とする自己信託を詐害目的で設定した場合、信託前からの委託者の債権者は直接執行でき(2項)、この例外は信託から2年で消えます(4項)。違法な執行には受託者・受益者が異議を主張できます(5項・6項)。
解説
名義上は受託者の物でも、受託者の借金取りは手を出せない。信託法23条はこう決めている。信託に入れた財産を差し押さえられるのは、その信託財産について生じた債務(信託財産責任負担債務、固定資産税や修繕費など)の債権者だけである。受託者個人の債権者は差し押さえられないし、仮差押えも競売もできず、税務署の滞納処分も通らない。家族信託で親のアパートを息子名義にしても、息子の事業が傾いたときに息子の債権者はそのアパートを取れない。ただし穴もある。借金を抱えた人が「自分を受託者にする信託」(自己信託)を宣言して財産を隠そうとした場合、信託前からの債権者は、取消訴訟を経ずに直接差し押さえることができる(2項)。その抜け道が開いているのは信託から2年間だけである。誤って差し押さえられた側は、受託者でも受益者でも、裁判所に異議を出してはね返せる。この条文は、守る側にとっても取り立てる側にとっても、どの財産に手が届くかを決める線引きである
法的な位置づけ
信託法23条は、信託財産に対する強制執行等の制限を定める規定である。信託財産は受託者名義であっても受託者の固有財産から分離され、信託財産責任負担債務に係る債権者以外は執行できない。詐害的な自己信託については信託前の債権者に2年間の例外的な執行を認め、違法な執行には受託者または受益者が異議を主張できる。
手順
- 1.差押えの対象と根拠債権を確認する 差押命令や通知書を確認し、対象財産が信託財産か、債権者の債権が信託財産責任負担債務(信託法21条)にあたるかを特定する。受託者個人の債務であれば23条1項違反の可能性がある
- 2.信託財産であることの証拠をそろえる 信託登記の登記事項証明書、信託口口座の資料、分別管理の帳簿など、対象が信託財産であり第三者に対抗できることを示す資料を集める
- 3.第三者異議の訴えと執行停止を申し立てる 強制執行・仮差押え等に対しては、受託者または受益者が第三者異議の訴え(23条5項、民事執行法38条準用)を提起し、競売が迫っていれば同時に執行停止を申し立てる。強制執行が終了する前に動く必要がある
- 4.国税滞納処分なら不服申立てで争う 受託者個人の滞納を理由に信託財産が差し押さえられた場合は、訴訟ではなく、その滞納処分への再調査の請求または審査請求の方法で異議を主張する(23条6項)。期間制限があるため通知受領後すぐに準備する
よくある質問 AI による整理
Q1信託財産は差し押さえできる?
原則としてできません。信託法23条1項により、差押えが許されるのは信託財産責任負担債務に係る債権者だけで、受託者個人の債権者は執行できません。
Q2信託財産責任負担債務とは?
信託財産をもって履行する責任を負う債務のことで、信託法21条1項に列挙されています。信託事務の処理で生じた費用や、信託財産に属する財産について生じた権利などが含まれます。
Q3自己信託とは?
委託者が自分自身を受託者として、自己の財産を信託財産とする信託です。信託法3条3号が定め、公正証書等による意思表示で設定します。
Q4自己信託の財産 差し押さえ いつまでできる?
詐害的な自己信託に対する直接の差押えは、信託がされた時から2年間に限られます(23条4項)。期間経過後は11条の詐害信託取消しによる必要があります。
Q5信託財産に国税の滞納処分はできる?
受託者個人の滞納を理由とする滞納処分はできません。違反した処分には、受託者または受益者がその処分への不服申立ての方法で異議を主張します(23条6項)。
Q6信託登記をしないとどうなる?
登記・登録すべき財産は、信託の登記がなければ信託財産であることを第三者に対抗できません(14条)。受託者の債権者による差押えを防げなくなるおそれがあります。
Q7受益権は差し押さえできる?
受益者の債権者は、信託財産そのものではなく受益者が持つ受益権を差し押さえることが考えられます。23条が制限するのは信託財産に対する執行です。
Q8信託財産を誤って差し押さえられたら違法?
