信託法 第45条(費用又は報酬の支弁等)
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- 第四十条、第四十一条又は前条の規定による請求に係る訴えを提起した受益者が勝訴(一部勝訴を含む。)した場合において、当該訴えに係る訴訟に関し、必要な費用(訴訟費用を除く。)を支出したとき、又は弁護士、弁護士法人、弁護士・外国法事務弁護士共同法人、司法書士若しくは司法書士法人に報酬を支払うべきときは、その費用又は報酬は、その額の範囲内で相当と認められる額を限度として、信託財産から支弁する。
- 2.前項の訴えを提起した受益者が敗訴した場合であっても、悪意があったときを除き、当該受益者は、受託者に対し、これによって生じた損害を賠償する義務を負わない。
この条文の基本情報
費用又は報酬の支弁等とは何ですか?
定義費用又は報酬の支弁等とは、信託法第45条に定められた規定で、「第四十条、第四十一条又は前条の規定による請求に係る訴えを提起した受益者が勝訴(一部勝訴を含む。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 信託法第45条(費用又は報酬の支弁等)は、日本の信託法に含まれる条文です。
- 信託法第45条の条文原文は「第四十条、第四十一条又は前条の規定による請求に係る訴えを提起した受益者が勝訴(一部勝訴を含む。」で始まります。
- 信託法第45条は第三節 受託者の責任等に置かれています。
- 信託法の公布日は平成18年12月15日です。
- 信託法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 信託法第45条の前の条は信託法第44条です。
- 信託法第45条の次の条は信託法第46条です。
- 信託法第45条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
信託法(平成十八年法律第百八号)第45条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108 - 本サイト収録
信託法(平成十八年法律第百八号)第45条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/418AC0000000108/45
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点信託法45条は、受益者が受託者を訴えて一部でも勝訴すれば、弁護士報酬等の相当額を信託財産から支弁すると定める。敗訴しても悪意がなければ賠償義務はない。
Q · 受託者を訴えて勝ったら、弁護士費用は信託財産から出してもらえるの?
一部でも勝てば相当額は出る。ただし全額とは限らない
信託法45条1項により、40条・41条・44条に基づく訴えで受益者が勝訴(一部勝訴を含む)した場合、訴訟費用を除く必要な費用と、弁護士・司法書士等への報酬のうち「相当と認められる額」を限度として、信託財産から支弁されます。印紙代などの訴訟費用は民事訴訟法61条の敗訴者負担のままです。また同条2項により、敗訴しても悪意がない限り、受託者に対する損害賠償義務は負いません。
解説
受託者が信託財産を使い込んでいると気づいても、多くの受益者は訴訟をためらう。弁護士費用は自腹になるうえ、勝って取り戻したお金は自分の口座ではなく信託財産に戻るだけだからだ。費用は自分が払い、利益はみんなで分ける。そういう割に合わない構造がある。本条はその計算を書き換える。損失てん補(40条)、法人受託者の役員の連帯責任(41条)、差止め(44条)の訴えで一部でも勝てば、調査費などの必要な費用と、弁護士・司法書士への報酬のうち相当な額を、信託財産から払わせることができる。負けた場合も、悪意(請求に根拠がないと知りながら訴えたような場合)がない限り、受託者に損害賠償をする義務はない。誠実に動く受益者にとって、リスクは主に自分の弁護士費用と、負けたときの訴訟費用に絞られる。ただし限界が二つある。訴訟費用(印紙代など)は民事訴訟法の敗訴者負担のまま残ること、そして報酬が支払われるのは全額ではなく「相当額」までであることだ。この二つを知ったうえで監視役として動けるかどうかが、結果を分ける。
法的な位置づけ
信託法45条は、受益者が受託者の責任を追及する訴え(40条・41条・44条に基づく請求)を提起して勝訴または一部勝訴した場合に、訴訟費用を除く必要な費用および弁護士・司法書士等への報酬のうち相当と認められる額を信託財産から支弁させ、敗訴時には悪意がない限り受託者に対する損害賠償義務を免除する規定である。
よくある質問 AI による整理
Q1信託法45条とは何ですか?
受益者が受託者の責任を追及する訴えで一部でも勝訴した場合、必要な費用と弁護士等の報酬の相当額を信託財産から支弁させる規定です。
Q2家族信託で受託者を訴える費用は誰が払う?
まずは訴えた受益者が負担します。ただし40条・41条・44条の訴えで一部でも勝訴すれば、報酬等の相当額は信託財産から支弁されます。
Q3一部勝訴でも信託法45条の対象になる?
なります。条文が「一部勝訴を含む」と明記しており、請求額の一部しか認められなかった場合でも費用・報酬の支弁を求められます。
Q4司法書士の報酬も信託財産から払ってもらえる?
払ってもらえます。45条1項は弁護士・弁護士法人に加え、司法書士・司法書士法人への報酬も対象と明記しています。相当額が上限です。
Q5印紙代は信託財産から出せる?
