信託法 第24条(費用又は報酬の支弁等)
クイックジャンプ
- 前条第五項又は第六項の規定による異議に係る訴えを提起した受益者が勝訴(一部勝訴を含む。)した場合において、当該訴えに係る訴訟に関し、必要な費用(訴訟費用を除く。)を支出したとき、又は弁護士、弁護士法人、弁護士・外国法事務弁護士共同法人、司法書士若しくは司法書士法人に報酬を支払うべきときは、その費用又は報酬は、その額の範囲内で相当と認められる額を限度として、信託財産から支弁する。
- 2.前項の訴えを提起した受益者が敗訴した場合であっても、悪意があったときを除き、当該受益者は、受託者に対し、これによって生じた損害を賠償する義務を負わない。
この条文の基本情報
費用又は報酬の支弁等とは何ですか?
定義費用又は報酬の支弁等とは、信託法第24条に定められた規定で、「前条第五項又は第六項の規定による異議に係る訴えを提起した受益者が勝訴(一部勝訴を含む。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第24条(費用又は報酬の支弁等)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第24条の条文原文は「前条第五項又は第六項の規定による異議に係る訴えを提起した受益者が勝訴(一部勝訴を含む。」で始まります。
- 信託法第24条は第二章 信託財産等に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第24条の前の条は信託法第23条です。
- 信託法第24条の次の条は信託法第25条です。
- 信託法第24条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第24条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第24条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/24
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法24条は、信託財産への違法な差押えに異議の訴えを起こした受益者が勝訴した場合、弁護士報酬等を相当額まで信託財産から支弁すると定める。
Q · 受益者が信託財産の差押えに異議の訴えを起こしたら、弁護士費用は誰が払うの?
勝訴すれば相当額まで信託財産から出る。敗訴でも悪意なければ賠償不要
信託法24条1項により、23条5項・6項の異議の訴えを提起した受益者が勝訴(一部勝訴を含む)した場合、訴訟費用を除く必要費用と、弁護士・弁護士法人・弁護士・外国法事務弁護士共同法人・司法書士・司法書士法人への報酬は、相当と認められる額を限度に信託財産から支弁されます。同条2項により、敗訴しても悪意がなければ、受託者への損害賠償義務は負いません。ただし相当額を超える報酬は自己負担です。
解説
勝てば弁護士報酬は信託財産から出る。負けても、悪意がなければ受託者に賠償しなくてよい。信託法24条は、差し押さえられた信託財産を守るために受益者が動くときの「持ち出しの負担」を軽くする条文である。前提になるのは23条だ。受託者個人の借金を理由に信託財産へ強制執行(裁判所の力で財産を差し押さえて換金する手続)をかけることは、原則として禁じられている。この禁止に反した執行に対しては、受託者か受益者が異議を出せる。現実には、受託者が動かないことがある。差押えを受けたのが受託者本人で、腰が重いこともある。そこで受益者が自分で訴えて勝ったとき、訴訟費用を除く実費と、弁護士や司法書士の報酬が、相当と認められる額を上限に信託財産から支払われる。気をつけたい点は二つある。払われるのは請求書の全額ではなく「相当額」までであること。そして受益者が一人だけの家族信託では、信託財産から払う分は結局、自分の取り分から出ていくことだ。
法的な位置づけ
信託法24条は、信託財産に対する違法な強制執行等について、同法23条5項・6項に基づく異議の訴えを提起した受益者の費用負担を定める規定である。勝訴(一部勝訴を含む)の場合、訴訟費用を除く必要費用と弁護士・司法書士等への報酬は相当額を限度に信託財産から支弁され、敗訴の場合も悪意がない限り受託者への損害賠償義務を負わない。
手順
- 1.差押え対象が信託財産であることを確認 差押え・競売の通知を受けたら、不動産登記簿の信託登記、信託契約書、信託目録を取り寄せ、対象が信託財産であること、債権が信託財産責任負担債務(信託法21条)に当たらないことを確認する
- 2.受託者に異議を出すよう書面で求める 本来の異議の担い手は受託者である。受託者に対し、信託法23条5項に基づき異議を出すよう書面で求め、対応期限を明示する。返答がない・動かない場合に備え、並行して受益者自身の提訴準備を進める
- 3.専門家と委任契約し、報酬の算定根拠を確認 弁護士または司法書士に相談し、委任契約を結ぶ前に着手金・報酬金の算定根拠を書面で受け取る。信託財産から支弁されるのは相当額までであり、超過分は自己負担になる点を前提に契約内容を判断する
- 4.異議の訴えと執行停止の申立てを同時に行う 受益者として第三者異議の訴え(信託法23条5項、民事執行法38条準用)を提起し、同時に執行停止の申立てを行う。訴えだけでは競売は止まらないため、開札・売却の前に停止決定を得ることが重要
- 5.勝訴後、受託者に信託財産からの支弁を求める 勝訴(一部勝訴を含む)したら、支出した必要費用と専門家報酬の領収書・請求書をまとめ、受託者に対し信託法24条1項に基づき相当額を信託財産から支弁するよう書面で請求する
よくある質問 AI による整理
Q1受託者の借金で信託財産は差し押さえられる?