23条1項・2項に反する執行は許されず、受託者または受益者は民事執行法38条(第三者異議の訴え)等を準用して異議を主張できます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1家族信託にしておけば、親の借金から実家を守れるってほんと?
期待しているのとは方向が逆である。23条1項が主に守るのは、受託者(子)個人の債権者からである。信託前からある親の借金は、詐害信託の取消し(11条)で信託そのものが崩される可能性がある。実務のポイント:借金があると分かったうえで信託を組み、あとで取り消されると、登記費用や公正証書の費用が丸ごと無駄になるうえ、財産を隠そうとしたと疑われる。家族信託の相談を受ける専門家が最初に親の負債を確認するのは、このためである
Q2受託者の自分が自己破産したら、預かってる親の不動産も持っていかれる?
信託財産は破産財団に属しない(25条1項)。強制執行も23条1項で禁じられている。ただし、信託の登記がされていて、預金も自分の口座と分けて管理されていることが前提になる(14条、34条)。実務のポイント:信託の預金を受託者個人名義の普通口座で管理していると、自分の財産と区別がつかず、信託財産であることを主張しにくくなる。この点の扱いは、実務上、解釈が分かれている。金融機関の「信託口口座」を開いておけば、この争いの多くを避けられる
Q3信託してるアパートの修繕代を払わなかったら、業者に差し押さえられる?
差し押さえられる。信託事務の処理で生じた債務は信託財産責任負担債務(21条1項)にあたり、23条1項の例外になる。実務のポイント:信託財産責任負担債務の中には、受託者個人の財産も引当てになるものがある(21条2項の例外を除く)。受託者が業者と契約するときに責任限定の特約を結んでいないと、自分の給料口座まで請求されることがある。契約書の当事者欄に「受託者として」と明記するのが自衛の基本である
間違えやすい点 AI による整理
- 「信託に入れれば、どんな借金からも財産を守れる」と思われがちだが、守られるのは主に受託者個人の債権者からである。信託前から委託者に債権を持っていた者は、詐害信託の取消し(11条)で信託そのものを崩せるし、自己信託なら23条2項で取消訴訟なしに直接差し押さえられる。さらに受益者の債権者は、信託財産そのものではなく受益権を差し押さえることができる
- 「信託財産は結局だれの物なのか」という問いの立て方が、そもそも的を外している。所有名義は受託者にあるが、責任財産としては受託者の固有財産から切り離されている。大事なのは「だれの物か」ではなく「どの債権の引当てになっているか」である。そう問い直すと、21条の信託財産責任負担債務の一覧が、差押えの可否を決める表として読めるようになる
- 2項の抜け道は知っていても、その期限の短さが見落とされている。自己信託の時から2年が過ぎると2項は適用されなくなり(4項)、残る手段は11条の詐害信託取消訴訟という重い手続だけになる。債務者の自己信託に気付いたのに様子見をしている債権者は、強制執行で済んだはずの回収を、時間をかけて訴訟で取りにいくことになる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律する場面 | 信託法23条:平時の強制執行・保全・滞納処分の制限 | 信託法25条:受託者が破産した場合の破産財団からの除外 信託法11条:委託者の債権者による詐害信託の取消し |
| 誰を止めるか/誰を救うか | 受託者個人の債権者の執行を止める(詐害的自己信託は信託前の債権者に例外) | 受託者の破産債権者に対し信託財産を隔離 委託者の債権者が信託そのものを取り消せる |
| 手続の重さ | 2項の場合は取消訴訟なしで直接執行(信託から2年以内) | 破産手続上、信託財産は当然に破産財団に属しない 裁判所への取消請求が必要で、受益者の善意等が争点 |
他国ではどう定めているか 5 か国
台湾も信託財産への強制執行を原則禁止し、信託前に存在した権利や信託財産の管理処分で生じた権利に基づく場合を例外とする構造で、日本と近い。
韓国も信託財産への強制執行等を原則禁止し、違反した執行には受託者・受益者の異議を認める。自己信託(信託宣言)も導入されている。
中国は信託財産への強制執行を原則禁止し、信託前の担保権や信託事務処理で生じた債務など限定列挙の例外を置く。
フランスのフィデュシーでは、信託的財産は原則として財産の保存・管理から生じた債権の権利者のみが差し押さえられる。