出せません。45条1項は「訴訟費用を除く」としており、印紙代や送達費用などの訴訟費用は民事訴訟法61条の敗訴者負担の原則に従います。
Q6受託者の不正を調べる調査費用も対象になる?
当該訴訟に関して支出した「必要な費用」に当たれば、相当額の範囲で対象になり得ます。領収書や支出の必要性を示す資料を残しておくことが重要です。
Q7信託法45条の「悪意」とはどういう意味?
請求に根拠がないと知りながら訴えたような場合を指すと解されます。悪意があれば2項の保護は外れ、受託者への損害賠償義務を負い得ます。
Q8帳簿閲覧請求の訴えも45条で費用が出る?
条文上の対象は40条・41条・44条に基づく請求の訴えに限られます。38条の帳簿等閲覧請求などそれ以外の訴えは、本条の文言上は対象外です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1兄を訴えて負けたら、兄の弁護士費用まで払わされるんですか?
悪意がない限り、受託者に対する損害賠償義務は負わない(信託法45条2項)。根拠がないと知りながら訴えたような場合でなければ守られる。ただし印紙代などの訴訟費用は敗訴者負担(民事訴訟法61条)である。実務のポイント:通常の不当訴訟では「根拠がないと容易に知り得た」場合も責任を問われうる(最判昭和63.1.26)。本条は責任を悪意の場合に絞っているので、受益者は一般の原告より守られている
Q2勝ったら、払った弁護士費用は全額戻ってきますか?
戻るとは限らない。本条1項は「相当と認められる額を限度として」としており、委任契約の金額がそのまま認められる保証はない。回復額や事案の難しさが考慮されると解されている。実務のポイント:着手金を厚く、成功報酬を薄くする契約は、敗訴した場合の自己負担を重くする。支弁は勝訴が前提なので、成功報酬の比率を高めた契約のほうが本条と相性がよい
Q3兄が信託財産をほぼ使い切っていたら、支弁してもらう財源がないのでは?
支弁の財源は信託財産に限られ、本条は受託者の個人資産から直接報酬を取る規定ではない。ただし40条の損失てん補判決で受託者に補填させることができれば、信託財産は回復する。実務のポイント:受託者に資力がなければ、判決を取っても補填させられない。訴える前に受託者個人の不動産や預金に仮差押えをかけられないか検討する。順番を間違えると、勝訴判決だけが手元に残る
間違えやすい点 AI による整理
- 「負けても賠償責任がないなら、訴訟はタダで起こせる」と考えるのは誤りである。本条2項が免除しているのは、受託者に対する損害賠償だけだ。自分の弁護士費用は負けた時点で自腹が確定し、印紙代などの訴訟費用は民事訴訟法61条により敗訴者が負担する。リスクはゼロではなく、範囲が限られているにすぎない
- 「勝ったら、受託者から弁護士費用を取れるのか」という問いの立て方がそもそもずれている。本条が支払元として定めているのは受託者個人の財布ではなく信託財産である。信託財産が減れば、ほかの受益者の取り分も実質的に減る。兄弟三人が受益者なら、あなたの弁護士報酬は兄弟全員で薄く負担していることになる。取り戻せるかどうかより先に、誰の財布から出るのかを確認すべきだ
- 報酬が支弁されると知っている人でも、上限の厳しさは知らないことが多い。支弁されるのは「その額の範囲内で相当と認められる額」までである。委任契約で約束した着手金や成功報酬が、そのまま認められるとは限らない。同じ構造をもつ株主代表訴訟の費用請求(会社法852条)でも、回復額などを踏まえて金額が争われることがある。全額戻る前提で弁護士と契約すると、差額は自分にかかってくる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 対象となる訴え | 信託法40条(損失てん補)・41条(役員の連帯責任)・44条(差止め)の訴え | 会社法852条:株主代表訴訟(責任追及等の訴え) 民事訴訟法61条:すべての民事訴訟 |
| 費用の負担先 | 信託財産から支弁 | 株式会社に対して支払を請求 敗訴者が訴訟費用を負担 |
| 対象費用と上限 | 訴訟費用を除く必要な費用・弁護士等の報酬のうち相当額 | 訴訟費用を除く必要な費用・弁護士等の報酬のうち相当額 印紙代などの訴訟費用のみ(弁護士報酬は原則含まない) |
| 敗訴した原告の責任 | 悪意がない限り、受託者への損害賠償義務なし | 悪意がない限り、会社への損害賠償義務なし 訴訟費用を負担(不当訴訟なら民法709条の責任もあり得る) |
他国ではどう定めているか 2 か国
台湾でも受益人は受託人の義務違反に対して損害賠償・回復原状を請求できるが、訴訟報酬を信託財産から支弁させる明文規定は置かれていない
信託の運営に関する司法手続において、裁判所は正義と衡平の要請に応じ、合理的な弁護士費用を含む費用を他の当事者または信託財産から支払わせることができる。日本法より裁判所の裁量が広い