原則として差し押さえられません。信託法23条1項は、信託財産責任負担債務(21条)以外の債権による信託財産への強制執行等を禁じています。違反した執行には異議を出せます。
Q2第三者異議の訴えとは?
執行の対象が債務者の財産ではないと主張し、執行の排除を求める訴えです。信託法23条5項は、受託者または受益者がこの手続(民事執行法38条準用)で異議を出せると定めます。
Q3家族信託の自宅が差し押さえられたらどうする?
信託登記と信託契約書で信託財産であることを確認し、受託者に異議を求めます。動かなければ受益者が異議の訴えと執行停止の申立てを同時に行うのが基本です。
Q4信託法24条の「相当と認められる額」とは?
実際に支払った報酬の全額ではなく、事案の難易度や訴訟の規模などから見て相当といえる範囲の額です。この上限を超えた報酬は受益者の自己負担になります。
Q5司法書士への報酬も信託財産から出せる?
出せます。条文は弁護士・弁護士法人・弁護士・外国法事務弁護士共同法人に加え、司法書士・司法書士法人への報酬も対象として明記しています。上限は相当額です。
Q6一部勝訴でも費用は信託財産から出る?
出ます。信託法24条1項は「勝訴(一部勝訴を含む。)」と明記しています。差押え対象の一部だけ執行が排除された場合でも、支弁の対象になります。
Q7信託財産の差押えへの異議はいつまでに出す?
第三者異議の訴えは執行手続が終わる前でなければ実益がありません。競売なら売却・配当の完了前です。訴えと同時に執行停止を申し立てるのが安全です。
Q8国税の滞納処分による差押えにも24条は使える?
使えます。24条は23条6項(滞納処分に対する異議)に係る訴えも対象にしています。ただし不服申立ての期間制限があるため、早めの対応が必要です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1受益者が自分で訴えるのと、受託者に任せるのと、どっちがいいんですか?
本来は受託者が異議を出すべき立場で、その費用は48条により信託財産から償還される。受託者が動かないときに受益者が自ら訴える場合の費用を手当てするのが24条だ。実務のポイント:差押えを受けているのが受託者本人だと、債権者との関係から本気で争わないことがある。受託者の対応が鈍いと感じたら、受益者が自分で訴える前提で準備を進めておくほうが確実である
Q2勝ったら相手の債権者に弁護士費用を払わせられないんですか?
日本では、印紙代などの訴訟費用は敗訴者の負担になる(民事訴訟法61条)。一方、弁護士報酬は原則として各自の負担である。24条は、その弁護士報酬を信託財産で吸収する仕組みだ。実務のポイント:差押えが明らかに違法で悪質なら、債権者に不法行為(民法709条)として弁護士費用の一部を請求できる余地がある。ただし認められる範囲は事案によって異なる
Q3負けたら受託者や他の受益者から責任を問われますか?
24条2項により、悪意がない限り、受託者への損害賠償義務は負わない。ここでいう悪意とは、勝ち目がないと分かっていながら訴えたような場合を指すと解されている。実務のポイント:免責されるのは受託者との関係だけである。相手の債権者に対する不当訴訟の責任は別に考える必要があるため、提訴前に登記と契約書で信託財産であることを固めておく
間違えやすい点 AI による整理
- 「勝ったのだから弁護士費用は全額戻る」と考えがちだが、条文は「その額の範囲内で相当と認められる額を限度として」と書いている。着手金や成功報酬を高く設定する事務所と契約すると、相当額を超えた部分は自分の負担になる。契約前に報酬の根拠を書面で確認しておく価値がある
- 家族信託の受益者は「費用は信託財産から出るから自分の懐は痛まない」と安心しがちだ。だが自分が唯一の受益者なら、信託財産は自分のための財産そのものであり、出ていく報酬は将来自分が受け取る分を確実に減らす。24条が本当に効くのは、手元の現金を減らさずに動けるという点と、受益者が複数いるときに負担が分散するという点である
- 24条2項の免責を「負けても誰にも責任を負わない」と読むのは誤りだ。この項が守るのは、受託者に対する賠償義務についてだけである。差押えをした債権者に対して、根拠のない訴えで損害を与えれば、不当訴訟として民法709条の責任を問われる余地は残る。判例上、そのハードルは高いとされている
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 費用が問題になる場面 | 信託法24条:受益者が23条5項・6項の異議の訴えを提起 | 信託法45条:受益者が44条の差止め請求の訴えを提起 信託法48条:受託者が信託事務の処理で費用を支出 |
| 誰の費用か | 受益者が支出した必要費用・専門家報酬 | 受益者が支出した必要費用・専門家報酬 受託者が固有財産から支出した費用 |
| 信託財産からの支払いの範囲 | 勝訴(一部勝訴含む)時、相当額を限度に支弁 | 24条と同型の費用支弁規定(相当額が限度) 信託事務処理に必要と認められる費用の償還 |
| 敗訴時の扱い | 悪意がなければ受託者への賠償義務なし(2項) | 24条と同型の免責規定を置く 敗訴を前提とする規定ではない |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も信託財産への強制執行を原則禁止し、委託者・受益者・受託者が執行手続終結前に異議の訴えを提起できる。訴訟費用の信託財産負担を明文で定める日本24条のような規定は置かれていない