米国統一信託法典は、受託者個人の債権者は信託財産に執行できないとし、受託者の破産時も信託財産は保護される。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 父の賃貸アパートを家族信託で長男名義にした3年後、長男の飲食店が倒産した。長男の取引先がアパートの差押えを申し立ててくる。信託登記が入っていれば、受益者である父は第三者異議の訴えでこれをはね返せる。登記を後回しにしていたなら、話はまったく違ってくる
- もし税務署が、受託者になっている兄の滞納を理由に、信託口口座の預金を差し押さえてきたら? 兄個人の国税は信託財産に対して執行できない。異議は裁判ではなく、その滞納処分への不服申立ての方法で出すことになる
- 取引先の社長に800万円を貸していたあなた。返済が滞りはじめた矢先、社長が公正証書で「自己信託」を設定し、自宅と預金を信託財産に移していた。社長が受託者、受益者は妻。社長が債権者を害すると知っていたなら、あなたは詐害信託の取消訴訟を起こさなくても、信託財産を直接差し押さえられる。期限は信託の時から2年である
- 差押えの通知が届き、競売の開始が迫っている。信託財産なら、第三者異議の訴えと執行停止の申立てを今週中に出す
- あなたは信託銀行で不動産信託の事務を担当している。受託者である自社の資産と信託財産の帳簿が混ざっていると、どれが信託財産なのか特定できなくなり、23条の盾を主張しにくくなる。分別管理を怠ると、顧客の財産を守る根拠そのものが弱くなる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 信託財産が受託者個人の債務を理由に差し押さえられたら、まず信託契約書、信託登記の登記事項証明書、信託口口座の資料をそろえる2. 強制執行や仮差押えに対しては、受託者または受益者が第三者異議の訴え(23条5項、民事執行法38条の準用)を起こし、同時に執行停止を申し立てる3. 国税の滞納処分であれば、再調査の請求や審査請求といった不服申立てで争う(23条6項) 4. 差押債権者が、信託財産責任負担債務(21条)にあたると主張してきたら、その債権が信託事務から生じたものかどうかを具体的に争う
訴えられた側:1. 信託財産を差し押さえようとしている債権者の側なら、まず自分の債権が21条の信託財産責任負担債務にあたるかを確認する。あたらなければ執行は覆される2. 債務者の自己信託に対抗する場合は、信託前に生じた債権であること、委託者の詐害の認識、受益者の悪意(11条1項ただし書の準用)を立証する資料を固める3. 2年の期限を過ぎていれば11条の取消訴訟に切り替え、あわせて受益者の受益権の差押えも検討する
時効(請求できる期限):自己信託に対する2項の直接執行は、信託がされた時から2年で使えなくなる(23条4項)。第三者異議の訴えは、強制執行が終わるまでに提起する必要がある。国税の滞納処分への不服申立ては、原則として処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内(国税通則法77条。最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:信託財産は受託者に帰属するが、受託者の固有財産とは別個の責任財産を構成する。23条はこの独立性を執行法上で担保する規定であり、25条の破産隔離と対をなす。
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正(平成19年施行) 旧信託法16条にあった信託財産への強制執行の禁止を引き継いで現行23条とし、自己信託の解禁にあわせて、詐害的な自己信託に対する直接執行(2項)と2年の期間制限(4項)、国税滞納処分への異議(6項)を定めた。その後の改正の有無は人による確認が必要である
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 改正:信託法全部改正(平成19年施行)。旧信託法16条の信託財産への強制執行禁止を引き継ぎ、自己信託の解禁にあわせて詐害的自己信託への直接執行(2項)、2年の期間制限(4項)、国税滞納処分への異議(6項)を定めた。
- 信託法 第21条執行可能な信託財産責任負担債務の範囲
- 信託法 第11条詐害信託の取消し、2項の準用元
- 信託法 第14条信託の登記がないと第三者に対抗不可
- 信託法 第25条受託者破産時も破産財団に属しない
- 信託法 第3条自己信託(3号)の方法の定め
- 民事執行法 第38条第三者異議の訴え、5項で準用
- 民事保全法 第45条保全執行への異議、5項で準用
- 民法 第424条詐害行為取消権、詐害信託規律の一般法
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