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 家族信託で、父の賃貸マンションを長男が受託者として管理している。ところが賃料の一部が長男の個人口座へ流れた形跡がある。受益者である次男のあなたは、弁護士の見積もり100万円を見て黙っていた。しかし40条の損失てん補請求で一部でも勝てば、報酬のうち相当額は信託財産から出る。黙っている理由の半分は、すでに消えている
- もし訴えて負けたら、受託者の兄から「濡れ衣で名誉を傷つけられた、俺の弁護士費用を払え」と逆に請求されるのだろうか? 根拠がないと知りながら訴えたのでなければ、本条2項により受託者への賠償義務はない。ただし印紙代や送達費用といった訴訟費用は、民事訴訟法61条の原則どおり敗訴者負担になる
- あなたは信託会社の担当者で、受益者から起こされた損失てん補訴訟で一部敗訴した。判決後、受益者の代理人から「弁護士報酬300万円を信託財産から支弁せよ」と通知が届く。争えるのは金額が「相当」かどうかであって、支払うかどうかそのものではない。回復額や事案の難しさと比べて過大かどうかに、反論を絞ることになる
- 受託者が信託不動産を相場の半値で知人に売る契約を結び、決済まであと10日しかない。44条の差止めを急ぐ場面だが、本条が明記しているのは「訴え」である。仮処分の申立てにかかった費用まで含まれるかには解釈の余地があるため、本案訴訟の提起も視野に入れて弁護士と費用の設計を詰めておく
- 請求額1,000万円のうち200万円しか認められなかった。それでも本条の「一部勝訴」に当たる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 信託口座の明細、賃料台帳、受託者の帳簿(信託法37条の作成義務の対象)を集め、不審な出金を一覧にする2. 内容証明で説明と補填を求め、本条で費用が支弁されることを明記する3. 弁護士との委任契約で、支弁された額と自己負担額の精算方法を決めておく4. 40条・41条・44条のどの請求で訴えるかを確定する。本条の対象はこの三つに限られる5. 一部でも勝訴したら、領収書と報酬額の根拠をそろえ、相当額の支弁を受託者に請求する
訴えられた側:1. 訴えられた受託者は、まず帳簿と証憑を整理し、任務を怠っていないことを示せる部分と示せない部分を切り分ける2. 一部敗訴の見込みが高い場合、相手の弁護士報酬が信託財産から出ることを前提に、早期和解のほうが信託財産の減少を抑えられないか試算する3. 支弁請求を受けたら、支払うか否かではなく、回復額に比べて報酬が過大でないかという「相当性」に反論を集中させる4. 明らかに根拠のない訴訟と考えるなら、受益者の悪意を基礎づける証拠(事前の説明に対する無視など)を記録しておく
時効(請求できる期限):本条の支弁請求権に固有の時効規定はなく、一般消滅時効(民法166条、権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年)が適用されると解される。前提となる40条の損失てん補請求権の期間制限は信託法43条による。受益者が受益者に指定されたことを知るまでは時効が進行しないなどの特則がある(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説的理解:本条は、受託者の監督による利益が信託財産全体に帰属する一方で費用は提訴した受益者が負うという非対称を是正し、受益者による監督権行使を実効化する趣旨と解される。会社法852条と同様の構造をもつ規定と位置付けられる
改正沿革 AI による整理
- 平成18年(2006年)現行信託法制定 大正11年の旧信託法を全面的に改めた新法の制定時に設けられた。受益者による受託者の監督を実効化するため、株主代表訴訟の費用規定と同様の仕組みを導入した
- 令和2年(2020年)公布、令和4年(2022年)11月施行 外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の改正に伴い、報酬の支払先に「弁護士・外国法事務弁護士共同法人」を追加する改正が行われた
改正の年表
- 1.平成18年(2006年) 新設:大正11年の旧信託法を全面的に改めた現行信託法の制定に伴い新設。受益者による受託者の監督を実効化するため、株主代表訴訟の費用規定と同様の仕組みを導入した
- 2.令和2年(2020年) 改正:外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の改正に伴い、報酬の支払先に弁護士・外国法事務弁護士共同法人を追加(令和4年11月施行)
- 信託法 第40条損失てん補・原状回復請求、支弁の対象訴訟
- 信託法 第41条法人受託者の役員の連帯責任、対象訴訟
- 信託法 第44条受託者の行為の差止め、対象訴訟
- 信託法 第43条損失てん補請求権の期間制限
- 信託法 第92条信託行為で制限できない受益者の権利
- 民事訴訟法 第61条訴訟費用の敗訴者負担、本条の除外部分
- 民法 第709条不当訴訟責任を本条2項が悪意に限定
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