韓国も信託財産への強制執行を原則禁止し、違反した執行に対する異議を認める。2011年の全部改正で受託者・受益者による防衛手段が整理された
中国も信託財産への強制執行を原則禁止し、委託者・受託者・受益者が人民法院に異議を申し立てられる。費用の信託財産負担に関する個別規定はない
米国の統一信託法典は、信託財産が受託者個人の債務に服さないと定める。受益者の訴訟費用は裁判所の裁量(UTC § 1004等)で信託財産から認められうる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 家族信託で父の自宅を長男に託した。長男のカードローン滞納のせいで、その自宅に差押えがかかった。登記簿上の名義は長男でも、信託登記があれば信託財産だと分かる。受益者である父が第三者異議の訴えを起こして勝てば、弁護士報酬の相当額は信託財産から支払われる。父が年金から自腹を切る必要はない
- 受託者が自分の債権者と揉めたくなくて、信託財産への差押えを放置したらどうなるか? 受益者が自分で訴えるしかない。そのとき24条があるので、受益者は「費用は信託持ちになる」と分かったうえで弁護士に依頼できる
- あなたは受託者の債権者で、信託財産だと知らずに不動産を差し押さえた。受益者から異議訴訟を起こされて負ければ、手続は止まる。そのうえ相手の弁護士費用まで信託財産から出るので、受益者側は和解を急ぐ理由がない
- 競売の開札まであと3週間。受益者が異議訴訟を起こしただけでは、競売は止まらない。訴えの提起と同時に執行停止の申立てをしなければ、勝つ前に家が売られる
- 受益者が三人いる収益不動産の信託で、一人だけが異議訴訟を担った。勝訴後の報酬が信託財産から出ると、コストは三人で薄く分け合う形になる。一人だけが損をかぶる構図にならない
取るべき行動
被害を受けた側:1. 差押え・競売の通知を受け取ったら、信託登記の有無と信託契約書を確認し、対象が信託財産であることを示す資料をそろえる2. 受託者に異議を出すよう書面で求める。動かないなら受益者として第三者異議の訴えを起こし、執行停止も同時に申し立てる3. 専門家と委任契約を結ぶ前に、報酬が「相当額」の範囲に収まるか、算定根拠を書面で確認する4. 勝訴したら、受託者に信託財産からの支弁を求める
訴えられた側:1. 差押えをした債権者の立場なら、対象財産が信託財産かどうかを登記で再確認し、信託財産責任負担債務(21条)に当たる請求かどうかを検討する2. 当たらなければ、早めに差押えを取り下げて訴訟費用の負担を避ける3. 受託者の立場なら、自分で異議を出すのが本来の役割である。放置すると善管注意義務違反を問われるおそれがある。異議にかかる費用は48条で信託財産から償還を受けられる
時効(請求できる期限):第三者異議の訴えは、執行手続が終わる前(競売なら売却・配当が完了する前)でなければ実益がない。国税滞納処分に対する不服申立ては、原則として処分を知った日の翌日から3か月以内に行う(国税通則法77条。最新の改正状況をご確認ください)。信託財産への費用請求そのものに特定の時効はないが、一般消滅時効(民法166条、債権5年または10年)が適用される
学説
立法趣旨に関する一般的理解:受益者による異議の訴えは受益者全体の利益を守るものであるため、勝訴時の費用を信託財産に負担させ、敗訴時も悪意がなければ受託者への賠償責任を免除して、受益者の権利行使の萎縮を防ぐ趣旨とされる。会社法の株主代表訴訟における費用規定と同様の構造をもつ
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)信託法全部改正 大正11年の旧信託法を全面的に改めた現行信託法に、受益者の異議訴訟の費用支弁と敗訴時の免責を定める規定として置かれた(旧法に対応する規定があったかは要確認)
- 令和期の外国弁護士法関連改正(年次要確認) 報酬の支払先に「弁護士・外国法事務弁護士共同法人」が加えられたとみられる。改正年と施行日は人による確認が必要
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:信託法全部改正(平成18年法律第108号)により、受益者が23条の異議の訴えを提起した場合の費用支弁と敗訴時の免責を定める規定として置かれた
- 2.令和2年(2020年) 改正:外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の改正に伴い、報酬の支払先に「弁護士・外国法事務弁護士共同法人」が加えられた(施行日は要確認)
- 信託法 第23条信託財産への強制執行の禁止と異議の根拠
- 信託法 第21条信託財産に執行できる債務の範囲
- 信託法 第45条受益者の差止め訴訟等における同種の費用支弁
- 信託法 第48条受託者が支出した費用の信託財産からの償還
- 民事執行法 第38条第三者異議の訴えの手続を準用
- 民事訴訟法 第61条訴訟費用は別枠で敗訴者負担
- 会社法 第852条株主代表訴訟における同趣旨の費用請求
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める